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種の保存法とはなにか、対象となる国内希少野生動植物種リストとともに、ワシントン条約との関係やレッドリストとの違い、禁止される行為や罰則、許可制度について解説。さらには生物多様性条約との関係や日本の国際的責任などにも触れ、わたしたちが日常でできることも紹介する。

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種の保存法とは、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」を指す。この法律は、国内に生息する希少な野生動植物の絶滅を防ぎ、その生息環境の保全を目的として制定されたものだ(※1)。
地球上の生物種は現在、人間活動に起因する生息地の破壊、乱獲、外来種の侵入、気候変動等の複合的な要因により急速に失われつつある。日本においても、四方を海に囲まれた島国特有の固有種が多く、とくに沖縄・奄美・小笠原等の南西諸島・外洋諸島においては、長い年月をかけて進化した固有の動植物が局所的な生息地を持つため、わずかな環境変化でも絶滅へと直結するリスクがある。これらの種を保護するため、国は法律による明確な保護措置を講じる必要があるのだ。
ワシントン条約とは、正式名称「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora)」のこと。輸出国と輸入国とが協力して国際取引の規制を実施することで、国際取引のための過度の利用による野生動植物種の絶滅を防止し、それらの種の保全を図ることを目的とした条約である(※2)。
種の保存法の対象となる希少野生動植物種には、国内の希少種については環境省レッドリスト、外国産の希少種についてはワシントン条約に基づく国内・国際希少野生動植物種が指定されている。(※1)
なお、「国際希少野生動植物種」と「国内希少野生動植物種」の違いは、前者が国際取引の規制を主目的とするのに対し、後者は国内での生息・生育保護を主目的とする点である。
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レッドリストとは、絶滅のおそれのある野生生物の種のリストのこと。専門家が生物学的観点から個々の野生動物種の絶滅の危険度を評価基準に当てはめて科学的・客観的に評価し、その結果をリストにまとめたものを指す(※3)。
「レッドリスト(正式名称:絶滅のおそれのある種のレッドリスト」は、スイスのグランに本部を置く、 IUCN(国際自然保護連合)により発表されている。日本の環境省も日本独自のレッドデータブックおよびレッドリストを作成しているが、これらも、このIUCNが作成したレッドリストの評価基準を参考に作成している。
レッドリストは科学的評価に基づく絶滅危惧種の分類一覧であり、それ自体に法的拘束力はない。掲載された種について採取・捕獲・売買等が禁止されるわけではなく、法的規制は伴わないのだ。
これに対し、種の保存法による「国内希少野生動植物種」への指定は、法律に基づく法的指定である。指定された種については、捕獲・採取・殺傷・損傷・譲渡・販売・輸出入等が原則として禁止され、違反した場合には罰則が科される。
すなわち、レッドリストは「科学的評価」、種の保存法は「法的規制」という制度的性質の違いがある。両者は密接に関連しているものの、指定対象は必ずしも完全に一致するものではない。(※4)
よくある誤解として、「レッドリストに掲載されていれば採取が禁止される」が挙げられる。しかし、レッドリストはあくまで科学的評価に基づく分類であり、掲載それ自体は採取禁止の法的根拠とはならない。
採取等が法的に禁止されるのは、種の保存法に基づき国内希少野生動植物種に指定された場合や、「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」など、他の法令により保護対象とされた場合である。
また、国内希少野生動植物種は、レッドリスト掲載種のうち一部が指定される制度である。指定にあたっては、絶滅危険度のみならず、保護の緊急性、実効性、社会的影響等も考慮されるため、レッドリスト掲載種のなかには法的保護の対象となっていない種も多数存在する(※5)。
種の保存法に基づく国内希少野生動植物種の指定対象は、「種」に限られない。分類学上の「亜種」や「変種」も、保全上の必要性が認められる場合には指定対象となる。
たとえば、イリオモテヤマネコは、ベンガルヤマネコの亜種とされるが、独自の生態的特性および極めて限定された分布域を有することから指定されている。一方、ライチョウは日本の高山帯に生息する代表的な種であり、種レベルで指定を受けている。
このように、種の保存法は分類学上の単位を踏まえつつ、絶滅のおそれが高い単位を柔軟に保護対象とする制度設計となっている。
指定にあたっては、国内に生息・生育する野生動植物であることを前提に、絶滅のおそれの程度が総合的に検討される。実務上は、環境省レッドリストにおける絶滅危惧ⅠA類・ⅠB類・Ⅱ類に相当する種が参考とされることが多いが、区分のみで機械的に決定されるものではない。
さらに、人為的影響により種の存続に支障が生じているかどうかも重要な判断要素となる。具体的には、分布域の狭小性、個体数の減少、生息・生育環境の特殊性や破壊状況などが総合的に勘案され、指定の可否が判断される。
以下の一覧は、環境省が公表する「国内希少野生動植物種一覧(令和7年2月更新)」に基づくものである(※6)。
日本の哺乳類のうち15種が国内希少野生動植物種に指定されている。その大半は琉球列島・南西諸島・小笠原諸島に分布する固有亜種であり、離島特有の限られた生息地と個体数の少なさが絶滅リスクを高めている。なかでもイリオモテヤマネコ(西表島のみに生息)とツシマヤマネコ(対馬のみに生息)は日本を代表する絶滅危機種として広く知られる。
| 科名 | 種名 |
| ネコ科 | ツシマヤマネコ Prionailurus bengalensis euptilurus |
| イリオモテヤマネコ Prionailurus bengalensis iriomotensis | |
| オオコウモリ科 | ダイトウオオコウモリ Pteropus dasymallus daitoensis |
| エラブオオコウモリ Pteropus dasymallus dasymallus | |
| オガサワラオオコウモリ Pteropus pselaphon | |
| キクガシラコウモリ科 | オリイコキクガシラコウモリ Rhinolophus cornutus orii |
| オキナワコキクガシラコウモリ Rhinolophus pumilus pumilus | |
| ヒナコウモリ科 | リュウキュウユビナガコウモリ Miniopterus fuscus |
| リュウキュウテングコウモリ Murina ryukyuana | |
| ヤンバルホオヒゲコウモリ Myotis yanbarensis | |
| ウサギ科 | アマミノクロウサギ Pentalagus furnessi |
| ネズミ科 | ケナガネズミ Diplothrix legata |
| オキナワトゲネズミ Tokudaia muenninki | |
| アマミトゲネズミ Tokudaia osimensis | |
| トクノシマトゲネズミ Tokudaia tokunoshimensis |
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鳥類は45種が指定されている。コウノトリやトキのように一度は野生絶滅(日本の野生個体の絶滅)を経験したのち、飼育繁殖個体の野生復帰によって個体数が回復しつつある例がある。一方、ヤンバルクイナ(沖縄島北部のみに生息、飛翔能力を持たない地上性の鳥)やシマフクロウ(北海道の一部に生息する世界最大級のフクロウ)は依然として深刻な状況が続いている。
| 科名 | 種名 |
| カモ科 | シジュウカラガン Branta hutchinsii leucopareia |
| ウミスズメ科 | エトピリカ Fratercula cirrhata |
| ウミガラス Uria aalge inornata | |
| シギ科 | ヘラシギ Eurynorhynchus pygmeus |
| アマミヤマシギ Scolopax mira | |
| カラフトアオアシシギ Tringa guttifer | |
| コウノトリ科 | コウノトリ Ciconia boyciana |
| トキ科 | トキ Nipponia nippon |
| クロツラヘラサギ Platalea minor | |
| ハト科 | キンバト Chalcophaps indica yamashinai |
| アカガシラカラスバト Columba janthina nitens | |
| ヨナグニカラスバト Columba janthina stejnegeri | |
| タカ科 | イヌワシ Aquila chrysaetos japonica |
| オガサワラノスリ Buteo buteo toyoshimai | |
| チュウヒ Circus spilonotus spilonotus | |
| オジロワシ Haliaeetus albicilla albicilla | |
| オオワシ Haliaeetus pelagicus | |
| クマタカ Nisaetus nipalensis orientalis | |
| カンムリワシ Spilornis cheela perplexus | |
| ハヤブサ科 | ハヤブサ Falco peregrinus japonensis |
| キジ科 | ライチョウ Lagopus muta japonica |
| ツル科 | タンチョウ Grus japonensis |
| ホオジロ科 | シマアオジ Emberiza aureola ornata |
| クイナ科 | シマクイナ Coturnicops exquisitus |
| ヤンバルクイナ Gallirallus okinawae | |
| アトリ科 | オガサワラカワラヒワ Chloris sinica kittlitzi |
| ミツスイ科 | ハハジマメグロ Apalopteron familiare hahasima |
| モズ科 | アカモズ Lanius cristatus superciliosus |
| ヒタキ科 | オオセッカ Locustella pryeri pryeri |
| アカヒゲ Luscinia komadori komadori | |
| ホントウアカヒゲ Luscinia komadori namiyei | |
| アカコッコ Turdus celaenops | |
| オオトラツグミ Zoothera dauma major | |
| ヤイロチョウ科 | ヤイロチョウ Pitta nympha |
| ウ科 | チシマウガラス Phalacrocorax urile |
| サギ科 | オオヨシゴイ Ixobrychus eurhythmus |
| キツツキ科 | オーストンオオアカゲラ Dendrocopos leucotos owstoni |
| ミユビゲラ Picoides tridactylus inouyei | |
| ノグチゲラ Sapheopipo noguchii | |
| アホウドリ科 | アホウドリ Phoebastria albatrus |
| ウミツバメ科 | クロコシジロウミツバメ Oceanodroma castro |
| ミズナギドリ科 | オガサワラヒメミズナギドリ Puffinus bryani |
| セグロミズナギドリ Puffinus lherminieri bannermani | |
| フクロウ科 | ワシミミズク Bubo bubo borissowi |
| シマフクロウ Ketupa blakistoni blakistoni |
爬虫類は12種(亜種を含む)が指定されており、その多くが琉球列島に分布する固有種・亜種だ。クロイワトカゲモドキ類は、沖縄本島、宮古諸島、八重山諸島など各地域に分布する複数の亜種が個別に指定されている。これらは観賞・ペット目的の違法採取が大きな脅威とされている。また、ミヤコカナヘビは宮古島固有の種であり、農地開発や土地利用の変化により生息地の縮小が懸念されている。
| 科名 | 種名 |
| キノボリトカゲ科 | ヨナグニキノボリトカゲ Diploderma polygonatum donan |
| トカゲモドキ科 | クロイワトカゲモドキ Goniurosaurus kuroiwae kuroiwae ※指定後に新種として報告されたGoniurosaurus nebulozonatus(ヤンバルトカゲモドキ)を含む。 |
| マダラトカゲモドキ Goniurosaurus kuroiwae orientalis | |
| ケラマトカゲモドキ Goniurosaurus kuroiwae sengokui | |
| イヘヤトカゲモドキ Goniurosaurus kuroiwae toyamai | |
| クメトカゲモドキ Goniurosaurus kuroiwae yamashinae | |
| オビトカゲモドキ Goniurosaurus splendens | |
| カナヘビ科 | サキシマカナヘビ Takydromus dorsalis |
| ミヤコカナヘビ Takydromus toyamai | |
| ナミヘビ科 | ミヤコヒバァ Hebius concelarus |
| キクザトサワヘビ Opisthotropis kikuzatoi | |
| イシガメ科 | リュウキュウヤマガメ Geoemyda japonica |
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魚類は12種(亜種を含む)が指定されており、その多くはタナゴ類やドジョウ類などの淡水魚である。これらは、河川改修や農業形態の変化、水質悪化などの影響を強く受けやすい。
| 科名 | 種名 |
| ドジョウ科 | ハカタスジシマドジョウ Cobitis striata hakataensis |
| タンゴスジシマドジョウ Cobitis takenoi | |
| アユモドキ Parabotia curtus | |
| コイ科 | イタセンパラ Acheilognathus longipinnis |
| セボシタビラ Acheilognathus tabira nakamurae | |
| ゼニタナゴ Acheilognathus typus | |
| カワバタモロコ Hemigrammocypris neglectus | |
| シナイモツゴ Pseudorasbora pumila | |
| スイゲンゼニタナゴ Rhodeus atremius suigensis | |
| ミヤコタナゴ Tanakia tanago | |
| ハゼ科 | コシノハゼ Gymnogobius nakamurae |
| シラウオ科 | アリアケヒメシラウオ Neosalanx reganius |
両生類は41種が指定されており、その大半をサンショウウオ類が占める。サンショウウオ類は、山あいのきれいな渓流や湧き水のある場所で繁殖する生き物である。そのため、水の汚れや川の改修工事、土砂の流入などによって環境が少しでも変化すると、大きな影響を受けやすい。
近年はDNA分析などの研究が進み、見た目はよく似ていても実際には別の種である「隠蔽種」が多く見つかっている。たとえば、かつては一種とされていたアキサンショウウオが、ゲイヨサンショウウオやヒロシマサンショウウオなど複数の種に分けられるなど、分類の見直しが進んでいる。
昆虫類は、64種が指定されている。水辺に生息する種から森林性の種まで幅広い。代表例としてゲンゴロウ類が挙げられる。これらの水生昆虫は、水田やため池などの農業と結びついた水環境に依存している。しかし、農薬の使用拡大や圃場(ほじょう)整備、農業用水路のコンクリート化などにより、生息環境が大きく変化し、個体数が急減した。かつては各地の水辺で普通に見られたゲンゴロウも、近年は法的保護の対象となっている。
また、小笠原諸島に固有の昆虫類も多数指定されている。これらは島という限られた環境に適応して進化してきた種であり、外来種の影響や生息地の変化に対して脆弱であることが指摘されている。
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維管束植物の指定種は、全210種。なかでもラン科の種はとくに多く、アツモリソウ類やエビネ類、シュスラン類など、観賞価値の高い種が多数含まれている。
ラン科植物は美しい花を咲かせるものが多く、過去には園芸目的の採取が大きな減少要因となった種も少なくない。このため、商業目的での取引が厳しく制限される「特定第一種国内希少野生動植物種」に指定されている種も多い。
ラン科以外では、サトイモ科のテンナンショウ属やウマノスズクサ科のカンアオイ属の植物も多数指定されている。これらは特定の昆虫に依存して受粉するものや、分布域がきわめて狭いものが多く、繁殖力も高くない。そのため、生息地の開発や環境変化に対してとくに影響を受けやすいとされる。
甲殻類では在来種であるニホンザリガニが代表例として挙げられる。北海道や東北地方の冷涼な河川・湧水域に生息するが、外来種であるウチダザリガニやアメリカザリガニとの競合や捕食、さらにザリガニペストと呼ばれる感染症の影響が深刻な脅威となっている。
陸産貝類は指定種数が多く、とりわけ小笠原諸島固有のカタマイマイ属が知られている。島嶼という閉ざされた環境で独自に進化した種が多いが、外来種であるニューギニアヤリガタリクウズムシによる捕食の影響は大きく、多くの固有種が絶滅または絶滅の危機にある。本州のキセルガイ類や、奄美・沖縄地域の固有陸貝類も指定対象に含まれており、森林開発や農薬の影響が懸念されている。
二枚貝類では、カワシンジュガイ類が代表例である。これらは北海道や本州の清流に生息し、幼生期にサケ科魚類を宿主とする特殊な生活史を持つ。そのため、宿主魚類の減少や河川改修による環境変化が直接的な影響をおよぼしてしまう。
唇脚類(ムカデ目)では、琉球列島に固有の大型種であるリュウジンオオムカデが近年指定された。限られた水辺環境に依存しており、分布域の狭さや採集圧が懸念要因とされている。
国内希少野生動植物種に指定された種については、法に基づき、原則として以下の行為が禁止される。これらの規制は個人・法人を問わず適用され、違反した場合には罰則が科される。
①捕獲、採取、殺傷、損傷など、個体に直接的な影響を及ぼす行為
②譲渡しや譲受け、販売、購入といった取引行為
③販売目的での陳列や広告など、商業的流通に関連する行為
さらに、生きている個体の輸出入についても規制の対象となる(※7)。
違反した場合、種の保存法に基づき刑事罰が科される。
国内希少野生動植物種の違法な捕獲・採取・譲渡などを行った場合、個人には懲役刑または罰金刑(あるいはその併科)が定められており、重い罰則が設けられている。
また、法人の業務として違反行為が行われた場合には、行為者本人の処罰に加えて法人にも罰金刑が科される「両罰規定」が設けられている。さらに、違反によって取得した個体や加工品等は没収の対象となる。(※8)
国内希少野生動植物種については原則として捕獲・採取等が禁止されているが、一定の例外として許可制度が設けられている。学術研究、種の保存を目的とした繁殖、傷病個体の保護・治療など、公益性が認められる場合には、環境大臣等の許可を受けることで捕獲・採取等が可能となる。
また、保護増殖事業や遺伝的多様性の確保のために必要な個体の移送なども、計画に基づき許可制度を活用して実施される。申請にあたっては、目的、方法、数量、期間などを記載した申請書を提出し、審査を経て許可が与えられる。許可には条件がつくこともある(※9)。
SDGs(持続可能な開発目標)の目標15「陸の豊かさも守ろう」は、陸域生態系の保全・回復・持続可能な利用の推進を掲げている。具体的には、森林の持続可能な管理、土地劣化の阻止、生物多様性の損失防止などが含まれる。
ターゲット15.5では、「2020年までに自然生息地の劣化を抑制し、生物多様性の損失を阻止し、絶滅危惧種を保護して絶滅を防ぐための緊急かつ意味のある対策を講じる」と明記されている。種の保存法に基づく国内希少野生動植物種の指定や保護増殖事業の実施は、このターゲット15.5の達成に直接関係する国内制度である。法的規制によって捕獲や取引を制限するとともに、保護増殖や生息地の回復を進めることで、生物多様性の損失防止に寄与しているのだ。
生物多様性条約とは、1992年のリオ地球サミットで採択された国際条約のこと。生物多様性の保全と持続可能な利用などを目的とた条約で、日本は1993年に批准した。
2022年のCOP15では、「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が採択され、2030年までに陸域・海域の30%以上を保全する「30by30目標」などが掲げられた。日本は締約国として、これらの国際目標を国内で実行する責任を負っている。種の保存法に基づく希少種の指定や保護増殖事業は、その責任を具体化する制度であり、国際的な約束を国内で実現するための重要な法的基盤となっている(※10)。
種の保存法が示している「絶滅の危機」は、法律や行政の取り組みだけで解決できるものではない。生物多様性を守るためには、一人ひとりの行動が重要である。
まず基本となるのは、野山や水辺で見かけた生き物を無断で採取・持ち帰りしないことだ。ペットや園芸用として生物を購入する際には、違法な採取個体ではないか、適法に流通しているものかを確認することも大切である。また、外来種を野外に放したり植えたりしないことは、生態系を守るうえで欠かせない。
さらに、自然観察会や市民参加型の調査(シチズンサイエンス)への参加、保全団体への寄付やふるさと納税を通じた支援も有効な方法である。日常の消費行動においても、持続可能な農林水産物を選ぶことが、生物多様性に配慮した土地利用の拡大につながる。小さな選択の積み重ねが、絶滅危惧種の未来を左右する。種の保存法は、その行動を後押しするための社会的なルールといえるだろう。
種の保存法は、絶滅のおそれのある野生動植物を法的に保護し、生物多様性の損失を防ぐための中核的な制度であると同時に、生物多様性条約の締約国としての日本が、国際目標を国内で実行するための重要な基盤でもある。
生物多様性の保全は、制度だけでなく私たち一人ひとりの行動によっても支えられる。種の保存法は、その責任と方向性を示す法律といえるだろう。
※1 ワシントン条約と種の保存法|環境省
※2 ワシントン条約とは|環境省
※3 海洋生物レッドリストの公表について|水産庁
※4 (ニュースドリル)生物多様性編|朝日新聞
※5 希少な野生動植物種の保全|環境省
※6 国内希少野生動植物種一覧|環境省
※7 譲渡し等の規制及び手続きについて|環境省
※8 罰則や違反事例等|環境省
※9 絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律|e-Gov 法令検索
※10 生物多様性条約|環境省
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