世界の漁獲量ランキング 日本の現状と世界の漁業が抱える課題とは

fish

Photo by NOAA on Unsplash

世界中で食べられている水産物。世界全体では漁獲量が増え続けているが、いくつか課題もある。この記事では世界の漁獲量ランキングを紹介し、ランキング上位国の特徴と背景、日本の現状を解説する。また、世界の漁業生産量の推移と抱える課題についても言及する。

ELEMINIST Editor

エレミニスト編集部

日本をはじめ、世界中から厳選された最新のサステナブルな情報をエレミニスト独自の目線からお届けします。エシカル&ミニマルな暮らしと消費、サステナブルな生き方をガイドします。

2024.12.21

世界の水産物漁獲量ランキング

漁獲

Photo by Jakub Kapusnak on Unsplash

ここでは、世界の水産物漁獲量・生産量の国別ランキング上位50位を紹介する。1位は中国、2位はインドネシア、3位はインドという結果であった。上位4位まではアジア圏が占める結果となっている。(※1)日本は12位だ。

順位国名漁獲量・生産量(トン)
中国88,567,716
インドネシア22,032,425
インド15,774,325
ベトナム8,760,378
ペルー5,509,031
ロシア5,339,717
バングラデシュ4,758,731
アメリカ4,741,660
ノルウェー4,262,103
10チリ4,214,240
11フィリピン4,120,499
12日本3,910,316
13韓国3,567,078
14ミャンマー3,061,808
15タイ2,386,672
16エジプト1,992,627
17メキシコ1,972,994
18マレーシア1,892,541
19エクアドル1,811,374
20モロッコ1,592,954
21ブラジル1,497,393
22アイスランド1,486,086
23イラン1,292,176
24スペイン1,085,165
25ナイジェリア1,043,230
26北朝鮮895,020
27台湾878,847
28カナダ870,640
29カンボジア864,050
30アルゼンチン853,775
31トルコ849,826
32イギリス820,500
33モーリタニア780,383
34オマーン751,824
35フランス735,366
36フェロー諸島714,655
37パキスタン665,520
38ガーナ652,309
39タンザニア548,789
40ウガンダ546,312
41セネガル535,356
42デンマーク496,114
43南アフリカ484,806
44アンゴラ471,672
45モザンピーク461,914
46ニュージーランド452,470
47ナミビア416,009
48スリランカ391,703
49オランダ338,052
50ギニア336,050

最新ランキングから見る世界の漁獲量傾向

漁獲量

Photo by Nguyen Linh on Unsplash

最新ランキングから見る世界の漁獲量の傾向について説明する。

中国が圧倒的1位

中国の漁獲量は88,567,716トンであった。2位のインドネシアの漁獲量は22,032,425トンであったため、中国が圧倒的であることがわかる。(※1、※2)

アジア勢が上位を占める

ランキング1位は中国、2位はインドネシア、3位はインド、4位はベトナムで、アジア勢が上位を占めている。これらの国は漁業がさかんな国であり、アジアの上位国で世界の総漁業生産量のほとんどを占める。(※1、※3)

南米は天然漁業と養殖が強み

ランキング5位にはペルー、10位にはチリが入っている。ペルーでは、天然漁業(海面漁船漁業)による生産量が多く、チリはサーモンの養殖で有名だ。(※1、※4、※5)

ノルウェーは養殖で躍進

北欧のノルウェーはランキング9位。ノルウェーはサーモンの養殖がさかんである。サーモンの養殖生産量は世界全体の45%を占め、1位となっている。(※6)

ロシアは上位を維持

ロシアの漁獲量は2017年以降は500万トン以上となっており、上位をキープしている。(※7)

サステナブル・シーフードとは? 海を守るために私たちができる選択

関連記事

ランキング上位国の特徴と背景

Aquaculture

Photo by Creab ThePolymath on Unsplash

ランキング上位国には、どのような漁業の特徴があるのか、またランキング上位となった背景について解説する。

中国

中国は漁獲量1位の座を長年占め続けている。なかでも養殖の収穫量が増加傾向にあり、2020年の養殖収穫量は7,048万tで、世界全体の半分以上を占めている。(※2)

中国が漁獲量1位の理由は、養殖の収穫量増加だけではない。FAOの統計によると、中国で漁獲される魚種の生産量の4割を占めるのが「その他の水産物」だ。これは、世界的に一般的ではない水産物を指す。また「種類が特定されていない海産魚類」の生産量も2割を占めており、なにを漁獲しているのかわからない、正確な生産実態が不明な状況がある。(※4)

インドネシア

インドネシアでも近年は養殖業が伸びており、漁業生産量の半分以上を占めている。また、漁船漁業も増加傾向にある。海面漁船漁業で生産量が増加している魚種にはカツオやマグロがあり、日本よりも生産量が多く世界最大の規模となっている。(※4)

インド

インドでも養殖業の生産量が増加しており、それに加えて内水面漁業も増加傾向にある。内水面養殖においては世界第2位を誇り、養殖では鯉、ナマズ、雷魚、エビなどが生産されている。(※8)

ベトナム

ベトナムは南シナ海に面する場所に位置し、多くの河川があることから漁業や養殖に有利な環境であるのが強みだ。とくにエビの養殖がさかんであり、水産物輸出の約7割を占めている。(※9、※10)

ペルー

ペルーの漁獲量は、年によって大きく変動する。その理由は、漁業生産のほとんどをペルーカタクチイワシに依存している構造にある。また、ペルーの沖合はエルニーニョ現象が起きやすい環境である。エルニーニョ現象は、ペルーカタクチイワシの漁獲量にも影響を与える。(※4)

MSC認証とMSC「海のエコラベル」とは 基準と仕組みを詳しく解説

関連記事

世界の漁獲量ランキングから見る日本の現状

fishing boat

Photo by Anastasia Fomina on Unsplash

日本の漁獲量はランキング12位という結果であった。このランキングをもとに日本の現状を紹介しよう。

水産大国から12位に転落

日本は四方を海に囲まれ、漁場にも恵まれている。1984年には1,282万トンの漁獲・生産量があり、世界第1位で「水産大国」「漁業大国」と呼ばれるほどであった。しかし2022年の漁獲量・生産量は3,910,316トンで、ランキングでは12位に転落。日本では漁業・養殖業生産量が年々減少している。(※1、※11)

品質では世界をリード

漁獲・生産量のランキングでは上位に入れなかったものの、日本の水産物は、品質では世界をリードしている。これは、水産物の鮮度を保つ高度な冷凍技術の発展によるものだと考えられる。(※12)

日本発の水産エコラベル「MEL認証」とは? 取得条件とメリット、事例を解説

関連記事

世界の漁業生産量の推移と抱える課題

魚群

Photo by jean wimmerlin on Unsplash

世界の漁業・養殖業生産量は増加し続けている。漁業の漁獲量は1980年代後半以降はほぼ横ばい状態であるが、養殖業の収穫量は増加しているのが現状だ。(※2)

漁業の漁獲量が横ばいである理由には、乱獲による水産資源への影響、地球温暖化による海水温の上昇で生態系が変化しているなどが考えられる。また違法・無報告・無規制に行われている「IUU漁業」が世界中で問題となっている。このIUU漁業は、日本においても起きている。(※13)

違法行為がはびこる「IUU漁業」の問題点 世界の海洋資源を守るための対策とは

関連記事

持続可能な漁業を推進するために

漁船

Photo by Grianghraf on Unsplash

持続可能な漁業を推進するため、国際社会ではさまざまな取り組みを進めている。なかでも代表的なのは、FAOの「責任ある漁業行動規範」だ。これにより、資源の持続的利用を促進している。またIUU漁業の防止・抑制・廃絶を目指した国際取り決めである「PSMA」の実施や、地域漁業管理機関では国際的に協力して資源管理を行っている。(※14、※15、※16)

海洋産業を意味する「ブルーエコノミー」 海を守りながら社会の発展を目指す取り組みとは

関連記事

豊かな海、資源を守るために

漁獲された魚

Photo by Natalia Gusakova on Unsplash

漁業の課題や問題が解決しなければ、今後は漁獲量が減るどころか、最悪の場合には海で獲れた魚介類が食べられなくなる日が来るかもしれない。こうした課題を解決するには、国際的な協力と、個人の責任ある消費行動、気候変動対策が重要となるだろう。

※掲載している情報は、2024年12月21日時点のものです。

    Read More

    Latest Articles

    ELEMINIST Recommends