天然ゴムとは? 合成ゴムとの違いや特徴、メリットを解説

輪ゴムのイメージ

Photo by Roberto Sorin

私たちの生活にとって身近な存在であるゴム製品。本記事では、複数あるゴムのなかでも「天然ゴム」について解説していく。原料や生産方法、特徴やメリットを紹介。さらに合成ゴムとの違いや、環境への影響についても言及する。

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2024.10.30
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天然ゴムとは

ダイヤのイメージ

Photo by Goh Rhy Yan on Unsplash

タイヤや輪ゴムなど、私たちの生活にとって身近な存在であるゴム製品。実は、使用しているゴムにはさまざまな種類がある。本記事では、天然ゴムについて詳しく解説していく。

天然ゴムは自然由来の素材

天然ゴムは、「ラテックス」と呼ばれる乳白色の樹液を凝固、加工したゴムのこと。自然由来の素材を原料としている点が特徴のひとつだ。

ゴムの木から採取される

ゴムの木のイメージ

Photo by Isuru Ranasinha on Unsplash

ラテックスは、ゴムの木から採取される。ゴムの木の皮を削ると、ベトベトした牛乳のような色の汁が出てくる。これが天然ゴムの原料となる(※1)。

天然ゴムの生産方法

ゴムの木を削って集めたラテックスをろ過し、固形物や不純物を除去。その後ラテックスに酸を添加し、1シート分ずつの型枠に入れて固めていく。

固まったシートを屋外や屋内で5日~7日間自然乾燥させると、乳白色から薄い茶色に変化する。

自然乾燥させた生ゴムシートは、ゴム農園から工場に送られ、目視検査で選別。さらに、水で洗浄され、スモーク室につるしいぶしながら乾燥させる。スモーク後、ゴム内のごみをはさみで除去し、視覚検査で国際規格に格付け分別。その後スモークシートを積重ね、各種重量サイズにプレス機で圧縮成形していく(※2)。

天然ゴムの特性とそのメリット

天然ゴムの原料や生産方法を理解したところで、特性やメリットについても紹介していこう。

弾力性や柔軟性に優れている

ゴム手袋のイメージ

Photo by Mufid Majnun on Unsplash

天然ゴムは、ゴム特有の弾力性や柔軟性に優れている点が特性のひとつ。

原料となるラテックスは液状のため柔軟性が高く、天然ゴムは糸ゴム、ゴム手袋、接着剤など幅広い商品に使用されている(※3)。

機械的強度に優れている

引裂強度や引っ張り強度、耐屈曲亀裂性、耐摩耗性など、機械的強度に優れているところも、天然ゴムの特性といえる。

この特性をいかし、大きな摩擦や負荷のかかるバスやトラックなど大型のタイヤに使用されることが多い。

機械的強度に優れている一方で、耐熱性、耐油性、耐候性、耐オゾン性が低く、環境によっては劣化しやすい性質を持っている(※3)。

比較的安価である

天然ゴムは自然環境などの影響を受けるために品質や価格が安定しない、しかし、比較的安価であることも、特徴のひとつといえるだろう(※4)。

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天然ゴムの主な用途

トラックのタイヤのイメージ

Photo by Jaye Haych on Unsplash

天然ゴムは、その特性を活かして幅広い製品に使われている。

主な用途として、機械的強度に優れている特性を活かした、バスやトラックなど大きな摩擦や負荷がかかる大型のタイヤなどの自動車産業がある。

そのほか、手袋、ゴム管、カテーテルといった医療用品や、靴底や輪ゴム、家庭で使用されている布テープにも糊(粘着材)の部分に天然ゴムが使用されているなど、日用品にも使用されている。

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天然ゴムと合成ゴムの違い

天然ゴムと合成ゴムの違いについて、解説していく。

合成ゴムとは

合成ゴムとは、石油やナフサ(原油を蒸留して分離した石油製品)を原料につくられた、化学工業品である。

原料の違い

天然ゴムと合成ゴムの違いとして、まず原料の違いが挙げられる。

天然ゴムは自然由来の原料であるのに対し、合成ゴムは、先述のとおり石油やナフサを原料につくられいる。

特性や用途の違い

合成ゴムは、原料や製法により多くの種類が存在するのが特徴。

原料によって、天然ゴムが苦手とする耐熱性や耐油性など、さまざまな特性を持たせることができるため、用途も天然ゴムと異なる。市場に流通している合成ゴムで100種類以上あるとされている(※3)。

環境への影響や持続可能性の観点の違い

森林伐採のイメージ

Photo by Gabriel Bucataru on Unsplash

天然ゴムと合成ゴムは、環境への影響や持続可能性の観点でも違いがある。

近年、東南アジアを中心とする天然ゴム栽培を行なっている地域の森林が減少している。これは、世界の天然ゴム生産量や消費量が増加し、天然ゴムの栽培が拡大したことが影響していると考えられているのだ(※5)。

合成ゴムも、限りある資源である石油(ナフサ)を原料しているため、持続可能性が高いとはいいにくい。

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天然ゴムの主な生産国は東南アジア

天然ゴムの主な生産国は、タイ・インドネシア・ベトナムなどの東南アジア。

IRSG(国際ゴム研究会)が発表したデータによると、2019年度の天然ゴム生産量は、1位がタイ、2位がインドネシア、3位がベトナム。タイとインドネシアの天然ゴム生産量を合わせると、世界全体の64.4%を占めているという。

しかし、2019年度と2018年度のデータを比較すると、タイとインドネシアの天然ゴム生産量は減少。これは、タイやインドネシアでゴムの木の病害が拡大していることが影響と考えられている。しかし、そのほかのほとんどの国では、生産量が増加。前年同期よりも2桁増となった国も複数あり、近年天然ゴム生産が急激に伸びていることがわかる(※6)。

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天然ゴムの環境への影響

ここからは、天然ゴムが環境に与える影響について見ていこう。

ゴム農園の開発による森林伐採への影響

森林伐採のイメージ

Photo by Annie Spratt on Unsplash

近年、世界の天然ゴム生産量や消費量は増加傾向にある。

需要が高まるにつれて、さらに多くの天然ゴムを生産する必要があり、天然ゴム生産量の多くをになう東南アジアでは、ゴムの木を栽培するゴム農園の開発が進んでいる。

ゴム農園の開発にあたり森林伐採がおこなわれ、天然ゴムの生産が東南アジアで自然の森を減少させる要因のひとつになり始めているのだ(※5)。

日本における”ゴムくず”の処理問題

日本では、“ゴムくず”の排出量が年々増加傾向にあり、その処理について問題視されている。

ゴムくずとは、ゴムの木から採取された樹液を加工した、天然ゴムを原料とする廃棄物を指す。ゴム製の廃棄物がすべて“ゴムくず”に分類されるわけではなく、合成ゴムを主原料とした廃棄物は、廃プラスチックに分類される。

ゴムくずの多くは、そのままの状態、または選別・破砕を行った後に焼却・溶融処理をへて、最終処分場にて埋め立てられる(※7)。

産業廃棄物の種類別の処理状況において、ゴムくずは排出量のうち最終処分の比率は19.5%にのぼり、最終処分の比率が高い廃棄物となっている(※8)。

持続可能なゴム生産への取り組み

森林伐採やゴムくずの処理に関する問題を抱えている天然ゴムだが、持続可能なゴム生産に向けてさまざまな取り組みも進められている。

たとえば、FSC認証で知られるFSC(Forest Stewardship Council®)は、持続可能な天然ゴムの調達を希望するすべての企業のために、ポジション・ステートメント(意見表明書)を作成。これによって、世界中のゴム農園が社会的、環境的に、より管理されることに貢献している(※9)。

さらにFSCは、さまざまな産業においてFSC認証天然ゴムのバリューチェーンを推進。FSC認証天然ゴムが使用されている商品には、手袋や履物、マットレス、枕、ヨガマット、風船などがあり、FSC認証は、これらの商品が安全な労働環境の下で森林破壊やその他の環境被害を与えないように管理された森林やプランテーションからつくられていることを保証している(※10)。

天然ゴムにまつわる環境問題への対応策

世界自然保護基金(WWF)の取り組み

WWFジャパンは、インドネシアのスマトラ島リアウ州やジャンビ州において、2024年に株式会社ブリヂストンと協力し持続可能な天然ゴム生産を目指す小規模農家への支援をスタートした。

苗の育成やタッピング(天然ゴムを収穫するために樹皮を削ること)、その後の集荷などについての知見、技術やリソースが不十分で、品質や効率面などにおいて改善の余地があることに着目。自社農園を保有するブリヂストンが、同社講師を通して培ってきたノウハウを参加農家にシェアした。

これによって、持続可能な天然ゴム生産に取り組む小規模農家の生産性や品質が改善し、生計向上につながることや、その波及効果により、地域全体で新たな農地開拓のため森林減少が抑制されることを目指している(※11)。

効率的なリサイクルへの取り組み

先述のとおり、日本ではゴムくずの処理の環境や生態系への悪影響が懸念されている。

多くが埋め立てられているゴムくずだが、リサイクルにはいくつかの方法が存在する。もっとも一般的な方法のひとつが粉砕処理だ。使用済みゴムを細かく粉砕し、新しい製品の原料として再利用する。

加えて、近年ではゴム廃棄物処理において、さまざまな革新技術が開発されている。注目されているもののひとつが、極低温粉砕技術だ。これは、ゴム廃棄物を極めて低い温度まで冷却することで、素材をもろくしより細かく粉砕する方法である。これにより、精度の高い粉末状ゴム素材を得ることができ、製造工程での再利用が効率化される(※12)。

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安定した需要が見込まれる天然ゴムの今後に注目

天然ゴムの世界的な需要は1983 年ごろから順調に推移し、2018年には1983年比で約3倍の規模まで拡大している(※13)。近年の天然ゴム需要は、中国とインドがけん引。環境や生態系への影響や持続可能性の観点でまだまだ課題は多いが、今後も安定した需要が見込まれている。技術の革新や企業の取り組みなどによって、課題をどうクリアにしていくのか今後も注目していきたい。

※掲載している情報は、2024年10月30日時点のものです。

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