ダイバーシティとは、多様性のある環境を意味する言葉だ。人種や性的指向、年齢などにとらわれず、スキルのある人に存分に活躍してもらう土台をつくることが、日本の企業には必要不可欠。ダイバーシティとインクルージョン、SDGsとの関連性やダイバーシティ経営などについて解説する。
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エレミニスト編集部
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ダイバーシティ(Diversity)とは、国籍や肌の色、性別や宗教など、いろいろな違いがある人たちで成り立っている環境を意味する。日本語では「多様性」と訳される。国際化が進むにつれて、重要性を増してきた。
ダイバーシティを表す属性には、つぎの2つがある。
・国籍
・人種・民族
・年齢・性別・障害の有無
・考え方、価値観・習慣
・宗教・趣味・職歴
・教育
・言語・スキル・知識
欧米は多文化な環境なので、お互いの違いを尊重し合うのは当たり前だが、日本には集団意識があったり、内・外をハッキリ区別する文化的背景があるので、自分と違う属性がある人に対して寛容だとは正直言い難い。
人はみんな違って当たり前なのに、自分や多数派の人と同じじゃないからという理由で差別するのは好ましくない。これからの職場や教育現場では、人には多様性があることを知り、お互いをリスペクトし合える感覚を養っていくことが不可欠だ。
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ダイバーシティのコンセプトは、移民大国アメリカで生まれた。同国では1863年に奴隷解放宣言がなされ、人種差別の撤廃を求める運動が全土に拡大した。
時を同じくして、女性の権利を訴えるフェミニズムが誕生。それから100年後の1960年代には、キング牧師による黒人差別撤廃を訴えるスピーチがあったり、ウーマン・リブと呼ばれる女性の権利を求める運動が起きたりして、公民運動はより活発になっていった。
アメリカにはこうした歴史的背景があり、今日でも差別のない社会を築くために人々は邁進している。
さまざまな人種や民族が入り混じり、多様なバックグラウンドを持つ人たちが共存するこの国には、実にいろいろな人たちがいる。日曜日は教会に行く人、同性のパートナーがいる人、英語が第一言語ではない人、一人ひとり状況が違うのがむしろ普通だ。
学校も職場も多文化な環境であることが多く、子どもたちは多様性のある社会の中でどう振る舞うべきかを幼いころから学び、会社ではそんな社会を生きるプロフェッショナルとしての態度が常に求められている。
インクルージョンは、どんな特性がある人でも排除せず、他の人と同様に仕事に参加できる機会を与え、それぞれの能力や経験に応じて人材を活かすというものである。
例えば、LGBTQ+の従業員に対して、見た目の性別に関わらず、本人が希望する仕事ができるように配慮するというのが、これにあたる。
ダイバーシティが、多様性のある環境やその環境を受け止めることを示すのに対し、その環境をどう活かすかに焦点を置いているのが、インクルージョンだ。この2つの言葉はしばしば一緒に使われ、すでに多くの企業で、会社が目指すべき指針として掲げられている。
「ダイバーシティ&インクルージョン」とは、「ダイバーシティ」と「インクルージョン」の2つを組み合わせたものだ。
人間は誰しも、気づかないうちに偏った見方で人を判断することがある。とくに日本は、人の言わんとすることを察しようとする文化があるため、思い込みが先走りがちだ。シニアはパソコンが苦手だとか、男性だから育児休暇は必要ないだとかいう勝手な一般論に気を取られず、従業員一人ひとりに合った職場環境を整えることが必要とされている。
自分が会社にちゃんと受け入れられていることを感じられれば、従業員のモチベーションもあがり、離職率を下げることが可能になるかもしれない。これは企業にとって、大きなメリットではないだろうか。
2015年の国連サミットで採択された世界共通の持続可能な開発目標「SDGs」。17の目標と169のターゲットから構成されるなか、「ダイバーシティ」は重要なキーワードだ。
例えば、目標5「ジェンダーの平等を実現しよう」。日本のジェンダーギャップ指数は、2022年は146カ国中116位と、先進7カ国中において最下位。まだ社会で活躍する女性はマイノリティとみられる面がある。
またLGBTQ+といった性的マイノリティの人は、社会で生きづらさを感じ、自身の性自認を隠している人もいるという。そのような人々も広く受け入れるダイバーシティの考え方が改めて求められているのだ。
また目標10「人や国の不平等をなくそう」もダイバーシティとつながりがある。年齢、性別、人種などに関わらず、すべての人々が平等なチャンスを得られることが大切で、そのためにはダイバーシティを進めることが重要となる。
SDGsの目標達成は、一部の国、地域、企業、個人だけで行うものではなく、ありとあらゆる人々が連携して取り組まなければならない。このことを明確化したのが、目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」だ。
SDGsの目標としてダイバーシティを掲げているものはない。しかしこの目標17からもわかるように、SDGs全体の根幹となる考え方にダイバーシティがあると言えるだろう。
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さまざまな人種の人が共存する欧米と、島国日本が取り組むべき課題には、幾分差があるかもしれない。
例えば、日本は世界でいちばん高齢化が進んでいて、経験豊富なシニアの人手が活用されずに余っている状態だ。60歳で定年を迎えても、人生100年と言われるいまの時代、年金と貯蓄だけに頼るのは不安な点も多い。
そんなスキルあるシニア世代に働いてもらえれば、一から人材を育てる手間も省けるし、豊富な経験を活かして即戦力として活躍してもらえるから、会社にとっては雇うメリットがたくさんある。
働く意欲の高い彼らの労働力は、団塊世代ということもあって、かなり潤沢だ。リタイア組の受け入れ態勢を整えることは、ダイバーシティのあり方の一つと言えるのではないだろうか。
また、日本は女性の社会進出が他の先進国と比べてあまり進んでいない。女性の管理職の割合は、G7の中で最下位。性別によってキャリアに差が出ているのが目に見えて明らかなため、国は2020年までに女性管理職の割合を全体の30パーセントまで引き上げる目標を立てたが、目指す数字に達せなかったのが現状だ。(※1)
日本におけるダイバーシティとは、「働きたい」という強いポテンシャルがあるシニアや女性が活躍できる基盤をつくり上げることではないだろうか。昨今の働き方改革の一環として、ダイバーシティに目を向ける企業が増えているのは、このような背景があってのことだ。
多様性がある環境で、人々の個性を活かした経営をすることを「ダイバーシティ経営」という。働く環境を整えれば、従業員のモチベーションが上がって業績向上に直結する。
そうなると、株主への企業アピールにもなるため、企業の活性化を促す経営手法として、さまざまな業界から注目をあびている。
いろいろなバックグラウンドがある人たちが力を合わせれば、新しいアイディアが生まれやすくなり、企業活動にいい影響をおよぼしてくれることが期待される。魅力的な会社には、優秀な人材はもとより、持続可能な企業への投資に興味がある人も同時に集まってくる。
ダイバーシティ経営に力を入れることは、より強固な組織づくりにもつながるのだ。
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