生ごみは資源の宝庫だった––フレンチシェフと専門家が語る「循環」する暮らし

壁を背にして立つ生井祐介氏(左)と福渡和子氏(右)

生ごみに含まれている豊富な微量元素は、生命の維持に欠かせない要素だ。実は生ごみを焼却するということは、その貴重なミネラルの循環を断ち切ってしまうことなのだ。広尾のフレンチ「Ode」オーナーの生井氏と生ごみの専門家・福渡氏による、新たな生ごみのあり方を模索する特別対談をお届けする。

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2021.05.18

生ごみの焼却に隠された弊害

ごみを捨てる様子を表したロゴ

Photo by Kinga Kołodziejska on Unsplash

日々暮らしていく中で、生ごみの処理は避けては通れない問題だ。普通に暮らしていれば、どんなに気を使っていても生まれてしまう生ごみだが、そのまま捨てるのが当たり前だと、ついつい考えてしまう。

しかし、生ごみの焼却には環境負荷や「微量元素」のサイクルという面において、大きな2つの問題が存在する。そこで、今回はNPO法人「生ごみリサイクル全国ネットワーク」副理事長であり、生ごみ専門家の福渡和子氏を招き、生ごみが抱える問題や解決方法について話を伺った。

さらに、広尾でフレンチレストラン「Ode(オード)」を運営するオーナーシェフ・生井祐介氏に料理家としての立場から、料理をする上でごみを生まないための考え方や、レストランで行っている取り組み、そして生ごみについてどのように向き合っていけばよいのかを語ってもらった。

ソファに座ってこちらを見る生井祐介氏(左)と福渡和子氏(右)

生井祐介氏(左)、福渡和子氏(右)

––まずは専門家の立場から、生ごみが抱えている現状について説明していただいてもよろしいですか?

福渡:まず、生ごみは約80%以上が水分なのです。例えば白菜であれば、95%以上が水分です。水分の多い野菜や果物を燃やすことは、水を燃やすことと同義であるということなのですね。

水を燃やして水蒸気にするためには、大変なエネルギーを使い、大量の温室効果ガスを排出することになります。また、生ごみにはミネラルのなかでもごく少量しか存在しない微量元素が含まれており、そうした微量元素や繊維組織が土に還っていないという問題も、勉強するうちにわかってきました。

––生井さんはこうした状況についてご存知でしたか?

生井:とくに僕らの仕事は家庭よりも生ごみが大量に出るので、生ごみをいかに減らしていくのか、ごみをいかに燃やさないようにしていくかは、2本立てで常に考えています。

料理の仕事を始めたときからごみを捨ててきたので、ぼんやり罪悪感というのはずっとありました。顔を知っている農家さんから、直接お野菜をいただくスタイルでやってきたので。

そういう方が持ってきたものをお客様に提供する際に「この茎の部分は使わない」とか、端材が生まれるわけですよね。そういった端材はまかないや加工に活用するのですが、それでも残る部分はごみになってしまう。だから「ごめんなさい」という気待ちがないまま、躊躇なくごみを捨てられるようになってしまうのは怖いなと、ずっと思ってきました。

福渡:私が生ごみに関心を持ったのは、高度経済成長の時に、いままで回収されていた古紙が回収してもらえなくなったことがきっかけでした。「困ったな」と思って町内会に回収するようにお願いしたら、ヴァージンパルプを輸入した方が安上がりだからということで、結局、古紙はどんどん捨てられていたのです。

また「困ったなあ」と思っていたら、世田谷区消費生活課主催の「ごみとリサイクル」という講座を「区のお知らせ」で見つけたのです。出席して「ごみの焼却にはいろいろ問題があるんだ」ということを学んで、リサイクル活動を始めました。

福渡和子氏が話している様子

月刊廃棄物」という、廃棄物の専門雑誌の編集室から、微生物資材を試して感想文を書いてほしいという依頼がありました。早速生ごみに資材を振りかけて土に埋めたところ、夏でしたので1週間で土になっていて、とてもびっくりしました。ところが、専門家の方々は「土のなかの微生物が分解するから、微生物資材なんて必要ない」とおっしゃる。そこからより本格的な勉強が始まりました。

月刊廃棄物では、さまざまな自治体にレポーターとして取材するお仕事もいただきました。生ごみの資源化に取り組む先進的な自治体を取材させていただいて、記事を書いていくうちに、生ごみの問題への使命感が生まれて、ずぶずぶとここまで来ました(笑)

––ごみの行方というのが大きなきっかけになったんですね。

福渡:そうですね。やはり私も生ごみは燃やすことが当たり前だと思っていました。いまでも多くの家庭では、生ごみを捨てるのが世界の常識だと思われています。ところが、「EUや北欧では、生ごみはバイオごみとして集められ資源化されていますよ」と説明するとびっくりされて。知っている方はやはり少ないですよね。捨てれば持っていってくれるので、そもそも関心がないのだと思います。

生井:僕は、農家の方と食材について直接やりとりするようになったことで、関心を持つようになりました。

以前、東京の別のお店で働いていたときは、例えば「明日の料理に使うからトマトが〇個、きゅうりが〇個ほしい」という注文の仕方でした。しかし、軽井沢のお店で働いているときは、農家さんからお野菜を直接いただくスタイルになったんです。

朝、畑に食材を受け取りに行くと、僕がズッキーニを3本ほしくても、100本あったりするわけですよ。今年は太陽が出てるからトマトがたくさん育ったとか、そういうことがいっぱいあるわけです。すると、いままでは料理の一面しか見えていなかったものが、多面的に見られるようになる。小さなトマトも「こう使ったら面白い料理ができるな」とか「葉っぱはプレゼンテーションで使える」、「つるは茹でたらおいしい」、「捨てていたヘタも何かに使えるんじゃないだろうか?」と考えるようになった。

畑に行っていろいろな気づきを得たことで、食材としての価値を自分で見出すことができるようになったし、料理観が変わりましたね。そういう面では、フードロスの削減に少しは貢献できているのかなと思います。

生井祐介氏が話している様子

※掲載している情報は、2021年5月18日時点のものです。

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