地球温暖化が喫緊の課題となるなかで、注目ワードとして浮上してきた「カーボンポジティブ」。どんな仕組み、取り組みを指すのか。言葉の意味の説明はもちろん、どんな企業が取り組んでいるかも知っておこう。
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「カーボンポジティブ(carbon positive)」とは、もともと環境科学分野で使われている言葉で、人間がなんらかの一連の活動のなかにおいて、排出する温室効果ガス(主に二酸化炭素)の量よりも多く吸収することを指す。
つまり、苗から小さな木を育てる過程では運搬などを伴うため二酸化炭素が生じる。しかし、植えた苗が成長すると育成過程で排出したよりも多くの二酸化炭素を吸収できる。これがカーボンポジティブの流れだ。
ただ、大きな観点からは人類の活動において過去に排出され、大気中に蓄積された二酸化炭素を削減する意味で用いられることもある。
二酸化炭素の吸収量よりも排出量のほうが多い場合は「カーボンネガティブ」と呼ばれる。
ここにきて、「カーボンポジティブ」を宣言する企業が増えている。それは、残念なことに気候変動が待ったなしの状態であることも示している。
2018年10月の気候変動に関する政府間パネル(IPPC)では、「“土地、エネルギー、産業、建物、運輸および都市における、急速かつ広範囲におよぶ移行”に着手しなければならない」と報告書で述べられている。
少し前によく見聞きした「カーボンニュートラル」では、もはや間に合わないという危機感が広がっているのだ。
総じてエコ意識が高い欧米企業は、ぞくぞくと宣言をしている。
ソーシャルグッドな取り組みを続ける、米アパレルブランド「Patagonia(パタゴニア)」。2020年に全拠点の使用エネルギーを再生可能エネルギーに切り替えることを宣言。2025年までに「カーボンポジティブ」の実現を目指すと発表した。
スウェーデンのインテリア企業「IKEA(イケア)」も、2019年に「カーボンポジティブ」に向けて240億円の投資を決定している。
オランダの大手企業「ユニリーバ」は、2030年までに「カーボンポジティブ」を達成すると発表した。
ユニークなところでは、2008年に世界で初めて料理ごとにカーボンフットプリントをメニューに示した「Max Burgers」も「カーボンポジティブ」を宣言。
北欧や中東に店舗を展開するハンバーガーチェーン店舗で使う油をリサイクルし、バイオディーゼル燃料とするほか、植林にも資金を投じている。
正直なところ、日本の「カーボンポジティブ」への取り組みは欧米に比べると出遅れていると言わざるをえない。
しかしながら、伝統的な農業や林業などはそもそも自然環境にやさしく、二酸化炭素の排出量も抑えられる方式だったはず。
過去に学びながら、時流にあわせてアップデートすることで、日本らしく「カーボンポジティブ」に積極的に取り組む仕組みづくりは可能なはずだ。
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