Vol.4 いらない服が社会に役立つ ベルリンの“お古”文化「古着回収ボックス」

日本の小さな村がベルリンにもあった

ベルリン在住のイラストレーター・KiKiさんが、自身が育った西伊豆の日本の村とベルリンの暮らしの共通点をつづるコラム。毎月14日と28日に公開中。ベルリンの道端には多くの古着回収ボックスが設置されていて、いらない服が寄付や社会支援団体の活動資金に当てられている。

KiKi

イラストレーター/コラムニスト

西伊豆の小さな美しい村出身。京都造形芸術大学キャラクターデザイン学科卒業後、同大学マンガ学科研究室にて副手として3年間勤務。その後フリーランスに。2016年夏よりベルリンに移住。例えば、…

2020.12.14

古着回収ボックスがいたるところにあるベルリンの街

わたしは洋服が大好きだ。でもベルリンに引っ越してから、なるべく多くのものを持たずに生活しようと決めている。

ここは母国から遠く離れた、言語も文化も全然違う国。計画と準備を念入りにして海を越えたが、異国での新しい生活では何が起こるか、どう転ぶかわからないからだ。

現にベルリンに住み始めて5年、すでに7回も住まいを変えている。引っ越すたびに荷物の整理は必須なため、洋服はとくに「新しく増えた分、手放す」を心がけている。

とはいえ、大好きだった洋服をごみとして処分するのは悲しくなるので好きではない。日本に住んでた頃は、友人にあげたり、古着屋に寄付したりしていた。

わたしが古着回収ボックスの存在を知ったのは、ベルリンで初めての引っ越しをしたときだ。

お世話になったホストファミリーに「近所に寄付を受け付けている古着屋はありませんか?」と尋ねると、「ベルリンには街じゅうに古着の回収ボックスがあるよ」と教えてくれた。実際に近所にある古着回収ボックスまでつれていってもらうと、道端に「Kleider & Schuhe(服と靴)」と書かれた大きな箱が立っていた。

これらは、街の人々からは「Kleidersammlung(古着回収)」と呼ばれているという。街の人たちは子どもが大きくなって着れなくなった洋服やもちろん不要になった大人の洋服も、捨てずにここに持ってくる習慣が身についているのだそう。

いらないものが必要な人の役に立つシステム

ポストに集まった服たちが行く場所は、ボックスによって違う。運営している会社が複数あって、ボックスのデザインもそれに伴い複数存在している。

例えば、ドイツ赤十字が運営している古着回収ボックス。

赤い、赤十字の文字が沢山書いてある古着回収ボックス

ここに集められた洋服は、毎年120万人の恵まれない人々に寄付されたり、余剰分が売却されて活動資金に当られたりしている(※)

またこれは「HUMANAPeople to People」という団体のドイツ支部が運営している古着回収ボックス。ドイツで初めて古着回収ボックスを設置しはじめた団体だ。

「国際連合HUMANAPeople to People」の古着回収ボックスが2つ並んだ写真

「HUMANAPeople to People」は、1996年にヨーロッパとアフリカの16の国家組織によって、世界の主要な人道的、社会的、環境的な課題に取り組むことを目的に設立された。現在連盟には合計30の独立したメンバー組織があり、ヨーロッパ、南北アメリカ、アジア、アフリカの大陸に広がっている(※)

http://www.humana.org/(HUMANAPeople to People)

ここで集めた洋服はベルリン市内に点在する店舗で古着として販売される。生まれた収益をアフリカのモザンビークにあるADPP GB(※1)という団体に寄付し、チャイルドエイド、恵まれない子どもたちのための学校、職業学校、教師のトレーニング、HIV / AIDSに対する取り組みの活動資金に当てられる(※2)。そのほか、アフリカ・ジンバブエにある約1,200人の小規模農家の支援活動も行っている。

「不要になったものを活用して、ものや支援を必要とする人たちのもとへ届ける」といった部分はそれぞれに共通しているが、活動内容はさまざまなのだ。

古着を活用することで、環境への負担も低くなる。HUMANAによると、新しいTシャツをつくると水・オイル・農薬・肥料・漂白・着色料などの資源を約4,000kg消費するのに対し、古着を再利用するとたったの30gに抑えられるそうだ。この差は地球環境のことを考えると、とても大きいと思う。

「お古(ふる)」を兄弟や親戚、近所の人たちにあげる、という文化は日本にもある。しかしベルリンではお古のシステムが街じゅうに構築され、スムーズに機能している。コミュニティを超えたドイツの“お古文化”に感動してしまった。

これらの背景を知ってから、道端で古着回収ボックスを見つけるたびに、どのような会社がどのような目的で古着を回収し、活用しているのか調べることがクセになった。

自分が大切にしてきた洋服を手放すときが来たら、「どのように活用してもらいたいか」を考えて、自分で選択したいと思う。

大切にされ続けてきたお洋服たちに出るやさしい風合い

わたしの洋服が好きなのは、小さなころからご近所さんや親戚にお古をたくさんもらって育ってきたからだ。

わたしは村の最後の子ども世代だったので、村では必然的に多くのお古が我が家に届けられていた。村には公共交通機関がなく一番近いお店まで父の車で約1時間かかっていた。そのため頻繁に買い物に行くことができず、わたしは毎回届けられる袋いっぱいの洋服をとても楽しみにしていた。

また、農家であり大工でもある祖父は「おままごとセット」などさまざまなものを手づくりしてくれた。その姿から「あるものを工夫して、ほしいものをつくり出す」ということを学んだ。

自然と、ご近所さんからいただいたさまざまなお古の洋服を組み合わせ、工夫しておしゃれを楽しむようになり、大人になったいまでも、洋服は新品のものよりもヴィンテージや古着を好んで着ている。

鏡の前で服を着るキャラクター

Photo by KiKi

いまわたしの手元にある洋服は、激選されたお気に入りのものだけ。

そのうちの何着かは、おばあちゃんが若かったころに着ていたもの。わたしが大人になってから、おじいちゃんがプレゼントしてくれたもので、たいせつな宝物だ。

最初の人の手からいろんな人の手に渡り、大切にされ続けてきた記憶のある洋服は、やさしい風合いがどんどん出て、すてきに輝き続けるように感じているのだ。

12/28公開予定の次回は、ベルリンでの道端の宝探し文化ついて紹介したい。

※掲載している情報は、2020年12月14日時点のものです。

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