サーキュラーエコノミー実現に近づく仕組みづくりと連携

ごみゼロの未来は遠いか

持続可能な社会に向けて、サーキュラーエコノミーへの転換が提唱されている。そのイニシアティブを握る世界の経済界は、持続可能な社会にどう取り組もうとしているのか。2019年の世界経済フォーラム年次総会(通称ダボス会議)の共同議長も務めたゼロ・ウェイスト・ジャパンの坂野晶さんに聞く。

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2021.05.26
坂野晶さん

坂野晶 Sakano Akira

一般社団法人ゼロ・ウェイスト・ジャパン代表理事。兵庫県西宮市出身。4歳でインコと出会い、絶滅危惧種のオウム「カカポ」(ニュージーランドにのみ生息)への思いが高じて環境問題に興味を持つ。大学で環境政策を学び、卒業後、モンゴルのNGO、フィリピンの物流企業などを経て、2015年、徳島県上勝町NPO法人ゼロ・ウェイストアカデミーに参画。2019年世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)の共同議長を務める。2020年から現職。

求められる制度変換、そしてローカライゼーション

ダボス

Photo by Damian Markutt on Unsplash

ダボス会議の開催地ダボス

--------2019年当時、ダボス会議は何を話し合い、坂野さんはどんな主張をしたのですか。

坂野 新型コロナウイルスが問題となる前でしたね。テーマは「第4次産業革命の時代に形成するグローバル・アーキテクチャー」というもので、あらゆるものがデジタル化する時代への対応策がメインだったのですが、フタを開けてみると、思いのほか、サスティナビリティ色が強い印象がありました。

私は、グローバルシェイパーズ(※1)のアジア代表として出席し、ごみと環境、「サーキュラーエコノミー」などについて発言しました。

サーキュラーエコノミーは日本語では「循環経済」と訳されます。経済産業省と環境省では、“従来の「大量生産・大量消費・大量廃棄」のリニアな経済(※2)に代わる、製品と資源の価値を可能な限り長く保全・維持し、廃棄物の発生を最小化した経済”と説明し、持続可能な経済活動としてとらえられています。

徳島県上勝町のゼロ・ウェイストの取り組みを例に、地域のごみの8割までは分別・リサイクルするなどして何とかしていくことができるが、残りの2割は生活者や地域の努力だけではどうにもならないこと。生産のサプライチェーンにおいて、初めから循環できるように設計する仕組みが必要であること。産業界がそうした仕組みを整えていくためには、サーキュラーエコノミーの視点を取り入れた大きな制度設計の変換が必要です。

ただ、強調しておきたいのは、国や産業界がいくら制度設計を整えても、それだけでは不十分で、それを実際に有効に使うためには、地域に合わせたローカライズが必要だということです。

日本国内でも、東京のような人口密集地から上勝町のような限界集落では、社会構造も人々の生活動線も違います。その地域に合った流通、売り方、回収方法を考えていかなければ、ごみゼロは実現しないでしょう。

※1)33歳以下の若者によるコミュニティ。世界経済フォーラムによって任命される。メンバーは、多様なバックグラウンドをもち、社会貢献に強い意思をもつ人々で構成される。
(※2)「リニア」とは、「一直線にのびた」と訳される。ここでは、出発点と終着点が決まっている状況のこと。

世界の経済界は「ごみゼロ」を意識しているか

ごみ

Photo by Hennie Stander on Unsplash

------サーキュラーエコノミーの考え方は、経済界にすでに浸透しているのでしょうか。

坂野
 環境のためだけでなく企業成長にサーキュラーの視点が欠かせないという意見も聞かれるようになりましたが、企業により、まだ温度差があるように感じます。

大まかにいうと、これまでの経済は一方通行でした。資源を使って物をつくって売って、捨てる。リサイクルしても、ダウンサイクルと言いますが、質が劣化しつづけるのでけっきょくは捨てることになり、ごみになります。

サーキュラーエコノミーでは、もの・資源をひたすらグルグル回します。私たちがいったん社会のなかに取り込んだ以上、そのものの価値を落とさず、ずっと使い回すのが理想であるという考えです。

たとえば、メーカーは製品をつくって売りますが、売りっぱなしでは使われた後、ごみになります。そこで売るのではなく「貸す」だけにする。使い終わったら返してもらうのです。これによって社会に生み出されたものは減らずに、ぐるぐると回ることになります。

いまの仕組みでは、新しいものをつくって売ったほうが、利益が出ますよね。回収して修理して、また他の人に「貸す」ことで利益が出る仕組みをつくればいいのです。

サーキュラー・エコノミー

Photo by 『サーキュラー・エコノミー: 企業がやるべきSDGs実践の書 』 (中石和良 著/ポプラ新書)

左側が生物的(植物・動物等の再生可能資源)サイクルで、右側が技術的(石油・金属・鉱物等の枯渇資源)サイクル。生物的サイクルでは、資源は消費され再生され最後は堆肥や嫌気性消化によりビオガスとして生物圏に戻り新しい生物(原材料)の栄養となり、技術的サイクルでは、資源は再使用・再製造・リサイクルによって経済活動の中で可能な限り使い続けられる。

エレン・マッカーサー財団が提案する、サーキュラーエコノミーの概念図を参考にしましょう。例えば技術サイクルの輪の一番外側がリサイクル、内側にリユースやリペアがあります。輪が小さいほどベターであることを表しています。

「ごみ」の入り口となる、生産側にいる企業が、まずはこの「段階を経るごとに輪をどんどん小さくする」考え方などに基づいてサプライチェーンを見直す、どこに改善のチャンスがあるか、徹底的に検討してほしいと思います。既存の組織や仕組みに縛られないベンチャーにも期待したいですね。

--------世界経済に影響力を持つグローバル企業の動きは?

企業自身が変わっていく必要はもちろんですが、ビジネスモデルを転換していくには、制度面の転換も必要になります。ダボス会議に出席するような大きな企業が、政府に働きかけていくのが近道ではないかと思います。

そうしたグローバルな動きの一方で、ごみゼロを可能にするには、地域ごとの地に足の付いた計画も重要です。

徳島県上勝町の話に戻りますが、昨年、2030年までにごみゼロをめざしたゼロ・ウェイスト再宣言を行っています。リサイクル率81%まで達成した町です。再宣言にあたっては、ごみゼロが住民の幸せにつながることに重点が置かれています。地方に行くほど高齢者率が高くなりますが、高齢者がごみを45分別するのはかなりの大変なことですよね。ごみゼロと住民の快適な暮らしをどう結びつけられるか。そんな切り口も忘れてはなりません。

現在、私はゼロ・ウェイスト・ジャパンで地域内主体や行政と組んでごみを減らす計画策定やプロジェクトの導入に携わっています。住民、行政、生産者、そして循環の下支えをするリサイクル業者など静脈産業。この3+1者がよい影響を与え合う、ごみゼロにつながる仕組みのオプションを増やしていきたいですね。


取材・構成・執筆/佐藤恵菜 編集/松本麻美(ELEMINIST編集部)

※掲載している情報は、2021年5月26日時点のものです。

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