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「グローバル・ストックテイク」とは、COP(国連気候変動枠組条約)で注目されるキーワードだ。具体的な意味をわかりやすく解説し、ドバイで開催されるCOP28との関係について紹介する。
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「グローバル・ストックテイク」とは、英語で「Global Stocktake」といい「GST」と略す。これは、パリ協定の目標達成に向けて、各国が温室効果ガス排出量の削減目標を立ているが、その各国の取り組みや進捗状況について評価する仕組みのこと。ちなみに、英語で「ストックテイク」は「実績評価」の意味がある。
グローバル・ストックテイクは、パリ協定第14条で定められており、5年ごとに評価を行う。また、各国が決める取り組みは「国が決定する貢献(NDC)」という。
パリ協定の目標とは、2030年までに地球の平均気温上昇を産業革命前に比べて1.5℃までに抑えること。これに向けて、日本を含め世界各国が独自の温室効果ガス排出削減の目標を立てて、それに取り組んでいる。
そこで重要になるのが、各国の取り組み内容と進捗状況だ。そのためグローバル・ストックテイクで各国の進捗を評価し、パリ協定の目標の達成に向けてさらに取り組み内容を強化するなど、判断するのだ。
また、各国が掲げる温室効果ガス排出削減の目標を達成しても、パリ協定の目標には届かず、2℃を超えることが予測されている。そのため、各国の目標をさらに引き上げることの必要性が指摘されている。グローバル・ストックテイクで国際的に各国の取り組み内容と進捗状況について評価し、今後の世界的な取り組みの指針を立てていくことになる。
グローバル・ストックテイクが最初に行われるのは、2023年11月30日からUAEで開催されるCOP28(国連気候変動枠組条約第28回会議)だ。
グローバル・ストックテイクは、以下の3つのステップに沿って2021年11月から進められている(※1)。
(1)情報収集と準備
温室効果ガス排出量や削減策などの実態についてまとめる
(2)技術的評価
1で収集した情報から、パリ協定の目標に向けて世界全体でどのくらい達成されているか評価する
(3)成果物の検討
各国の取り組み(NDC)をさらに強化できるように議論を深める
2023年9月までに(1)と(2)は済んでおり、COP28で最終ステップの(3)が実施され、どのような政治的メッセージが打ち出されるかが注目される。
グローバル・ストックテイクは5年おきに実施され、今後は以下のスケジュールで行われる予定だ。
第1回GST:2023年
第2回GST:2028年
第3回GST:2033年
2023年3月に公表された政府間パネル(IPCC)第6次統合報告書によると、今後10年から15年で、地球の平均気温上昇は産業革命前から1.5℃に達するおそれがある。
これまでは「2030年までに温室効果ガス排出を43%削減」という目標があったが、「2035年までに60%削減」「2040年までに69%削減」と、さらなる段階的な目標引き上げが必要であると指摘している。
そのため、第1回グローバル・ストックテイクが行われ、その上で日本を含めた世界各国がさらなる目標の引き上げを行い、野心的な取り組みをこれまで以上に行う必要があるだろう。そのひとつの目安としても、グローバル・ストックテイクが役に立つと期待できる。
気候危機が差し迫るいま、世界の国々が一丸となって気候変動に対して取り組みを強化する必要がある。2023年11月からUAEのドバイで始まるCOP28は、グローバル・ストックテイクとあわせて、重要な意味があるだろう。そして、各国が協力を確認して国レベルでの取り組みを進めると同時に、私たち個人にも取り組んでいけることがあるはずだ。
「地球が沸騰している時代がやってきた」と、国連総長が表現したように、いま地球は危機的状況にあることを、一人ひとりが改めて理解して、できることを行っていくべきだろう。
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