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2024年に発表された農林水産省の最新データから、都道府県別の漁獲量をランキング化して紹介する。ランキング上位の都道府県や主な魚種についても説明。漁獲量を左右する要因、日本全体での漁獲量の歴史的な推移と近年の傾向、国際的なルール制定の影響も解説する。
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日本の都道府県別漁獲量(内水面・養殖を含まず)を下記にランキング形式で紹介する。※2024年度発表、2022年分の確定データをもとに作成。データのない県は除外する。(※1)
順位 | 都道府県名 | 生産量 | 主要魚種 |
---|---|---|---|
1 | 北海道 | 870,286トン | ほたてがい |
2 | 茨城県 | 285,164トン | いわし類 |
3 | 長崎県 | 262,233トン | かつお類 |
4 | 宮城県 | 187,176トン | いわし類 |
5 | 静岡県 | 147,231トン | かつお類 |
6 | 千葉県 | 103,222トン | いわし類 |
7 | 島根県 | 97,843トン | いわし類 |
8 | 鳥取県 | 82,290トン | いわし類 |
9 | 岩手県 | 74,815トン | さば類 |
10 | 宮崎県 | 68,406トン | いわし類 |
11 | 愛媛県 | 65,018トン | いわし類 |
12 | 三重県 | 64,919トン | いわし類 |
13 | 青森県 | 63,514トン | いわし類 |
14 | 福島県 | 57,900トン | いわし類 |
15 | 高知県 | 48,458トン | かつお類 |
16 | 石川県 | 47,401トン | いわし類 |
17 | 兵庫県 | 41,661トン | いわし類 |
18 | 鹿児島県 | 40,621トン | まぐろ類 |
19 | 愛知県 | 37,581トン | いわし類 |
20 | 神奈川県 | 28,824トン | かつお類 |
21 | 東京都 | 28,229トン | かつお類 |
22 | 新潟県 | 26,020トン | かつお類 |
23 | 富山県 | 25,725トン | いわし類 |
24 | 福岡県 | 20,954トン | ぶり類 |
25 | 大阪府 | 20,453トン | いわし類 |
26 | 山口県 | 19,757トン | いわし類 |
27 | 大分県 | 18,985トン | いわし類 |
28 | 広島県 | 16,890トン | いわし類 |
29 | 和歌山県 | 14,536トン | さば類 |
30 | 香川県 | 13,354トン | いわし類 |
31 | 熊本県 | 13,070トン | ー |
32 | 京都府 | 11,416トン | ー |
33 | 沖縄県 | 10,689トン | ー |
34 | 徳島県 | 9,663トン | ー |
35 | 福井県 | 8,616トン | ー |
36 | 佐賀県 | 6,836トン | ー |
37 | 秋田県 | 5,527トン | ー |
38 | 山形県 | 3,154トン | ー |
39 | 岡山県 | 2,555トン | ー |
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2022年分確定データの最新ランキングから、全国の水産物漁獲量傾向について見ていこう。
都道府県別の漁獲量で不動のトップは北海道だ。日本全体の漁獲量のうち3割近くを占める北海道は、2位茨城県に実に3倍以上の差をつけての圧倒的1位である。大きな割合を占めるホタテ貝のほか、魚類・海藻類の漁獲量も安定して日本国内トップレベルを誇る。
漁業の盛んな沿岸部は、太平洋側・日本海側ともに安定した漁獲量である。太平洋側では茨城県・宮城県・静岡県が5位までにランクイン。日本海側でも長崎県が全国3位、7位ではあるが国内上位クラスの水揚げ量を誇る堺港を擁する鳥取県も健闘している。
離島を擁する都道府県も堅調な漁獲量を示した。全国トップクラスの道府県を除いても、離島を擁する東京都・鹿児島県などは手堅く漁獲量を維持している。
鹿児島など一部のエリアを除いて、サバ科やアジ科など青魚が中心に水揚げされている。あじやいわし、さばなど一般の家庭で親しみある魚は各地で穫れている。
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ランキング上位の各道府県について、その特徴や傾向を紹介する。
漁業域の広さ、漁業従事者数の多さもあって抜きんでてトップの北海道。沿岸部に多くの漁港を有し、太平洋側・日本海側ともに高い漁獲量を誇る。主要魚種はホタテ貝を筆頭に、たら類、さけ・ます類等の漁獲量が多い。また海藻類、とくに昆布の収穫量が多く全国生産量の95%を占めるのも特徴的である。(※1)
沖合に親潮(寒流)と黒潮(暖流)の交わる好漁場を持つ茨城県。太平洋に面し長い海岸線を持つため沿岸漁業も盛んである。(※2)漁獲量の多くを占めるのはいわし類で全国トップの漁獲量であり、さば類の漁獲も堅調だ。
多くの離島・湾・岬などの特徴的な地理形状を持つ長崎県。(※3)複雑な海岸線や海底地形を有し、広大な海域には対馬暖流をはじめとした多くの海流が流入し好漁場が形成されている。対馬海流(暖流)に乗って回遊するいわし類やあじ類の漁獲量が多く、なかでもあじ類に関しては全国トップの漁獲量を誇る。
県中央部に突出した男鹿半島を境に、北は複雑な海岸線を描くリアス式海岸・南は平坦な砂浜に形成された仙台湾を持つ宮城県。(※4)この沖合でも親潮(寒流)と黒潮(暖流)の交わる好漁場を持ち、金華山・三陸沖漁場は世界三大漁場としても有名だ。いわし類を筆頭に、さば類・かつお類・まぐろ類と多様な漁獲傾向を持ち、県内での市場流通機能や水産加工業も発達している。
入り組んだ岩礁域の伊豆半島、湾口部では水深2,500mにも達する駿河湾、広大な砂泥域からなる遠州灘と変化に富んだ海岸線を有する静岡県。(※5)沖合には暖流の黒潮が流れその豊かな恵みを受けた好漁場を持つ。そのため暖流に乗って回遊するかつお類およびいわし類が多く、とくにかつお類は全国トップの漁獲量だ。またまぐろ類・さば類の漁獲も好調で、県内の水産加工・ブランド化も盛んである。
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年度によって多少変動はあるものの、都道府県ごとの漁獲量およびその魚種傾向には大きな差異が存在している。その違いはいかにして発生するのか、主な要因について解説する。
地理的環境でいうと、当然ながら海面を多く保有する都道府県は漁獲量において有利だ。それには海岸線延長の長さ、および離島などの存在による漁業海域の広さが漁獲量に深く関係してくる。(※6)
また日本列島自体は南北に長く多様な環境を有し、日本の海域全体においての生物多様性は非常に高いとされる。(※7)そのため地域によって回遊・分布する魚種も多様であり、さらに海岸線や海流の特徴からも都道府県によって漁獲量・主要な魚種が大きく異なる一因と考えられる。
漁業従事者数の地域差対象地域でどれだけ漁業が盛んであるか、その指標のひとつが漁業就業者の数だ。最新の確定データ(2018年)によると都道府県別 漁業就業者数トップ3は、1位:北海道(24,378人)、2位:長崎県(11,762人)、3位:青森県(8,395人)と、いずれも漁獲量ランキングの上位層である。(※8)とくに北海道は長崎県の2倍以上と多くの人が漁業に従事しており、まさに漁獲量の多さに比例しているといえよう。
漁港など、水産業関連施設も指標のひとつだ。水産庁の都道府県別漁港数によれば北海道の漁港件数がトップであり、大規模な漁港の多い都府県は漁獲量ランキングでも上位層に入る。(※9)また魚港であがった水産物の流通・加工経路の整備も重要だ。陸揚げされた魚は品質を落とさないよう、なるべく早い段階で産地市場、あるいは水産加工業者などへ運ばれる必要がある。水産物の流通においては決め細かな選別・仕分けや、常に冷凍・冷蔵により鮮度を保持する必要があることから流通コストが大きい。そのため流通経路がスムーズに進むよう整備されている地域では漁業に活気があり、水産物を主要な産業品として活かすことができている。
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第二次世界大戦後、日本の漁業は沿岸から沖合へ、沖合から遠洋へと漁場を拡大することによって発展した。(※10)1965年(昭和40年)からの記録によればその漁獲量は増え続け、1984年のピーク時には1,151万トン(内水面・養殖を含まず)の漁獲量を記録している。このとき世界の漁獲量に占める日本の割合は約16%と非常に高いものであった。(※11)
しかし平成に入り1989年からは減少に転じ、約7年間で急激に減少したのち、緩やかな減少を続けながら現在に至る。2023年のデータでは日本全国の漁獲量は約282万トンで、前年比4.3%の減少である。(※12)
減少に転じたきっかけのひとつは、国際的な漁業管理の強化である。先んじて1977年に200海里水域の設定で遠洋漁業の割合が低下、さらに公海上での大規模な漁業の停止が次々と制定され、漁獲量は減少していった。国際的なルール設定は水産資源保護の目的があり、近年においては各国協調のもと過剰な漁業を制限する動きが広がり日本もそれに賛同している。一方「養殖業」においては技術の普及・発展により近年は生産量が安定し、生産額も堅調だ。(※10)
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各魚種別の漁獲量(2022年)からみられる傾向についても解説する。(※1)
まぐろ類の漁獲量トップ3は宮城県・静岡県・高知県だ。とくに宮城県と静岡県でのまぐろ類漁獲量は僅差でありトップ争いの関係でもある。いずれも太平洋側に面して遠洋漁業が盛んであり、暖流性のまぐろが捕獲しやすい地域といえるだろう。またまぐろ類の総数では上位に劣るものの、クロマグロ(本マグロ)の漁獲量トップは長崎県であることも先の条件に当てはまり、興味深い結果といえる。
かじき類は全魚種の漁獲量に対して割合は大きくはないが、堅調な漁獲量を示している。都道府県別では宮城県が抜きんでた漁獲量で、全国の26%以上を占める。その大半はメカジキであり、一般的な食用魚として普及している。
かつお類の漁獲量トップ3は静岡県・宮城県・東京都だ。「かつおといえば高知」のイメージを持つ方には意外な結果かもしれない。ただし高知県のかつお類漁獲量は東京都に次いで4位であり、消費量においては高知県が1位である。かつお類もまぐろ類と同じく暖流性の魚で、太平洋側へ回遊する性質を持つため日本海側での漁獲量は少ない。
日本のさけ・ます類の漁獲量のうち、約98%が北海道産である。その他はわずかに東北・北陸で見られるのみで圧倒的に北海道の特産品といえよう。さけ・ます類は生物的性質として、川で産まれた後は北の海に向かいベーリング海やアラスカ湾で成長する。(※13)これを3〜5年程度繰り返した後南下しようとするが、そこまで成長できるものはわずか数%だ。その大半は南下の途中、日本においては北海道の定置漁業によって水揚げされる。
いわし類は、全国的に主要魚種とする府県が多い。暖流性の小型魚であり、太平洋側では黒潮・日本海側では対馬海流に乗って暖かい時期に回遊し海岸に接近する。そのため近海漁業を行う地域での漁獲量が多い傾向にある。
さば類の漁獲量トップ3は長崎県・茨城県・宮城県だ。日本全域に広く分布し、海面の表層近くを大群となって回遊する。食卓でもお馴染みの魚だが鮮度が落ちるのが早いため、手早い流通・加工技術が求められる。
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魚が身近である日本での漁獲量を、都道府県ごとにランキングとして紹介した。漁獲量の多い地域や、都道府県によって特定の魚種の割合が異なるなど、同じ日本国内でも海に対する地理的形状や漁業に関する設備の違いや地域環境の多様性もある。産地ブランドや地域のイメージ等で意外に思われる結果もあるかもしれない。しかしそれも興味深いところであり、水産資源や各都道府県の特徴に興味を持つきっかけになれば幸いだ。
※1 海面漁業生産統計調査 海面漁業の部 2-2 大海区都道府県振興局別統計 魚種別漁獲量 _ ファイル _ 統計データを探す|政府統計の総合窓口
※2 茨城の水産(令和5年12月)_はじめに|茨城県
※3 長崎県の漁業の紹介|長崎県
※4 みやぎの海で漁師になろう| 宮城県漁業就業者確保育成センター
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※6 環境統計集_3章 自然環境_水際線 _ _3.24 都道府県別海岸延長 [Excel版 109KB]|e-Govデータポータル
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