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古紙を原料に製造される「再生紙」。資源の有効活用や廃棄物の減量、森林資源の保護など、環境的側面から今後もニーズが高まることが予想される。ここでは再生紙の作られ方やメリット・デメリット、紙の再生利用を促すために家庭でできることについても紹介する。
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エレミニスト編集部
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再生紙とは、新聞や雑誌、段ボール、牛乳パックといった古紙をリサイクルしてつくられた紙のこと。日本において再生紙の定義は曖昧だが、再生紙と表示して販売する場合は、最低保証される古紙パルプ配合率の具体的数値を付記することになっている。(※1)
再生紙は資源の有効活用や廃棄物の減量化、森林伐採量の削減や森林資源の保護につながるなどの理由から注目されている。
エコ用紙とは、ライフサイクル全体で環境負荷が少ない紙全般のこと。木材の成長に必要な間伐材を有効活用した紙や、竹やバナナなどの非木材からつくられた紙、適切に管理された森林から伐採した木材を活用した紙など、環境破壊につながりにくい紙が含まれる。再生紙もエコ用紙のひとつだ。(※2)
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再生紙はどのようにつくられるのか。主な工程は次の通り。(※3)
1.古紙を、温水と薬品の入ったパルパーに入れ、どろどろにほぐす
2.どろどろになった古紙をスクリーンに通し、ごみやチリを除く
3.洗剤の泡と一緒にインクや塗料を取り除く
4.過酸化水素水という薬品を混ぜて、繊維を漂白する
5.きれいな水で洗い、余分な水分を脱水する
こうしてでき上がった繊維が新たな紙の原料となる「古紙パルプ」だ。
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再生紙は古紙パルプの含有率や原料によって次のような種類に分けられる。
全量再生紙とは、100%古紙パルプでつくられた紙のことを指す。「R100」などのマークで表示される。(※4)
部分再生紙は、部分的に古紙パルプを使ってつくられた紙のことである。
非木材紙とは、原料に木材を使っていない紙のことだ。原料には、竹、ケナフ、バガスと呼ばれるさとうきびから取れる繊維、石灰石などの植物や農産副産物が使われる。(※5)
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再生紙にはどのようなメリットがあるのか見ていこう。
一般的な紙は、木材を原料としている。この木材に代わり、リサイクルした古紙パルプを再利用することで、森林伐採量を削減でき森林保護にもつながる。(※6)
パルプ製造段階では、古紙を原料にした場合、通常の紙をつくるのにくらべてエネルギー使用量は約4分の1で済む。よって、CO2排出量の削減にも貢献できる。(※7)
再生紙は、資源の有効活用ができるのがメリットだ。紙ごみをリサイクルし、再生紙の原料として再び活用することで廃棄物を削減でき、リサイクルの促進にもつながる(※7)
環境に配慮した取り組みとして、再生紙を採用することで企業の社会的責任(CSR)を強調できる。
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再生紙にはメリットがある一方で、デメリットや課題もある。
再生紙は一般的な普通紙とくらべて品質の点で劣る。再生紙の原料は古紙であり、その品質にばらつきがあるためだ。また、古紙の汚れ具合もばらつきや色ムラの原因となってしまう。もうひとつの欠点といえるのが、耐久性の低さだ。
再生紙は、一般的な紙の製造にくらべるとコストがかかるのもネックだ。再生紙は白さが求められる。古紙を白くするために電力費、薬品費などが高くなり、製造コストがかかってしまう。(※7)
再生紙を白くする際に、エネルギーや化学薬品が使用される。この工程により、環境への負荷がかかるのも課題のひとつだ。(※7)
「再生紙」という言葉は広く認知されているが、環境配慮よりもコスト優先、品質優先という考え方もあり、選択の課題も残されている。
リサイクルのための古紙の回収や輸送にコストや労力がかかる場合がある。これも課題といえる。
「再生紙使用マーク」は、平成7年6月にごみ減量化推進国民会議(現3R・資源循環推進フォーラム)によって、再生紙の利用促進・普及啓発をしていくためのシンボルとして定められたマークだ。「R」の横の数字が古紙パルプの配合率を示しており、ひと目でどのくらい配合されているのかわかるようになっている。このマークは自主的に表示できるため申請や届出は不要で、だれでも自由に無料で使うことができる。
ただし「Rと古紙パルプ配合率を示す数値」と「古紙パルプ配合率○○%再生紙を使用」を組み合わせて表示しなければならない。(※4)
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再生紙の原料となる紙ごみを、効率的に確保するために家庭でできるポイントを解説する。
まずはじめにやるべきことは、家庭から発生する古紙の種類を知ることだ。家庭から出るおもな古紙には、新聞、段ボール、雑誌、雑がみ、紙パックがある。リサイクルの対象となるのは、新聞、折り込みチラシ、使用済みの段ボール箱、読み終わった雑誌・書籍・印刷冊子類、投げ込みチラシ、パンフレット、コピー用紙、包装紙、紙袋、紙箱(菓子箱等)、飲み終わった後の飲料用紙パック(内側が白いもの)である。
雑がみにはさまざまな種類があるが、食品などで汚れた紙、臭いのついた紙・芳香紙、カーボン紙、カップ麺のフタなどのラミネート紙、防水加工された紙などは対象にならないので注意したい。(※8)
どのような回収ルートがあるかを知っておけば、不要になった古紙を出しやすくなる。回収ルートには、次のような種類がある。
●集団回収
町内会、こども会、PTAといった地域の団体が回収し、回収業者に直接引き渡す。
●行政
回収集積所などに出された古紙などを行政(地方自治体)が回収する。
●新聞社・新聞販売店
読み終わった新聞を、新聞社・新聞販売店が定期的に回収する。
●拠点回収
公共施設やスーパー、ホームセンターなどに回収ボックスを設置し、回収する。(※8)
まず重要なのは、紙を安易に捨てないことだ。紙は貴重な資源であるため、リサイクルできる紙は古紙の回収にまわそう。(※8)
前述したとおり、古紙には種類がある。同じ種類ごとに分けておき、回収しやすくすることも大切だ。このとき、リサイクルできない紙がまぎれていないか、金具やビニール包装がついていないかチェックしよう。(※8)
地域によって古紙の分別区分が異なる。自治体のルールを確認して、回収に出そう。(※8)
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再生紙は「環境にやさしい紙」というのがメリットであるが、品質やコスト面での課題も存在している。特定のニーズや目的に合わせて選択することが重要となる。また再生紙の原料となる古紙は貴重な資源であるため、適切にリサイクルするよう心がけよう。
※1 資料5 再生紙の考え方及び古紙配合率などの確認・検証方策について|環境省
※2 再生紙とは?エコ用紙との違いや環境に優しい紙について解説|kinko's
※3 紙のリサイクル 古紙の再生工程|日本製紙グループ
※4 再生紙使用(R)マーク|3R・資源循環推進フォーラム
※5 非木材グリーンマーク表示|環境省
※6 地方公共団体のためのグリーン購入取組ガイドラインについて |環境省
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