世界で進行する砂漠化と国際社会の対応

砂漠と枯れた木

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現在、世界の各地域で進む砂漠化が深刻化しており、生態系や人々の生活に大きな影響を与えている。この記事では、国際的な定義を踏まえて砂漠化とはどのような現象かを解説し、とくに影響が深刻な地域を紹介する。また、日本をはじめとした国際社会の対応策についても触れている。

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2024.10.30
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砂漠化とは

白い砂漠

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砂漠化は、砂漠化対処条約において「乾燥地域、半乾燥地域、乾燥半湿潤地域における気候変動や人間活動による土地の劣化」と定義されている。つまりこれらの地域で土地が劣化し、人々の生活や植生が困難になり、生態系に影響を与える現象を指している。砂漠化は地球全体で見られる問題だが、とくに資源を生態系に依存している発展途上国、なかでも乾燥地域で深刻になりやすい。(※1)

世界の砂漠化の現状

アフリカの人々

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現在世界の砂漠化は深刻な状況にあるが、その正確な範囲や規模を定量化するのは困難である。砂漠化の原因や進行の複雑さや多様性により、地域ごとに異なる要因があるため、国際機関が統一した砂漠化地図を提供することは難しい。実際に国連やIPBES(生物多様性および生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム)の報告書では、砂漠化の範囲や進行度を正確に示す地図が作成されていない。(※2)

上記を踏まえて例をあげる。2022年5月にコートジボワールのアビジャンで開催された砂漠化対処条約第15回締約国会議(COP15)では、砂漠化の現状について警告が発せられた。コートジボワールのアラサン・ワタラ大統領は、世界の農地の52%が土壌劣化の影響を受けていることを指摘し、26億人以上の生活が砂漠化と干ばつによって脅かされていると述べた。毎年1200万ヘクタール(東京ドーム約25万6000個分)の土地が砂漠化によって失われており、これは毎分23ヘクタールが消失している計算となる。(※3)

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世界の砂漠化が深刻な国・地域

砂丘

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以下に、とくに砂漠化が深刻な地域について解説する。

アフリカのサヘル地域

アフリカのサハラ砂漠の南縁に位置するサヘル地域は、乾燥と降水量の減少によって砂漠化が進んでいる。農業が主な生計手段であるため、土地の劣化が住民に直接的な影響を与えている。食料不足や水不足が深刻化し、多くの住民が移住を余儀なくされている。(※4)

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中央アジアのアラル海

かつて世界で4番目に大きな湖であったアラル海は、過度の灌漑により10分の1まで干上がってしまった。また水がなくなることで周辺の土地が乾燥し、塩分が風で飛ばされ、広範囲にわたって砂漠化が進行している。この地域の砂漠化は、地元の農業や漁業に壊滅的な影響を与えている。(※5)

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モンゴルのゴビ砂漠

ゴビ砂漠はモンゴルと中国にまたがる広大な砂漠で、気候変動と過放牧によりさらに砂漠化が進んでいる。生態系のバランスが崩れるとともに、遊牧民の生活が厳しくなり経済的な困窮も招いている。(※6)

モロッコの乾燥地域

モロッコでは、気候変動による乾燥化と1970年代に進められたオリーブ栽培など農地の過利用が砂漠化を促進している。現在、農村部の住民は水不足に悩まされ、都市部への移住が進んでいる。(※7)

インドのタール砂漠

インドは国土の3分の1が砂漠気候に属しており、なかでもタール砂漠はインド北西部からパキスタン東部にかけて広がる乾燥地帯で、インド国内でもっとも広大な面積となっている。人口増加による森林の伐採、過放牧、気候変動によって砂漠化が深刻となり、生活に大きな影響を与えている。(※8)

中国の黄土高原

中国の黄土高原では、土地の劣化が深刻化している。黄土高原の広さはフランスに相当し、その約3分の2が土壌浸食の影響を受けている。1950年代以降、黄河流域では大量の堆積物が川に流れ込んでおり、年間最大で3ギガトンの堆積物が観測されたこともある。この堆積物は川の流れを妨げ、黄河の水質悪化や流量減少の要因となっている(※9)

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砂漠化がもたらす深刻な影響

水の引いた川

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砂漠化は、世界中で深刻な影響をもたらしている。その影響は、動植物の生息地や生物多様性の減少から食料生産や水資源の枯渇、さらには気候変動にまでおよぶ。それぞれ詳しく解説する。

動植物生息地や多様性の減少

砂漠化が進行することで、動植物の生息地が大幅に失われる。乾燥地ではとくに生態系の脆弱性が高く、土地が劣化することで植物が枯死し、それに依存する動物も減少する。結果として生物多様性が著しく損なわれ、生態系全体が崩壊する可能性が高まっている。

農産物や食料の不足

砂漠化によって農地の生産力が低下するため、食料不足が深刻化する。とくにアフリカやアジアの乾燥地帯では、農地が持続可能な形で利用されていないため、土地の劣化が急速に進行し食料の供給が不安定になっている。IPCCの報告によれば、砂漠化によって世界的に小麦、トウモロコシ、米などの主要作物の生産が毎年566億ドルの損失を被っているとされている。(※10)

水資源の枯渇

砂漠化が進行すると土地の保水力が低下し、雨水が地中に浸透せず、表面を流れるだけで終わる。地下水の補給が不十分になり、現地の人々の生活を支える井戸や川の水量が減少する。なかでも農業用水として利用される水資源の枯渇は、地域社会の生活に大きな影響を与えるだろう。また気候変動と相まって、干ばつが頻繁に起こることも予想されており、そうなると水の確保は一層困難になる。

気候変動への影響

砂漠化は気候変動とも密接に関連している。砂漠化によって植物が失われると、土地の炭素吸収能力が減少し、大気中に二酸化炭素が蓄積される。現在世界各地で起こっている気候変動が一層促進されることが予想され、さらに砂漠化が進行するという悪循環が発生する。

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砂漠化の要因

伐採された木

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砂漠化は、気候変動や人間の活動といった複数の要因が複雑に絡み合って進行している。これらの要因は大きく「自然的要因」と「人為的要因」に分類され、両者が相互に作用して土地の劣化を引き起こす。(※10)

人為的要因

人間の活動は、砂漠化の原因のひとつである。過放牧、過耕作、森林伐採などが乾燥地の土地を劣化させる主な要因だ。過放牧は、家畜が草木を過度に食べ尽くし、土地が回復する前に再び利用されることで土地が荒廃すること。過耕作は土壌の栄養を過度に使い果たし、農作物の収穫が減少し、土地が痩せる原因となる。また森林伐採によって土地が裸地となり、風や水による浸食が進行し、不毛の地へと変わっていく。

気候的要因

自然的要因としては、気候変動や干ばつ、乾燥化が砂漠化を促進する。現在、地球規模での気温上昇が影響しており、乾燥地域では降水量の減少や極端な気候変動が起こりやすくなっている。これらの気候的要因が、土地の劣化をさらに加速させる。

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国際社会と日本の取り組み

多くの国旗

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砂漠化問題に対処するため、国際社会と日本は多くの取り組みを行っている。これらの取り組みは、砂漠化防止や持続可能な土地管理の実現を目指している。

砂漠化対処条約(UNCCD)

砂漠化対処条約(UNCCD)は1994年に国連で採択され、砂漠化と干ばつに対処するための国際的な枠組みとして設立された。この条約の目的は、砂漠化の進行を抑えるための国際的な協力を促進し、土地の保全と再生を推進することである。とくに砂漠化が深刻なアフリカ諸国を中心に、持続可能な土地管理が行われるよう支援している。(※11)

日本政府の取り組み

日本政府は、砂漠化対策として国際機関への資金拠出、二国間援助など幅広い支援を行っている。具体的には、砂漠化対処条約事務局や国連の環境条約機関に資金提供し、植林や水資源保護に関する技術支援を実施。またモンゴルやアフリカ諸国で、持続可能な土地管理技術の移転やプロジェクト支援を行っている。(※12)

国際協力機構(JICA)

国際協力機構(JICA)は、砂漠化対策として途上国での技術支援やさまざまなプロジェクトの実施を行っている。たとえばモンゴルやアフリカ諸国での植林活動や、水資源管理の改善などがその一環である。さらに現地でのリーダー研修や植林プロジェクトを進めることで、地域社会の安定化に貢献している。(※13)

NGOによる取り組み

日本のNGOも砂漠化対策に取り組んでおり、ブルキナファソでは小学校の緑化や村落植林を支援している。現地住民と協力し、直射日光を遮るための木々を植え、植林技術の提供と苗木の供給を行うことで生活環境を改善。また中国のホルチン砂漠では、防風・防砂のための緑化活動を展開し、植生回復を進めている。こうした取り組みは、環境保護だけでなく地域住民の収入向上にも貢献し、持続可能な土地利用を目指している。(※14)

砂漠化に対して私たちができること

豊かな森

Photo by Arnaud Mesureur on Unsplash

砂漠化は国際的な課題であるが、私たち個人も小さな取り組みを通じて貢献できる。

世界の砂漠化地域について知る

砂漠化が進行している地域やその影響について、理解を深めることが大切だ。正しい情報を得ることで、砂漠化の深刻さを知り対策の必要性を意識できるようになる。

環境にやさしい暮らしをする

気候的要因による砂漠化を少しでも抑えるために、気候変動への影響に配慮した暮らしを選択をすることも大切だ。省エネを心がけ、環境に配慮した商品を選び、ごみを減らす、食品ロスを削減するなどの小さな行動が積み重なれば大きな効果を生む。また公共交通機関の利用、節電・節水を意識することで、環境への負荷を軽減できる。

団体や活動に寄付する

砂漠化対策に取り組む団体やNGOに寄付することも、砂漠化防止のための重要な支援となる。資金的な援助を通じて、現地での植林活動や持続可能な農業の支援が進められる。このように、砂漠化に対してできる取り組みは多岐にわたる。私たち一人ひとりの行動が、未来の環境を守る力となる。

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貧困地域を拡大させる砂漠化

サボテンの生えた乾燥地帯

Photo by Christoph von Gellhorn on Unsplash

気候変動や人間活動による土地の劣化が進行し、農業生産や生態系に深刻な影響を及ぼしている。なかでもアフリカやアジアの乾燥地域では、砂漠化が住民の生活に大きな影響を与えており、食料不足や貧困を加速させている。国際社会や日本は、植林活動や技術支援を通じて砂漠化対策に取り組んでいるが、持続可能な解決には地域住民やNGOの協力が欠かせない。今後も、気候変動と砂漠化の悪循環を防ぐための行動が求められる。

※掲載している情報は、2024年10月30日時点のものです。

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