Vol.10 最先端はオンライン 日本でもベルリンでも馴染みの物々交換

日本の小さな村がベルリンにもあった

ベルリン在住のイラストレーター・KiKiが、自身が育った西伊豆の日本の村とベルリンの暮らしの共通点をつづるコラム(毎月14日28日更新)。今回は、自身の祖父母とベルリンで行われてきた物々交換の文化を紹介。現代では、オンラインを介した交換も行われている。

KiKi

イラストレーター/コラムニスト

西伊豆の小さな美しい村出身。京都造形芸術大学キャラクターデザイン学科卒業後、同大学マンガ学科研究室にて副手として3年間勤務。その後フリーランスに。2016年夏よりベルリンに移住。例えば、…

2021.03.14
LIFESTYLE
編集部オリジナル

わたしたちの買い物が未来をつくる|NOMAが「ソラルナオイル」を選ぶワケ

Promotion

助け合いのコミュニティを形成する物々交換

ミニトマトを手渡す

Photo by Elaine Casap on Unsplash

ベルリンは都会だが、ご近所さんや友人間での食べものや日用品のシェアが日常的に行われており、そのつながりが、いまは重要な助け合いのコミュニティを形成するきっかけになっている。

例えば、わたしは新型コロナウイルス(COVID-19)が流行してから、マスクを購入したことがない。シェアが一回りしておこる「巡りもの」が、時代柄、マスクに変化していったからだ。

ベルリンでは2月から、洗って何度も使える布製マスクが禁止になり、手術用のマスクかFFP2やN95などのフィルターの性能が高いマスクのみの使用に限定された。

そのときに、たまたま医療用マスクを「巡りもの」として多めに所持していたので、シェアのシェアをした。それが巡って、また違う必需品、例えば消毒用アルコールに変わって帰ってきた。

こんな時代だからこそ、サステナブルな視点からだけでなく、物々交換や助け合いによる「新しくものを買わない生活」をおすすめしたい。

ご近所付き合いで生まれる笑顔と笑い声

シェアの習慣は、祖父母がよく行っていたことでもある。

大工で手先がとても器用な祖父は、よくご近所さんの機械を修理したり、棚や田植え前の稲を育てるビニールハウスなどをつくってあげていた。

また、祖母が夕飯をつくっているときにご近所さんが「調味料切らしちゃったんだけど、持ってる?」と訪ねてきて、「あるわよ、丸ごと持っていってもいいわよ」と気前よく貸していたこともある。祖母が料理中に調味料を切らしてしまったときにも、同じようにご近所さんを訪ね、もらってきていた。

この祖父母のご近所付き合いの「巡りもの」として、我が家にはいつもどこからか頂いた食べ物や品物がたくさんあった。そして何より、子どもの頃のわたしは、このご近所付き合いで生まれる笑顔を見たり、笑い声を聞くのが大好きだった。

その様子を見て育ち、自然とわたしもシェアする習慣がついていったのだ。

現代風にアレンジされたオンライン物々交換「ebay kleinanzeigen」

パソコンを触る人

Photo by Christin Hume on Unsplash

現代は、ご近所さんだけでなく、遠くにいる知らない誰かとも、オンラインを通じて、助け合いやシェアができる時代だ。

ドイツには「ebay kleinanzeigen」という物品を売買するサイトがある。小さな不用品から、お部屋、仕事のスキルまでさまざまな書き込みがされているが、そのなかでも「Tausche(交換)」と「Verschenken(与える・プレゼント)」というカテゴリーは、おもしろくて定期的に覗いている。

物々交換を意味する「Tausche(タウシェ)」

これはまさに現代風にアレンジされたオンラインでの物々交換。

なかでもおもしろいなと思うのが、「このティーセットあげるから、サトウキビの砂糖がほしい」と交換する品物も指定されているところだ。相手の望みがわかれば、お返しに悩むこともないし、win-winな物々交換を行うことができる。

プレゼントを意味するVerschenken(ファシェンケン)」

こちらは物々交換ではなく、ほしい人にあげるよ、という項目だ。わたしも1年前に引越しをした際に利用したことがある。

わたしはかつて、アクリル絵の具で絵を書いていたのだが、ベルリンの画材屋さんですてきな水彩絵の具セットに出会ってから、アクリル絵の具をまったく使わなくなっていた。ある日ふと、ずっとケースのなかで眠っているアクリル絵の具がかわいそうだと思い、ebay kleinanzeigenに「この絵の具を絵にしてくれる人を探しています」と書き込んだ。

するとすぐにある女の子から「今日中にピックアップしに行きたい」というメッセージが届いた。会ってみると、彼女はベルリンの美大に通っているとのこと。彼女のキラキラと喜ぶ顔を見て、自分の学生時代を思い出し、わたしが使っていた絵の具を彼女に絵にしてもらえることを嬉しく思った。

インターネットを介することで、面識すらもない人にもシェアすることができるところを、とても魅力的に感じている。

実は日本にもある オンラインでの物々交換

パソコンを触る人

Photo by John Schnobrich on Unsplash

日本にもこのようなサービスは、ないのだろうか。探してみると「ジモティー」というサイトで、似たような物々交換が行われているらしい。

覗いて見ると、「育てているブルーベリーの花の受粉相手を探しています!」という書き込みを見つけた。実をならせるために、同じ頃に咲くブルーベリーの木を持っている方、花粉を交換しましょう、とのことだ。

きっとこの書き込みをした人と、書き込みを見て連絡をした人は、きっと仲のよい友人になるのだろうなと、想像して微笑ましい気持ちになった。

手元のものを大切に長く使う習慣を

イラスト

Photo by KiKi

ベルリンでは、不思議とモノを買わなくても生活が成り立ってしまう。この生活を経験したことで、世の中にどれだけ余分なものが溢れているのかということに気づくことができた。余った分は、ごみになってしまう可能性だってあるのだ。

それならば新しいものを買わずに、シェアしたり、プレゼントしたり、物々交換したりすることで、いま手元にあるものを大切に長く使う選択をしたい。

また、新しいものを買わないことは、お金では買えない人とのつながりややさしさの交換がお金以上の財産を生み出しているように感じている。


3/28 公開予定の次回は、「手づくりコンポストで育てたリボベジ」をリポートしたい。

※掲載している情報は、2021年3月14日時点のものです。

    Read More

    Latest Articles

    ELEMINIST Recommends