海洋産業を意味する「ブルーエコノミー」 海を守りながら社会の発展を目指す取り組みとは

幾重にも波が打ち寄せる浅瀬

持続可能な社会をつくるうえで、地球の面積の7割以上を占める海が注目されている。キーワードは「ブルーエコノミー」。海に関係あるものは、魚などの漁業資源だけではない。この記事では、観光、輸送、再生可能エネルギーにも関わるブルーエコノミーの目的や主な取り組みの事例を解説する。

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2021.01.30

「ブルーエコノミー」の意味とは

波打つ水面

Photo by Ivana Cajina on Unsplash

「ブルーエコノミー」とは、海を守りながら利用することで経済や社会全体をサステナブルに発展させていこうとする海洋産業のこと。

2010年にゼロ・エミッション構想を考案した起業家のグンター・パウリ氏の著書『The Blue Economy』に始まる。ブルーエコノミーの考え方は以前からあったが、プラスチックごみの問題以降、注目を集めている。

ブルーエコノミーは、持続可能な開発目標(SDGs)の目標の14「海の豊かさを守ろう」にリンクする。

海洋汚染の防止、海洋・沿岸の生態系の回復のための取組、過剰漁獲の禁止などで構成される。海洋資源の持続可能な利用を通じた経済成長の実現を図る活動である点に大きな意義があると言えるだろう。

ブルーエコノミーに含まれる企業や業種

ブルーエコノミーが含む経済圏は広い。漁業などの一次産業、マリンスポーツなどの観光業、船での輸送業など第3次産業、波力発電、洋上風力発電など再生可能エネルギー事業も含まれる。

2019年はプラスチックごみ問題が世間を騒がせた。現代人は1週間あたり5g、クレジットカード1枚と同量のプラスチックを食べているという研究結果が知られるようになり、少しずつ人々の意識も変わりつつある(※1)。

2018年にシロナガスクジラの赤ちゃんが打ち上げられた神奈川県では、「かながわプラごみゼロ宣言」が発出された。米国では、廃プラスチックをなくす国際アライアンスが2019年1月に発足した(※2)。

ブルーエコノミーの具体的な取り組み事例

スキューバダイビングをする大人

Photo by Anurag Harishchandrakar on Unsplash

岡山県備前市・日生町

1950年ごろの日生には、590ha(東京ドーム100個分以上)のアマモ場が海に広がっていたが、水質悪化や浅瀬の埋め立てなどにより1980年には12haにまで減少。

水質浄化作用があるアマモが密集して生えるアマモ場には、さまざまな海の生き物が集まる。危機感を持った地元の漁業者がアマモの再生に取り組み、2015年には250haまで回復したという(※3)。

アマモ再生は、地域の学校カリキュラムにも取り入れられている。さらに備前市は「備前市里海里山ブランド推進協議会with ICM」というプロジェクトを立ち上げた。セクターを超えて協力や活動が広がった岡山県には、国内外から視察が訪れている。

中国・山東省「ブルー経済特区」

中国は2011年、同国初の国家レベルの海洋経済開発戦略を策定。青島にブルー経済特区を設けた。そこで重要な存在となっているのが海藻だ。

海藻は主に食用として利用されることが多いが、海藻からとれる成分には、粘着剤や安定剤、ゲル化剤、植物繊維などとして利用できるものがあり、食品製造や医療、工業でも広く利用されている。

浄水効果を持つ海藻は排水処理に活用されることもあり、ブルーエコノミーの好例として注目されている。

ブルーエコノミーは持続可能な社会へのカギ

ブルーエコノミーの成功例には、地域の伝統的な知識や産業と新しい技術や考え方が組み合わさることで、新たな産業やサービスが生まれたケースが多い。

ブルーエコノミーは持続可能な社会のあり方を模索する中で必要不可欠な要素となっていくだろう。

※ 参照サイト
ブルーエコノミーで環境・経済・社会のサステナブルな発展を|笹川平和財団
https://www.spf.org/publications/spfnow/0067.html

※1 先週食べたのはクレジットカード、今週も食べるとペン?|WWF
https://www.wwf.or.jp/file/20190612_oceana01_1.pdf
※2 「かながわプラごみゼロ宣言」―クジラからのメッセージ―|神奈川県
https://www.pref.kanagawa.jp/docs/p3k/sdgs/index.html
※3 アマモ場再生計画|日生町漁業協同組合
https://www.hinase.net/amamo/

※掲載している情報は、2021年1月30日時点のものです。

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