土砂災害の原因は? 起こりやすい場所の特徴や対策をわかりやすく解説

土砂災害のイメージ

Photo by Masjid Pogung Dalangan

毎年日本各地で発生している、土砂災害。本記事では、土砂災害の原因や、起こりやすい場所の特徴をわかりやすく解説していく。また、土砂災害の予兆現象や、過去発生した被害の実例も紹介。土砂災害予防対策についても言及する。

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2024.10.29
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土砂災害とは

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Photo by Jacob Padilla on Unsplash

土砂災害とは、山や崖が崩れたり、崩れた土砂が雨水や川の水と混じって流れてきたりすることによって人の命が奪われたり、建物を押しつぶしたりする災害のことを指す。大雨や地震、火山の噴火などが原因で引き起こされる、自然災害のひとつだ。

土砂災害は、毎年日本各地で発生している。国土交通省資料によると、平成25年から令和4年までの10年間で発生した全国の土砂災害件数は、年平均約1446件にのぼる(※1)。

土砂災害は大きく分けて、3つに分類される。1つ目は、「土砂流」。土砂流は、大雨などが原因で、山や谷の土・石・砂などが崩れ、水とまじってどろどろになり、一気に流れ出てくる現象のこと。

2つ目は、比較的ゆるい傾きの斜面が、雨や雪解け水がしみこんだ地下水によって、広い範囲にわたってすべり落ちていく「地すべり」。家や畑などもいっしょに地面が大きなかたまりのまま動き、ゆっくり動くこともあれば、一気に動くこともある。

3つ目が、「崖崩れ」。急な斜面が突然崩れ落ちる現象で、大雨のあとに雨水が崖にたくさんしみこんだことが原因で起きたり、地震のゆれによって起きたりもする。一気に土砂が崩れ落ちてくるため、崖の下にいる人は逃げ遅れてしまうケースが多い(※1)。

日本に土砂災害が多い理由や原因

先に述べたように日本は、土砂災害をはじめとする自然災害が多い国である。なぜ日本は、土砂災害が多いのだろうか。日本の気候や地形・地質的要因などから理由を解説していく。

雨や雪が多い

雨が降っているイメージ

Photo by Alex Dukhanov on Unsplash

土砂災害を引き起こす、大きな原因のひとつが雨である。日本の年間平均雨量が約1700ミリであるのに対して、世界の年間平均雨量は約970ミリ。世界と比べて、日本は雨が多い国であることがわかるだろう。

しかも、年間を通して均等に雨が降るわけではなく、梅雨や台風、秋雨などの季節に集中豪雨や長雨など、まとまって大量に降るという特徴がある。通常を超えた量の雨が降ると、地中に大量の水分が浸透し土地がゆるんでしまい、土砂災害が発生しやすくなるのだ。

また、日本は国土の50%が積雪地帯。豪雪地帯もあり、なだれや雪どけ水が原因で土砂災害を引き起こすこともある(※2)。

地震が多い

地震のイメージ

Photo by Jens Aber on Unsplash

地震が多いのも、日本に土砂災害が多い理由のひとつだ。

地震によって、崖崩れや地すべりが起こるほか、崩れた土が川の水や雨水などとまじって土石流が起きたり、崩れた土砂が川をせき止めて洪水や土石流を引き起こしたりすることもある(※2)。

山地や川の急流が多い

日本列島は、面積の約70%が山や丘陵である。高くてけわしい山が多い上、崩れやすい地質でできており、川の水でけずられたり、雨や風で崩れたりしやすいのだ。とくに、砂質土壌や風化した岩盤など脆い地質の山は崩壊を起こしやすいとされている(※3)。

火山が多い

日本には、全部で110もの活火山がある。

火山の噴火が起こると、火砕流や溶岩流、泥流などを発生させるだけでなく、噴火がおさまったあとも、降り積もった火山灰が原因で土石流が発生することもあるのだ(※2)。

人為的な発生要因も

土砂崩れの原因は、日本の気候や地形・地質によるものだけではない。土地の開発や森林伐採、斜面の植生の喪失などによって斜面の安定性が悪化したことによる、人為的発生要因もある。

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土砂災害が起こりやすい場所の特徴

ここからは、土砂災害が起こりやすい場所の特徴について見ていこう。

山間部や丘陵地帯

大雨や地震によって山崩れが発生すると、樹木の少ない山間部では土石流の危険が大きくなる。

また、近年では都市部での斜面災害が増えており、丘陵地に形成された住宅街のうち台地際(縁辺部)の斜面で崖崩れが発生している(※4)。

地質が砂質や粘土質の場所

土のイメージ

Photo by Bozhin Karaivanov on Unsplash

地質によっても、土砂災害の発生しやすさが変わってくる。

たとえば、砂質土である「マサ土」や「シラス」といった「特殊土壌」と呼ばれる土壌は、雨水による侵食を受けやすく、集中豪雨などの強くまとまった雨によって大規模な土砂災害を起こしやすい(※5)。

また、水を通しにくくすべりやすい、粘土の地層が広がっている場所は、土砂災害のうち、とくに地すべりが起こりやすいとされている。これは、雨が降ったり雪がとけたりして大量の水が地面に染み込むと、その水は粘土質のような水を通しにくい地層の上にたまり、その地層より上の地面がたまった水の浮力で持ち上げられ、ゆっくりと下へすべっていくためである(※6)。

過去に土砂災害が発生した地域

2018年に国土交通省が発表したデータによると、土砂災害発生順位は1位が広島県であった。ついで、愛媛県、北海道、山口県、高知県、となっている(※7)。

広島県で土砂災害が多いのは、広島県の山地が、主に広島花こう岩といわれている岩石からできていることが理由とされている。広島花こう岩は、長い間雨や風にさらされると「マサ土」と呼ばれる砂のような土に変化。このマサ土が、水を含むと崩れやすい性質を持っているため、広島県では、土石流や崖崩れなどの土砂災害が起こりやすいのだ(※8)。

急斜面や崩れやすい傾斜地

急斜面や崩れやすい傾斜地では、崖崩れに注意が必要だ。集中豪雨などの影響により、突然発生することもあるため、できるだけ早く避難することが重要である。

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土砂災害の予兆現象の例

地震や長雨、豪雨が発生した際、土砂災害の前触れとなる予兆現象が起きることがある。ここからは、土砂災害の予兆現象の例を紹介していく(※9)。

斜面の亀裂やひび割れ

斜面のイメージ

Photo by Walter Frehner on Unsplash

前兆現象は、土石流、崖崩れ、地すべりなど土砂災害の種類によって変わってくる。地震や長雨、豪雨が発生した際、斜面に亀裂やひび割れが起きたら、崖崩れが発生する可能性があるため、注意が必要だ。

湧き水の増加や濁り

湧き水の増加や濁りが生じた場合、崖崩れのほか、土石流の危険がある。この予兆現象は、およそ1〜3時間前に起きるとされている。

異常な音や振動(地鳴り)

土石流や地すべりの予兆として、異常な音や振動(地鳴り)が起こることがある。切迫性が極めて大きい場合が多いため、速やかに避難する必要がある。

木や電柱が傾く、地面が沈下する

地すべりの予兆として、建物や電柱、樹木が傾くことがある。そのほか、地面が沈下して段差ができることもある。

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土砂災害の予防対策

土砂災害の予防対策には、どのようなものがあるのか見ていこう。

斜面の植生の維持・回復

斜面に木が生えているイメージ

Photo by Peter Robbins on Unsplash

草や木が生えていない、地面がむきだしになった山は、大雨などで山の斜面が崩れた際に、どんどん土砂が流れ出してしまう。

そこで、斜面をコンクリートの枠や壁でおさえて固定するほか、木や草を植えて植生を維持・回復することで土砂崩れを防ぐ対策を行なっている(※10)。

土留め工や排水設備の設置

土石流による災害を防ぐための工事として、土石流が流れてきたときに谷の途中で受け止めて、ふもとまで行かないようにする「砂防堰堤(さぼうえんてい)」や、大水が出たときに、川岸や川底などが水の力でけずられないように、流れの勢いを弱め、下流に安全に流すための「渓流保全工(けいりゅうほぜんこう)」がある(※10)。

そのほか、地すべりを防ぐため、すべりやすい地層にたまった地下水を特別な井戸に集めて、地すべりが起きている場所の外へ流す排水設備の設置工事や、雨水が地面にしみこまないようにする工事などを行い、土砂災害を予防しているケースもある(※11)。

避難計画の整備と警戒区域の指定

国土交通省の「今後の土砂災害対策の進め方」では、警戒避難対策として、「警戒避難体制の整備により土砂災害による人命被害を防ぐとともに、安全な土地利用へ の転換を進めるため、土砂災害警戒区域等の指定を促進する」としている。

具体的には、土砂災害警戒区域において、市町村地域防災計画にもとづく円滑な警戒避難をするために防災訓練を実施。さらに、市町村は、土砂災害に関する情報の伝達方法や避難地・警戒避難に必要な情報を住民に周知するためにハザードマップを作成するをなど、避難計画の整備や警戒区域の指定を行なっている(※12)。

ハザードマップの活用

地図のイメージ

Photo by Nik Shuliahin 💛💙 on Unsplash

土砂災害から自分自身の身を守るために、個人でできる対策もある。

土砂災害のおそれのある地区は「土砂災害警戒区域」等とされているため、ハザードマップを活用し、自分の家や職場などが土砂災害のおそれのある地区にあるかどうか必ず確認しておこう。

定期的な地盤調査や監視

定期的な地盤調査や監視も、土砂災害の予防対策のひとつだ。

重大な土砂災害が想定される地域では、継続的に監視・観測を実施。土砂災害の発生の兆候を調査し、予防的な対策を効果的に実施することによって、土砂災害から国土の保全を図っている(※12)。

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土砂災害がもたらす被害の実例

日本では、過去にどのような土砂災害が発生したのだろうか。被害の実例とともに紹介していく。

過去に発生した土砂災害の事例

令和6年9月能登半島豪雨

2024年9月に石川県能登地方を襲った記録的豪雨で、土砂崩れが相次いで発生。これらの多くは、1月の能登半島地震で生じた亀裂や、地盤の緩みによって引き起こされたとみられている。

住宅被害は10月18日までに判明した分だけで、全壊19棟、半壊36棟、浸水が1373棟。このうち、仮設住宅への浸水が6カ所の計222棟にのぼる(※13)。

また、土砂崩れに巻き込まれるなどして、15名が亡くなった(※14)。

平成30年7月豪雨

「平成30年7月豪雨」では、前線や台風第7号の影響により西日本を中心に全国的に広い範囲で⾧期間にわたる大雨をもたらした。

河川の氾濫や土砂災害等が発生し、死者・行方不明者245名、負傷者433名と、甚大な災害となった。土砂災害発生件数は、2,581件にものぼり、とくに被害が大きかった地域は、広島県と岡山県であった(※15)。

土砂災害後の復旧と復興の課題

国土交通省は、平成30年9月に「平成30年7月豪雨等を踏まえて対応すべき課題と対策の方向性」を発表。それによると、災害後の復旧において、排水施設等の電力設備が浸水により機能停止し、機能回復に時間を要したことから、被災地の復旧に影響が出たという。

また、災害によるライフラインの途絶や移動ルートの遮断により庁舎機能が一部制限されたことも課題として挙げている(※16)。

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土砂災害などから命を守る対策を

自分が住んでいる地域のハザードマップを見たことがあるだろうか。「長年住んでいて、何も起きたことがないから大丈夫」とつい油断してしまうが、実は警戒区域に入っていたり、その近くだったりすることもある。土砂災害をはじめ、自然災害はいつどこで発生するかわからない。いま一度、危機感を持って命を守るための対策について考えてみてほしい。

※掲載している情報は、2024年10月29日時点のものです。

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