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インキにはさまざまな種類があるが、なかでも「ベジタブルインキ」は従来の石油系のものと比較して環境負荷の少ない印刷インキとして注目されている。この記事ではベジタブルインキの定義やメリット、実際の実用例なども紹介する。
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ベジタブルインキは、亜麻仁油、桐油、ヤシ油、パーム油などの植物由来の油を原料として製造される印刷インキだ。従来の石油系インキと比較して、環境への負荷が大幅に低減されることで近年自社の商品に採用する企業も増えてきた。石油由来の成分を一部植物油に置き換えることで再生可能資源を使用できるため、サステナビリティの観点から注目されている。(※1)
ベジタブルインキの大きな特徴は、植物油を主成分として使用している点だ。そのため、従来の印刷過程で発生する揮発性有機化合物(VOC)の排出を抑えられる。また生分解性が高く、土壌に還元されることで環境への影響を最小限に抑えることも可能だ。さらにベジタブルインキは、化石燃料の使用を減らし資源の節約に貢献するため、持続可能な開発目標(SDGs)にも沿った印刷技術として注目されている。(※1)
ベジタブルインキは、新聞、パンフレット、ポスター、名刺など、さまざまな印刷物に使用されている。用途が幅広いため、企業は環境に配慮した商品のPR活動にベジタブルインキを使用することで企業の社会的責任(CSR)を強調できる。環境にやさしいというイメージが、消費者や取引先に対して評価を高めることにつながっている。(※2)
ベジタブルインキには「植物油インキマーク」という認証制度が存在する。このマークは、印刷インキ工業連合会が定める基準を満たした植物油インキにのみ使用される。具体的には、インキ中の植物油含有量が一定の基準を満たしていること、また人体や環境に有害な物質を含まないことが求められる。このマークを使用することで、企業はその製品が環境にやさしい印刷物であると消費者にアピールできる。(※3)
従来の石油系インキとベジタブルインキの大きな違いは原料にある。石油系インキは化石燃料を主成分としており、化石燃料の枯渇問題や環境負荷が懸念されている。一方のベジタブルインキは植物由来の成分を使用しており、再生可能資源からつくられているため、環境負荷が低く持続可能性に優れている。また石油系インキはVOCを多く排出するが、ベジタブルインキはこれを抑制し、作業環境の改善にも貢献する。(※1)
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近年は環境問題に対する関心が高まり、企業や消費者の間で持続可能な選択肢が求められるようになっている。この流れの中で、ベジタブルインキの使用が注目されるようになった。植物油インキは化石燃料に依存しないため、資源の枯渇を防ぎ、温暖化ガスの排出を削減できる。また生分解性に優れており、環境への影響を低減できるため、企業のCSR活動やSDGsの取り組みの一環として使用されることが増えている。環境に配慮した製品やサービスの需要が高まるなかで、ベジタブルインキは企業のイメージ戦略に役立てられている。
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植物由来のオイルを基にしたベジタブルインキは、従来の石油系インキに比べてさまざまな利点がある。企業や印刷業界が環境保護に配慮し、持続可能な社会を目指すなかで、ベジタブルインキの導入は重要な一歩となる。以下にそのメリットを紹介する。
ベジタブルインキは、植物油由来の成分を使用することで石油系インキに比べて環境への負荷を大幅に軽減できる。石油を使用しないため、化石燃料の消費を減らせて再生可能資源を活用することが可能になる。また生分解性が高く、廃棄後に環境に与える影響も最小限に抑えられるため、地球温暖化や環境汚染の防止に貢献する。(※1)
ベジタブルインキはVOCの排出を大幅に削減するため、印刷作業員や周囲の環境への健康リスクを軽減できる。VOCは人体に悪影響を及ぼす可能性があり、これらを排除することは作業環境を改善し、従業員の健康を守るために重要である。(※4)
ベジタブルインキを使用することは、企業が持続可能な開発目標(SDGs)に貢献する一環となる。SDGsの達成には環境保護が重要な要素であり、植物油インキを使用することはその一助となる。企業が環境保護に取り組む姿勢を示すことで、消費者や取引先からの信頼を得ることができ、企業イメージを向上させられる。(※5)
ベジタブルインキを採用することにより、企業は社会的責任(CSR)活動を強化し、企業イメージの向上を図ることができる。環境意識が高い消費者や取引先からは、環境保護に積極的な企業として認識されるほか、消費者の環境意識を高め、取り組みに共感した優秀な人材が集まりやすくなるだろう。
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ベジタブルインキは環境に配慮した印刷方法として注目されているが、従来の石油由来のインキと比較していくつかのデメリットがある。
従来の石油由来のインキよりも植物油の含有量が高いベジタブルインキは個別で発注するため、通常のインキよりも製造コストが高くなる傾向にある。大量印刷を行うと、ベジタブルインキの種類によってはコスト差が大きくなる可能性もある。(※6)
ベジタブルインキは、乾燥速度が従来のインキよりも遅くなることがある。乾かないうちに印刷物が擦れることで、印刷がずれたり汚れが付着したりするリスクがある。(※6)
ベジタブルインキの種類によっては、原材料を海外から大量に輸入する必要があるため、輸送コストやCO2排出量が課題となる。(※6)
ベジタブルインキは、わずかながら石油系の溶剤が使用されている。この点から、同じ環境に配慮したUVインキの方が環境負荷が少ないとされる。UVインキは、光重合性樹脂、光重合開始剤、着色料、助剤などを主成分としており、原則として有機溶剤が含まれている。(※7)
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ベジタブルインキは、環境への配慮から広く普及している。近年では多くの企業がこのインキを採用し、さまざまな業界で活用されている。以下では、ベジタブルインキの導入事例を紹介する。
東洋インキとサンエー印刷は、米ぬか油を利用した「ライスインキ」を共同開発した。このインキは、従来の大豆油インキの代替として注目されている。国内産の米ぬか油を使用しているため輸送マイレージが短縮され、CO2排出量を削減できる点がメリットだ。(※8)
ベジタブルインキは、環境配慮型のカタログやパンフレットの印刷にも多く使われている。企業のブランディング活動の一環として、製品やサービスを紹介する印刷物にベジタブルインキを使用することで、企業の環境意識をアピールできる。近年重要視されている、企業の社会的責任(CSR)活動を陰ながら支えている。(※9)
コンビニエンスストアでは、パッケージにベジタブルインキを使用した商品の販売が進んでいる。ローソンはオリジナル商品のパッケージに植物油インキを採用し、環境への配慮を示している。消費者の環境意識が高まるなかで、企業の競争力を高める新たなアプローチだ。(※10)
環境にやさしい商品パッケージとして、ベジタブルインキの使用が増えている。株式会社ファインは『イオンドリンク乳酸菌プラス ヨーグルト風味』のパッケージに植物油インキを使用しており、環境配慮型パッケージへとリニューアルした。そのほかにも企業が製品パッケージにベジタブルインキを採用する例は多く、消費者に対して環境意識を高めるメッセージを送っている。(※11)
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ベジタブルインキは環境にやさしい選択肢として、印刷業界に連なるあらゆるビジネスの持続可能性を高めている。企業は環境への配慮をアピールし、エコロジカルな印刷が可能となり、消費者はそういった製品を選ぶことで環境への意識を行動に移せる。また技術の進歩に伴いベジタブルインキの性能が向上し、より多くの印刷用途に対応できるようになってきている。環境負荷を減らすための一歩として、商品に使われているインキについて調べても面白いだろう。
※1 植物油インキの定義・基準・マークの制定|印刷インキ工業会
※2 【環境配慮印刷】ベジタブルオイルインキ(植物油インキ)を使用した印刷製品|エイト印刷株式会社
※3植物油インキマーク|環境省
※4 植物油インキとバイオマスインキの違いや、環境配慮インキを使用するメリットを解説|CCG HONANDO
※5 SDGs・環境対応印刷|株式会社高速オフセット
※6 植物油インキのデメリット|CCG HONANDO
※7 UV印刷油性印刷の違い|株式会社高速オフセット
※8 東洋インキ、サンエー印刷とライスインキ開発|PJ web news
※9 「インク」じゃなくて「インキ」。ベジタブルインキ|小西印刷所
※10 オリジナル商品の包材に生物由来のインキを使用しています|LAWSON
※11 株式会社ファイン、環境配慮への取り組みとして一部商品を植物油インキ使用の環境配慮型パッケージへ変更 今後、『イオンドリンクシリーズ』に適用へ|PR TIMES
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