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COP(コップ)とは、地球温暖化防止のため、気候変動に関する国際的な会議のこと。本記事では、COPの概要や歴史を紹介。会議で話されている内容やCOPが重要な理由についても解説する。
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COP(コップ)とは、「Conference of the Parties」の略。国際条約の加盟国が物事を決定するための最高決定機関であり、日本語では「締約国会議」と訳される。COPの後ろにつく数字は、会議の開催回数を指す。第1回目であれば「COP1」と表記される。
COPには、生物多様性条約や砂漠化対処条約などがあるが、もっとも有名なのが「気候変動枠組条約」のCOPである。
気候変動枠組条約とは、1992年に採択され1994年に発効した「国連気候変動枠組条約(UNFCCC)」が関わっている。2023年現在198カ国・機関が締結しており、1995年から毎年COPが開催されている。大気中の温室効果ガス濃度を安定化させることを目的とする条約の内容に基づき、気候変動対策に関する決定を行っている。(※1)
COPでは、世界一丸となって地球温暖化対策に取り組むためのさまざまなことが話される。気候変動枠組条約には、温室効果ガスの削減量や各国の役割などの具体的な内容が定められているわけではない。そこで、COPでは対策のための具体的な方針や目標について議論される。
毎年のテーマに沿った議論・政府間交渉のほか、気候変動の最新情報の共有や対策効果の進捗評価が行われるケースもある。また、各国の政府関係者だけでなく、NGOや学者などのステークホルダーも参加するのが特徴。COPとは、気候変動に関する国際的な取り組みを推し進めるのに欠かせない会議なのだ。
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COPでは198の締約国が一挙に集い、より具体的な計画を策定するうえでのすり合わせを行う。気候変動問題に向き合うためには、各国が連携し地球規模で対策を行う必要があるが、それぞれで状況が異なる多国間での合意形成は困難を極めるケースが少なくない。だからこそ、COPで丁寧に議論を行うことが重要なのだ。
例えば、パリ協定のルールブックが完成するまでには、COPで何度も議論が行われている。2015年のCOP21で採択された「パリ協定」では、すべての締約国に温室効果ガス排出削減の努力を求めた。1997年に採択された「京都議定書」では、先進国のみに温室効果ガス削減義務を課していたが、当時と比べて途上国が発展したことや、それに伴う排出量の増加が背景とされた。
2018年のCOP24では、先進国と途上国とで統一のルールを適用できるかという点で議論が難航。最終的には、途上国に配慮しながらも、すべての国に統一ルールを適用することで合意した。(※2)その後、パリ協定に関するルールブックは2021年のCOP26で完成している。現在は、目標達成に向けて各国それぞれが対策を促進することが求められている。
さまざまな状況の多くの国・地域で暮らす、すべての人が気候変動問題の当事者だ。各国が納得し、連携して気候変動問題と向き合うためにCOPがあるといえる。
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COPのはじまりは、1992年にブラジルのリオデジャネイロで開催された「国連環境開発会議(地球サミット)」だ。地球温暖化や生物多様性の喪失など、環境問題が深刻化したことにより、持続可能な開発を実現するために開催された。
地球サミットで採択され、1994年に発効したのが国連気候変動枠組条約。1995年から、毎年COPが開催されるようになった。第1回目の締約国会議であるCOP1は、ドイツのベルリンで行われた。
1997年のCOP3では、先進国が温室効果ガスの排出量を削減することを約束する内容の「京都議定書」が採択された。
2015年のCOP21では、京都議定書に代わる新たな国際協定として「パリ協定」が採択された。気候変動に関する初の法的拘束力のある国際的な条約であり、現在の取り組みの基盤となっている。
COP27は、2022年11月6日から18日にかけて、エジプトのシャルム・エル・シェイクで開催された。重要なテーマとして掲げられたのが、「気候変動への対策・適応」「気候変動対策資金」「1.5℃目標に向けた緩和」など。これらの内容に関する「シャルム・エル・シェイク実施計画」が採択された。
なかでも、気候変動の原因を先進国がつくっているにも関わらず、途上国が影響を受けている状況を鑑み、「損失と損害」に関して重点的に議論された。国際社会として、途上国を支援する基金を設立することで合意に至った。
また、パリ協定の目標を達成するために、気候変動を緩和させるような野心的な取り組みが求められるなか、温室効果ガス排出量を削減するための新しい目標が示された。化石燃料に関しては、「段階的な廃止」を支持する国も多数あるなかで、「段階的な削減」という表現にとどまった。
COP28は、2023年11月30日から12月13日にかけて、アラブ首長国連邦のドバイで開催された。COP28では、「グローバル・ストックテイク(GST)」が初めて実施された。グローバル・ストックテイクとは、パリ協定の目標達成に向けた進捗に関する評価のこと。2023年以降、5年おきに実施される予定だ。
また、COP27で結論が出なかった「化石燃料の段階的な廃止」については、期間を延長して議論が続き、最終的には「化石燃料からの脱却」を進める方向で合意。今後のエネルギー転換に向けた大きな一歩となった。「損失と損害」基金の運用交渉に関しても、各国が拠出を表明し、運用について合意した。
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2023年に開催されたCOP28で、日本は「化石賞」を受賞した。化石賞とは、気候変動問題に取り組む世界最大の環境NGO「気候行動ネットワーク」が主催するもので、気候変動対策を後退させる国へ贈られる不名誉な賞である。初受賞したCOP25から、4回連続での受賞となった。
COP28では「化石燃料の廃止」に合意できるかが問われたが、そのなかで、日本の石炭火力の温存を感じさせる発言や再生可能エネルギーへの移行を遅らせている姿勢が、気候変動対策に対して消極的に映ったのが理由として挙げられている。現に、G7で「脱石炭世界連盟(PPCA)」に加盟していないのは、日本だけである。(※3)
日本は、2020年10月に「2050年カーボンニュートラル」を表明。2021年10月には「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」を閣議決定し、国連へ提出した。同時期に発表された「第6次エネルギー基本計画」では、2030年度の電源構成のうち、石炭火力が19%、石油火力が2%という内訳を見込んでいる。(※4)2021年のCOP 26で、議長国のイギリスは、先進国に2030年代までに石炭火力全廃を求めた声明を発表したが、賛同国の動きと日本の姿勢には隔たりがあることがわかる。
2021年11月には、COP26において、日本がアジア地域への支援策として火力発電所を活用する方針を示したことを理由に化石賞が贈られた。脱炭素に後ろ向きな日本の姿勢に関しては、たびたび議論対象になっているのが現状だ。
気候変動枠組条約の加盟国が集まるCOP。さまざまな取り決めをまとめる場であるCOPとは、気候変動問題の解決に欠かせないものといえる。
COPをより意義あるものにするためには、各国がCOPの内容をきちんと把握し、対策を推し進める必要がある。もちろん、私たち一人ひとりの個人レベルの対策も忘れてはならない。地球で暮らす当事者として気候変動に向き合うために、今後のCOPにも注目したい。
※1 気候変動に関する国際枠組み|外務省
※2 COP24では何が決まった?|国立研究開発法人 国立環境研究所 社会システム領域
※3 COP28現地発信:日本が「化石賞」を受賞しました|WWFジャパン
※4 2030年度におけるエネルギー需給の見通し(関連資料) P4|経済産業省 資源エネルギー庁
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