盛り上がりをみせる規格外野菜ビジネス 続々と登場するサービスや商品と活用のメリットを紹介

野菜サラダのボウル

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近年、規格外野菜をビジネスに利用する企業が誕生している。以前は市場に流通していなかった規格外野菜が、なぜいま注目を集めているのだろうか。この記事では、規格外野菜ビジネスの現状について解説する。

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2024.07.24

規格外野菜とは

さまざまな種類のサラダ

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規格外野菜とは、形や大きさが基準から外れているために、通常の流通経路で販売されない野菜のこと。これまで農産物の規格は、品質の安定化や流通の効率化を目的として農林水産省が定めていたが、2002年に廃止。以降、各産地や出荷団体が自主規格を設けている。

規格外野菜が生まれる理由

たくさんの野菜

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食品ロスの観点からも問題視されている規格外野菜は、次のような理由で発生してしまう。

流通基準の規格を満たしていない

農産物の規格は、品質の安定化や流通の効率化を目的として定められている。規格を設けることで、品質が安定し市場での取り引きがしやすくなる、同一サイズのものが揃い梱包や発送がしやすい、などといったメリットが生まれる。その基準をクリアできない野菜が規格外野菜となる。大きすぎる、小さすぎる、形がいびつ、色が不均一、キズがついているなどの特徴があると規格外野菜として扱われる。

「きれいな野菜」を食べたい消費者の意識

形や色の整った美しい見た目の野菜といびつで傷がある野菜、購入時には味で判断できないため、どうしても前者の方がおいしそうに見え、選んでしまう人も少なくないだろう。また、レストランなどでは客の満足度を高めるために見た目がきれいな野菜を指定して仕入れることも少なくない。日本の消費者の見た目重視の傾向も規格外野菜が生まれる要因のひとつだ。

気候変動などの自然の影響

異常な高温や低温、大雨や干ばつなどの環境ストレスは野菜の発育に大きな影響を与える。色が悪い、大きさが足りない、形がいびつなど、成長が不均一になった野菜は消費者が求める見た目の基準を満たさないため、規格外野菜となってしまう。

政府も推奨する規格外野菜の販売 そのメリット

畑にいる農家

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最近は、規格外野菜を販売する農家や小売店が増えている。規格外野菜を販売するメリットとは何だろうか。

フードロスの削減

FAO(国際連合食糧農業機関:Food and Agriculture Organization of the United Nations)によると、世界では食料生産量の3分の1にあたる約13億トンの食糧が毎年廃棄されている。日本でも、毎年約612万トンが廃棄されている。(※1)フードロスとは、流通・製造・加工の段階で食べられるにも関わらずさまざまな理由で廃棄されてしまう食品のことだ。

世界ではたくさんの食糧が破棄されている一方で、たくさんの人がいまもなお飢餓に苦しんでいる。こうした食糧問題の観点や廃棄時の温室効果ガスの発生などの観点から、世界中でフードロス・食品ロスは問題視されている。こうした状況から農林水産省は「食品ロス削減推進法基本方針」を発表し、そのなかで規格外野菜の有効活用について推奨している。

生産者の収益向上

IT技術の進歩などにより農業の作業効率は大幅に向上しているが、生産者の収益は、農業で長年問題視されてきた。これまで破棄されてきた規格外野菜を販売できるとその分の収入を得られるため、収益面の問題を解決するための糸口となるだろう。

また、規格外野菜は通常の流通を通さず、農家直販でオンラインショップやアプリを通じて扱われることも多い。消費者と直接つながることができ、ファンの獲得や農家の宣伝、PRにもつなげることができる。

廃棄コストの削減

農業を営む上で発生する農業経営費は、2020年には1経営体あたり868.6万円だったのに対し、2022年には1,067.4万円と増加している。(※2)

農作物の廃棄にかかる費用も、農業経営費の一部である。規格外野菜を販売することで、廃棄にかかるコストを削減できる。

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規格外野菜を販売することのデメリット

重機と水牛

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規格外野菜にはいくつかのデメリットがある。まず、市場価格への影響がある。規格外野菜が安価で市場に出回ると、基準をクリアした野菜の価格が下がる可能性がある。

また品質のばらつきがあるため、安定した品質が求められる場面では扱いづらい。さらに形の悪い野菜は箱詰めが効率的にできず、配送コストが増加するため、経済的な負担が大きくなる可能性がある。こういった理由から、通常の流通経路とは別の販売経路が求められる。

規格外野菜を購入できるサービスが誕生

かごに入っている野菜

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通常の流通とは異なる販売経路が求められる規格外野菜。フードロス問題や環境負荷への観点から規格外野菜への理解とニーズは高まっており、規格外野菜を購入できるサービスも誕生している。代表的なものをみていこう。

フリフル

フリフルとは、食品ロスを減らし持続可能な社会を目指すサービスである。2011年に始まったこのサービスは、農産物のネット通販を通じて、規格外や余剰の野菜に新しい価値を提供している。生産者が廃棄せざるを得なかった野菜を集め、消費者に届けることで、農家と消費者の双方に利益をもたらしている。

食べチョク

食べチョクとは、生産者と直接つながる産直通販サイトである。2023年にはユーザー数95万人を突破し、国内通販サイトで4年連続No.1の実績がある。ユーザーは、全国各地の生産者から収穫から最短24時間の新鮮な食材を直接購入できる。食べチョクでは生産者自身が価格を決めており、ユーザーとのメッセージのやりとりも可能である。また市場には出回らない珍しい食材や限定商品が揃い、食べることで生産者を応援できる仕組みが整っている。

ロスヘル

ロスヘルは、規格外の野菜を詰め合わせた通販サービスである。見た目が基準に合わず市場に出回らないが、品質に問題のない野菜を提供している。一般的な食品売り場よりも25%〜30%割安で購入でき、自宅にまとめて配送されるため、買い物の手間が省ける。また、見た目に違いがあるだけで味や品質には問題のない野菜や果物を定期便で受け取れる。

ポケットマルシェ

ポケットマルシェは、全国の農家、漁師と直接やりとりをしながら食材を買うことができるオンラインマルシェ。加工業者は販売できず、出品はすべて農家、漁師からのみ。規格外野菜も多く取り扱っている。

規格外野菜を有効活用した商品も登場

ドライベジタブル

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規格外野菜を販売するサービスだけでなく、規格外野菜を有効活用した商品も各社から登場している。いくつか例を挙げてみていこう。

アップサイクルおやつプロジェクト

アップサイクルおやつプロジェクトは、スナックミーが2022年3月2日から開始した取り組みである。アップサイクルおやつプロジェクトでは、廃棄予定の野菜や果物を全国の生産者から集め、アップサイクルして新しいおやつをつくり出す。形や大きさが規格外で市場に出回らない食材を使用し、品質に問題がないものを価値あるおやつに変えることを目指している。アップサイクルおやつプロジェクトにより、生産者と消費者がつながり、廃棄される食材を有効活用することで、心と暮らしを豊かにする新しいおやつ体験を提供している。

OYAOYA

OYAOYAは、京都の規格外野菜をアップサイクルして乾燥野菜に加工するブランドである。8つの若手農家と連携し、旬の時期に収穫された野菜を乾燥加工することで、日持ちする新鮮な規格外野菜を提供している。乾燥野菜は、じっくりと低温で乾かすことで、旨味や栄養が凝縮され隠れた魅力を引き出す。OYAOYAは、サステナブルな農業と新しいおいしさを提案し、消費者に「はじめての味わい・香り・食感」を提供している。

VEGHEET(ベジート)

VEGHEETは100%植物性で、国際的な安全基準を満たした規格外野菜を原料とする野菜シートだ。食材を包んで焼いたり、巻いて食べたりと、さまざまな使い方が可能だ。通常なら廃棄される規格外野菜をペースト状に加工して使用することで、食品ロス削減に貢献している。また、規格外野菜を適正価格で買い取ることで、農家や地域の雇用支援にも寄与している。

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規格外野菜ロスの削減のためにできること

たくさんの野菜

Photo by Sharon Pittaway on Unsplash

多くの食べられる野菜が破棄されてしまう規格外野菜の問題。私たちは、規格外野菜ロスを削減するために何ができるだろうか。

規格外野菜を購入できるサービスを活用

規格外野菜は、オンラインショップやいまでは一部のスーパーでも取り扱っている。見た目やサイズが規格外でも品質には問題のない野菜たち。規格外野菜を購入できるサービス・小売店を活用することで、農家の支援や廃棄による環境負荷の軽減に貢献できる。

農家直販や無人販売を利用する

農家直販や無人販売を活用することもひとつの方法だ。市場に出回らない規格外野菜を、新鮮かつ安価で手に入れられるだけでなく、地域農業の活性化にも貢献できるだろう。

生活協同組合などで不揃い品を選択する

生活協同組合では、見た目やサイズが不揃いの野菜を取り扱っている。通常の商品よりもやや割安に値段設定されていることも多いため、積極的に選択してみてはいかがだろう。

規格外野菜を活用した商品を購入する

食品ロスや規格外野菜ロスの問題が注目されるようになり、そういった食材を有効活用した商品が各社から登場している。企業の理念や商品開発の思いに共感し、購入してみるのもいいだろう。

規格外野菜を有効活用し食糧不足を解消する

ハンバーガー

Photo by rivage on Unsplash

世界では、59の国と地域で約2億8200万人が深刻な飢餓に陥っている。(※3)一方、先進国では大量の食糧が日々破棄されている。このいびつな状況を問題と捉え、改善しようという動きが世界で起きている。

日本においても近年は規格外野菜の廃棄が問題視され、SDGsの観点からも廃棄量を減らす取り組みが注目されている。そういった背景から、規格外野菜のビジネスも活性化し、さまざまなサービスや商品が登場している。そういったサービスや商品を活用してみてはいかがだろう。

※掲載している情報は、2024年7月24日時点のものです。

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