Photo by 卓倩 李 on Unsplash
コンビニは私たちの生活には欠かせない便利な存在だが、その役割とコンビニが持つ独自の課題によって多くの食品が日々廃棄されている。この記事ではコンビニが抱える食品ロス問題について、その原因と現在進められている各社の対応方法を紹介する。また、私たちにできることについても解説する。
ELEMINIST Editor
エレミニスト編集部
日本をはじめ、世界中から厳選された最新のサステナブルな情報をエレミニスト独自の目線からお届けします。エシカル&ミニマルな暮らしと消費、サステナブルな生き方をガイドします。
知識をもって体験することで地球を変える|ELEMINIST Followersのビーチクリーンレポート
Photo by Arturrro on Unsplash
食品ロスとは、本来食べられる食品が無駄に捨てられる現象のことだ。食材がまだ食べられる状態にもかかわらず、さまざまな理由で廃棄されている。
日本では令和4年度に年間472万トンの食品ロスが発生したと推計されており、日本人一人当たりで換算すると約38kgに相当する。食品ロスは家庭と企業でそれぞれ算出されており、事業系食品ロスは236万トン、家庭系食品ロスは236万トンと、ほぼ同じ割合となっている。(※1)
前年の523万トンと比較して全体の食品ロス量は減少しているが(※2)、食品ロス削減のためには、家庭での対策だけでなく企業の努力も求められている。
食品ロスは、資源の浪費や環境への悪影響を引き起こす直接的な要因だ。食品を廃棄することで、製造過程で使用されたエネルギーや水、原材料が無駄に使われたことになる。また廃棄物の処理には別途輸送や処理費用が必要で、より環境負荷を高める原因となる。
Photo by Thought Catalog on Unsplash
全体の半数を占める事業系食品ロスだが、コンビニ業界における食品ロスはとくに顕著な問題となっている。コンビニは、消費者のニーズに応じて幅広い商品を提供する一方で、賞味期限の短い商品も多く廃棄処分のリスクが高い。ここでは、コンビニでの食品ロスの現状を詳しく見ていこう。
日本は少子高齢化の影響で人口が減少しているにもかかわらず、コンビニに関しては店舗数が増加している。2010年から2019年にかけて行われた調査では、コンビニを運営する企業は減ったものの、店舗の数自体は約1.3倍に増加している。(※3)しかし店舗数の増加に伴い、一店舗あたりの利用者数は減っており無駄が指摘されている。
コンビニを含む食品小売業全体における食品ロス量は、事業系食品ロスの一部として計上されている。農林水産省によると、2022年の食品ロス推計値は年間472万トンで、そのうち49万トンはコンビニを含む食品小売業から発生している。(※4)
「コンビニ会計」とは、コンビニにおける廃棄商品の処理方法に関連する問題だ。廃棄した商品の仕入れ値を原価に含めない仕組みがあり、廃棄分の負担はすべて店舗を運営するフランチャイジー側にかかる(※5)。
この仕組みは、廃棄分の費用を全額負担するフランチャイジーと、フランチャイザーである本部の利益のバランスが取れていない。つまり、本部側は現場で起こる食品ロスを無視した運営が可能なのだ。廃棄の増加が本部の利益に影響しないため、膨大な食品ロスを生み出す要因となった。現在では、社会的に批判が高まったことにより、廃棄した商品の原価の一部を負担する本部が多くなっている。(※5)
コンビニが抱える問題はほかにもある。現場で働く従業員からは、クリスマス商戦期における「シフト強要」や「買い取り強要」に対する不満の声が多く上がっている。慢性的な人手不足のなか、アルバイトへのシフト押し付けが問題視されている。
さらに店舗オーナーは本部から大量のクリスマスケーキなどを仕入れるよう実質的に強要され、それに伴い従業員には販売ノルマが課されることがあるという。売れ残りは自腹購入となったり、廃棄され食品ロスが生まれたりする。こうした強要は、日本人従業員のみならず外国人労働者にも及んでおり、宗教的理由で食べられない商品も購入させられているという報告もあるそうだ。(※6)
Photo by Jay Wennington on Unsplash
コンビニで食品ロスが発生する原因には、いくつかの要素が関係している。以下に、その主な原因を説明する。
3分の1ルールとは、食品の製造日から賞味期限までの期間を3等分し、メーカー、小売店、消費者それぞれがその期間を均等に分け合うという考え方に基づく商慣習だ。(※7)
食品流通業界において、食品メーカーや卸売業者と小売店の間で決められており、鮮度のいい食品を届けられる一方で食品廃棄の要因とも考えられている。流通過程において賞味期限の3分の1が過ぎると、まだ食べられる食品も廃棄されてしまうのである。
こういった商慣習に対しては見直しが進められており、農林水産省の呼びかけにより取り組む食品事業者も増えてきている。(※7)
コンビニでは、顧客の目を引くために商品を大量に陳列する手法をとっている。必要以上の商品をストックすることになるため、結果として廃棄処分を引き起こすことがある。とくに先に触れたクリスマスなどのイベント時期には、本部からの仕入れの依頼もあり食品ロスが増える傾向にある。
スーパーでは、商品が陳列されて一定の時間が経過するとディスカウントシールが貼られ、顧客への購入を促す。しかしコンビニにおいては見切り商品のディスカウントは制限されており、結果的に食品ロスが増加している。またオーナー側の負担も大きくなっていたことから、フランチャイジーが集団でフランチャイザーを告訴する事態にも発展した。(※8)
こういった問題を受け、コンビニ大手各社も対応を始めつつある。(※9)ここでは、各コンビニチェーンが現在取り組んでいる食品ロス削減に向けた取り組みを紹介する。
セブン-イレブンでは、AIを活用した発注システムの導入で食品ロス削減を目指している。2023年3月より全国の加盟店の発注業務がAIにより支援されており、販売実績や天候、気温などのデータをもとに適切な発注量が自動的に提案される。このシステムの導入により、発注時間は従来より約4割削減され欠品率も改善された。さらに加工食品や雑貨の売上高が、前年同月比で3%増加したことが確認されている。
そのほかにも、消費期限が迫った商品にはポイント付与のキャンペーンを実施し、消費者にとってもメリットのある仕組みを構築している。
ファミリーマートでは、食品ロス削減に向けたリサイクル活動を行っている。店舗から発生する廃棄物を飼料や肥料として再利用し、消費サイクルを構築している。食品廃棄物から育てられた豚を商品に利用し、再度食品ロスが発生したらまた別の用途に使用される仕組みはそのひとつだ。
また規格外の商品を活用したオリジナルブランド商品の開発も行い、消費期限の延長を行っている。季節商品であるクリスマスケーキや恵方巻きは、予約を受けただけ生産する販売方法をとっており、事前に需要を把握することで無駄な廃棄を防いでいる。
ローソンでは、「発生抑制(リデュース)」「再利用(リユース)」「再生利用(リサイクル)」を柱とした食品ロス削減の取り組みを推進している。発注段階ではセミオート発注システムを活用し、天気や売上データをもとにAIによって自動的に最適な発注量が提案され、売上向上とリデュースの両立を実現。
またいち早く値引きシールを導入し、消費者にエコな選択肢を提案している。さらに食べられる食品はフードバンク団体に寄贈し、廃棄される食品は飼料をはじめとしたさまざまな用途で再利用が行われている。
ミニストップは、創業以来ホットスナックの調理で使用する油のリサイクルを積極的に行っている。また販売期限切れの食品を飼料として再利用する仕組みを導入し、一部地域では堆肥化やバイオガス化も進めている。
さらに店舗の改装や閉店時には備品をリペアして再利用し、無駄を徹底的に排除している。環境への配慮としてレジ袋や割り箸の提供量を減らすためのキャンペーンも実施しており、エコ意識の高い取り組みを続けている。
Photo by Atoms on Unsplash
事業で発生する量と同じくらいの食品ロスが、家庭からも排出されている。私たちにとっても、食品ロスの問題は決して他人事ではない。ここでは、私たちがコンビニを訪れた際に実践できる食品ロスの削減方法を紹介する。
商品を購入するときは「てまえどり」を実践したい。棚の奥にある商品は消費期限が長いものが多いが、手前の商品を選ぶことで期限切れによる廃棄を減らせる。小さな行動だが、全体のロス削減に貢献できる。
消費期限と賞味期限を正しく理解することも、食品ロスを減らすポイントだ。消費期限は「安全に食べられる期限」、賞味期限は「おいしく食べられる期限」を指す。多くの商品は賞味期限を過ぎても問題なく食べられることが多いため、期限を気にしすぎずに判断することが大切だ。
コンビニでも消費期限が近い商品に、値引きシールを貼るようになってきた。これらの商品を積極的に購入することが、廃棄を防ぎ財布にもやさしい選択になる。
多くの商品が並ぶコンビニでは、つい余計なものを買ってしまいがちだ。しかし無駄な廃棄を防ぐためには、計画的な購入を行うようにしたい。必要な分だけを買うように心がけ、食べきれない量を購入しないようにすることで、家庭での食品ロスを削減できる。
最近では、余った食品を他の人とシェアする「フードシェアリングサービス」も普及している。こうしたサービスを利用することで、家庭で使い切れない食品を無駄にせず他の人と共有できる。
コンビニエンスストア業界では、商品供給の豊富さが消費者の利便性を支えている一方で、売れ残りや賞味期限切れによる廃棄が課題となっている。SDGsの目標12「つくる責任、つかう責任」に深く関連することもあり、近年コンビニ各社は廃棄削減の取り組みを強化し、デジタル技術の導入や割引販売などを通じて食品ロス削減を目指すようになった。持続可能な社会を目指す中で、消費者と企業が協力して食品ロス対策を進めることが求められている。
※1 食品ロスとは|農林水産省
※2 最新の食品ロス量は523万トン、事業系では279万トンに|農林水産省
※3コンビニエンスストア本部と加盟店との取引等に関する実態調査報告書(概要)
|公正取引委員会
※4 事業系食品ロス(可食部)の業種別内訳|環境省
※5 弁当の廃棄ロスを招く、コンビニ会計のからくり|東洋経済オンライン
※6 「犯罪のような罪悪感」 クリスマス商戦の「フードロス」でアルバイトが精神的苦痛|Yahooニュース
※7 納品期限の緩和を進める事業者が大幅に増加!|農林水産省
※8 行政事件裁判例集|裁判所
※9 「新たなコンビニのあり方検討会」フォローアップを行いました|経済産業省
ELEMINIST Recommends