「カーボンニュートラル」とは、二酸化炭素の排出削減に向けた重要な取り組みだ。日本や世界の多くの企業がいま、カーボンニュートラルの達成を目標として定めている。カーボンニュートラルのメリットとは何か、わたしたち消費者はどのようなアクションをとればよいのかを考える。
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ライター
大手電力グループ会社を経て、新電力ベンチャーにおいて自治体および大手商社と地域新電力の立ち上げを主管。福岡市において気候変動や地球温暖化、省エネについての市民向けセミナーを実施。現在は、…
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カーボンニュートラル(carbon neutral)とは、環境省によると「削減が困難な部分の排出量について、他の場所で実現した温室効果ガスの排出削減・吸収量等を購入すること又は他の場所で排出削減・吸収を実現するプロジェクトや活動を実施すること等により、その排出量の全部を埋め合わせた状態」を指す。
直訳すると「炭素中立」という意味となり、削減できなかった二酸化炭素の排出量をさまざまな手段で相殺し、排出量を実質ゼロとすることだ。排出量を相殺する手段としては、二酸化炭素の吸収量を証書化して取り引きできるカーボン・オフセットや植樹などがある。
カーボンニュートラルと似た言葉に、「カーボンポジティブ(carbon positive)」や「カーボンネガティブ(carbon negative)」がある。
「カーボンポジティブ」とは、二酸化炭素の吸収量が排出量を上回ることを意味する。「カーボンネガティブ」も同様の意味だが、一般的には「カーボンポジティブ」と呼ばれることが多い。
もともとは環境科学分野の専門用語で、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスを削減し、排出量よりも吸収量が多くなった状態を指す言葉であった。
カーボンニュートラルは吸収量と排出量がイコールの“状態”を指すが、「カーボン・オフセット(carbon offset)」とは、カーボンニュートラルやカーボンポジティブを達成するための“手段”だ。
「カーボン・オフセット」は、二酸化炭素の吸収量という目に見えないものを取り引き可能な証書とすることで、吸収量の売買を行うもの。省エネや植林などによって、二酸化炭素を多く吸収できた事業者から、できなかった事業者へ証書を販売することで、社会全体の二酸化炭素排出量を減らす意図がある。
「カーボン・オフセット」は、カーボンニュートラルを実現する方法のひとつで、日本国内でも取り組みが広がりつつある。カーボン・オフセットされた商品やサービスは2020年10月現在、900点以上存在している。スポーツイベントに使用される電気をカーボン・オフセットすることで、二酸化炭素の排出量を実質ゼロとした例もある。
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カーボンニュートラルを進めるメリットは、二酸化炭素の排出量削減に貢献できることだ。気候変動への対策がいかに重要かは、多くの読者が知っているだろう。
しかし残念なことに、カーボンニュートラルを目指している企業はまだ多いとはいえない。そんななか、地球温暖化に対するアクションとしてカーボンニュートラルを目指すことは、国内外から高く評価される。
カーボンニュートラルが広がることは、裏を返せば再生可能エネルギーへの転換や省エネなど、二酸化炭素排出量の削減が進むことでもある。カーボンニュートラルを達成するには、こうした取り組みが欠かせないからだ。カーボンニュートラルには、サステナブルな世界に向かって社会をシフトする力が秘められている。
企業がカーボンニュートラルに取り組むには、わたしたち消費者の意思表示が欠かせない。消費者が、カーボンニュートラルに取り組む企業の製品やサービスを選ぶようになれば、より多くの企業がカーボンニュートラルを目指すだろう。「買い物は投票だ」という言葉は最近よく耳にするようになったが、消費者の行動には企業の方向性を決める力があるといえる。
インターネット関連サービス世界大手のGoogleは、いち早くカーボンニュートラルを達成した。なんと2007年からカーボンニュートラルをすでに実現している。2017年には、すべてのオフィスとデータセンターの電気を再生可能エネルギー100%に切り替えた。今後は創業時までさかのぼって、過去に排出した二酸化炭素もすべてオフセットする考えだ。
また、フランスでは国を挙げてカーボンニュートラルを推進している。2019年11月の法改正により、2050年までにカーボンニュートラルを達成することが政策目標となった。食品大手のダノン・グループのエビアン®は、2020年までにカーボンニュートラル100%の達成を目指している。
国内では、東京海上グループが2013年から7年連続でカーボンニュートラルの達成を発表した。東京海上グループは、グループ全体での省エネや植林、グリーン電力証書の購入などのい力を入れている。
グリーン電力証書とは、再生可能エネルギー由来の電気がもつ「環境にやさしい」という価値だけを切り離して証書化したものだ。電気と別に購入し、二酸化炭素の排出を相殺することができる。
二酸化炭素の排出量は目に見えない。そのためカーボンニュートラルを目指す際に、どこからどこまでの排出量を対象とするかは課題のひとつだ。例えば、自社だけの排出量に限定するのか、あるいは取引先も含めたサプライチェーン全体の排出量も対象とするのかなどだ。
また、カーボンニュートラルの前提となるのは、再生可能エネルギーへの転換や省エネなどの削減努力だ。この削減努力をどこまで求めるのかも課題とされている。さらに、カーボンニュートラルを達成したあとの検証をどのように行うのかも難しい問題点だといえる。
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世界の大手企業がカーボンニュートラルの早期実現を目標に掲げていることから、カーボンニュートラルを目指す企業は増えていくと思われる。カーボンニュートラルだけではなく、さらに進んだカーボンポジティブ(ネガティブ)がスタンダードとなる日も近いかもしれない。
わたしたち消費者が商品やサービスを選ぶときに、値段や品質に加えてカーボンニュートラルに取り組む企業かどうかという基準も重要となる。気候変動に積極的に対処する企業を応援することが、サステナブルな社会を実現する重要な要素のひとつだからだ。
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