ごみ問題を知る映画3選 「人にはどんな状況も変えていく力がある」ユナイテッドピープル関根健次さん

ごみゼロの未来に向けて

“ごみゼロ”と読める5月30日は、私たちが直面する廃棄物問題をじっくりと考えよう。今回は、社会課題をテーマとした映画を配給するユナイテッドピープル株式会社の創業者・関根 健次さんに「ごみ問題について知ることのできる映画」を伺った。

Chiho Maezawa

Writer

東京在住。フリーランスエディター。地球にやさしく、生き物にやさしく、そして人にもやさしい暮らしを送るヒントを探して。日々、エコロジーやサステナブルにまつわるニュースに注目しています。決し…

2021.05.22
SOCIETY
学び

イベントや商品の魅力を広げる エシカルインフルエンサーマーケティング

関根健次さん

ユナイテッドピープル株式会社 代表取締役、一般社団法人 国際平和映像祭 代表理事。ベロイト大学経済学部卒。大学の卒業旅行の途中、偶然訪れた紛争地で世界の現実を知り、後に平和実現が人生のミッションとなる。2002年、世界の課題解決を事業目的とするユナイテッドピープル株式会社を創業。2009年から映画事業を開始。2014年より誰でも社会課題・SDGsテーマの映画上映会を開催できる「cinemo(シネモ)」を運営開始。映画『もったいないキッチン』プロデューサー。

「人を動かす映画を届ける」ユナイテッドピープル代表・関根健次さん

海洋プラスチック、フードロスなどに代表される環境問題の根源にあるものの一つは、毎日世界中で大量に排出される「ごみ」だ。

2019年の都市廃棄物排出量の国別ランキングでは、日本はアメリカ、中国、ドイツに次いで4位(*1)。すこしでもごみを減らしきれいな環境を残すために、私たち消費者ができることは何だろうか。今回はユナイテッドピープル株式会社代表の関根 健次さんに「ごみ問題について知ることのできる映画のおすすめ」を伺った。

ユナイテッドピープルでは、戦争、貧困、人権、環境問題など、さまざまな社会課題を投げかける映画の配給・制作を行う。関根さんがこの会社を立ち上げようと決意したのは、大学の卒業旅行がきっかけだった。

大好きなワインでビジネスを始めようと、世界各地のワイナリー巡りをするなか、偶然訪ねる事になったのは、相次ぐ紛争に困窮するパレスチナのガザ地区。そこで出会った1人の少年は、「大きくなったら、爆弾をつくって大虐殺をする」という悲しい夢を語っていた。

4歳という幼いときに、目の前で家族を銃殺された苦しみと憎しみから生まれた彼の夢。これを聞いた時に抱いたやりきれない想いが、関根さんの原点だ。世界中の子どもたちが子どもらしい夢が描ける平和な世界をつくりたいと、以後の活動へとつながっていく。

寄付や署名などによる支援活動からスタートし、やがて物質的な支援よりも、問題の根底にある「人の考え方」を変えることで社会を変えていく必要性を実感したことで「映画」というメディアにたどり着いた。

人の考えに影響を与え、行動につなげてほしいと願う関根さんが選んだ映画3作を紹介しよう。

*1:出典 https://www.globalnote.jp/post-12905.html

1、ファッション産業の裏側を追う「ザ・トゥルー・コスト ~ファストファッション 真の代償~」

予告編

華やかなファッション業界でも、衣服の大量生産・大量消費といった多くの問題が存在する。「ザ・トゥルー・コスト」はファッション産業のいまと、向かうべき未来を描き出したドキュメンタリー映画だ。

「ふだん服を買うときは、デザイン、色、ブランドなど自分の好みに合った服を何気なく選んでいますよね。その製品の裏側にいる、つくり手のことを考えることはあまりないでしょう。この映画は、安さ、早さ、効率を重視したファストファッションの裏に、多くの犠牲を払った人たちがいることを知らせてくれます。

舞台の一つはバングラディッシュ。縫製工場が入ったとあるビルは、ずさんな安全管理や、構造上耐えきれないほどの大量のミシンや発電機の設置が原因となって倒壊。1日に1,100人以上の人が命を落とす事故となった。

映画のなかでは“簡単な気持ちで服を買わないでください”と涙ながらに語る女性労働者の姿が映し出されます。服との付き合い方が変わるこの映画は、これから服を選び買う大人になる、高校生や大学生にも見てほしい映画ですね」(関根さん)

映画詳細
邦題:「ザ・トゥルー・コスト ~ファストファッション 真の代償~」
時間:93分
制作:2015年(アメリカ)
監督:アンドリュー・モーガン
配給:ユナイテッドピープル
https://www.cinemo.info/38m

2、プラスチック問題の真実を見る「プラスチックの海」

予告編

監督を勤めたクレイグ・リーソン氏が、大好きなシロナガスクジラが暮らす美しい海に、大量のプラスチックごみが捨てられている事実を知ったことで、海洋学者や環境活動家、ジャーナリストたちとともに、世界の海で調査と撮影を行なったドキュメンタリー映画だ。

「プラスチックが現代の社会を便利で豊かなものにしてきた事実は否めません。プラスチックをすぐに生活からすべて排除することはほぼ不可能とも言えるでしょう。

映画のなかでは、1羽のウミドリから230個以上のプラスチックの破片が出てくるシーンがあり、大きなインパクトを残します。100%排除はできなくとも、減らすことはできるはず。プラスチックが海、生態系、人間にどんな影響を与えているのかという事実を知ることが、大切な一歩になるのではないでしょうか。

また、プラスチックに限らず『使い捨て』という文化への問題意識も感じさせてくれるものだと思います。現在は商品やサービスにおいて、プラスチックから紙へという動きが活発になっていますが、紙という資源なら無駄に使っていいのかという疑問を感じます」(関根さん)

映画詳細
邦題:「プラスチックの海」
時間:100分
制作:2016年(イギリス・香港)
監督:クレイグ・リーソン
配給:ユナイテッドピープル
https://www.cinemo.info/86m

3、捨てられてしまう食材をキッチンカーが救出「もったいないキッチン」

予告編

ダーヴィド・グロス監督とパートナーのニキが、福島から鹿児島まで4週間1,600km、キッチンカーで旅をする。一般家庭やコンビニを直撃し、捨てられる食材を救出。おいしい料理に変身させていく。旅の道中で出会うのは、もったいないアイデアを持つ日本のシェフや生産者たちだ。

「この映画をみて感じるのは“食べ物は命だ”ということ。1人ひとりの命が生かされているのは、水、食べ物、そしてその背景に広がる自然があってのこと。ありがたいと思う気持ちを再認識できるはずです。

“いただきます”という言葉も、もともとは命をいただくことへの感謝の言葉です。命と食のつながりを考えれば、簡単に捨てられないという気持ちが湧きますよね。

給食を食べたり、好き嫌いが始まる小学生の子どもたちにぜひ見てほしい映画だと考え、本作アンバサダーでもある斎藤工さんに、ダーヴィド・グロス役としてナレーション、アフレコをお願いし、日本語吹き替え版を制作しました。今後、全国の小学校で上映できるように活動していきたいと思っています」(関根さん)

映画詳細
邦題:「もったいないキッチン」
時間:95分
制作:2020年(日本)
監督:ダーヴィド・グロス
配給:ユナイテッドピープル
https://www.cinemo.info/85m

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※掲載している情報は、2021年5月22日時点のものです。

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