生ごみを燃やすのは、もはや「水」を燃やすに等しい

ごみゼロの未来に向けて

ELEMINISTでは全5回にわけて、『生ごみは可燃ごみか』に書かれている内容を紹介する。今回は第1章の「生ごみは可燃ごみ?」から一部抜粋。

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2021.05.25

私たちの社会はごみを減らす取り組みだけでは物足りず、ごみ自体を出さない仕組み──ゼロウェイスト戦略が必要だ。

世界各国の政府や自治体、企業、個人は、これ以上に地球への負担をかけないために、ごみを出さない行動を起こしている。とはいえ、まだ知識を持ち合わせていないという人もいるのではないか?

ひとりの生活者からごみの専門家となった福渡和子さんが上梓した『生ごみは可燃ごみか』を読めば、日常生活で気軽に取り組めるアクションとごみ問題に関する知識を深められるだろう。

ELEMINISTでは全5回にわけて、『生ごみは可燃ごみか』に書かれている内容を紹介する。今回は第1章の「生ごみは可燃ごみ?」から一部抜粋。

『生ごみは可燃ごみか』とは?

『生ごみは可燃ごみか』の表紙

出版年月日:2015年4月10日

海外の環境先進国は、ごみ処理分野に積極的に取り組んでいる。その一方で、日本は狭い国土で多くの焼却工場を稼働させており、排熱や二酸化炭素を大量に排出して環境に負荷をかけ続けている。

そんな日本の現状に対して問題提起するのは『生ごみは可燃ごみか』(福渡和子)。

家庭の生ごみが焼却処理されていることに疑問を持った筆者は、独自で調査を開始。明らかになった事実を伝えるとともに、生ごみをリサイクルする必要性を経済的、科学的な側面から紹介する1冊だ。

生ごみの焼却処理は環境に負荷をかける

「日本には“可燃ごみ”というふしぎな言葉がある」──。この一文から始まる本章では、本書のタイトルにもなっている「生ごみは可燃ごみか」というテーマの走り出しとして、そもそも生ごみを可燃ごみとして焼却している日本の現状への問いから始まる。

筆者調べによると、家庭から出る生ごみは多くが野菜くずや果物の皮だという。それらの食材は、重量のおよそ80〜90%以上に水分が含まれているとのこと。

生ごみはそのまま焼却するには水分が多く、もはや水を燃やすに等しいというわけだ。

焼却効率の悪い生ごみを燃やすには、たくさんのエネルギーが必要となり、多くのコストがかかる。そして、温室効果ガスも排出してしまう。

いち生活者として「当たり前」に疑問を持つ視点から、筆者の「生ごみの専門家」としてのキャリアがスタートしていく。

生ごみは水を大量に含んでいるのに可燃ごみ(*本文から引用)

コンポスト

Photo by Giuseppe CUZZOCREA on Unsplash

日本には“可燃ごみ”というふしぎな言葉がある。ごみ処理分野で使われるふしぎな言葉で、水を大量に含む生ごみが可燃ごみとなっていることだ。自治体がつくる“ごみの分別・出し方”のガイドブックを開けば、生ごみは“可燃ごみ”あるいは“燃えるごみ”のカテゴリーに入っている。“可燃”という言葉を辞書で見れば、「よく燃えること」、「燃えやすいこと」とあるが、可燃ごみという見出し語はない。

水は火を消す時に必要なもので、水がよく燃えるとも燃えやすいとも思わないが、なぜか、この水を大量に含む生ごみが、自治体のガイドブックでは「よく燃えるごみ」、「燃えやすいごみ」として扱われているのである。

(中略)

生ごみを燃やすことを“じょうしき”とする言い分は他にもある。廃棄物行政では、「生ごみは前提として、水分が多く腐敗性を有するので焼却処理が必須」であるかのように、多くの自治体関係者は考えているし、そのように発言する。そして市民も自治体に倣って、「生ごみは臭い! 汚い!」と、臭いものにフタをするようにプラ袋に密封して可燃ごみに出す。

確かに野菜や果物は水分が多いけれど、生ごみとなった野菜くずや果物の皮も、元はといえば食材の一部であって、初めから腐敗しているわけではない。三角コーナーや排水口の深い受け皿が一杯になってプラ袋に入れる時だって、臭くなっているわけではない。それが、夏季、2、3日保管している間に臭くなっている。だからといって、「生ごみは前提として、水分が多く腐敗性を有するので焼却処理が必須」であると決めつけ、生ごみを焼却していたのでは、家庭での生ごみの取り扱い方も、日本のごみ処理行政も進化しないのではないか。実生活では、体重計一つとってもわかるように、身の回りの生活用品は科学的な知見を根拠に常に進化している。ところが、生ごみの取り扱いについては、三角コーナー、水切りネットなどを使用した「水切り」のレベルで止まったままである。

「生ごみは前提として、水分が多く腐敗性を有するので焼却処理が必須」であると簡単に決めつけないで、水分が多いと、なぜ腐敗するのか、臭くなるのかを科学的に分析し、生ごみが臭くならないようにするには、取り扱いやすいようにするには、どうすればよいか工夫したり研究したりしながら、できるだけ省エネルギーで衛生的な生活を模索することが、生活のクオリティを高めることにつながるのではないだろうか。

幻冬舎ルネッサンス新書

生ごみは可燃ごみか

856円

※2021.05.17現在の価格です。

※掲載している情報は、2021年5月25日時点のものです。

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