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「食品ロス」とは、本来食べられるにもかかわらず捨てられている食品のこと。生産・製造時の過剰供給や小売店での売れ残り、外食産業での「フードロス」が問題視されることが多いが、実は「食品ロス」の約半分は家庭から出ている。その原因と、私たちが家庭でできる「食品ロス」削減方法をみていこう。
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「食品ロス」とは、本来食べられるのに捨てられてしまう食品のこと。(※1)
「食品ロス」と似た言葉に、「フードロス」や「フードウェイスト」があるが、「フードロス」は製造や加工の段階で出るロスを、「フードウェイスト」はスーパーやコンビニなどの小売、一般家庭で出るロスを指す。「食品ロス」とはその総称だ。
では、食品の生産から消費までの一連の流れで発生する「食品ロス」が問題視されている理由は何か。
1つ目は、環境への影響だ。食品ロスはごみとして焼却処分され、その際に二酸化炭素が排出される。これは地球温暖化の要因と言われている。焼却処分するものの量が増えれば、排出される二酸化炭素の量も増えて、ますます温暖化が加速してしまう。
2つ目は、食糧問題だ。いま世界で生産されている食品は、全世界の人々をまかなうのに十分な量と言われている。それにも関わらず、先進国では食品ロスが多く、開発途上国では飢餓が問題となる「食の不均衡」が生まれている。
日本の食品ロス量は、食料支援機関である国連WFPが2021年に実施した食料支援量の約1.2倍にもなる。つまり、貧困や災害時の緊急支援など、世界の人々に対して支援される食品の量より、日本で廃棄されてしまう食品の量の方が多いのだ。(※2)
日本の食料自給率は諸外国に比べて低く、輸入に頼る部分が多いにもかかわらず、たくさんの食べ物を廃棄している現状は、正しいとは言い難い。この状況を変えていく必要があるだろう。
3つ目は、経済的・心理的ダメージだ。食品を捨てることは家庭の経済状況に悪影響を及ぼし、生産者に対する罪悪感など心理的なダメージもある。また、日本では子どもの貧困が増加しており、食品ロスが生まれる一方で貧困に苦しむ人々がいることが、社会問題になっている。
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令和3年度の日本国内での食品ロス発生量は、約523万トンと推計されている。このうち、家庭系からは約244万トン、残りは食品製造業、飲食店、小売店などの事業系から約279万トンもの食品ロスが発生しているとされる(※3)。
家庭から出る食品ロスが全体の約50%以上を占めている。食べ残しや食べないうちに痛んでしまった手つかずの食品(直接廃棄)、皮の剥きすぎなど(過剰除去)が主な発生要因で、これは日本人1人あたり年間約42キロに相当し、毎日約114グラム、おにぎり1個分のご飯を捨てている計算になる(※4)。
食品ロスが増加している背景には、消費者の購買行動や食品の賞味期限、見た目に対する厳しい基準などがある。さらに、家庭では、食べきれない量を購入したり、賞味期限が切れた食品を捨てたりすることが多く、これが大量の食品ロスを生んでいる。
食品ロスの削減は、資源循環と炭素中立型の経済社会を形成する上で重要な課題とされており、関係省庁や自治体、事業者等と連携して、さらなる食品ロス削減のための取り組みが進められている。
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家庭で捨てられやすい食品としては、主食のご飯、パン、麺類に続き、野菜が多い。
たとえば、消費期限が短い食パンや購入後にすぐに使わないと傷みやすく、捨てられることが多いレタスやもやし。まとめ買いするとお得だが、使い切れずに捨てられがちな胡瓜。
さまざまな種類を冷蔵庫に常備すると、賞味期限内に使い切れないことがあるドレッシング、大容量を購入すると飲み切れずに捨てることがある牛乳も、ワースト上位に挙がっている。
食品ロスを減らすためには、食材を無駄にしない工夫や、食べきれる量を調整することなど、計画的な買い物や消費、適切な保存方法が重要だ。
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食品ロスを削減するための行動を、シーン別に紹介しよう。これらを実践することで、食品ロスを減らし、環境保護にも貢献できる。また、食品ロス削減は家計の節約にもつながり、一石二鳥の効果が期待できるはずだ。(※4)
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冷蔵庫や食品庫をチェックして、まずは必要なものだけをリストアップしよう。売場にたどり着いたら、メモに沿って、無駄な買い物を避けることができる。スマートフォンで冷蔵庫や食品庫の写真を撮ってから買いものに行くのも、手軽な方法としておすすめだ。
「まとめ売り」や「お徳用」は魅力的だが、本当に必要か、使いきれるかどうかを考えて購入しよう。
大家族や、大量の食材が必要なパーティーなどでは、食材の見た目やブランドよりも、コストパフォーマンスがポイントになるだろう。売れづらく廃棄されることの多い規格外食材を選ぶことで、売るほうも買うほうもメリットが生まれる。
スーパーマーケットの食品棚は、手前から奥にかけて期限が長いものが置かれている。すぐに食べるなら、手前から購入することを意識したい。
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外食のスケジュールや体調など配慮し、食べきれる量をつくること。
大根の皮や人参の葉のように、棄てられることがあたりまえになっている部位もうまく利用したい。上手に調理すれば、節約にもつながる。野菜や果物の皮は漬物に、昆布やしいたけは佃煮にリメイク。
一週間に一度など日を決めて、家にあるものだけで料理をする"在庫一掃DAY "を設けるのもおすすめ。冷蔵庫や野菜室、冷凍庫がすっきりし、いま家に何があって何がないのかが把握できる。そのあとの買い物では必要なものだけを買うことができ、無駄や余分が減る。在庫一掃の日は、余っている食材で何が料理できるかチャレンジしてみよう。
野菜の皮や根元、茎の部分などの過剰除去も家庭からの食品ロスの発生要因だ。にんじん、かぼちゃは皮まで食べられるし、ピーマンの種もそのまま調理して問題ない。ほうれんそうの根元の赤い部分もきれいに洗えば食べられるし、店で売っているニラの茎部分は切り落とさずに、そのまま全部食べられる。きのこは石づき、おがくずがついている部分さえとりのぞけば問題ない。(※5)
冷蔵庫の温度設定を適切にし、食品ごとに保存場所を分けると、食品の寿命を保ち、長持ちさせることができる。
冷蔵庫内の整理整頓を心がけ、消費期限が近いものを目立つ場所に置こう。パントリーの整理も、同じ要領でわかりやすく賞味期限を管理するといい。
食材を冷凍ストックしておけば、わざわざ買い物に出かけなくても済む。必要な時に、必要な分だけ利用できるよう、小分けにしたり、一食分ずつ冷凍するのもオススメだ。食材別の正しい冷凍方法や解凍方法を知ることで、食品の劣化も防げる。
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食材を一度に使い切れない場合は、翌日の献立に活かそう。食材が同じでも味付けを変えたり、調理方法を変えるだけで、また別の料理に生まれ変わる。それでも使いきれないときは冷凍保存して、つくりすぎを防止しよう。
つくりすぎは、よくあることだが、悩まなくてもいい。たとえば、鶏のから揚げが余ったら、タレをアレンジして別の味にして飽きずに食べる工夫をしたり、みそ汁に入れて、いつもとは違う食べ方を楽しもう。
カツオや昆布の「だしがら」は、ふりかけや、副菜をつくるのに再利用できる。節約にもつながる。
買いすぎて食べきれない場合や、贈答品が余ってしまったら、寄付やおすそわけを検討しよう。フードドライブを行っているかについては、自治体のホームページで確認できる。
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本来、まだ食べられるのにもかかわらず、捨てられてしまう「食品ロス」。環境への負荷が世界的に問題視されており、SDGs(持続可能な開発目標)においても、目標12「つくる責任・つかう責任」のターゲットの1つに「2030 年までに、小売・消費者レベルにおける世界全体の一人あたり食品廃棄を半分にし、収穫後の損失を含めて生産・サプライチェーンにおける食品ロスを減らす」が盛り込まれている。
政府や企業、NPOなどが食品ロス削減に向けた取り組みを進めているが、一人ひとりが食品ロス削減の意識を持って取り組んでいくことが大切だ。不必要なものを買わない、食品を適切に保存する、賞味期限を過ぎた食品でも食べられるかどうか個別に判断するなど、暮らしを見つめなおすことから始めよう。
※1 食品ロスとは|農林水産省
※2 特集「食品ロスって何が問題なの?」|農林水産省
※3 最新の食品ロス量は523万トン、事業系では279万トンに
※4 今日からできる!家庭でできる食品ロス削減 | 政府広報オンライン
※5 食品ロス削減啓発用冊子「計ってみよう!家庭での食品ロス」|消費者庁
参考
・家庭での食品ロスを減らそう|[消費者庁]めざせ!食品ロス・ゼロ
・消費者向け情報 | 環境省
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