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近年、アパレル業界を中心にリサイクルコットンの製品が増えている。衣類や布製品の製造段階に発生した糸くずや端切れを再利用してつくられた素材で、環境負荷の低さが注目されている。この記事では、リサイクルコットンがどのような環境問題に貢献するのか詳しく解説している。
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エレミニスト編集部
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リサイクルコットンとは、紡績工場や縫製工場で発生する端切れや落ち綿、糸くずなどを再利用してつくられる生地である。これらの素材は本来であれば廃棄される運命だが、リサイクルの工程を経て新たな製品へと生まれ変わる。リサイクルコットンとして再利用することで廃棄物を削減し資源を有効活用するため、環境保護の観点から注目されている。(※1)
リサイクルコットンは、環境負荷の低減に寄与するという特長を持つ。通常、コットン生産には大量の水や農薬が必要であり、環境への影響が大きい。リサイクルコットンは既存の廃材を活用するため、新たな資源を消費せず、製造過程での環境負荷を大幅に削減できる。またリサイクル工程を経ることで柔らかな手触りとナチュラルな風合いを備え、Tシャツやバッグといった多用途に利用されている。(※1、※2)
コットンは栽培において、大量の水資源や農薬を消費する点が課題とされてきた。コットン栽培には多くの環境負荷が伴う。まず、水資源の大量消費の問題。コットン1キロを生産するためには約1万リットルの水が必要とされる。とくにインドなど水資源が限られた地域での栽培が盛んであり、世界全体の農業用水のうちコットンが占める割合は57%に達する。この状況が続けば、飲料水の不足など深刻な水問題を招く。
またコットン栽培では土壌や水源の汚染も懸念される。殺虫剤や除草剤の使用量が多く、世界の耕作地全体で見ればコットン栽培地は2.1%と小規模であるにもかかわらず、全殺虫剤の16%、除草剤の7%が使用されている。この過剰使用により土壌中の微生物が死滅し、地下水の汚染が進む。
こういった背景からつくられたコットンは環境負荷が高い分、有効的に活用する必要がある。リサイクルコットンは廃材を素材とするため、新たな資源投入が不要であり、市場に環境にやさしい選択肢を提供する。また色ごとに分けられて再利用されるため、染色工程を省略することも可能など、エコロジカルな特徴を持つ。(※2)
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近年、SDGsの採択によりサステナビリティへの意識が世界中で高まっている。アパレル業界では従来の大量生産・大量廃棄の仕組みを見直し、環境負荷を軽減する取り組みが進められている。リサイクルコットンはその一環として、廃棄物の削減と資源循環の実現など、企業の社会的責任を果たす方法にもなる。また消費者の間でも環境保護への意識が高まり、持続可能な商品を選ぶ傾向が強まっていることも、リサイクルコットンの普及を後押ししている。(※1、※3)
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リサイクルコットンの製造は、廃材の回収から始まり、いくつかの工程を経て完成する。以下にそのプロセスを示す。(※4)
市場や工場から廃材を回収した後、色や種類ごとに仕分けする。
仕分けされた廃材は専用の機械で粉砕され、繊維状に戻される。再び糸として使用するための工程だ。
繊維状にした素材を撚り合わせて新たな糸をつくり出し、それを生地として加工する。リサイクルコットン特有の柔らかい質感とナチュラルな風合いがこの段階で生まれる。
最終的に、生地はTシャツやバッグなどの製品に加工される。リサイクルコットンを使用した商品は、消費者にとっても環境に配慮した選択肢として人気を集めている。
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リサイクルコットンは環境にやさしい選択肢として注目されている。その具体的な利点を、CO2排出量の削減や資源の節約といった観点から解説する。
一般的なコットン製品の製造過程では、Tシャツ1枚あたり約3kgのCO2が排出されるといわれている。これは自動車が約12km走行した場合と同程度の量だ。これに対してリサイクルコットンは落ち綿や端切れを再利用するため、栽培や染色工程でのCO2排出を大幅に削減できる。染色工程を省略することでさらに温室効果ガスの発生を抑え、持続可能な製造が実現可能だ。(※1)
衣類の製造にあたっては、大量の廃棄繊維が生まれる。リサイクルコットンは本来捨てられるはずだった糸屑や端切れを使用するため資源の節約につながる。
リサイクルコットンは、通常のコットンと比較して生産工程が簡略化されている。染色済みの素材を再利用することで、電力や染料のコストを削減可能だ。さらに廃棄物を効率的に再利用することで、資源のロスを防ぎながらコストを抑えた製品の提供が可能になる。
コットン栽培には大量の水が必要だ。Tシャツ1枚をつくるには、約2700Lもの水が使われる。この膨大な水資源の消費は、とくに水不足が深刻な地域で大きな問題を引き起こしている。リサイクルコットンでは新たに綿花を栽培せず既存の繊維を利用するため、水の使用量を大幅に削減できる。(※1)
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リサイクルコットンを選ぶ際には、第三者機関が発行する認証マークや、そのブランドの取り組みを確認することが大切だ。ここでは、選び方のポイントを解説する。
リサイクルコットン製品のなかには、「GOTS認証」や「OEKO-TEX®/エコテックス®」といった認証機関による認証が付与されているものがある。これらの認証は、製造過程で環境や人権に配慮した製品であることを保証する。購入時には信頼性の高い認証マークを確認するとよい。
代表的な認証機関のマークは以下のとおりだ。(※5)
・GOTS(Global Organic Textile Standard)
・Oeko-Tex(エコテックス)
・RCS(Recycled Claim Standard)
・GRS(Global Recycled Standard)
SDGs達成に向けて、環境への配慮を積極的に行うブランドが増えている。製造過程でのCO2排出量や水の使用量を具体的に公開している企業は、その取り組みが透明性を持つ。これらの情報をチェックし、持続可能な製品を提供するブランドを選ぼう。
日常的に使いやすいものを選ぶためには、デザインも重要だ。自分のライフスタイルや好みに合った色やデザインを選ぶことで、長く愛用できる。また大切に使うことで、新たな資源の消費削減につながる。
サイコロ印
再生綿アップサイクル軍手 - 4タイプ
440円
※2024.12.13現在の価格です。
アップサイクルとは思えないくらいしっかりした軍手です。永く使えそうです。
石川メリヤスの作業用手袋は、鉄工所や漁師などが使う本格的な作業手袋だ。リサイクルコットンを使用し、廃棄物を再利用することで環境への負荷を軽減している。特紡糸を用いた手袋は、フワッとしたボリューム感と優れた耐久性を持ち、手触りも良好だ。すべて国内で製造され、高品質な日本製であることも特徴。環境保護と高性能を兼ね備えた製品となっている。
リサイクルコットンの他にも、同様のプロセスで生産される素材もある。ここでは、リサイクルされたウールやそのほかの繊維を使った製品も紹介する。
The Tartan Blanket Co.
ニーブランケット
14,300円
※2024.12.13現在の価格です。
リサイクルウールを使用したエコフレンドリーなブランケット。廃棄衣類や切れ端をリサイクルして、耐久性の高い素材に変えている。デザインには伝統的なタータンチェックやヘリンボーンが使用され、長く愛されるデザインである。また洗濯機で丸洗い可能で、清潔に長く使用できる。B Corp認証を取得しており、収益の一部は環境保全や困窮者支援に寄付されている。
RELIEVER SCHLAF
<受注生産>リサイクル人工羽毛の寝袋(シュラフ)
29,800円
※2024.12.13現在の価格です。
70年以上の歴史を持つ寝具メーカーが手がけたシュラフ。リサイクル原料100%の「AirFlake®️」を使用し、羽毛に匹敵する温かさとボリュームを実現している。この人工羽毛は、生物の機能を模倣した新技術で製造され、環境負荷を減らしつつ高い保温性で寒い日でも快適に過ごせるだろう。防災用アイテムとして備えておくのもいい。
AMITABI
リサイクルウール足袋ソックス
1,650円
※2022.12.14現在の価格です。
環境に配慮したリサイクルウールを使用したソックス。回収されたウール製品や繊維工場の端材を再利用し、保温性や吸湿性に優れた素材をつくり出している。また足袋型のデザインを採用することで足にフィットし、靴との併用でも快適に使用できる。長時間の立ち仕事でも快適にもおすすめだ。リサイクル素材を活用することで、サステナブルなライフスタイルを支援している。
Seljak Brand
ブランケット - ホイップステッチ
42,900円
※2022.10.03現在の価格です。
このブランケットは、工場で発生した端材をリサイクルしたウールを使用しており、温かさと天然の抗菌作用を兼ね備えている。アウトドアでの使用にも適しており、個性的な色合いと手触りが特徴である。使われているウールは自然素材で、キャンプやピクニックなどで使用するのに最適。購入1枚ごとに寄付が行われるため、社会貢献活動にもつながる製品だ。
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近年SDGsの広がりによって企業はもちろん、私たち消費者の間でも環境意識が高まっている。リサイクルコットンのような環境に配慮した製品の選択肢も増えており、こういった製品を購入することで環境活動に貢献可能だ。ショッピングの際はリサイクルコットンでつくられた製品を探してみてはいかがだろう。消費活動がよりよい社会の実現につながる。
※1 「余らせない」ものづくり。廃棄物から生まれ変わった「リサイクルコットン」でサステナブルな暮らしをはじめよう。|株式会社京都大和
※2 「コットン=優しい」は間違い?コットン栽培の環境負荷やサステナブルコットンを知ろう|株式会社クラダシ
※3 CLOTHING MADE FROM RECYCLED MATERIAL リサイクル素材から生まれた服|ユニクロ
※4 Market Problem|M&P JAPAN
※5 オーガニックコットンとは?メリット・デメリットと選び方のポイントを簡単に紹介|Spaceship Earth
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