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バガスとは、サトウキビを絞ったときに残るものだ。世界で大量に出るバガスの使い道については、これまで限定的だったが、CO2を削減し、プラスチックの代替素材として注目される。そんなバガスのメリットとデメリットと、幅広い活用方法を紹介する。
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バガスとは、サトウキビを圧搾したときに残る絞りかすのこと。サトウキビから黒糖をつくる際、小さく切ったサトウキビを圧搾して、絞った汁をろ過・濃縮する。この圧搾のプロセスで残ったのが、バガスだ。
バガスは、サトウキビの約4分の1になり、そのまま捨てると大量の産業廃棄物を生み出すことになる。日本では、黒糖の生産が盛んな沖縄でバガスが大量に出ており、製糖工場できちんと処理されなかったものが廃棄され、悪臭問題に発展したこともある。
日本以外でも、世界中でサトウキビは栽培されており、このバガスを廃棄せずに活用しようという動きがあるのだ。
バガスは、サトウキビの繊維質部分。成分としては、セルロース、ヘミセルロースなどが含まれる。自然に分解されやすく、繊維がつまった構造であるため、やわらかいのに丈夫だ。
バガスは、さまざまなものに活用されている。
バガスを原料につくられた紙は、バガスペーパーやバガスパルプなどと呼ばれる。木材を使用せずにできた紙なので、森林資源の保護につながる。独特の風合いも好まれている理由のひとつだ。バガスでできたペーパータオルもある。
バガスが食品用容器などに使われるケースも増えてきた。バガスは丈夫である特徴があるため、崩れにくく持ち運びしやすい。使用後は燃えるごみとして処理するほか、条件次第ではコンポストも可能だ。
バガスがストローに使われることもある。プラスチック製ストローに代わるアイテムとして利用される。
バガスに含まれるセルロースを糖に分解し、それを酵母によって発酵させることで、エタノールが生成される。これはサトウキビ由来のバイオエタノールであり、バイオ燃料のひとつになる。
バガスに発酵処理を行ったものを、発酵バガスと呼ぶ。この発酵バガスは牛などの飼料に使われる。発酵バガスは腸内発酵を促す効果が期待でき、機能性飼料として、牛の健康維持などに役立つとされる。
発酵バガスは、人間にもさまざまなメリットがある。食物繊維が豊富で腸内環境の改善などが期待できるとして、機能性食品などへの活用も行われている。
バガスは建築資材や断熱材にもなる。木材の代わりとなり、森林保護にもつながる。
バガスは畑などに使うことで、土壌改良材となることが期待される。農研機構では、炭化したバガスによって、土壌中に炭素が安定的に貯留され、大気中のCO2削減に貢献する可能性について研究を発表している。(※1)
バガスを洋服にアップサイクルされる取り組みも始まっている。沖縄のかりゆし(沖縄のアロハシャツ)にバガスが使われたものなどがある。
世界で生産されるサトウキビの量は、18億トン以上にもなる(※2)。米の生産量は約8億トンで、それら他の穀物を圧倒する量だ。そのため、これだけの生産量の影には、多くのバガスが発生しているとみられる。
これまでもバガスの活用は行われてきたが限定的であり、廃棄されてきたものを有効活用できるというメリットがある。
バガスは、さまざまなプラスチック製品の代替品になり得る。プラスチック製の食品容器はバガス容器へ置き換えることで、化石燃料の消費量を抑えることにつながる。
バガスはサトウキビからできたもので、サトウキビが成長する過程で大気中のCO2を吸収する。バガスなサステナブルな素材と言われるのは、そのためだ。また、プラスチックの代わりにバガスをつくる場合、製造工程でのCO2の排出量を削減できる。
バガスのデメリットのひとつが、バガスを原料とした場合、まだコストが高い傾向にあることだ。そのためコストの面では、安価なプラスチックが原料の方に軍配が上がる。しかし、バガスの利用がさらに広まり、バガス活用の技術的な改善が進めば、コストが下がると期待できるだろう。
バガス容器は、紙製容器と比べると、耐水性や耐油性などが高く、使い勝手がいいことが知られる。だが、プラスチック製品に比べると、耐久性や強度などの面で劣る部分もできない。だが、今後の技術の進展で、バガス性でもクオリティの高い製品が生まれる可能性もあるだろう。
限りある資源を大切にするために、これまで廃棄されていたものに改めて光をあてるときがきている。そのなかのひとつが、日本や世界でも多く生産されているサトウキビと、その搾りかすであるバガスだ。
本記事でも紹介したように、バガスの活用方法は実に幅広い。今後は、バガスの存在がもっと一般的になり、バガスから生まれたさまざまな製品がもっと身近になっていくことを期待したい。
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