夏緑樹林とは? 機能と役割、日本の夏緑樹林が抱える課題、SDGsとの関係性について解説

Beech forest

Photo by K. Mitch Hodge on Unsplash

夏に葉が茂り、冬に葉を落とす「夏緑樹林」。この夏緑樹林はどんな樹木で構成され、どんな特徴や機能・役割をもつのか。また日本の夏緑樹林が抱える課題、SDGsとの関係性についても解説する。

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2024.11.15
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夏緑樹林とは

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夏緑樹林(かりょくじゅりん)とは、春から夏には青々とした緑の葉が茂り、冬には葉を落とす広葉樹林を指す。一般的には「落葉広葉樹林」といい、その名が示すとおり、冬に葉を落とす性質と広葉樹であることが特徴だ。(※1)

夏緑樹林の特徴

Sawtooth oak

Photo by Christina DelliSante on Unsplash

夏緑樹林の代表的な樹種や気候条件、分布地域といった特徴をみていこう。

代表的な樹種

夏緑樹林を構成する樹木は落葉広葉樹だ。代表的な樹種には、ブナ、ミズナラ、トチノキ、ケヤキなどがある。各樹種の特徴は次のとおりだ。(※1、※2、※3、※4、※5)

ブナ
日本の夏緑樹林を代表する樹木。高さ20〜30mになり、樹皮はなめらか、葉は縁が波打つ。

ミズナラ
ブナ科の樹木。高さ20〜30mになる。樹皮は縦に裂け目が入り、葉は長く、縁はぎざぎざとしている。どんぐりの木としても知られる。

トチノキ
高さ20〜25mになる。樹皮は不規則な凹凸が入り、葉は丸く、縁はぎざぎざとしている。小花が円錐状に集まった花を咲かせる。

ケヤキ
ニレ科の樹木。高さ20〜30mになり、葉の形はやや長く、縁が波打つ。公園や街路樹などに植栽されることが多い。

気候条件

夏緑樹林が生育する地域の気候条件をみていこう。夏緑樹林は、気候的に冷温帯を好み、冬の寒さが厳しい地域に多く見られる傾向にある。また、肥沃な土壌が適している。(※6、※7)

分布地域

日本の夏緑樹林の分布は、北海道南部から九州の山地といった冷温帯・山地帯にみられる。なかでも、東北地方に多くみられる。(※8)

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なぜ夏緑樹林は葉を落とすのか?

夏緑樹林の特徴のひとつが、冬に葉を落とすことだ。夏緑樹林は、夏には葉を茂らして光合成を活発におこなうが、冬に葉を落とすと休眠状態になる。冬に葉を落とす理由は、冬の寒さや日照時間の短さなどに対応するためだと考えられている。葉を落とすことで、水分不足で枯れることを防ぎエネルギー消費を抑えることにもつながる。(※9)

夏緑樹林の機能と役割

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Photo by Marcin Kolodziejczak on Unsplash

夏緑樹林には、どのような機能や役割があるのか。

水源涵養機能

水源涵養とは、自然に水がしみこむように徐々に養い育てることで、水資源を蓄え、育み、守る働きを指す。夏緑樹林にはこの水源涵養機能があり、雨水をゆっくりと森の土のなかに浸透させ、地下水を蓄える働きがある。これにより、河川の水量を調節することに貢献している。(※10)

土壌保全機能

夏緑樹林は落ちた葉が腐葉土となり、肥沃度を保つ。また風や雨による浸食を防ぎ、土壌を保全する機能がある。(※10)

多様な生物の生息地

夏緑樹林は、さまざまな生物の生息地となっている。これは光や水、豊かな土壌が多様な生物を育んでいると考えられる。(※11)

気候の緩和

夏緑樹林は、地球温暖化の原因となっている二酸化炭素の吸収源の役割ももっている。そのため、気候変動の影響を緩和する働きもある。(※11)

四季の変化

夏緑樹林は、季節によって表情が変わる。春から夏には葉を茂らせ、秋には葉が紅葉し、冬には葉を落とす。四季の変化が感じられるのも特徴といえる。(※1)

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日本の夏緑樹林が抱える課題

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Photo by Janusz Maniak on Unsplash

夏緑樹林はさまざまな機能や役割をもつが、課題もある。どのような課題があるのか説明しよう。

森林伐採

日本の夏緑樹林を含む天然林・その他の割合は、令和4年は1,493万ヘクタールであった。昭和41年は1,724万ヘクタールであったため、約15%減っていることになる。天然林・その他が減った理由は、戦後の拡大造林により、おもに広葉樹からなる天然林を伐採したことが挙げられる。(※12)

人工林の増加

人工林の割合は、令和4年は1,009万ヘクタールであった。昭和41年は793万ヘクタールであったため、約30%増加している。この原因も、戦後の拡大造林だ。森林伐採した跡地などに、針葉樹をおもにした人工林に置き換えることが行われた。(※12)

外来種による影響

夏緑樹林に外来生物・外来植物が定着し、悪影響を与えていることも問題となっている。外来生物による被害には、在来種の個体数の減少、生態系のバランスが崩れることなどが挙げられる。外来種による被害を軽減するために、日本ではアライグマ、シカ、マングースなどが特定外来種として対策を講じる種として指定されている。(※13)

シカの食害

日本の在来種であるニホンジカは、全国で個体数が増加しており深刻な問題となっている。シカは樹皮や新芽などを好んで食べることから、木々が枯れ森林が衰退することもある。また、森林をすみかとする動植物にも多大な影響を与えてしまう。(※14)

気候変動

夏緑樹林に影響を与える要因のひとつに、気候変動がある。気候変動により、植生の変化や森林に住む動植物の生態・活動に影響を与える可能性が高い。(※15)

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夏緑樹林を守るための取り組み例

Forestry

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夏緑樹林を守るための取り組み事例を紹介する。

保護区域の設定

東北地方などの夏緑樹林(ブナ林、ミズナラ林)は、生物多様性保全のための国土区分ごとの重要地域情報として把握されている。これは、日本の多様な生態系を保全するための地域である。(※16)

持続可能な森林管理

日本では森林の密度を調整し、健康な樹木の成長を促すために間伐が行われている。また森林を主伐・再造林によって循環的に利用し、持続可能な林業の普及を推進している。(※17)

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生物多様性の保全

日本では「生物多様性国家戦略2023-2030」を策定し、30by30目標の達成等の取組により健全な生態系を確保し、自然の恵みを維持回復することや、自然資本を守り活かす社会経済活動の推進に力を入れている。森林に関する行動目標には「森・里・川・海のつながりや地域の伝統文化の存続に配慮しつつ自然を活かした地域づくりを推進する」がある。(※18)

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気候変動対策

気候変動対策としての日本の取り組みに「地球温暖化対策計画」がある。これは政府の総合計画で、2030年度において温室効果ガスを2013年度比で46%削減することを目指している。また森林の整備や保全を進めることで、二酸化炭素の削減、二酸化炭素を「吸収」して排出力を削減する仕組みをつくることも推進している。(※19、※20)

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夏緑樹林とSDGsの関連性

夏緑樹林とSDGsの関連性にはいくつかある。まずSDGs目標15「陸の豊かさを守ろう」において、夏緑樹林は日本の多様な動植物の生息地を提供し、生物多様性を支えている。次にSDGs目標13「気候変動に具体的な対策を」では、夏緑樹林は二酸化炭素を吸収し、地球温暖化の抑制に寄与すると考えられる。さらに適切な森林管理や間伐の取り組みはSDGs目標12「つくる責任 つかう責任」に関連し、地域資源の保全を促進する。このように、夏緑樹林はSDGsの目標達成に向けて大きく貢献している。(※21)

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豊かな資源である夏緑樹林を守ろう

Beech

Photo by Luís Cardoso on Unsplash

夏緑樹林は、春から夏に葉を茂らせ、冬には葉を落とす性質をもつ広葉樹林だ。水源涵養や土壌保全といった機能・役割がある一方で、森林伐採や外来種の被害など、深刻な問題にも向き合わなければならない。豊かな資源である夏緑樹林を守るために、森林に関する知識を深め、持続可能な森林経営から得られた木材製品を選ぶ、紙の使用量を減らすなど、できることから実践していこう。

※掲載している情報は、2024年11月15日時点のものです。

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