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災害時の備えとして注目されている、「ローリングストック」。本記事では、具体的なやり方やメリット・デメリット、非常食との違いについて解説する。さらに、ローリングストックにおすすめの食品や日用品も紹介していく。
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災害時の備えのひとつとして注目されている、「ローリングストック」。
ローリングストックとは、ふだん使っている食品を少し多めに買い置きして、消費期限や賞味期限が近いものから消費。消費したら、その分をまた買い足すことで、常に一定量の食品が家庭で備蓄されている状態を保つための方法を指す言葉である(※1)。
ローリングストックが推奨されているのは、以下2つのポイントがある。
1つ目は、ふだんの買い物の範囲でできる災害時の備えだということ。
ローリングストックは、ふだんと同じように買い物に行き、いつも購入する食品を少し多めに買うだけでできるので、気軽に取り組むことができる。
買い置きのスペースを少し増やすだけで済むのも、ローリングストックのポイントだ。
これまでには無かったものを購入するわけではないので、新たにまとまった収納スペースを確保する必要がない。
ローリングストックと一般的な非常食備蓄は、何が違うのだろうか。
非常食は、災害時の備えとして用意し、主に災害時に使うもの。それに対してローリングストックは、日常から使用し、かつ、災害時にも使用するものである(※1)。
つまり、非常食は基本的には購入したら災害時、または賞味期限が近くなるまで保存しておくことが多いが、ローリングストックは日常的に使用と補充を繰り返し、循環しながら一定量をキープするところが、2つの違いといえるだろう。
どちらか一方がではなく、非常食とローリングストックをバランスよく備えることが望ましい。
大規模災害が発生すると、電気やガス、水道などのライフラインが途絶える可能性がある。内閣府が発表している首都直下地震等による東京の被害想定によれば、各ライフラインの復旧目標日数は、電気で6日、上水道で30日、ガス(都市ガス)で55日となっている(※2)。
また、スーパーやコンビニに人が殺到し商品がなくなってしまったり、道路が遮断されて食料流通が機能しなくなったりすることも想定される。災害支援物資も3日以上到着しないことも予測されるため、各家庭で食料品をストックしておき、いつでも使えるようにしておくことが重要なのだ。
ローリングストックのやり方は以下の通りだ。
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“災害時の備え”と考えると、非常食や長期保存食品などをイメージするかもしれない。しかしローリングストックは、あくまで日頃から購入している食品を少し多めに買い置きしておくことがポイント。
お米やパスタ、調味料、子どものおやつ、よく食べるカップ麺など、ふだんから食べているものを少しずつ多めに買っておくようにしよう。
少しずつ多めに食品を買ったら、消費期限の早いものから日常的に消費。消費期限を確認しておかないと、いざ必要になった時に期限が切れてしまっていて食べられないこともある。
消費した分は、次の買い物で買い足し、一定量をキープできるように心がけよう。
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支援物資到着までの日数などから考えて、災害時の食糧備蓄は一人当たり最低でも3日分、理想は1週間分といわれている。
日常的に食べないものをストックすると、期限切れになってしまい食品ロスにつながる可能性がある。そのため、半年間で必ず一度は消費する食品や飲料を対象にローリングストックするのが望ましい。
ライフラインが途絶えているなか、お米を炊いたりカップ麺をつくったりするのには、水やカセットボンベが必要だ。
そのほか、流通が止まりスーパーなどで日用品も購入できなくなることが予想されるため、頻繁に使うペーパー類やキッチン周りの消費財など、日用品も対象にするといいだろう。
ここからは、ローリングストックを始めるための具体的なステップを紹介する。まだローリングストック始めていない人は、ぜひ4つのステップに沿って実践してみてほしい。
まずは、どれくらいのストックがあればいいかを把握することが重要だ。
そのために、災害時に在宅避難することを想定して、家族全員分の一週間の献立をざっくりと考えると、「どんなもの」を「どれくらい」備蓄して、「どうやって」食べるのかがイメージできるだろう。
また、ふだんの生活と大きく変わる避難生活では、食べ慣れたものや好きなお菓子などがあると安心感を得ることができる。そのため、家族の好みに合った食品をストックすることも大切なポイントだ。
消費量を把握したら、すでに家庭にある食品在庫をチェックして、どのくらい足りないのか洗い出していこう。
買い足す量がわかったら、必要な備蓄スペースを確保。収納するときは、何がどれくらいあるかわかるように、取り出しやすいケースや箱に入れておくのがおすすめ。買いすぎや賞味期限切れを防ぐことができる。
買い足す量を把握し、備蓄スペースを確保したら、具体的な備蓄品リストを作成しよう。一度リストを作成しておけば、備蓄量がズレたときにも調整しやすくなる。
備蓄品リストを作成したら、買い物に行くタイミングで少しずつ買い足して、必要量を備えていく。
用意したストックは、消費期限が切れる前に消費しよう。消費したらその分を買い足して、一定量をキープすることが大切だ。
ローリングストックの具体的な始め方を理解したところで、メリットやデメリットについても解説していく。
ローリングストックのメリットのひとつは、日常生活と災害時の備えを両立できることだ。暮らしの延長線で災害に備えることができるため、気軽に取り組むことができる。
また、「備える」「食べる」「買い足す」を繰り返していくことで消費期限切れを防ぐことができ、食品ロスの削減にもつながる。
ローリングストックのデメリットは、消費期限チェックの手間が増えること。家族の人数や食べる量によっては、ストックがそれなりの量になるため、期限切れが発生しないよう定期的にチェックする必要がある。
ローリングストックには、常温保存できる食品や調理せずに食べられるものなど、適した食品・用品がある。また、栄養バランスを考えることも大切。ここからは、カテゴリーごとに対象食品・用品を紹介していこう。
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精米、無洗米、パックご飯、乾麺、カップ麺、もち、シリアル、小麦粉など
肉・魚・豆などの缶詰、魚肉ソーセージ、蒸し豆(大豆など)、レトルト食品(ミートソース、丼の素など)など
日持ちする野菜類、乾物(きのこ、海藻、根菜)、梅干し、漬物、コーンやトマトなど野菜の缶詰、フリーズドライの野菜の汁物、レトルト野菜スープなど
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日持ちする果物、ドライフルーツ、フルーツの缶詰、果物ジュースなど
ロングライフ牛乳、粉チーズ、スキムミルクなど
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飴、氷糖、ようかん、チョコレート、ビスケット、せんべい、スナックなど
塩、みそ、しょうゆ、酢、砂糖、食用油、ケチャップ、マヨネーズ、バターなど
ふりかけ、ジャム、はちみつなど
ペットボトル入りの水、お茶、清涼飲料水、豆乳、長期保存型の水、など
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カセットボンベ、電池など
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ティッシュペーパー、トイレットペーパー、ウェットティッシュ、生理用品など
食品用ポリ袋、ラップ、アルミホイル、クッキングシート、キッチンペーパー、除菌スプレー、キッチンバサミなど
これまでローリングストックの始め方やメリットについて解説してきた。しかし、災害直後は、インフラが途絶えている可能性があるほか、精神的に調理をしたり、ご飯のことを考える余裕がないことも考えられるため、開けてすぐに食べられる非常食も必要だ。
ローリングストックだけで満足せず、同時に備蓄用の非常食や長期保存食、防災セットを備えることも忘れてはいけない。
地震や大雨が多く発生する日本において、災害時の備えはとても需要だ。非常食や防災セットを用意することももちろん大切だが、あわせて在宅避難時に食べるものがなくなって困ることがないよう、ローリングストックを日常の一部として取り入れてみてほしい。
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