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世界には、大きな被害をもたらした地震が数多く存在する。この記事では、これまで世界で起こった地震のなかでも被害が大きかったものを紹介する。各国の地震に対する対応策や、一人ひとりができる対策についても解説していく。
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地震の規模を表す単位は「マグニチュード」と「震度」の2つが存在する。マグニチュードは地震のエネルギーの総量を数値で表すもので、地震そのものの大きさを示す。一方の震度は、特定の場所で感じられる揺れの強さを表す。(※1)
マグニチュード(Mw)は、地震の規模を示す代表的な単位である。マグニチュードが1上がると、地震のエネルギーは約32倍に増加する。例えばマグニチュード5の地震と比べて、マグニチュード6の地震は32倍のエネルギーを持ち、さらに7であれば約1000倍のエネルギーとなる。
マグニチュードは地震そのものの規模を表すが、震度は特定の場所における揺れの強さを示す。震度は、日本では「震度0」から「震度7」までの範囲で表され、震度が高いほど揺れが強く、被害も大きくなる傾向がある。同じマグニチュードの地震でも、震源地からの距離や地形、建物の耐震性によって異なる震度が観測される。
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地震は世界各地で頻繁に発生しており、過去には非常に大規模な地震もいくつか記録されている。ここでは、1900年以降に世界で発生した、マグニチュードの大きい地震を紹介する。(※2)
1960年5月に発生したチリ地震は史上最大規模の地震であり、モーメント・マグニチュード9.5を記録した。この地震によって発生した津波は、チリ沿岸から日本にまで到達し、甚大な被害をもたらした。津波による死者は約2000人にのぼり、数十万の家屋が被害を受けた。(※3)
アラスカ地震は、1964年3月にアメリカのアラスカ州で発生した大地震である。マグニチュード9.2を記録し、観測史上2番目の規模となった。この地震による津波も広範囲におよび、アラスカ州内だけでなく、遠く離れたカリフォルニアや日本でも津波が観測された。地震と津波による死者は139人にのぼり、多くの建物や道路が液状化現象によって崩壊した。(※4)
2004年12月にインドネシアのスマトラ島沖で発生した地震は、モーメント・マグニチュード9.1を記録した。津波による被害が甚大で、インド洋周辺の国々に大きな被害をもたらした。津波はインドネシア、タイ、スリランカ、インドを含む14か国で観測され、被災者は120万人、死者及び行方不明者数30万人以上、被害総額は78億ドルに達すると見込まれている。これは、近代史上でも最大規模の津波被害であった。(※5)
2011年3月11日に日本で発生した東北地方太平洋沖地震は、マグニチュード9.0を記録し、観測史上4番目の規模であった。この地震は「東日本大震災」として知られ、巨大な津波が沿岸地域を襲った。津波によって広範囲にわたる家屋やインフラが破壊され、福島第一原子力発電所の事故も引き起こした。死者・行方不明者数は約1万8千人に達し、日本史上でも最悪の自然災害の1つとなった。(※6)
1952年11月、ロシアのカムチャツカ半島で発生したこの地震は、マグニチュード9.0を記録した。津波が発生し、日本にも被害が及んだ。この津波は最大15メートルに達し、数千人の死者を出した。(※7)
2010年2月にチリで発生した地震はマグニチュード8.8を記録し、チリ全土に甚大な被害をもたらした。この地震によって発生した津波は、日本やニュージーランドなど世界各地で観測された。海岸沿いの都市や村に大きな被害があり、死者は500人を超え、200万人以上が被災した。(※8)
1906年2月、エクアドルとコロンビア沖で発生した地震は、マグニチュード8.8を記録した。津波が太平洋全域に広がり、死者は600人以上にのぼった。(※9)
1965年2月、アラスカ州アリューシャン列島で発生した地震はマグニチュード8.7を記録した。この地震でも大規模な津波が発生し、アリューシャン列島周辺の集落や港に甚大な被害をもたらした。(※10)
アラスカ、アリューシャン列島 では、1946年4月と1957年3月にもマグニチュード8.6を記録する地震が発生している。
1950年8月に発生したこの地震は、チベット・アッサム地方で記録された。マグニチュード8.6で、インドとチベットの広範囲に被害を及ぼした。地震による土砂崩れや洪水も発生し、死者は約3300人とされる。(※11)
2012年4月にインドネシアのスマトラ島沖で発生した地震は、マグニチュード8.6を記録した。この地震は2004年の大地震と同じくインド洋プレート境界で発生し、津波の恐れがあったが、幸いにも大規模な津波は発生しなかった。死者数も少なかったが、インドネシアを含む周辺諸国で広範囲の揺れが観測された。(※12)
インドネシアのスマトラ島では2005年3月にも マグニチュード8.6の地震が発生している。
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地震が多発する国々はプレートの境界に位置することが多く、地震活動が活発である。以下は、1980年から2000年の20年間でマグニチュード5.5以上の地震が発生した頻度を年平均回数で表したものである。地震の発生頻度が高い国を紹介する。(※13)
順位 | 国名 | 年平均回数(1980〜 2000年) |
---|---|---|
1 | 中国 | 2.1回 |
2 | インドネシア | 1.62回 |
3 | イラン | 1.43回 |
4 | 日本 | 1.14回 |
5 | アフガニスタン | 0.81回 |
6 | トルコ | 0.76回 |
6 | メキシコ | 0.76回 |
7 | インド | 0.67回 |
8 | パキスタン | 0.62回 |
8 | ペルー | 0.62回 |
8 | ギリシャ | 0.62回 |
9 | フィリピン | 0.57回 |
10 | イタリア | 0.52回 |
年間でもっとも地震が多いのは中国という結果であるが、これは国土が広いことも関係している。インドネシアやペルー、日本の地中には地震を引き起こすプレートがあるため地震大国に数えられている。(※14)
日本は地震大国として知られており、頻繁に地震が発生する。日本列島は複数のプレートの境界に位置し、太平洋プレートとユーラシアプレートの沈み込み帯にあるため、巨大地震が起きやすい環境にある。2011年の東日本大震災は、歴史に残る大地震となった。(※15)
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順位 | 地震名(国名) | 発生年月日 | 死者・行方不明者数(概数) |
---|---|---|---|
1 | 甘粛地震(中国) | 1931年 | 約370万人 |
2 | 唐山地震(中国) | 1976年 | 約24万人 |
3 | スマトラ島沖地震(インドネシア) | 2004年 | 約22万6千人 |
4 | ハイチ地震(ハイチ) | 2010年 | 約22万人 |
5 | 南昌地震(中国) | 1927年 | 約20万人 |
6 | 海原地震(中国) | 1920年 | 約18万人 |
7 | 関東大震災(日本) | 1923年 | 約14万3千人 |
8 | アシガバート地震(旧ソ連) | 1948年 | 約11万人 |
9 | 四川大地震(中国) | 2008年 | 約8万7千人 |
10 | メッシーナ地震(イタリア) | 1908年 | 約7万5千人 |
10 | パキスタン地震(パキスタン) | 2005年 | 約7万5千人 |
1900年以降に起こった被害の大きかった地震をまとめた。(※16)今のように地震対策が行き届いていない、1900年代前半の地震で被害が大きい傾向が見てとれるが、スマトラ島沖地震やハイチ地震は、2000年以降に起こった地震にもかかわらず大きな被害を出した。スマトラ沖地震では津波の規模が大きく、ハイチ地震では雨が多くぬかるんだ土壌であったことが、被害を拡大させた原因と考えられている。(※5)(※17)
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地震の発生は世界中で見られるが、その頻度には地域ごとに大きな差がある。地震が頻繁に起きる地域には、特定の特徴が存在する。(※15)
地震の多くは、プレート同士が接する「プレート境界」で発生する。地中にあるプレートが互いにぶつかり合うことで強い力が働き、その結果地震が起こるためだ。日本は複数のプレートがぶつかる場所に位置しており、地震が多発している。
活断層が存在する地域も地震の頻度が高い。活断層とは、過去に地震を引き起こし将来的にも活動する可能性がある断層のことを指す。日本やアメリカ西海岸などの活断層が多く存在する地域では、地震のリスクが常に高い状態にある。
火山活動が盛んな地域も、地震の発生リスクが高い。火山の噴火に伴うマグマの動きが地殻に影響を与え、地震を引き起こすことがある。日本やインドネシアなどの火山帯に位置する国では、火山性の地震が発生しやすい。
地震の発生には、地質構造が大きな影響を与える。地殻の歪みが大きい場所や地層が複雑に重なり合う地域ではひずみが蓄積されやすく、これが解放されたときに地震が発生する。
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世界中で地震対策が進められているが、各国の取り組みには違いがある。以下では、日本を含めた地震多発国の対策を紹介する。
日本は東日本大震災や阪神・淡路大震災など、複数の大規模地震を経験している。これを受け、建物の耐震基準が大幅に強化された。1981年以降に導入された「新耐震基準」により、多くの建物が地震に強く設計されている。(※18)
また日本独自の「緊急地震速報」システムは、地震発生直後に迅速な警報を発信し、数秒から数十秒の猶予を与えることで人々が身を守るための時間を確保している。(※19)
中国は、四川大地震など大規模な地震を数多く経験している。中国政府は地震研究に力を入れ、断層やプレートの動きを詳細に分析するプロジェクトを推進している。また三峡ダムのような巨大ダムに対する地震対策も行っており、ダムが耐震設計されるだけでなく、ダム付近の断層を監視するシステムも導入されている。(※20)
インドネシアはスマトラ沖地震(2004年)により、甚大な津波被害を受けた。この経験から国は津波警報システムの整備を進め、インドネシア気象気候地球物理庁(BMKG)が津波警報を迅速に発信できるようになっている。また沿岸地域では避難訓練の実施、避難経路や避難施設の整備も進められ、住民が迅速に高台へ避難できる体制が整っている。(※21)
イランの首都テヘランは地震多発地域に位置しており、過去に何度も大規模な地震被害を受けている。これを受け、イラン政府はテヘラン市における道路網の耐震強化や、防災計画の整備を進めている。(※22)
フィリピンでは、通信網の被害が大きな問題となっている。これに対応するため、日本の総務省と協力し、移動式ICTユニットを導入するプロジェクトを実施している。万が一、災害時に通信網が破壊されても、迅速に応急復旧が行われて救助活動や情報伝達がスムーズに行える体制が整えられている。(※23)
トルコはイスタンブールを含む大都市が活断層に近接しているため、地震による被害が懸念されている。そのためトルコ政府はボスポラス橋などの重要な長大橋を耐震補強し、将来の地震に備えている。(※24)
アメリカ西海岸は環太平洋火山帯に位置しており、頻繁に地震が発生する。カリフォルニア州では1994年のノースリッジ地震を契機に、建物の耐震補強が強化された。ロサンゼルスやサンフランシスコでは、耐震基準を満たしていない古い建物を補強するプロジェクトが進行中だ。(※25)
チリは、1960年に世界最大規模の地震であるチリ地震を経験している。その教訓をもとに津波対策が進められており、防波堤の建設や津波避難計画の強化が図られている。また避難訓練も定期的に行われ、住民の意識向上も進んでいる。(※3)
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地震はいつどこで発生するか予測が難しいため、事前の準備が非常に重要である。家庭でも、可能な限り対策を講じることで被害を軽減したい。ここでは、地震発生時に個人でできる具体的な防災対策について紹介する。
地震発生時には、家具や家電が倒れたり物が落下したりすることが大きな危険となる。大型の家具やテレビなどは、しっかりと固定しておこう。転倒防止用のベルトや突っ張り棒を使用することで、家具や家電の倒壊リスクを大幅に減らせる。また収納棚には滑り止めを設置し、食器や本が飛び出さないようにしておきたい。
大地震が発生すると、電気や水道、ガスなどのライフラインが止まる可能性が高い。そのため少なくとも3日分、できれば1週間分の食料や飲料水を備蓄しておきたい。また飲料水は、1人あたり1日3リットルを目安に備蓄するとよい。さらに簡易トイレや懐中電灯、ラジオも忘れずに準備しておくことが必要である。
日頃から自宅や職場、学校などから安全に避難できる場所を確認しておこう。避難所や避難経路は、自治体のホームページやハザードマップで確認できる。また家族と一緒にどのルートを使うか、集合場所はどこにするかを話し合い、緊急時に迷わず行動できるようにしておくと安心だ。
地震後の火災は、被害をさらに拡大させる要因となる。地震直後はコンロや暖房器具などの火元が倒れて火災が発生しやすい。住宅用火災警報器を設置しておくことで、火災の発生をいち早く察知し、避難が遅れることを防げる。
地震による被害は住宅や財産にもおよぶため、地震保険への加入も重要な対策のひとつである。日本では基本的に火災保険では地震による損害はカバーされないため、地震保険を別途契約する必要がある。保険に加入しておくことで、被災後の生活の立て直しがスムーズになるだろう。
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世界中で起こる可能性のある地震だが、なかでもプレート境界付近や活断層が存在する地域は地震のリスクが高い。日本を含む多くの国々では、建築基準や防災システムの強化が進められているが、個人の備えも重要である。今後も世界各地で発生する地震に備え、適切な対策を講じることが求められる。
※1 震度とマグニチュード|九都県市首脳会議 防災・危機管理対策委員会
※21900 年以降に発生した地震の規模の大きなもの上位 10 位 |内閣府
※3報告書(1960 チリ地震津波) |内閣府
※4全米一の地震多発地帯、アラスカ州が誇る「鉄壁の防御策」|Forbes
※5インドネシア・スマトラ島沖大規模地震及びインド洋津波|内閣府
※6平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震 ~The 2011 off the Pacific coast of Tohoku Earthquake~|気象庁
※7カムチャツカ半島沖地震(1952年)|内閣府
※8海外の地震・津波における 移転及び被害状況について|内閣府
※9エクアドル(2016年地震)|日本赤十字社
※10アラスカ・アリューシャン・カムチャッカ沈む込み帯の巨大地震について|国土地理院
※11世界の自然災害|防災科学技術研究所
※12インドネシアのスマトラ沖地震、死者5人・子ども1人重傷|Reuters
※13図録▽世界各国の地震災害(地震回数・死者数) |社会実情データ図録
※14【コラム】地震大国インドネシア|インドネシア総合研究所
※15地震発生のしくみ|気象庁
※16令和3年版 防災白書|附属資料23 1900年以降の世界の主な自然災害の状況|内閣府
※172021年ハイチ地震の複雑な発生機構を解明~横ずれ断層と逆断層の破壊をもたらしたプレートの斜め衝突~|筑波大学
※18住宅・建築物の耐震化について|国土交通省
※19緊急地震速報について|気象庁
※20中国の地震防災の現状と展望|科学技術振興機構
※21インドネシアの防災政策と今後の協力の重要性|内閣府
※22テヘラン地震災害軽減プロジェクト|JICA
※23フィリピン共和国における移動式ICTユニットに関するITUとの共同プ ロジェクトの開始 |総務省
※24イスタンブール長大橋耐震強化事業 | ODA見える化サイト
※25アメリカの地震対策|グローバルマーケティングラボ
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