水質汚染を軽減させるナチュラルクリーニング 具体的なアイテムや掃除方法を紹介

シャボン玉

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環境負荷に配慮し、自然界に存在する物質や化学薬品を含まない洗剤を用いるナチュラルクリーニング。使用する材料や洗剤の種類とその特徴に触れながら、具体的な掃除方法やメリット・デメリットについて解説していく。

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2024.12.25
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ナチュラルクリーニングとは

白い壁と植物の葉

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環境負荷に配慮し、自然界に存在する物質や、化学薬品を含まない洗剤を用いた掃除方法がナチュラルクリーニングだ。さまざまな特性を持つ物質を汚れの種類に合わせて使い分けることで、エコと効率の両立が期待される。(※1)

ナチュラルクリーニングが注目される背景

古来より人間の生活と水は切っても切り離せない関係にあり、水源の汚染は深刻な問題であった。近代日本でも工場からの産業排水によりさまざまな公害病が発生したことはよく知られている。しかし比較的見落とされがちである家庭からの生活排水も、実は水質汚染の大きな原因だ。それぞれの家庭からの排水は少量であり規制が難しいため、個々の家庭で生活排水について考えることが求められている。(※2)

そのためのアクションのひとつとして注目されたのがナチュラルクリーニングだ。家庭用洗剤を自然由来の物質に置き換えることで、化学洗剤の排出を減らす掃除方法として関心を集めている。

ナチュラルクリーニングの基本の考え方

ナチュラルクリーニングには、学校の授業で習ったような化学の仕組みが用いられる。とくに洗剤を用いる必要がある汚れは酸性・アルカリ性のものが多い。それを反対の性質を持つ物質で中和して落とすという方法がナチュラルクリーニングの基本だ。(※3)汎用的な洗浄力の低いアイテムであっても、その性質に合わせて使うことで十分な効果を発揮することができる。

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ナチュラルクリーニングで使用する主な材料・洗剤

シンプルな衣装の男女

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ナチュラルクリーニングで用いられるアイテムは合成洗剤と比べて洗浄力が低い傾向にあるが、その性質に合わせて使うことで効果を発揮する。ここでは各アイテムの性質や適した汚れの種類、使用方法を紹介する。(※4)

重曹(炭酸水素ナトリウム)

ベーキングパウダーの成分のひとつとして知られている重曹。水溶液は弱アルカリ性を示し、弱い酸性の汚れを中和する作用がある。水に溶けにくい性質を利用し、粉末の粒子をクレンザー代わりにしてキッチンなどの油汚れをこすり落とすのに適している。また、鍋の焦げ落としにも利用できる。

クエン酸

柑橘類の食品などにも含まれる物質だが、クエン酸自体の匂いは弱い。水溶液は酸性を示し、アルカリ性の汚れを中和する作用がある。アルカリ性成分に由来する水アカや尿汚れに強く、キッチンやトイレなど水回りの掃除に有用だ。

セスキ炭酸ソーダ

鉱石から産出されるアルカリ性の物質で「セスキ炭酸ナトリウム」とも呼ばれる。同じアルカリ性の重曹より強いアルカリ性を示すため、重曹では落としきれないしつこい油汚れに向いている。粉末は水に溶けやすいため、スプレーにして油汚れや皮脂汚れの拭き取り掃除に使うのが適している。

過炭酸ナトリウム

弱アルカリ性で「酸素系漂白剤」として売られていることが多い。水に溶かした際に漂白効果のある酵素が発生し、その作用で汚れを落とす。そのため水溶液のつくり置きはできず、使用の都度に水に溶かすことで効果を発揮する。通常の使い方として水やお湯に溶かして衣類の洗浄ができるほか、油や皮脂の強い汚れをつけ置きして落とすことに適している。

アルコール

消毒用アルコールとして一般的に流通しているエタノールも掃除のアイテムになる。エタノールをスプレーした布で家具や家電製品についた手垢汚れを拭き取り、除菌することができる。揮発性が高いため拭き取り後の二度拭きは不要だ。ただしよく知られているとおり引火性が強く、また塗装や材質を傷める働きも強いため注意して使いたい。

石けん

動物・植物性油脂とアルカリ性物質を混ぜ合わせてつくられるのが石けんであり、その性質は弱アルカリ性である。顔や手、身体を洗うものというイメージも強いが石けんもまたナチュラルクリーニングのアイテムになる。弱アルカリ性の性質から油や皮脂汚れに強く、衣類を含む布類の洗浄に適している。

酢(お酢)

クエン酸同様に酸性の性質を持ち、食品として利用されている。クエン酸と同じくアルカリ性の水アカなどに強いが、特有のツンとした匂いがある。こちらは食品(食酢)を転用できるため、余らせてしまった場合やクエン酸がない場合の代用としても活用が可能だ。

マイクロバブル

マイクロバブルとは、水に含まれる微細な気泡(直径が約1~60μm以下)のことを指す。(※5)水と空気からなり、マイクロバブルの帯電性により油分などの汚れを吸着して引き剥がすという仕組みだ。シャワーヘッドでも知られているが、これもまた化学物質を含まないナチュラルクリーニングの一種といえるだろう。洗浄剤としては、安定した状態のマイクロバブルを配合したスプレーが販売されており、幅広い汚れの拭き取りに使える。

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ナチュラルクリーニングのメリット

ピンクのバスルーム

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ナチュラルクリーニングを取り入れることで、さまざまなメリットが期待できる。

環境にやさしい

ここまでに述べたとおり、従来の合成洗剤の使用を軽減し生活排水の汚染軽減に寄与できる。また自然素材を用いるため生分解性が高く、長期的な利用に対しても環境負荷が軽減できる。

健康への配慮

ナチュラルクリーニングは食品として使われる原料が多いことも特徴だ。そのため、合成洗剤を比べると手肌に触れても安心だ。もちろん清掃時には、手袋をするなどして長時間の接触は避けるべき。また一部アイテムを除き、洗浄後は二度拭きやすすぎ洗いをすることが推奨される。ただしこれらの注意点は合成洗剤使用時にも共通するため、適切に扱えば人体への影響は合成洗剤より小さいといえる。

コストの低さ

さまざまな成分を配合した合成洗剤に比べて、単純な成分・もしくは原料そのままである清掃アイテムは安価に手に入れることができる。最近ではナチュラルクリーニングアイテムは広く流通しており、少量でも低コストで導入しやすい。継続して使う場合は、大容量だとさらに安価に購入できる。

多種多様な合成洗剤が不要

現在は「風呂掃除用」「床拭き用」といった場所ごとの合成洗剤が多数販売されている。しかし汚れの性質を把握し、適切なナチュラルクリーニングアイテムを使用することで「違う場所でも同じ洗剤を使う」ことが可能になる。日常的な汚れ取りなら先に紹介した数種類のアイテムで対応できることが多く、結果として新しく合成洗剤を買わずに済むなど、家計や収納スペースに関しても利点がある。

危険性が低い

洗剤のなかには合わせることで有毒な物質を発生させるものがあるが、ナチュラルクリーニングに使われる素材はその危険性が低い傾向にある。ただし、クエン酸に塩素系の製品を混ぜる、または一緒に使うと有害な塩素ガスが発生して危険だったりと、取り扱いを注意すべき点もある。(※6)製品に注意を促す記載があるときは、しっかり確認をしてから使用するようにしよう。

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ナチュラルクリーニングのデメリットと注意点

植物と手

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多様な利点があるナチュラルクリーニングにもデメリットはある。また使い方によっては逆効果となってしまう場合もあるため、留意のうえで使用したい。

即効性や強力な洗浄力に欠ける場合がある

現状において、強力な洗浄力という面ではやはり合成洗剤が優勢だ。またナチュラルクリーニングではつけ置きをすることによって効果が出るものもあるため、十分に時間が取れない場合は使いにくいこともある。

酸性とアルカリ性の組み合わせ注意

ナチュラルクリーニングの原理にもある「中和」。これはアイテム同士を組み合わせた時でも起こり、互いの特性を打ち消しあう。(※7)両方の洗浄力を失ってしまうこともあるため、単独で使用する、また連続して使用する際はよく洗い流す必要がある。

保存と取扱いに注意が必要

食用に用いられる物質であっても、基本的には口に入れないよう取り扱うのが望ましい。粉末状のものは吸い込むことがないよう、マスクを着けるなどの対応が必要だ。とくに小さな子どもやペットと暮らしている場合は、誤って舐めたりしないよう保管場所には気を付けたい。また保管の際に注意が必要なアイテムもあるため、性質にあった取り扱いが必要である。

アレルギー反応

ナチュラルクリーニングに使うアイテムによっては、アレルギー反応を起こすことも考えられる。例えば柑橘系の成分にアレルギー反応を起こす人が、果物由来のクエン酸を使用するとアレルギー症状が出る可能性がある。

持続時間

ナチュラルクリーニングに使うクエン酸や重曹は、水に溶かして使用することも多い。スプレーボトルのなかなどで混ぜたまま保存しておくこともあるが、合成洗剤と比較すると洗浄力が失われるのも早い。(※8)

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ナチュラルクリーニングの実践例

森の中の道路

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先述の注意点を踏まえたうえで、より具体的なナチュラルクリーニングの例を紹介する。家庭内の「気になる汚れ」を落とす参考にしてほしい。(※9、※10)
※粉末から水溶液をつくる際は、基本的に各アイテムに書かれた説明にしたがって濃度を調整すること。

キッチンの掃除

・コンロ、シンク、換気扇の油汚れ
セスキ炭酸ソーダ水溶液をスプレーして拭き取る。汚れがしつこい場合は水溶液をしみこませたキッチンペーパーを張り付けてしばらく置き、再度拭き取る。

・シンクの水垢
クエン酸水溶液をスプレーして拭き取る。結晶化した水垢は水溶液をしみこませたキッチンペーパーを張り付けてしばらく置き、スポンジでこすり取る。

・排水溝の滑り/におい
排水溝の部品を外して、各パーツと排水溝に重曹粉末を振りかける。そのまま約15分放置した後、パーツはこすり洗い、排水溝は水を流して洗浄する。

・鍋の焦げ付き
鍋の焦げが隠れるよう水を入れて、重曹粉末を入れる(水1リットルにつき大さじ4杯の重曹)。しばらく煮たら、火を消し冷めるのを待ってタワシ等でこすり落とす。

トイレや浴室の掃除

・トイレの黄ばみ除去・消臭
クエン酸水溶液をスプレーしてブラシでこすり、水を流す。黄ばみがしつこい場合は便器にトイレットペーパーを張り付けて水溶液を十分にスプレーし、しばらく置いてからこすり洗う。

・トイレ/浴室のカビ
過炭酸ナトリウムを少量のぬるま湯または水に溶かし、ペーパーを浸してカビに張り付ける。そのまま1時間程置いて、固めのブラシでこすり洗う。
※炭酸ナトリウムはステンレス以外の金属と反応するためアルミや銅製品につかないよう注意する。

・浴室の水垢/石けんカス
クエン酸水溶液をスプレーしてしばらく置き、スポンジでこすり落とす。

洗濯や衣類のケア

・衣類の漂白・消臭
洗濯機に洗濯洗剤と合わせて過炭酸ナトリウム粉末を投入し、通常どおり洗濯を行う。

・シャツの襟/袖の皮脂汚れ
セスキ炭酸ソーダ水溶液を汚れ部分にスプレーし3分ほど置く。その後ブラシなどで軽くこすってから洗濯機で洗濯する。

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ナチュラルクリーニングの環境への影響

海と夕陽

Photo by George Millson on Unsplash

ナチュラルクリーニングを取り入れることによって合成洗剤の使用を減らし、生活排水による水質汚染を軽減できる。また自然由来の洗剤を使用するため排水成分が分解されやすく、長期的な環境負荷軽減へとつながる。家庭においても健康影響が少ないうえ、汎用的なアイテムの使用により既存の合成洗剤利用を低減したり、新しく専用洗剤を買わずに掃除できたりと、サステナビリティの高い運用が期待できる。

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暮らしに取り入れやすいナチュラルクリーリング

野菜

Photo by Lenka Dzurendova on Unsplash

社会的な問題のひとつである水質汚染。その対策として、個々の家庭で取り組めるアクションのひとつがナチュラルクリーニングだ。取り扱いに注意すべき点もあるが、紹介したアイテムは一般的に普及し手軽に入手できるものばかりだ。

まだナチュラルクリーニングをやったことがない人でも、既存の掃除に付け足す/置き換えるといった形で導入しやすいのも魅力。ちょっとした行動でも、積み重なることで大きな結果となりうる。興味を持ったら、ぜひナチュラルクリーニングを生活に取り入れてみてほしい。

※掲載している情報は、2024年12月25日時点のものです。

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