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オーガニックコットンとは、農薬や化学肥料を頼らず有機栽培で育てられた綿花でできたコットン。国際的な基準や、SDGsとの関連性、さらにメリットとデメリットについて解説する。またおすすめのオーガニックコットンのブランドも紹介する。
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「オーガニック」は「有機の、有機的な」という形容詞で、現在は「化学合成された農薬や物質の使用を可能な限り回避しながら生産されたもの」あるいは、「生産地とその環境、また労働環境などにも配慮されて生産されたもの」という理解で広まっている。
オーガニック農法の定義としては、「国際有機農業運動連盟(IFOAM-Organics International)」が、2008年の総会で採用したものがあるので参考にしたい。
「有機農業は、土壌、生態系、人々の健康を維持する生産システムである。それは、悪影響を伴う投入物の使用ではなく、地域の条件に適応した生態学的プロセス、生物多様性、およびサイクルに依存している。有機農業は、伝統、革新、科学を組み合わせて、共有環境に利益をもたらし、関係者全員の公正な関係と生活の質を促進する」。(※1)
わかりやすくいうと、オーガニックコットンとは農薬や化学肥料に頼らず、有機農法で育てられたコットンのこと。各国によって「オーガニック」と名乗るためには基準が設けられているため、それをクリアしなければならない。
オーガニックは、単純に無農薬栽培を指すのではなく、農地を化学物質などによる汚染や乱開発から守る管理システムがあり、あらゆる工程で発生する現地の労働者の人権に至るまでも十分に配慮されたものを指している。
当初は、農地や栽培、収穫レベルではオーガニック基準を設けることができたものの、流通方法やシステムなどについては、基準を設けることが難しかった。流通経路や末端の販売されている場所までの流通システムに追跡をかけることが物理的にできなかったのである。しかし、1990年代末、ようやく通商レベルでのオーガニック・ガイドラインが策定され、流通レベルも含めたオーガニック基準の整備などが進んだ。
・オーガニックの生産基準に沿った管理が、数年以上行われた農地で収穫されたもの
・土づくりから農産物の出荷まで、一貫してオーガニックの基準に沿っている
・使用可能な農薬がきちんとリストアップされている
・児童の労働が禁止されている
この他、明確な基準については、生産国などの状況や認証機関により異なるが、おおむね上記の点が共通項となっている。(※2)
また、世界にはオーガニックコットンを認証する機関がいくつか存在する。それぞれで「オーガニックコットン」の基準を設けている。
「Global Organic Textile Standard」の頭文字を取って「GOTS(ゴッツ)」という。日本では「オーガニックテキスタイル世界基準」と呼ばれる。
GOTSは、コットンだけではなくウール、絹などの自然素材の繊維やテキスタイルについて、「真にオーガニック」であることを証明する、世界共通の国際認証である。加工から流通を経て、消費者の手に渡るまでの全過程で、関連する化学物質、金属類、プラスチックの各使用可否などについて、さまざまな基準が設けられている。
また、自然素材の栽培や収穫、加工に不可欠な労働環境についても、人権問題解決への観点から、禁止事項などが盛り込まれている。このように、「有機的栽培か否か」だけではなく、社会的な基準をも満たしてこそ、GOTS認証を受けられるのである。
「Organic Content Standard」の略称。オーガニックコットンをはじめ、オーガニックウール、オーガニックリネンなど、オーガニック繊維製品であることを認証する「オーガニック繊維国際認証基準」のこと。アメリカに本部をおくTextile ExchangeというNGO団体により運営されている。
OCS認証は、収穫から製品化に至るまでの全工程で、非オーガニック製品との混合や、合成化学物質などによる汚染がないよう管理され、原材料自体も、オーガニック認証農場で生産されたもののみが対象とされている。これらは、「certification bodies(CB)」という第三者認証機関により、サプライの各ステップについて客観的にチェックされる仕組みだ。
このような要件をすべて満たしている製品で、かつ流通下の状況などもクリアしていなければ、OCS認証マークを使用することはできない。
では、本題の「オーガニックコットン」について見てみよう。どのような条件を満たしていれば、オーガニックコットンと呼べるのだろうか。通常のコットンとの違いも比較しながら、その特性について整理してみよう。
コットンのもととなる綿花は害虫に弱いため、大量のう農薬や除草剤などが使われる。また効率よく栽培するために、化学肥料が使われることも多い。オーガニックコットンでは、それらの農薬と化学肥料の使用を制限している。
遺伝子組み換えは、農業を効率的にする革新的な技術だ。害虫や病気に強い種を作り、大量生産を可能にしてきた。しかし遺伝子組み換え技術の使用は、周辺地域の生態系に影響をもたらすことも考えられており、多くのオーガニックコットンの認証で「遺伝子組み換え技術を使用しない」ことが基準にされている。
世界のコットン栽培では、劣悪な環境下で働かされる労働者がいたり、自動労働が行われていたりする。そのなかには、厳しい生活に追い詰められて、命を絶つものもいるそうだ。オーガニックコットンの認証では、そのような強制労働、児童労働を認めず、生産者の労働環境にも配慮されている。
トレーサビリティとは、製品の追跡可能性のこと。その製品がいつ、どこで、だれによって作られたのか追跡できる状態にすることを言う。アパレル業界ではサプライチェーンが複雑なことから、トレーサビリティの確保が難しい。しかしオーガニックコットンではトレーサビリティの確保が基準のひとつとしてある。
オーガニックコットンには具体的にはどのような特徴があるのだろうか。その特徴や品質に注目してみよう。
オーガニックコットンは、肌触りのよさで飽きが来ず、愛着もわくので、丁寧に扱い、長く大切に使えるといった愛用者も多い。
例えば、オーガニックコットン製のタオルは通常のものよりも価格は高いが、生産者や製品づくりなどにかかわった人々に想いを馳せることができれば、より一層大切に扱いたい気持ちも高まるのではないだろうか。用途に応じたサイズ感のものを、目的別に用意するといった賢い使い方にも、一考の余地がある。
子どもにも安心して使えるオーガニックコットン。赤ちゃんの皮膚はとても薄く、とてもデリケートなので、赤ちゃんの肌に直接触れる素材には、なるべく糸が細く、柔らかい素材を選びたい。オーガニックコットンは、残留農薬も通常のコットンよりも少ないので、いずれの面においても、赤ちゃんや子ども用に使用することは合理的である。
例えば、食事の際などに、口元をふくといった際には、安心して使えるオーガニックコットンを選ぶのもよいだろう。
あらゆる面で「人と環境にやさしい」オーガニックコットン。加工が少ない、素材本来の豊かな風合いを保ちながら、できるだけ長く使うということは、結果的にサステナビリティ(持続可能性)の理念にもつながる。
オーガニックコットンは、人にも環境にもやさしく、身近で親しみやすいのが大きな特徴である。
厳しい基準をクリアしたオーガニックコットンのみが持つ魅力的なメリットについてみてみよう。
オーガニックコットンのメリットは、まず素材感にある。加工がなされていない分、素材本来の弾力があり、やさしい肌触りが楽しめる。吸湿性や通気性、保湿性に優れており、使い心地がよい。
栽培や収穫の段階で化学肥料の使用が厳しく制限されているため、残留農薬が少ない。ケミカルな成分について気にする必要がなく、赤ちゃんや子どものデリケートな肌にも安心して使える。
化学繊維のように高分子ではないので、土にかえりやすく、燃やしてもケミカルな有害ガスが発生しない。人にも環境にもやさしい、自然が育んだエコロジー素材である。
オーガニックコットンは、栽培する地域の環境とそこで働く労働者に配慮されたもの。つまりSDGs(持続可能な開発目標)にもあてはまる。農薬や化学肥料の使用を抑えることで、地域の環境を守ることにつながり、また栽培に関わる人々の人権や労働環境の保護にもなる。私たちがオーガニックコットンのものを選ぶことで、そのようなものづくりを行っている人を応援することになり、SDGsの目標達成にも貢献することになるのだ。
オーガニックコットンにデメリットがあるとすれば、価格と機能面であろう。生産される絶対数が少ないため、それが価格に反映されていると捉えよう。
また、産地などによっても異なるが、繊維に加工が施されていないものほど柔らかいため、物理的な耐久性については、通常のコットンよりも低いと考えられる。洗い方などによっても異なるが、オーガニックコットンは、通常のものよりも丁寧に扱うようにしよう。
オーガニックコットンを使っているおすすめのファッションブランドは下記の4つだ。
DEDICATED.
プレーンスウェットパーカ
12,100円
※2022.09.29現在の価格です。
他のオーガニックコットンに比べて、気持ちいい〜っていう感じでは無く、普通のコットンの手触りに近いです。フワフワ感があまりないです。洗濯しても色落ちしないのは嬉しいです。サイズはデカいのでゆったり着たい人にオススメ。何回も洗濯していますが型崩れしてません。パーカーとして重すぎて着ずらい事はないですが、しっかりタイプのパーカーなので、フワッとカジュアルに着たいと言うよりは、防寒だったりしっかりパーカーとして着たい時におススメです。
スウェーデン発のファッションブランド。2006年に創業以来、エコロジー・サステナブルといった価値観のもとで服づくりが行われている。すべての商品は、オーガニックコットンなど、環境への負荷が低い素材を主に使っており、労働者の人権にも配慮している。
2021年より、日本国内メーカーとの協業をスタート。より身近に北欧ブランドを楽しめるようになった。会社としてGOTS認証を取得している。※3
takes.
半袖カットソー - メンズ
11,550円
※2023.12.18現在の価格です。
天然素材のみを使った服づくりを行っている、スーパー・エコロジーな国内ブランド。製造工程においてもできる限りプラスチックを使わないよう配慮されている。オーガニックコットン素材は、2009年、国内初のGOTSとOCSの両認証を取得した「大正紡績」から調達、トレーサビリティも明確なオーガニックコットンの素材にこだわりを持つ。
フェアトレード専門ブランドのパイオニア。1990年代半ばから、いち早くオーガニックコットンを取り扱い、GOTS認証を取得している。コットン製品の8割以上がオーガニックコットン製であり、含有率にもこだわっている。
生産者を尊重する適正価格での取引きをはじめ、ジェンダー平等など、環境だけでなく、人権にも配慮。ブランド名には「人と木、地球に生きるすべてのものが共生し、フェアに暮らせる世界」への想いが込められている。
オーガニックコットンをはじめ、「サステナブルな綿花の生産推進活動(Better Cotton Initiative)」において生産されたBCIコットンなど、環境に配慮した素材がメインに使用されている。2020年、”FOUNDATION 1976”プロジェクトをスタート。「すべてはハピネスのために」(happiness is the Gold)という、創業者ロン・ハーマンの理念に基づいた、こだわりあるデザインにも注目したい。
ふだん、顔や体を拭くときに使うタオルもオーガニックコットンでつくられたものを選ぶと、気持ちよく使えるだろう。おすすめのブランドは、下記記事を参考にしてほしい。
オーガニックコットンは、一度使えば、その手触りや使い心地に感動を覚えるかもしれない。デリケートな素材なので、目的別に使い分けるなどして、オーガニックコットンならではの魅力を日常生活に取り入れてみよう。ぬくもりさえ感じるその風合いには、きっと人々の思いが詰まっているに違いない。
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