Vol.1 生ゴミは”ゴミ”ではなく“畑の宝”

日本の小さな村がベルリンにもあった

ベルリン在住のイラストレーター・KiKiさんが、自身が育った日本の村とベルリンの暮らしの共通点をつづるコラム。今回は、ドイツの街じゅうに設置されている生ゴミ箱を紹介。彼女が育った村との意外な共通点とは?

KiKi

イラストレーター/コラムニスト

西伊豆の小さな美しい村出身。京都造形芸術大学キャラクターデザイン学科卒業後、同大学マンガ学科研究室にて副手として3年間勤務。その後フリーランスに。2016年夏よりベルリンに移住。例えば、…

2020.10.28
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ベルリンで約10年ぶりに再会した、“生ゴミ箱”

ベルリンに引っ越したはじめの年は、ドイツ人のホストファミリーのお家にホームステイをしていた。その国の文化と言語を学ぶには、その国の人たちと一緒に生活することが一番だと思ったからだ。

一緒に住むにあたって、家のなかと生活ルールを一通り説明してもらっていたときだった。ゴミの分別についての説明にさしかかると、懐かしさで心がぎゅっと締め付けられた。西伊豆の実家で慣れ親しんだ”生ゴミ箱”に、約10年ぶりに再会したのだ。

わたしの実家では、燃えるゴミ・燃えないゴミ・生ゴミと3種類に分別していた。生ゴミは専用バケツに入れ、バケツがいっぱいになると、祖父が自転車に乗って畑に捨てにいっていた。

農家の孫娘として育ったわたしが祖父母に教わったことは、食べ物を育てる大変さと、食べ物を残さず食べる大切さ。そしてどうしても出てしまった生ゴミは決して「ゴミ」ではなく、次に肥料として大活躍する大切な栄養であり、宝だということ。

高校に進学することになって村の外ではじめての一人暮らしをしたときに、生ゴミの分別がないことを知り驚いたことをとてもよく覚えている。どうして”畑の宝”を燃やしてしまうのだろう、もったいない……と思いながら、燃えるゴミに分別していた。

ベルリンのゴミはコンテナの色で分別されていて、黒が燃えるゴミ、黄色がプラスチック、緑がビン、青が紙、茶色が生ゴミと、とても細かく、わかりやすく指定されている。ちなみにドイツ語で生ゴミのことを「BIO Müll (BIOのゴミ)」という。

「Bio」とはドイツ語の「Biologisch」の略で「有機の」という意味。オーガニック食品のことも、こちらでは「Bio」と呼ぶ。

ドイツ人にとって生ゴミのことをBIO Müllと呼ぶことは当たり前かもしれないが、その響きが、「体にいいもの・栄養が詰まった宝物」として言語的に認識されてるようで、わたしは感動してしまった。

街じゅうで回収された生ゴミたちは、コンポストと気候にやさしいバイオガスに

わたしの実家の生ゴミは、祖父が自転車で畑に運んで肥料として再利用していたが、ベルリンの街じゅうで回収された生ゴミたちは、一体どう処理されているのだろう。気になって調べてみた。

すると……なんと! ベルリン市民たちは街全体での壮大なサステナブルプロジェクトに参加していることがわかった。

ベルリン市の清掃を担当している団体「Berliner Stadtreinigung」の公式HPに、生ゴミ回収について以下のように記載されている。

図

https://www.bsr.de/bioabfall-20009.php

まず家庭から出た生ゴミを、ゴミ収集車で回収。その後、工場で下処理し、2つのルートに分ける。

1つ目は、コンポストとして堆肥化。堆肥になった生ゴミたちは地元の農家さんたちに送られ、新たな野菜たちをつくる栄養素となっている。これは、わたしの実家と同じサイクルでとても嬉しくなった。

驚いたのは2つ目。なんとバイオガス化もしているのだ! どのくらいの量がつくられているのかというと、年間250万Lのディーゼル燃料に取って代わる量。そのバイオガスを約165台のゴミ収集車に補給し、新たな資源となる生ゴミたちを回収しに行くのだ。この動きを合計すると、年間9,000t以上のCO2を節約することにつながるのだという。

Berliner Stadtreinigungの公式HPには、「生ゴミは環境、気候、そしてわたしたちの財布を保護するのに役立つ」と、はっきりと重要性が記載されている。そこには完璧な持続可能な輪ができあ上がっていた。

生ゴミを出すときは、ビニール袋ではなく古新聞を活用する

ドイツでも日本と同じように、ゴミの出し方にまつわる問題はたびたび起こる。

ただ、ドイツで起こる問題は、日本とは少し違う。一部の人たちが家庭で出た生ゴミをビニール袋に入れて集め、それをそのまま生ゴミのコンテナに捨ててしまうことがあるのだ。ビニール袋は分解されるまで1000年以上もの時間がかかってしまうため、コンポスト化やバイオガス化することができない。

その解決策としてドイツでは土に還る特殊で無害なビニール袋が生まれた。スーパーなどで気軽に購入することもできるが少々高額なため、購入を渋ってしまう人もいるのが現状だ。

その対策としてBerliner Stadtreinigungが推奨しているのは新聞紙で袋をつくり、代用すること。

Berliner Stadtreinigungの公式サイトでは、生ゴミがどのように処理されているのかに加え、ゴミの出し方や、自宅でコンポストにチャレンジする場合のアドバイスなども書かれていてとてもおもしろい。ドイツ語だが、翻訳サイトなどを活用すれば内容は理解できると思う。ぜひ覗いてみてほしい。

生ゴミ処理の理解から、コンポストへの興味が倍増

イラスト

Photo by KiKi

ベルリンの家庭で出た生ゴミは、適切なかたちでコンテナに捨てれば、コンポストに入れられ、堆肥化されている。

つまり自分自身でコンポストをつくる必要がないということがわかったのだが、実はアパートの窓際で小さなコンポストを育てている。祖父が自転車で畑に運んでいった先の生ゴミたちの変化を知りたいと思って始めた。

きっと自分の手でやったからこその新しい発見があるはずだ。だから続けてみようと思う。

次回は、ベルリンでの宅配事情についてご紹介したい。

※掲載している情報は、2020年10月28日時点のものです。

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