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オーガニックコットンでつくられる服は、人にも地球にもやさしく、肌触りが心地よいものが多い。真摯にものづくりに向き合い、オーガニックコットンをこだわって使用している9ブランドを取材。産地・認証とあわせて紹介する。レディスのほか、ベビー服やメンズ服、小物もあわせてチェックしよう。
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オーガニックコットンとは、有機栽培で育てられた綿からつくるコットンのこと。認証機関が認めた農地で、農薬や化学肥料を使わずに育てられる必要があり、3年以上の生産実績を含め、厳しい基準をクリアしてはじめて「オーガニックコットン」になり得る。
世界にはオーガニックコットンに関連するさまざまな認証基準があり、それぞれで細かい条件は異なるが、もっとも知られる基準に「GOTS(ゴッツ)認証」がある。
GOT認証は「Global Organic Textile Standard」のことで、服などの繊維製品が「正しくオーガニックである」ことを保証するためのもの。原料が製品となり、消費者のもとにわたるまでの工程において、以下のような基準が設けられている。
・毒性の強い薬剤は一切使われていない
・原料などに遺伝子組み換え技術を使用しない
・衛生的で安全な労働環境である
・搾取や差別のない労働条件である
・トレーサビリティが確保されている など
このように、オーガニックコットンは環境や社会に配慮されてつくられて、私たちのもとに届いている。
私たちがオーガニックコットンを選ぶ一番のメリットは、人や環境への「やさしさ」である。
コットンの栽培には品質を保つために多くの農薬や肥料が使われており、土壌汚染や周辺住民の健康被害につながっている。環境問題以外にも課題があり、劣悪な環境で働かされる人がいたり児童労働が強いられていたりというケースが多く存在するのが現状だ。
ところがオーガニックコットンはそのような問題にも配慮。オーガニックコットンの認証基準は、生産過程すべてが対象となり、人や地球にとって持続可能な方法が求められている。
また、オーガニックコットンは有機栽培で生産されているため、赤ちゃんや肌がデリケートな人にとっても安心感があるのもメリットだろう。
オーガニックコットンだからといって品質に大きな差があるわけではなく、もしかすると体感するのは難しいかもしれない。ただ、オーガニックコットンの服一枚に関わるすべての人にやさしく、環境にも配慮されているとなると、それは大きなメリットといえるだろう。
ここで、オーガニックコットンの服を探すときにチェックしたいおすすめのブランドを紹介しよう。もちろんデザイン性にすぐれたおしゃれなアイテムを取り扱っているところばかりだ。
2006年に設立された北欧スウェーデン発のファッションブランド「DEDICATED.(デディケイテッド)」。ブランド名には「~に身を捧げた、専門の」という意味があり、地球の持続可能性に身を捧げて注力するという誓いが込められている。
デディケイテッドは、会社としてGOTS認定を取得し、設立当初からコットンはオーガニックコットンのみを使用している。スウェーデン企画の製品に関しては、サプライチェーンのすべての段階でGOTS認証を取得。さらにフェアトレードされたものを採用している。おまけに、製品は動物愛護団体PETAによるヴィーガン認証を受けている。
2021年にスタートした日本企画のアイテムに関しても、生地までの段階で認証を取得済み。現在は全段階での認証取得を目指している。
オーガニックコットン以外の製品に関しても、すべての製品にリサイクルポリエステルや、木材パルプからつくられたリヨセルといった環境負荷が低い素材を採用。自然と向き合い、サステナブルな生産をすることを大前提に、色や柄、デザインの楽しさも追求している。日本企画では、インポートに加え、日本のトレンドや素材感を活かしたアイテムも展開している。
産地 | インド、トルコ |
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認証 | GOTS認証(スウェーデン企画は全工程で取得、日本規格は生地までの段階で取得) |
その他の取組 | フェアトレード、製品のヴィ―ガン認証、リサイクルまたは生分解性の高い梱包資材の使用 |
土に還るものづくりを目指し、天然素材のみを選んで洋服づくりを行う「takes.(テイクス)」。100%竹からできたTAKEFU(竹布)とオーガニックコットンをミックスした素材は、柔らかいうえに吸水性や保温性にもすぐれ、毎日着たくなる心地よさが評判だ。いつか役目を終えた服が土に還るように縫い糸にも綿糸を使い、ものづくりにおけるすべての工程でなるべくプラスチックを使わないように徹底している。
takes.で採用するコットンは、30年近く前から環境に危機感を持ち、サステナブルな原料調達を模索している「大正紡績」のオーガニックコットン。大正紡績は、2010年に日本ではじめてGOTS認証とOCS認証の両方を取得した紡績メーカーだ。同社では、アメリカの契約農家をはじめ、トレーサビリティが明確な数カ国のオーガニックコットンを仕入れ、可能な限り現地に足を運びながら、現地の方と良好な信頼関係を築いている。
そんなコットンを使うtakes.は、洋服を使う人・つくる人・売る人に配慮した「三方良し」の精神を大事にしている。そして社会に貢献すべく、人の健康と地球の環境のためにできることを日々考えるブランドだ。
産地 | アメリカ、トルコ、インド、タンザニアなどのトレーサビリティが明確な産地を厳選 |
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認証 | GOTS認証、OCS認証 |
その他の取組 | 土に還るTAKEFU(竹布)を使用 |
「People Tree(ピープルツリー)」は、フェアトレード専門ブランド。エシカルで地球環境にやさしく、サステナブルなファッションである「フェアトレードファッション」のパイオニアだ。アジアやアフリカなどの18カ国約145団体とともに、その地方で採れる自然素材を使った商品を企画し、手仕事によって生産している。
ピープルツリーは、1990年代半ばからオーガニックコットンの取扱いをスタート。コットン製品の8割以上で、主にインドで栽培されたオーガニックコットンを使用している。さらに、それらのアイテムのほとんどがオーガニックコットン100%。ストレッチ性や強度など使い心地を良くするための混紡生地も、オーガニックコットンの含有率は95%以上だ。
同ブランドの商品はすべて、「フェアトレード10の指針」を守る団体でつくられている。適正な金額を支払うのはもちろんのこと、児童労働の禁止、ジェンダー平等、安全で健康的な労働条件などを守っている。
オーガニックもフェアトレードも、「みんなが幸せに暮らす」ための手段。繊維業界全体で、「オーガニック&フェアトレード」が当たり前になることを目指している。ブランド名は、人と木を表す。人や木、地球に生きるすべてのものが共生し、フェアに暮らせる世界になるようにという想いが込められている。
産地 | インド |
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認証 | GOTS認証、世界フェアトレード連盟(WFTO)マーク ※商品により異なる |
その他の取組 | 全商品がフェアトレード |
1976年にロサンゼルス・ハリウッドで誕生した「Ron Herman(ロンハーマン)」。「ファッションとは愛にあふれ、刺激的で楽しく、自由であるべきだ」という理念を掲げ、ファッション小物からライフスタイルアイテムまで、幅広く展開している。
ロンハーマンが展開しているオリジナルアイテムの多くに、オーガニックコットンやBCIコットン(綿花持続可能性プログラムのベター・コットン・イニシアティブのこと)、リサイクルポリエステルといった環境配慮型の素材が使われている。
「RH Vintage(RH ヴィンテージ) 」で定番人気の「オーガニックハイウエストデニム」は、2022年にトルコ産のオーガニックコットン100%にブラッシュアップ。“縦ムラ”の強い見え方や仕上がりにこだわって生地を別注するなど、ロンハーマンらしいファッションの楽しさももちろん追求している。同商品は、長く使えば使うほど、色落ちやアタリなどの経年変化も楽しめる一本だ。
産地 | トルコ |
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認証 | コントロールユニオン(サプライチェーンの持続可能性について認証する国際機関) |
その他の取組 | 環境配慮型の素材も積極的に採用 |
「PRISTINE(プリスティン)」は、オーガニックコットンを通して、暮らしに寄り添うライフスタイルを提案するブランド。地球環境に配慮することはよりよい未来を残すことと考える同ブランドは、1996年の誕生から一貫してサステナブルなものづくりを行っている。
アメリカ・テキサス州やインド・タミルナードゥ州で栽培され、USDA(アメリカ農務省)やGOTS認証を取得したオーガニックコットンを原料として、糸から最終製品まではメイド・イン・ジャパンで国内協力工場の生産を経てつくられる。
プリスティンのすべての製品には、日本オーガニックコットン協会のJOCAファミリータグがついている。JOCAのタグは、認証を受けたオーガニック原料から、人と環境に配慮した方法で、日本の技術と感性を生かしてつくられたものだけに認められる信頼の証だ。
また、日本では綿の自給率が0%である現状に対して危機感を覚え、耕作放棄地を活用して国産綿の復興を目指す「国産綿プロジェクト」を2012年から開始。2030年には製品の国産綿混率2%を目指している。プリスティンの活動や行動の要にはいつも、「世界中の子どもたちがきれいな地球で健やかで幸せに暮らせるように」という想いがある。
産地 | アメリカ・テキサス州、インド・タミルナードゥ州 |
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認証 | USDAオーガニック認証、GOTS認証(原綿で取得) |
その他の取組 | 国内産の綿を復活させるプロジェクト、染め替えやお直しで洋服をアップサイクルする「リプリ プロジェクト」などを実施 |
グラフィックデザイナーとして活躍する兄・井上聡氏とヘアデザイナーとして活躍する弟・井上清史氏が2004年に設立した「The Inoue Brothers…(ザ イノウエブラザーズ)」。「着る人、作る人、売る人、すべてを幸せにする」をモットーに、アルパカニットを中心としたエシカルなファッションを提案している。
そんなザ イノウエブラザーズが2019年にローンチしたのが初のコットンプロダクトとなる「100% Natural Organic Pima Cottonコレクション」だ。使われているのは南米ペルーで100%自然栽培されたオーガニックピマコットン。無農薬で育つ強さを持ち合わせたピマコットンは、雨などの自然の恵みを受けて育ち、通常のコットンと比べると環境負荷が著しく低い。
綿の栽培から紡織までを担うペルーの工場はGOTS認証を取得。縫製は、東日本大震災の被害を受けた東北地方復興支援の「東北プロジェクト」の一環として、福島の工場で行われている。
同コレクションに「1枚の服から自然の素晴らしさを感じて、背景にいるすべての人を想像して大切にしてほしい」という想いが込められている。
産地 | ペルー |
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認証 | GOTS認証、コントロール・ユニオン認証など(現地の工場が取得) |
その他の取組 | 縫製は福島県の工場で行い、東北地方の復興を支援 |
百年前の人たちがあたりまえにやってきた、畑に綿の種を蒔き糸や布をつくるという工程を続けている「益久染織研究所(ますひさそめおりけんきゅうしょ)」。創業者の廣田益久氏の想いを受け継ぎ、自然栽培100%の綿花を昔ながらのガラ紡機によりつむぐことにこだわっている。
益久染織研究所の製品の原料として使われるのは、中国・山東省の農薬や肥料を一度も使ったことがない土壌で育つコットンだ。そんな木綿本来の柔らかさを大事にする製品はやさしくて心地よい。
現代紡績機の100分の1以下のゆっくりとしたスピードでつむがれる糸は薬品処理を行わないため表面がわた状なのが特徴。それが通気性のよさや蒸れにくさにつながっている。
益久染織研究所のベビー用品は、繊細な赤ちゃんの肌にもぴったりだ。アイテムは木綿本来が持つ生成色で、赤ちゃんのかわいらしさがより引き立つ。ベビー服以外にも、綿の素材を生かしたさまざまなアイテムを展開している。『ELEMINIST SHOP』では、ふきんや化粧おとしの取扱いがある。
※商品改訂にともない、ELEMINIST SHOPと益久染織研究所で販売商品名と価格が異なる場合があります。
産地 | 中国・山東省 |
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その他の取組 | やわらかな糸へ導く昔ながらのガラ紡機を使用 |
「オーガニック製品を通して地球環境の保全と社会貢献をする」を経営理念に掲げる「PRISTINE(プリスティン)」。オーガニックコットンを用いたインナーからアウターはもちろん、アンダーウェア、ベビー服など、暮らしまわりのアイテムまでトータルで提案を行っている。
いずれも無染色にこだわってつくられていて、綿そのもののやさしい色合いを楽しめるアイテムばかり。顔の見えるものづくり、しあわせが循環するものづくりを追求し、徹底している。
産地 | アメリカ・テキサス州、インド・タミルナードゥ州 |
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認証 | USDAオーガニック認証、GOTS認証 |
その他の取組 | 国内産の綿を復活させるプロジェクトを行っている |
「AMITABI(あみたび)」は、1949年に創業した靴下工場「タイコー」が手がける足袋ソックスブランド。製糸業がさかんだった長野県で70年以上にわたって靴下の企画や製造をしてきた同社は、新しい発想での数々の取り組みやブランドの立ち上げを行っており、AMITABIもそのひとつ。
大量生産ではなく、履き心地や機能性を重視したものづくりを心がけ、自社工場で専門性の高い製品を完全一貫生産している。
AMITABIは、日本に古くからある足袋の形にこだわってつくられる。AMITABIのラインアップのひとつ「オーガニックコットン 足袋ソックス」の表糸は、オーガニックコットン100%。無縫製で1時間に1足のペースでゆっくり編む独自の方法には、老舗工場の技術が光っている。
徹底して履き心地を追求するAMITABIのものづくりは、「長野の技術や文化を発信していける存在でありたい」と願う町工場によって実現しているのだ。
産地 | インド |
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認証 | GOTS認証 |
その他の取組 | 大量生産を行わない自社工場での生産を徹底 |
「花の命を着る。」がコンセプトの草木染めランジェリーブランド「Liv:ra(リブラ)」。シルクやオーガニックコットンなどの天然素材を京都の職人による伝統の草木染めで染め上げた“生きた植物のランジェリー”を販売している。
植物プリントのオーガニックコットンランジェリーコレクションには、「ビオリ プロジェクト(BIORE PROJECT)」のオーガニックコットン100%が使われている。オーガニックコットンの買い取りだけでなく、その地域で暮らす人々の自立した生活の実現をサポートする取り組みだ。
環境負荷を最小限に抑えて社会規範を守ってつくられるビオリプロジェクトのオーガニックコットンは、生地のQRコードを読み込むと製造工程の追跡が可能。
染料には、100%天然で無農薬で育った植物が使われ、色落ちを感じたら専用のキットを使って自宅で染め直すこともできる。
身にまとう衣服の質と安全性は健康につながっているという考えにもとづいてつくられるリブラのランジェリーは、「着る漢方」とも表現される。身につける人の心もからだも大切に包み込んでくれて、植物のパワーを感じることができそう。
産地 | インド、タンザニア |
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認証 | ビオリプロジェクトの工程で第三者機関の認証を取得 |
その他の取組 | QRコードで各製品の生地の産地を追跡可能 |
エシカルでサステナブルなファッションを提案するフェアトレード専門ブランド「People Tree(ピープルツリー)」は、レディースやメンズの洋服以外にも、帽子やマフラーなどのファッション小物やアンダーウエア、雑貨など幅広いアイテムを展開している。
小物や雑貨に関しても、ファッションアイテム同様に、人にも環境にも健康的な方法でのものづくりを徹底。毎日の暮らしを楽しみながら、使う人もつくる人もエシカルで幸せでいられるようにという想いが込められている。
産地 | インド、トルコ(ソックス) |
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認証 | GOTS認証、世界フェアトレード連盟(WFTO)マーク ※商品により異なる |
その他の取組 | 全商品がフェアトレード |
オーガニックコットンの生産量は、コットン全体のうち1%にも満たない。しかし、地球に配慮して、つくる人の労働環境も守られているオーガニックコットンの生産を増やそうと、応援する動きもある。
インド産のオーガニックコットンを使った洋服を販売する「リブ ラブ コットン プロジェクト」では、洋服に基金をつけて販売。1枚を購入すると100円が現地に寄付できる仕組みだ。集められた基金は、インドのオーガニックコットン栽培の支援や、女性・子どもたちの支援などに利用されている。
わずか1%しかないオーガニックコットンの生産量を10%まで増やす目標を立てているのが、2005年に始まった「オーガビッツ プロジェクト」。オーガニックコットン100%にこだわらず、「オーガニックコットンを10%使ったものを、100人の人に使ってもらう」ことで、オーガニックコットンの生産量を増やしていこうという考え。
オーガビッツを使用した商品を1枚購入すると、1円が寄付され、インドのオーガニックコットン農家の支援などに役立てられる。賛同するブランドは130を超え、その輪が広がっている。
オーガニックコットンが使われている洋服やアイテムを選ぶことは、人や地球への配慮につながっている。洋服ひとつをつくるのにも、多くの人が関わっていて、地球にも少なからず影響を与えているものだ。
世界には、少ない賃金で劣悪な環境下で働いている人がいて、そのようにつくられた製品が私たちの手元に届いていることもある。そんなことを想像して、人と環境への影響が少ないオーガニックコットンという選択肢を考えてみてはどうだろう。
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