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エルメスが、世界の平均気温の上昇を1.5℃に抑えるパリ協定の目標に向けてコミットすることを表明。SBTイニシアチブの承認を取得した。ケリング、バーバリー、リシュモン、プラダ、LVMHなどのラグジュアリーブランドの承認に続くものだ。
今西香月
環境&美容系フリーライター
慶應義塾大学 環境情報学部卒。SUNY Solar Energy Basics修了。 カリフォルニア&NY在住10年、現地での最新のサステナブル情報にアンテナを張ってライター活動中
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フランスのラグジュアリーブランドのエルメスが、パリ協定で策定された「世界的な平均気温上昇を産業革命以前より1.5℃に抑える」目標の達成に向けて、温室効果ガス排出量を削減しコミットすると表明。これがSBTイニシアチブに承認された。
SBTイニシアチブとは、「Science Based Targets」の頭文字をとった略称で、日本語では「科学的根拠に基づく目標」などと言う。企業が設定する温室効果ガス排出削減目標が、パリ協定の目標に整合するか認定する。国際非営利団体のCDPと、国連グローバル・コンパクト、WRI(世界資源研究所)、WWF(世界自然保護基金)の4団体が共同で運営している。
これまでにSBTイニシアチブの認定を受けたラグジュアリーブランドには、ケリング(グッチ、サンローラン、ボッテガ・ヴェネタなど)、バーバリー、リシュモン、プラダ、LVMH(ルイ・ヴィトン、クリスチャン・ディオールなど)等がある。今回のエルメスの認定は、これらの高級メゾンに続くものだ。
エルメスでは、菌糸体からつくる代替レザーの開発を行うマイコワークスとパートナーシップを締結。マッシュルームレザー「シルヴァニア」を2021年に発表するなど、サステナブルな取り組みを行っている。
日本では、ソニーやリコー、パナソニック、キリンホールディングスといった大手を中心に、多数の企業がSBTイニシアチブの認証を取得。SBTイニシアチブは、企業が信頼できる気候目標を設定するためのゴールドスタンダードと広く認知されている。
ファッション業界はこれまで、大量生産・大量消費されるファストファッションのように、サステナブルと逆行する業界と捉えられてきた。だがエルメスのほか、ラグジュアリーブランドの多くがSBTイニシアチブの承認を受けていることは、業界全体を環境保全の方向にシフトさせるポジティブな波及効果も期待できる。
エルメスの取り組みにはさらなる努力が必要との厳しい声もあるが、持続可能なファッションへの貢献に変わりない。今回のトップメゾンの舵きりは、他のブランドや業界にも大きな影響を与えるだろう。
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