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フードシェア(フードシェアリング)の必要性が高まっている。フードシェアリングを実施することで、食品ロスや飢餓の問題を解決することにつながる。この記事ではフードシェアのメリットとデメリットを解説し、世界や日本で行われているフードシェアサービスの事例について紹介する。
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フードシェアリングは、余剰の食品を利用して、食糧不安や栄養不足に苦しむ人々に支援を提供する活動だ。一般企業や非営利団体が運営を行うフードシェアリングサービスを通して進められている。
食品の収集から分配・提供までの流れを通して、食品を本当に必要とする人々に届けられており、オンラインプラットフォームやアプリケーションを活用した取り組みも展開されている。
新たに食品を生産するのではなく、余剰食品を活用して行われることから、飢餓を解決するのみならず、あらゆる場面で起こるフードロスを減らすことも目的とする取り組みだ。
さらにフードシェアリングを通して地域コミュニティの結束も促進されており、地域での持続可能な食品システムの構築が行われている。
フードシェアリングに取り組むことは、私たちが抱えるさまざまな問題を解決することにつながる。ここでは、フードシェアリングによってもたらされるメリットについて解説していく。
フードシェアリングは食品衛生上問題のない廃棄食品や、食品関連事業からの寄付などを利用して運営されている。つまり、本来捨てられるはずであった食品を使用しているのだ。現在、日本においては年間523万トンもの食品が廃棄されているといわれており、これらの削減がフードシェアリングによって可能だ。(※1)
食品が生産されて消費・廃棄されるまでのサイクルでは、大量のエネルギーを消費する。フードシェアリングによって食品ロスを削減することで、食品生産に関連する資源の無駄遣いや環境負荷を減少させられる。また廃棄物処理の削減や再利用によって、廃棄物が地域の環境に与える影響負担を軽減し、持続可能な社会を目指すことにつながる。
食品廃棄物の処理には、多額のコストがかかっている。しかしフードシェアリングによって余剰食品が再利用されることで、廃棄コストの削減につながる。廃棄コストは私たちの税金でまかなわれている。食品が再利用され必要な人々に提供されることが、結果として私たちの経済的負担を軽減することにつながる。
フードシェアリングによって、地域コミュニティの結束を活性化させる仕組みがつくられている。地域の飲食店や生産者などの食品資源を有効に活用し、地域住民や企業、団体が協力して食料を供給することで、地域のつながりが生まれている。それにより、地域の活性化につながっていくと考えられる。
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フードシェアリングは、食品ロスを削減し持続可能な社会を目指すための試みの一つだ。しかし現時点ではいくつかの課題があり、解決が求められている。
フードシェアリングでは、再利用される食品の衛生面が課題となっている。賞味期限の問題や回収前の保管状況による食品の劣化など、必要とする人々に届く前に食用に耐えない品質になる可能性がある。食品の適切な保管や調理が行われていない場合、食中毒や健康リスクの増加などの問題が生じることが懸念されている。
フードシェアリングでは、食品の適切な流通や保管が課題となる。食品の品質や賞味期限を保つための適切な保管条件が確保されていなければ、食品の劣化や腐敗が進み、利用が困難になる。また食品の回収から再分配までの適切な流通ルートの確立が行われていなければ、消費者に届く前に食品が劣化してしまう。どのように商品を集め、保管し分配するかは、フードシェアリングサービスを展開する際の大きな課題だ。
本来私たちを守る役目を持っている食品衛生法や食品表示法などの法規制が、フードシェアリングの普及を阻む可能性がある。日本の食品の安全性や衛生基準に関する法規制は厳しく、これらに適合するためのコストや手続きが事業者にとって負担となる場合がある。
ただし農林水産省は事業系食品ロスの削減に関して、2000年度比で2030年度までに半減させる目標を設定しており、フードシェアリングの活動に対する法的な支援や見直しが進んでいる。(※2)
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海外における、フードシェアリングの事例を3つ紹介する。
フードレスキューUSは、食品の再利用、環境保護、コミュニティの形成という3つの活動を通じて、食品シェアリングサービスを提供している。インターネットやアプリを活用し、ボランティアが地元の事業者からの余剰食品を回収し、食料不安を抱えている人々に届けるためのネットワークを構築している。また食品廃棄物の削減を通じて環境への貢献を行い、地域社会を支援することでコミュニティの形成を目指している。
フリーゴージュネーブは、ジュネーブの家庭における食品ロス問題に取り組むフードシェアリングサービスだ。フリーゴーのプロジェクトでは、食品ロスの削減を通じて環境責任を果たし、地域社会の結束を促進することを目的としている。さらには経済的効率性も追求し、世帯の財政的な負担も目指す。多くの非営利団体や企業と協力したり、個人が余った食材を持ち込める冷蔵庫を設置したりといった活動を行っている。
オリオは、地域のコミュニティを活かしてフードシェアリングサービスを展開している。各家庭で不要になったものをアプリを通して地域の人々で共有するサービスを提供しており、その中のひとつとしてフードシェアリングにも取り組んでいる。利用者はオリオのアプリを開いて写真を掲載し、受け渡し場所を指定するだけで不要なものを手放せ、必要としている人に直接届けることができる。
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ここからは、日本で広がっているフードシェアリングサービスの事例を3つ紹介していく。
TABETEは、食品ロス削減に貢献する日本のフードシェアリングサービスだ。飲食店で提供されていて、まだ食べられるのにもかかわらず売り切るのが難しい食事を手頃な価格で提供し、ユーザーが購入することでフードロスの解消につなげている。またTABETEは地域の飲食店と地方自治体を結びつけることで事業を展開しており、地域の発展にも貢献している。
ロスゼロは、さまざまな取り組みを通じてフードシェアリングに取り組んでいる日本のサービスだ。不定期で食品が届くサブスクリプション「ロスゼロ不定期便」、規格外の野菜や果物を別の商品に加工する「アップサイクル」など幅広い事業に取り組んでいる。さらには一部の食品を子ども食堂に寄付しており、社会的に価値の高い活動に幅広く取り組んでいる。
ショッピングサイト「KURADASHI」は規格外品や、メーカーからの共産品、消費期限が近いなどをディスカウントして販売しているネット通販サイトだ。通常の流通経路にのせることが難しいものの、まだ食べられる商品が廃棄されることを防ぎ、食品ロスを防ぐ。
また消費者にとっては、手頃な価格で購入できる新たな選択肢となっている。生産者やメーカーと契約することで、これまでは捨てられていた食品の提供を受け、本当に必要とする人々の手元に届けられている。購入金額の一部は、動物保護団体などの社会貢献団体へと寄付される。
食糧不安という言葉を聞くと、発展途上国で起きている出来事だと考えてしまう人も多い。しかし日本でも子どもの貧困は問題になっており、本当に必要とする人たちに食材が届かないということが起こっている。
そのため一部で余っている食材を有効活用し、広く行き渡らせるフードシェアリングを普及させることでさまざまな課題に対応しようとしている。まだ道半ばではあるものの、フードシェアリングサービスは今後さらに注目される事業と考えられている。
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