SBT(Science Based Targets)とは 参加企業やRE100との違いを解説

上空から撮影した複数の風力発電機

Photo by Thomas Richter on Unsplash

SBTとは、地球温暖化対策において注目されるキーワードの一つである。世界的にこれへ参加する企業が増えているが、それは具体的にどのような意味を持つのだろうか。SBTの基礎知識とともに、実際に参加している企業や参加のメリットについて解説する。

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2022.03.29
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SBT(Science Based Targets)とは その運営機関や特徴

SBT(Science Based Targets:科学と整合した目標設定)とは、温室効果ガス削減に向けた目標の指標の一つである。環境省によると、「パリ協定(世界の気温上昇を、産業革命前より2℃を十分に下回る水準<Well Below2℃>に抑え、また1.5℃までに抑えることを目指すもの)が求める水準と整合した数値を、5~15年先を目標年として企業が設定する、温室効果ガス排出削減目標のこと」と定義されている。(※1)

SBTを運営しているのは、以下の4つの機関である。

・CDP(Carbon Disclosure Project:旧カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト):環境影響を管理するための情報開示システムの運営元である英国NGO

・UNGC(United Nations Global Compact:国連グローバル・コンパクト):国連と民間が手を結ぶための、世界最大のサステナビリティイニシアチブ

・WRI(World Resources Institute:世界資源研究所):地球環境に関する政策研究や技術開発を行うグローバル研究組織であり、独立した非営利団体

・WWF(World Wide Fund for Nature:世界自然保護基金)世界の100カ国以上で活動する環境保全団体

これら4つの機関は、気候変動対応の推進を目的に設立されたプラットフォーム「We Mean Business(WMB)」の構成機関でもある。SBTも、WMBの取り組みの一つだ。

RE100との違い

SBTと同じような取り組みとして理解されやすいのが、RE100である。RE100は、企業が事業用として使用する電力のすべてを、再生可能エネルギーで賄うことを目標とする、国際的なイニシアチブだ。2014年にスタートした取り組みで、日本からもすでに多くの企業が参加している。(※2)

SBTとRE100の大きな違いは、その目的にある。SBTが温室効果ガスの排出量削減を目標に据えているのに対して、RE100は再生可能エネルギーの導入推進が目標である。どちらも地球温暖化対策という目的は同じだが、そのための手段が異なっている。RE100については、以下の記事も参考にしてみてほしい。

専門団体に聞いた「RE100」のキホン 参加企業の取り組みに学ぶ、脱炭素社会への道筋とは

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CDPとの違い

CDPとは、世界的な企業が二酸化炭素排出量削減や気候変動に対して、どのような取り組みを行っているのか、その具体的な情報を国際的に開示するためのプロジェクトである。企業の株主である投資家を巻き込んで情報開示することで、環境に配慮した取り組みの推進を狙っている。

CDPは、SBTのように具体的な目標を設定しているわけではない。CDPはSBTの運営元機関の一つではあるものの、両者が担う役割は全く異なるものだ。

世界中から名だたる企業・ブランドが参加

日本

2022年2月時点で、SBTの認定を取得している日本企業は154社である。食料品や医薬品の製造を行う明治ホールディングスや、大手コンビニエンスストアやスーパーマーケットを展開するセブン&アイ・ホールディングス、航空事業を営むANAホールディングスなどが挙げられる。(※3)

明治ホールディングスでは再生可能エネルギー電力の購入のほか、生産効率の向上、容器包装の軽量化にも取り組むとしている。セブン&アイ・ホールディングスの目標は、サプライチェーン全体での二酸化炭素排出量低下だ。

ANAホールディングスは、低燃費機材の計画的導入やオペレーション改善によって目標達成を目指す。(※4)

海外

海外においても、多くの大企業がSBTに参加している。Amazon(アマゾン)やApple, Inc.(アップル)のほか、Louis Vuitton Malletier(ルイ・ヴィトン)やHermès International(エルメス・インターナショナル)などの高級ブランドも軒を連ねる。

アップルやエルメスでは再生エネルギーの調達を、ルイ・ヴィトンでは製品ごとの温室効果ガス削減を目標に設定。それぞれの企業が独自の視点で、具体的な取り組みを行っているのだ。(※5)

ラグジュアリーブランドとSBTについては、以下の記事で解説している。あわせてチェックしてみてほしい。

エルメスが1.5℃目標へのコミットを表明 SBTイニシアチブの承認を取得

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SBTに参加するメリット

SBTに参加する企業が増えているのは、一定のメリットが期待できるためである。具体的には、以下の2点が挙げられるだろう。

・CDPでの評価向上
・投資家や消費者に対するアピール

CDPが開示する情報には、SBTに関する項目があり、SBT参加によってCDPでの評価が上昇しやすくなる。企業の持続可能性をアピールできるとともに、市場における企業評価の向上につなげられるだろう。

また、SBT参加の事実を世間に向けて公表すれば、これは環境重視の立派なアピールになる。環境に配慮した企業に熱視線を送る投資家や消費者が増えているいま、そのアピール力は非常に大きなメリットなのだ。そのほか、社員のモチベーション向上や技術革新につながる可能性もある。

SBT認定を受けるための要件とは

SBTに参加するためには、申請したうえで認定を受けなければならない。目標を設定したら「Target Submission Form(目標認定申請書)」をSBT事務局に提出。その内容をもとに妥当性の確認と回答が行われ、認定されるかどうかが決定される仕組みだ。参加する企業の規模に制限はなく、金融機関と石油ガス会社を除く全産業が対象となっている。

Target Submission Formに記載する内容は以下のとおりである。

・目標の妥当性確認に関する要望
・基本情報(企業名、連絡先など)
・基準年と直近年のGHG(greenhouse gas:温室効果ガス)インベントリ(温室効果ガス排出・吸収目録、Scope1~3の排出量情報)
・バイオエネルギーに関する説明
・削減目標(Scope1~3について総量削減または原単位、その他の目標)
・補足情報
・申請費用の支払情報

目標認定申請書に記載された内容をもとに、SBT基準に照らして評価される。認定を受けた場合、排出量と対策の進捗状況を年1回報告し、開示する必要がある。また定期的に、目標の妥当性を確認するように求められる点も、忘れてはならない。

SBTとは何かを知り、温室効果ガス削減に向けた取り組みを

2015年12月に成立したパリ協定。示された数値の実現は、決して簡単ではない。だからこそ注目されるのがSBTである。SBTに参加する企業の数は、年々増加。各企業がそれぞれの目標と具体的な手段を明らかにすることで、意識向上にもつなげていけるだろう。「個人として何をするのか?」を考えるきっかけにもなる。SBTとは何かを知ったうえで、参加する企業の動向に注目してみよう。

※掲載している情報は、2022年3月29日時点のものです。

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