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3分の1ルールは、日本の食品流通において、賞味期限が確保された商品を店頭に並べるために策定されたものだ。近年、食品ロス削減の観点から、このルールを見直す動きがある。環境問題や資源の無駄につながる食品ロスの削減に向けた国や自治体、企業の取組、私たちが日常でできるアクションをご紹介。
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「3分の1ルール」とは、食品メーカーや卸売業者と、その食品を実際に販売するスーパーや百貨店などの小売店の間で決められた商習慣のこと。食品が製造された日から賞味期限までの全期間のうち、3分の1の期間以内(残り期間3分の2以上)に小売店舗に納品するという慣例だ。
たとえば、製造日から数えて6ヶ月先が賞味期限の食品の場合、最初の2ヶ月以内に卸業者は小売店に納品しなければならない。しかし1日でも過ぎてしまうと、賞味期限まで多くの日数を残しているにも関わらず、小売店から卸売業者を通して食品メーカーに返品されてしまう。返品された食品は、ディスカウントストアに回されることもあるが、その多くは廃棄されているのが実情だ。(※1)
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3分の1ルールは、食品流通において重要な役割を果たしており、消費者と業界の双方に利益をもたらす。
3分の1ルールにより、小売店には賞味期限が確保された新鮮な商品が常に並べられ、消費者は安心して食品を購入できる。
賞味期限内の商品が提供されることで、消費者は小売店に対して信頼を持つ。これはブランドイメージや顧客ロイヤルティにも影響する。
賞味期限内の商品は、品質や安全性が保たれていることが期待される。消費者は健康を害するリスクを、最小限に抑えられる。
納品期限と販売期限の厳格な管理により、食品の流通効率が向上。卸売業者と小売店の連携がスムーズに行われ、商品が適切なタイミングで店頭に並ぶ。
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賞味期限まで多くの日数が残っているにも関わらず期限切れの商品は返品され、廃棄されてしまう。その結果、大量の食品ロスを生み出す原因となっている。
ルールに従った正確な在庫管理を継続するには、その分人的リソースと時間が必要となる。
賞味期限までの3分の2の期間を残す商品しか店頭に並べられないため、消費者のもとへ届けられる数に限りが出ることがある。仮に特定の商品の在庫が少ないとき、賞味期限内であればその長さは気にせず購入したいと考える消費者がいたとしても、購入という選択肢が与えられない。在庫切れで購入できない可能性が高まる。
食品メーカーが、ルールにしたがって商品を供給する際、緻密な生産計画と念入りな在庫管理を日々調整する必要があるため、コストやシステム構築の投資が増大する場合がある。
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食品ロスは世界的な問題であり、日本もその一環として大きな課題を抱えている。国連環境計画(UNEP)が発表した「UNEP Food Waste Index Report 2021」によると、2021年に世界で生じた食品ロスは9億3,100万トン(※2)、日本では1年間に約523万トンもの食料が捨てられている。これは毎日に換算すると大型トラック(10トン車)約1,433台分になり、1人当たりお茶碗1杯分のごはんの量を毎日捨てている計算になる。(※3)
約523万トンのうち、スーパーマーケットやコンビニエンスストアでの売れ残りや返品、飲食店での食べ残し、売り物にならない規格外品などの「事業系食品ロス」は279万トンだ。
残りの244万トンは「家庭系食品ロス」と呼ばれ、家庭での料理のつくり過ぎによる食べ残し、食材を使わずに捨ててしまうこと、料理をつくる時の皮のむき過ぎなどが挙げられる。
食品ロスを放置すると、食べ物が無駄になるだけでなく、環境悪化や将来的な人口増加による食料危機にも影響するため、世界中で大きな課題となっている。
近年、食品ロスの削減と持続可能な食品流通の実現のため、3分の1ルールを見直す動きが強まっている。
農林水産省では、食品小売業者に対し納品期限の緩和を、食品メーカーに対しては賞味期限表示の大括り化(日にちまで記載せずに年月表示のみ、日を10日単位で統一する日まとめ表示など)や賞味期限の延長、食品事業者全般に対してはフードバンクや子ども食堂等への食品の提供を呼びかけを行なっている。
令和4年の時点で、納品期限の緩和を行なった食品小売業者は240社、賞味期限表示の大括り化や賞味期限の延長を進めた食品メーカーは267社と、年々その数は増えている(※4)。
同省により商慣習見直しに取り組む食品事業者や食品ロス削減の取組事例を公表することは、3分の1ルールの見直しの必要性と食品ロス削減の重要性を業界関係者に啓発することにもつながる。同時に、消費者に対しても賞味期限にこだわりすぎないようにすること、賞味期限間近の商品を積極的に選ぶことや、食品ロス削減に協力することを求めている。
環境への負荷を軽減し、食料の未来を守るために法制定の動きもある。
食品ロスの削減を総合的に推進するための「食品ロスの削減の推進に関する法律」(略称 食品ロス削減推進法)が令和元年10月1日に施行され、国や地方公共団体の責務を明確にし、基本方針や施策を定めている。(※5)
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3分の1ルール以外で、国の制度や自治体、企業側の取り組み事例についても紹介しよう。
食品の賞味期限を延ばすための取り組みが進められている。例えば、食品メーカーが製造工程で新たな保存技術を導入したり、包装材料を改良したりして、賞味期限を延ばすことがある。
フードバンクは、破棄される食品の寄付を受け付け、困窮している母子家庭や福祉施設などに提供している。未開封の食品や賞味期限内の食品を寄付することで、食品ロスを減らし、社会貢献できる。
食品の適切な保存方法を広く知らせるための啓発活動が行われている。たとえば、冷蔵庫の整理や冷凍保存の方法、野菜の鮮度を保つ方法など。
日本政府は2030年度の日本の家庭系食品ロス、事業系食品ロスをそれぞれ2000年度(約980万トン)と比べて半減させることを目標にしている(※6)。
またSDGs(持続可能な開発目標)においては、目標12「つくる責任・つかう責任」のターゲットの1つに「2030 年までに、小売・消費者レベルにおける世界全体の一人あたり食品廃棄を半分にし、収穫後の損失を含めて生産・サプライチェーンにおける食品ロスを減らす」が盛り込まれている。
石川県の規格外品を販売する「もったいない市」の開催、北海道の「どさんこ愛食食べきり運動」キャンペーン、宮城県の「食べきりモデル店舗」のように、各地方公共団体が食品ロス削減に取り組む事例がある。(※7)
キユーピーグループの賞味期限延長や表示切り替え、Glicoグループのふぞろい品の販売、ニッスイグループのフードバンクへの寄付、スターバックスの「フードロス削減」(※8)のように、企業は食品ロス削減に取り組むことで、コスト削減や環境保護に貢献できる。
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私たちが食品ロス削減のためにできることは、何か。以下のような取り組みを意識し行動に移すことで、一人ひとりが食品ロス削減に貢献できることを忘れずにいたい。
賞味期限の近い食品を選ぶことで、食品ロスに直接貢献できる。通常、スーパーマーケットやコンビニの陳列棚は、賞味期限の近い食品が前に陳列されている。購入する際には、できるだけ陳列棚の手前から食品を選ぼう。
食品を無駄にしないために、買いだめをせず、必要な分だけ購入しよう。大量に購入すると、賞味期限内に食べきれない可能性が高まる。
冷蔵庫内の食品を定期的にチェックし、期限の近いものを前に出して使おう。冷蔵庫の中で見えやすい位置に賞味期限の短い食品を置くことや、食品を長持ちさせるために、野菜は野菜室、肉や魚は冷凍庫で保存するなど、適切な保存方法を知ることも重要だ。
使いきれない食品やストックがあれば、フードバンクや子ども食堂に寄付しよう。未開封の食品や賞味期限内の食品を寄付することで、困っている人々の役立つことができる。
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食品ロス削減は、私たち全員の責任であり、環境保護と食料の未来のために積極的に取り組んでいくべき課題だ。
食品ロスを減らすための3分の1ルールの見直しは、重要なステップとなっており、今後もさらなる改善が求められている。食品メーカーや卸売業者、小売業者に取り組みの改善が求められるものではあるが、私たち消費者にもできることはある。
賞味期限が近い食品を積極的に購入することや、賞味期限は"おいしく食べられる期間"であり"食べてはいけない期間"ではないことを知って行動するだけでも、販売側の売れ残りへの懸念を緩和させることができるだろう。消費者である私たち一人ひとりも、食品ロス削減に貢献できるよう、日々の習慣を見つめなおしたい。
※1 納品期限の緩和を進める事業者が大幅に増加!|関東農政局
※2 UNEP Food Waste Index Report 2021(70ページ)|UN(国際連合)
※3 今日からできる!家庭でできる食品ロス削減|政府広報オンライン
※4 納品期限の緩和を進める事業者が大幅に増加!|農林水産省
※5 食品ロスの削減の推進に関する法律|消費者庁
※6 特集「食品ロスって何が問題なの?」|農林水産省
※7 地方公共団体の取組事例 | 消費者庁
※8 スターバックスのフードロス削減のためのプログラム、8月23日(月)からスタート在庫状況に応じて、ドーナツやケーキなどをディスカウントし、売上の一部は子どもたちの食と未来づくりへ貢献|スターバックス公式
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