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サプライチェーンの一連の流れの中で、食材が無駄になる廃棄ロス(食品ロス)が深刻な状況にある。まだ食べられるのに捨てざるを得ない食材が、世界中で増えている。日本においても、大量の食材が無駄に捨てられている現実がある。この記事では廃棄ロスが発生する理由や削減方法について解説する。
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廃棄ロスは、廃棄することになった商品の損失のこと。商品の仕入れ過ぎにより品質保持期間を超過したり、売れ残ったりして、破棄せざるを得なかったものなどが当てはまる。在庫を廃棄する際には、仕入や在庫管理にかかったコストも無駄になる。また、廃棄するためのコストも必要となり損失が大きい。ビジネス用語として使われる一方で、食材を無駄にしていることから資源の浪費や食品ロスの概念とも近い。
本記事では、主に食品の廃棄ロスについて紹介する。
まず廃棄ロス(食品ロス)の現状について把握しておきたい。世界の状況と日本国内の状況を、それぞれ解説していく。
国連環境計画(UNEP)が発表した「食品廃棄物指標報告書2024(Food Waste Index Report 2024)」によれば、2022年に世界では10億5000万トンの食料が廃棄されたことが明らかになっている。一方で、世界で食料難に苦しむ人は100万人にものぼり、人類の3分の1が食料不足に直面しているのだ。(※1)
では、日本での廃棄ロスはどうだろう。農林水産省が発表した2021年度のデータを参照すると523万トンとなっている。一人当たりに換算すると1年で42kgもの食べ物を廃棄していることになる。また家庭からはそのうち47%が廃棄されており、およそ244万トンだ。(※2)
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廃棄ロスは、食品が生産されて私たちの口に届くまでのあらゆるシーンで発生する。その一部をピックアップして紹介する。
食品製造業では、製造工程において原材料からのロスが発生する。代表的なものに、パンの耳などがあげられる。製造工程上不要とされた部分は製品として販売されないため、製造工程でロスとなる。パンの耳をラスクにするなど、再利用や製造工程の効率化などの取り組みが、この種のロスを削減するために必要だ。
食品卸・小売業では、商品が期限切れや品質劣化により売れ残ることが頻繁に起こる。需要を見越して仕入れたものの思ったように売れなかったり、運送や陳列の過程で劣化してしまったりすると、破棄せざるを得なくなる。事業者にとっては食品ロスにつながるだけではなく、不要なコストがかかることになるため損失が大きい。適切な在庫管理や需要の予測、商品の管理を徹底することで売れ残りによる廃棄ロスを回避したいところである。
外食産業や学校給食・家庭でも、つくった料理が食べ残され廃棄されることがよくある。過剰な量や、食材や料理が好みではなかったことなどが主な原因だ。食事内容や提供量の調整やメニューの工夫、子どもに対する食育活動の推進などが、食べ残しを減らすための施策として行われている。
食品製造や調理の過程で、本来食べられる部分も含めて余分な部分が除去されることがある。美しい見た目にするため、味のいい部分だけを残すため、食べやすく小さくするためなど、さまざまな理由で過食部を削ぎ落とす。過剰除去は、食品資源の無駄づかいやコスト増加を引き起こす。環境に配慮するなら調理方法を見直したり、必要があって除去した部分は再利用したりして対応する。
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日本の廃棄ロスの半分以上は、企業から発生している。そのため、多くの企業では廃棄ロスの削減に関する取り組みを行っている。ここでは、その例を5つ紹介する。
ファミリーマートが行っているフードドライブは、誰もが気軽に参加できる廃棄ロスを削減する社会貢献活動だ。この取り組みでは、家庭で余った食品やおすそ分けしたい食品を寄付できる。
ファミリーマートの店舗で受け付けしており、外出のついでや買い物の際にいつでも寄付が可能だ。受け付けた食品は、地域の協力パートナーであるこども食堂やフードパントリーなどの団体に寄付される。必要としている人々に団体が食品を届けることで、食べきれない食品が地域で活用され、食品ロス削減に貢献できる。フードドライブによって地域コミュニティが協力し、廃棄ロスの削減に取り組んでいる。
スシローでは、回転寿司の管理にビッグデータを活用している。店舗のレーンを流れるすべての寿司皿にICチップを付け、売上状況や鮮度管理を行っている。膨大なデータを蓄積し、店舗ごとの需要予測を行うことで、食材の需要を的確に把握し、効率的な在庫管理やメニューの調整が可能となっている。
以前はデータをプログラムで抽出しエクセルのマクロで分析していたが、毎年10億件以上ものデータが蓄積されるなか、この方法では限界があった。スシローはビッグデータをより柔軟に分析できるプラットフォームを構築し、マーケティングや商品開発に活用している。これにより無駄な在庫がなくなり、廃棄ロスの削減につながっている。
デニーズやロイヤルホストは、環境に配慮した取り組みとして「mottECO(モッテコ)」の導入をスタートした。これは店で食べ残した料理を持ち帰ることができるシステムで、発生する廃棄ロスの削減につながっている。
また持ち帰りに使用される容器は、環境に配慮したFSC®認証を受けている。このプロジェクトにはデニーズ・ロイヤルホストを含む複数の企業や地域が参加しており、共同で実施されている。2023年10月には「食品ロス削減推進表彰審査員会委員長賞」を受賞するなど、その取り組みが評価されています。
ニチレイグループは食品ロス削減に向けて、食材の調達から加工、流通、消費の各段階で取り組みを行っている。調達段階では、物流過程での品質低下や過剰在庫などが原因となる食品ロスを減らすために、冷凍食品の生産を通じて長期保存が可能な素材を選定している。
流通においては高品質な低温物流サービスを提供し、適正な温度管理で食品の品質と安全を守りながら物流過程での廃棄ロスを削減している。またニチレイフーズは冷凍食品の生産を通じて期限切れのリスクを低減し、家庭でのロスを最小限に抑えている。
株式会社クラダシはフードロス削減の取り組みと事業を一体化させ、ショッピングサイト「KURADASHI」を運営している。サイトでは、消費期限が近い商品や規格外品などを大幅に値引きした協賛価格で提供している。店頭では販売できないものの、まだ食べられる商品が廃棄されることを防ぎ、購入者にとっても手頃な価格で購入できる仕組みだ。
食品メーカーと消費者を結ぶことで、いままでは捨てられるはずだった食品が購入され、持続可能な消費サイクルを生み出している。さらに購入金額の一部は、環境保護や動物保護団体などの社会貢献団体へと寄付される。
廃棄ロスを削減するために、家庭ではどのようなことができるのだろうか?
店で食材を注文・購入する際には、まず必要な量を計算しよう。食材を適切に管理することで、廃棄を減らせる。またメニューの計画を立てて購入した食材を有効活用することで、無駄なく消費できる。
「てまえどり」とは、賞味期限の短い食品やすぐに食べる予定の食材を手に取ることである。生鮮食品を購入する際はつい賞味期限の長いものを選んでしまいがちだが、すぐに食べるものであれば賞味期限の近い食品や旬の食材を優先して使用することで、食品の廃棄を減らせる。
食材や調理済みの料理を冷凍保存することで、食品の鮮度を保ちながら長期保存できる。食材の余った部分や調理した料理を、適切なサイズに分けて冷凍を行う。また食品の品質を保つために適切な容器を使用し、適切な温度管理を行うことで長期にわたって食材を可食状態に維持できる。冷凍保存を活用することで、廃棄ロスの削減が可能だ。
廃棄ロスは、さまざまな工程で発生する廃棄される食材のことである。包括的な対策には企業や生産者の努力が必要だが、私たち一人ひとりも日々の調理方法や食材の保存方法、買い物の方法を工夫することで削減活動に参加できる。何気ないライフスタイルを見直して、廃棄ロスがないかあらためて考えてみてはどうだろう。
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