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CO2排出量は活動量と排出係数をかけることで計算される。加速する地球温暖化を食い止めるためにも、国や企業は正しくCO2排出量を把握し、必要な対策を取る必要がある。また、私たち個人が排出量を調べる方法もある。この記事では、CO2排出量の計算方法や調べ方について解説する。
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CO2とは二酸化炭素のことであり、温室効果ガスの一つとして知られている。排出量とは、人間の活動によって大気中に放出されるCO2の量を指す。CO2の排出量を計算することは、地球温暖化を抑制し、持続可能な社会を実現するために欠かせない。
気候変動は、地球温暖化によって引き起こされる環境問題の一つであり、その原因としてCO2をはじめとした温室効果ガスの増加が挙げられる。パリ協定では、産業革命前からの気温上昇を2℃未満に抑えることを目指し、各国が温室効果ガスの排出削減目標を設定している。(※1)
つまり、削減目標に向けた具体的な行動を起こすための基準として、CO2排出量の計算が必要なのである。
日本は、2050年までにカーボンニュートラルを達成することを目指している。この目標に向けて、2030年度までに2013年度比で46%の温室効果ガス削減を掲げている。(※2)現状の削減率を把握し、目標を達成するために、CO2排出量の正確な把握が不可欠である。
「地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)」では、一定規模以上の企業に対してCO2排出量の報告義務が課せられている。年間のエネルギー使用量が原油換算で1,500kl以上の事業者、省エネ法の特定貨物輸送事業者、特定荷主、特定旅客輸送事業者および特定航空輸送事業者は報告義務がある。(※3)
これらの企業は自社の活動による環境負荷を把握し、適切な削減対策を講じることが求められている。
国際的な市場において環境に配慮した企業が求められており、投資の判断材料の一つになっている。環境への取り組みは企業が果たすべき責任の一つと見なされ、環境問題への対処を主な価値観とするESG投資やTCFDやTNFDが進展し、企業の価値が判断されるようになった。
こういった背景から、国際的な競争力を高めるためにもCO2排出量を計算し、適切な情報開示を行うことが必要となった。
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CO2排出量を正しく把握することは、企業や国が環境対策を進めるうえで不可欠だ。ここでは、CO2排出量の計算方法と必要な用語を解説する。
活動量とは、CO2排出量を計算するための基礎となる数値である。例えば、電力の使用量や燃料の消費量などが活動量にあたる。
排出係数とは、活動量に対してどれだけのCO2が排出されるかを示す値である。
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)によりガイドラインが定められており、国際的な基準に基づいた排出係数が設定され、各国がその基準にしたがって排出量を算出・報告することが可能となっている。(※4)
日本においては、実際の排出実態に即した排出係数が試算されている。具体的には、電力会社が電力をつくり出す際に使用する燃料の種類や発電技術、地域の電力需要に基づいて排出係数が設定されている。
例えば、石油や石炭、天然ガスなど、発電に使用される燃料の違いによって排出係数は異なる。地域によっても、電力需要や発電施設の規模に応じて排出係数が変わるため、実際の排出量を正確に把握できる。
CO2排出量は、活動量と排出係数をかけ合わせることで算出される。この計算式を用いることで、具体的な削減対策を立案し、実行に移すことが可能となる。
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CO2排出量を正確に計算することは、地球温暖化対策の一環として欠かせない。また自社の排出だけでなく、サプライチェーン全体での排出量を考慮することが求められている。
この考え方に基づき、サプライチェーン排出量とLCA(Life Cycle Assessment)/CFP(カーボンフットプリント)という2つのアプローチがある。
これらの手法を用いることで、企業は自社の活動だけでなく、取引先や製品のライフサイクル全体での排出量削減に取り組むことが可能だ。
CO2排出量の算定には「GHGプロトコル」という国際的な基準が用いられており、生産業では部品の調達から製品の廃棄に至るまでの過程全体で排出されるGHGを把握する必要がある。このプロトコルは、排出源を「スコープ1」「スコープ2」「スコープ3」という三つのカテゴリに分け、それぞれの排出量を合計して算定する。(※5)
スコープ1は、自社が直接排出する温室効果ガス(GHG)を指す。これには製品製造時の燃料燃焼や、化学反応による排出が含まれる。
スコープ2は、他社から供給された電力や熱、蒸気の使用に伴う間接排出を示す。例えば、オフィスビルの電力使用が石炭火力発電に依存している場合に当てはまる。
スコープ3は、サプライチェーン全体で発生する排出を捉える。原材料の調達から製品の廃棄に至るまでのプロセスが含まれ、自社以外のGHG排出も対象となる。
LCA(ライフサイクルアセスメント)は、製品やサービスがそのライフサイクル全体でどのように環境へ影響を与えるかを評価する手法だ。ISOのガイドラインに基づき、資源採取から製造、輸送、使用、廃棄に至るまでの全段階を考慮し、CO2だけではなくあらゆる環境負荷を評価する。
一方のCFP(カーボンフットプリント)は、LCAと同じく製品のライフサイクル全体で排出される温室効果ガスを計算するが、それらをCO2に換算しサプライチェーンにわかりやすく提示する仕組みである。
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私たち個人が生活をしていくうえで、手軽にCO2排出量を調べる方法もある。これらの方法を活用することで、自分の生活がどのように環境に影響を与えているかを理解し、一人ひとりが具体的な改善策を見つけることが可能だ。
ここでは、いくつかのアプリや仕組みを紹介する。
「じぶんごとプラネット」は、国立環境研究所と共同開発されたカーボンフットプリント可視化アプリだ。生活スタイルを入力することで、利用者の行動が気候変動にどれくらい影響を与えているのか理解できる。さらに現状把握のみにとどまらず、生活の中での具体的な気候変動対策を数字で選択することも可能だ。
「CABOCHA」は、一人ひとりの環境活動を促し、CO2削減を支援するアプリサだ。居住環境や食事形態、消費行動などに基づく12個の質問を通じて、月ごとのCO2排出量を算出する。さらにCO2排出量を削減するためのアクションを提案してくれ、各アクションの難易度や削減量に応じてポイントが付与されるゲームのような楽しみ方もできる。
「みらいくん環境家計簿」は、九州電力が提供する消費したエネルギーから排出されるCO2の量を「見える化」するツールだ。電気やガスなどの公共料金の請求書を入力することで、毎月のCO2排出量に換算してくれる。
家庭でのCO2排出量を具体的に把握し、どの部分で削減が可能かを検討するきっかけとなる。毎月継続して利用することで、環境にやさしい生活の実践につながるだろう。
「SAISON CARD Digital for becoz」は、クレジットカードの決済データを基にCO2排出量を可視化する国内初のサービスだ。このカードは、利用履歴に基づいて個人のCO2排出量を自動的に算出し、どのカテゴリーで多くの排出が発生しているかを分析する。カード利用に伴うCO2排出量を知ることで、環境に配慮した消費行動を起こすことが可能だ。
「eevie(イーヴィー)」は、環境にいいとされる行動の習慣化を目的としたアプリだ。最初に利用者は、自身のカーボンフットプリントを計測し、削減目標を設定する。その後エコな習慣を続けることで、ゲーム感覚で環境への影響を削減することができる。習慣化を促すリマインダー機能が搭載されており、日常生活の中で環境に対する意識を高められる。
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CO2排出量の増加に対し、個人としてどのように貢献できるのか考えることも大切だ。ここでは、私たちが日常生活で実践できるCO2削減の方法をいくつか紹介する。
電力消費を抑えることは、個人ができるCO2排出量削減の身近な手段だ。まず、冷蔵庫やエアコンなど省エネ性能の高い家電製品を選ぶことで、日常的なエネルギー消費を抑えられる。また、不要な待機電力を減らすために、使用しない機器の電源はこまめに切ることも大切だ。
化石燃料に依存した電力使用を減少させるために、再生可能エネルギーを取り入れる家庭も増えてきた。家庭に太陽光発電システムを導入することで、自家発電を可能にし、電力会社からの電力使用を減らすことができる。そのほかにも、地熱や風力エネルギーなどの再生可能エネルギーを扱う電力会社を利用することも選択肢の一つである。
移動手段を見直すことは、CO2排出量に直接影響する。短距離の移動であれば車の使用を控え、自転車や徒歩を選択することで二酸化炭素の排出を抑えられる。公共交通機関を利用することも、個人の車利用を減少させ、全体のCO2排出量を削減する効果がある。
食品が生産され廃棄されるまでの過程では、多くのエネルギーがかかってくる。食材の無駄を減らし必要な分だけを購入することで、食品廃棄物を減少させられCO2の削減につながる。
「3R+Renewable」は、一人ひとりが循環型社会を目指すために必要な考え方だ。Reduce(リデュース)は、不要な消費を控えて資源を減らすことを意味する。Reuse(リユース)は、製品を繰り返し使うことで廃棄物を減らす手段である。Recycle(リサイクル)は、廃棄物を再利用することを促進する。そしてRenewable(リニューアブル)は、再生可能な資源を活用することを目指す。これらのRを意識してライフスタイルを構築したい。
CO2を吸収する植物を増やすことも大切だ。各家庭でもインテリアやガーデニングに植物を取り入れてほしい。また夏は外からの光を遮るように植物を配置することで、日光を遮り室温を下げる効果が期待できる。冷房の使用を減らし、エネルギー消費を抑えることにもつながるだろう。ゴーヤやアサガオなどの植物は育てやすく、家庭菜園としての楽しみや緑が身近にあることでのリラックス効果をもたらしてくれる。家庭での小さな取り組みが、地球規模の環境問題に対する大きな貢献につながる。
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CO2排出量を計算することは、地球温暖化の原因を可視化して捉えるために必要なプロセスだ。現状を把握することで、自分たちの生活が環境に与える影響を認識して具体的な削減行動を取ることができる。
また、企業だけではなく個人の活動にも注目したい。持続可能な社会の実現には、一人ひとりが自らの影響を理解し、積極的に環境配慮行動を取ることが求められている。
※1 2020年以降の枠組み:パリ協定|外務省
※2 日本の排出削減目標|外務省
※3 温室効果ガス排出量の算定・報告・公表制度|環境省
※4 算定方法・排出係数一覧|環境省
※5 知っておきたいサステナビリティの基礎用語~サプライチェーンの排出量のものさし「スコープ1・2・3」とは|経済産業省
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