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環境問題への注目が高まる中、CO2の排出を抑えるカーボンニュートラルに貢献できるPPAを導入する企業も増えている。この記事ではPPAモデルのメリットとデメリット、PPAに向いている企業や導入の際の注意点について詳しく解説する。
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PPA(Power Purchase Agreement)は自家消費型太陽光発電の一種で、第三者モデルとも呼ばれる新しいモデルの電力販売契約のこと。
電気の需要家(企業や自治体、個人)が所有する施設の屋根や土地を事業者が借りて無償で発電設備の設置を行い、発電した電気を需要家が使用する。発電設備の所有は事業者または別の出資者が持つことになるため、需要家は資産保有をすることなく再生可能エネルギーの利用が可能になる。(※1)
一方、自己所有自家消費型とは、自家消費型太陽光発電の一種で、需要家自身が太陽光発電システムを導入し、自身で使う電気を賄うという方式である。電気料金がかからないという点がメリットで、余った電気は売ることもできるのが特徴だ。デメリットとしては、設置費用、維持管理費などにコストがかかる点が挙げられる。
リースもまた自家消費型太陽光発電の一種であり、需要家がリース業者から発電設備をレンタルし、リース料金を支払うことで電気を無料で使用したり余剰電力を売ったりできる。デメリットとしては、発電がなくてもリース料は発生するため、ある程度の電力使用量がなければ支出がかさむケースがある。また、設備の修理や保守費用がリース料に含まれていない場合はそれらの負担も発生する。
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PPAは個人でも導入することが可能だが、ここでは企業や自治体を対象としたコーポレートPPAについてみていこう。コーポレートPPAは、主に「オンサイトPPA」と「オフサイトPPA」に分けることができる。
オンサイトPPAとは、電気を利用する場所と発電設備のある場所が同一であることが特徴で、需要家である企業が電力を必要とする施設の屋上や敷地などを発電事業者に提供し、発電設備の設置や運転、保守を委託する。
発電で得た電力は構内線か自営線で送電され、需要家が長期契約で購入するという仕組みだ。日本では現在このオンサイトPPAが主流で、大型の商業施設や公共施設などでの導入が進みつつある。(※2)
オフサイトPPAは、電気を利用する場所とは別の場所に発電設備があるのが特徴で、発電設備が電気の需要地点から離れた所にあるため、発電した電力は送配電網で送電される。オンサイトPPAとの大きな相違点として、需要家である企業と発電事業者の間に小売電気事業者が入るという点が挙げられる。
オフサイトPPAは、さらに「フィジカルPPA」と「バーチャルPPA」に分けられる。「フィジカルPPA」は需要家が電力と環境価値を長期契約で購入するという方式で、送配電網を利用するための託送料と手数料の支払いが小売事業者に対して発生する。環境価値とは、再生可能エネルギーの電気そのものの価値に加えて、CO2排出などの環境負荷の小ささによる付加価値のことをいう。
「バーチャルPPA」は需要家が環境価値のみを長期契約で購入し、発電した電力は発電事業者が卸電力市場で売却し、固定価格と市場価格の差額を需要家と決済するという方式だ。(※2※3)
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新しい自家消費型太陽光発電のモデルとして注目を集めるPPAモデルだが、実際に取り入れることでどのような利点があるのだろうか。ここではPPAモデルを導入することによって得られるメリットについて詳しくみていく。
PPAモデルの一番のメリットは、太陽光発電設備を設置する際の初期費用がかからないという点だ。また、太陽光発電は発電量の低下や故障を未然に防ぐために定期的な点検や修理などが必要になるが、それらの維持管理も契約内容に含まれるため、メンテナンスも発電事業者が担ってくれる。
電気料金が高騰傾向にある中で、PPAモデルを導入することで電気料金が抑えられる可能性がある。とくにオンサイトPPAは自社の敷地内の設備で発電した電気を使用するため、電気の託送料金と再エネ賦課金(再生可能エネルギー発電促進賦課金)がかからないのがメリットだ。
自然エネルギー財団によると、2023年度の全国平均の水準から推定した通常の高圧電力の電気料金単価がkWhあたり「24.5円+再エネ賦課金」、特別高圧ではkWhあたり「20円+再エネ賦課金」であるのに対して、オンサイトPPA(太陽光、屋根設置)ではkWhあたり「15円~18円」と、需要家のコストを抑えることができるとの結果が出ている。(※2)
環境への取組みとしてRE100などの目標達成を掲げる企業が増えている。環境省は2018年6月、RE100に公的機関として世界で初めてアンバサダーとして参画し、RE100の取組への普及を勧めている。
RE100 とは、100%再生可能電力の実現を目指す世界でもっとも影響力のある企業を集めた世界的な取り組みのことをいう。現在、世界では400社を超える企業がRE100に参加している。再生エネルギーへの取組みは、国内のみならずグローバルな視点でも企業のブランディングに貢献するといえるだろう。(※4※5)
電気料金を抑えるだけでなく環境対策へのアピールにもつながるPPAだが、場合によってはデメリットになることもある。ここではPPAモデルのデメリットについて詳しくみていく。
PPAの契約期間は事業者によって異なるが、一般的に10~20年と長期に渡り、なかには25年というものもある。そのため契約時に予測できなかった市場の動向の変化や制度の改変によっては、固定価格で契約した電気料金が割高になる可能性もある。
PPAモデルは途中解約ができない、もしくは解約金の支払いが発生するケースがある。また、太陽光発電設備を設置したスペースを長期に渡って確保しなければならず、需要家の都合で建物の取り壊しや移転などを行いたくても行うことができなくなる可能性がある。契約時には、途中解約した場合の対応について確認しておくことが大切だ。
自社の負担で太陽光発電設備を設置した場合、発電した電気を使う際に電気料金がかからないのに対して、PPAモデルでは消費した分の電気料金を事業者に支払わなければならない。そのため、長期的にみると自己負担で太陽光発電設備を導入した場合よりも経済的なメリットが得られない可能性がある。
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近年、世界では事業者や企業の環境に対する取組みが高く評価される傾向にある。ここではPPAモデルに向いているのはどのような企業なのか詳しくみていこう。
2020年10月、日本政府は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」を目指すことを宣言した。それに伴って、大企業および中小企業の脱炭素化への動きが活発化している。PPAモデルは初期投資を抑えつつ、カーボンニュートラルを推進したい企業に向いているといえる。(※6)
太陽光発電設備は、より効果的に電力をつくり出すために定期的なメンテナンスが必要な設備だ。PPAモデルでは太陽光発電設備の維持管理はPPA事業者が担うため、自社で設備の維持管理を行う必要がない。そのため、設備の維持管理に時間や手間をかけたくないという企業に向いているといえる。
近年、電気料金の値上げが注目されているが、PPAモデルではサービス料金の単価が固定されているため、契約期間中にかかる電気料金の見通しがしやすい。とくに電力の消費量が多い企業にとっては、将来の電気料金のさらなる値上げの可能性に対してリスク回避の手段になるといえる。
ここでは、実際にPPAモデルを取り入れる際の注意点について詳しくみていく。
PPA事業者に太陽光発電設備の設置場所となる建物が十分な強度を持っていないと判断された場合、補強工事が必要になる可能性がある。また、電気設備や配線に改修が必要になることもある。そのような場合は追加の費用がかかるケースがあるため、契約時によく確認しておくことが大切だ。
PPAモデルの契約には、PPA事業者による事前審査がある。契約期間が長期に渡るため、契約期間中に発電設備の設置場所が維持できないと判断された場合や、設置場所に適さないと判断された場合などは契約そのものができない可能性がある。ただし審査の基準は事業者によって異なるため、複数の事業者に相談するのがよいだろう。
PPAモデルの契約期間中は、基本的に太陽光発電設備を改変できない。そのため、建物の改装や事業所の移転などで太陽光発電設備を一時的に撤去する場合などは違約金が発生、または契約解除になる可能性がある。撤去費用は基本的に需要家の負担となるため、将来建物の改修や移転を検討している場合にはこれらの点において事前に契約内容をよく確認しておく必要がある。
近年、環境問題への取組みが企業の評価につながる傾向がみられる。PPAモデルは使っていない建物の屋根や敷地を活かし、初期費用や維持管理費を抑えながらカーボンニュートラルに貢献できるのが魅力のひとつだ。再生可能エネルギーの普及や環境問題への取組みを検討している企業は、PPAモデルの導入を選択肢のひとつにしてみてはいかがだろうか。
※1 再生可能エネルギー導入方法|環境省
※2 コーポレートPPAの 最新動向(2024年度版)|自然エネルギー財団
※3 環境価値|一般社団法人日本電機工業会
※4 地球環境・国際環境協力|環境省
※5 CLIMATE GROUP RE100について|CLIMATE GROUP RE100
※6 脱炭素ポータル|環境省
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