イエメン内戦とは 紛争の原因と現在も起きている問題、その支援を解説

紛争で崩れた建物

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イエメン共和国で起きている内戦をご存知だろうか。この記事では「イエメン内戦」についてわかりやすく解説する。そもそもイエメンの紛争は何が原因で起こり、現在はどうなっているのか。内戦の現状や紛争がいつまで続くのかについても言及していく。

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2024.10.31
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イエメン内戦とは

銃を持った人

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イエメン共和国は、1990年の南北イエメン統一により成立した国家だ。面積はおよそ53万kmで、人口は約3000万人。その大半はムスリム(イスラム教徒)で、宗派はスン二派が約1500万人、シーア派(大半がザイド派の信徒)が約800万人だ。

「イエメン内戦」は、2015年3月に始まったイエメン国内の内戦である。イエメン統一後に国の統治を巡り、イエメン北西部を根拠地とする「フーシ派」と呼ばれる勢力と政権側との対立により内戦へと発展していった(※1・※2)

イエメン内戦の原因と背景

アラブの建物と人

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ここではイエメン内戦の発生原因とその背景について解説する。

「アラブの春」による混乱が影響

冷戦崩壊後の1990年に南北のイエメンが統合されてイエメン共和国が成立。民主化が進められていたが、結果的に初代サレハ大統領による独裁政権が続き、2011年の中東の民主化運動「アラブの春」による影響で退陣を求めるデモが起こった。

サレハ大統領は退陣し、副大統領を務めてきたハディ大統領が政権の座についたものの、国の統治を巡り争いが激化していった。(※2)

サレハ政権への反逆とフーシ派の台頭

フーシ派とは、イエメン北西部を根拠地とするイスラム教シーア派系ザイド派の武装組織。(※3)サレハ政権の独裁化や南北イエメン統一後の変化に納得できない者たちが反政府デモを繰り返す情勢のなかで勢力を拡大し、台頭した。

「アラブの春」によってサレハ大統領が退陣し、ハディ大統領が政権の座についたものの、政権与党が存続し続けたことに抗議。フーシ派が首都サヌアを武力で掌握した。これに対しハディ大統領が「クーデター」と非難し、政権側とフーシ派による内戦へと発展していった。(※2)

内戦の複雑化

当初は「ハディ政権」と「フーシ派」の対立だったが、2018年以降はハディ政権に代わって、南部運動にかかわる武装勢力が内戦の一方を担っている。現在はハディ大統領から始まった「ハディ政権」、フーシを大統領とする「フーシ派」、アラビア半島のアルカーイダ傘下の「アンサール・アル・シャリーア」の3勢力(大まかに分けて)の内戦となっている。(※4)

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内戦が拡大した理由

イエメン国内の内戦にすぎなかったものがなぜ拡大していったのか、その理由は周辺国を巻き込んだ代理戦争の程をなしているからだ。

”クーデター“により逃亡したハディ大統領が逃げた先は、イスラム教スンニ派のサウジアラビア。政権側の閣僚の多くもサウジアラビアで亡命生活を送っている。サウジアラビアはUAE=アラブ首長国連邦などとともに有志連合を結成し、イエメンへの空爆や地上部隊の派遣など軍事介入を行なった。その有志連合へ武器を供給するなど、間接的な支援を行っているのがアメリカだ。

一方、フーシ派を支援しているのが、イスラム教シーア派のイラン。こういった勢力図から、イエメン内戦はスンニ派のサウジアラビアとシーア派のイランの代理戦争のような構図に至り、被害や規模が拡大していった。(※2)

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イエメン内戦と周辺国の関与状況

アラブ系の建物

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ここではイエメン内戦と周辺国の関与状況について解説する。

サウジアラビア

イエメン内戦は宗派対立や、サウジアラビアとイランの代理戦争も担っている。しかし内戦の原因は内発的なものであって、サウジアラビアとイランの関係はあくまで後付けである。現地メディアによると、ハディ政権を支援しているのはサウジアラビア国の代表団と報告されている。(※1)(※5)

イラン

現地メディアによると、フーシ派には親イラン武装組織が関わっていると報告されている。したがって、イエメン内戦の裏ではサウジアラビアの「スン二派」と、イランの「シーア派」によるイスラム教の宗派対立も行われているというわけだ。(※5)(※6)

オマーン

オマーンはイエメンに隣接しており、情勢の安定化を求めて和平を促す立場を担っている。現に、2023年のサウジアラビア代表団がサヌアにてフーシ派と「停戦協議」を開始した際も、オマーン国が仲介に入って行われた。(※5)

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イエメン内戦がもたらす地域への影響

テントと子ども

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ここでは、イエメン内戦がもたらす地域への影響について解説する。

人道危機の深刻化

イエメンの終わらない紛争は「世界最悪の人道危機」と呼ばれている。世界の最貧国のひとつであるイエメンでは、内戦による貧困や食糧不足に悩まされており、現在も1820万人が人道支援を必要としている。(※7)

難民問題の発生

紛争が始まる前から多くの難民を受け入れてきたイエメンだが、現在もソマリアなどの近隣諸国から避難してきた難民を受け入れている。しかし、長きにわたる紛争により政治的解決の目途は未だ立っておらず、問題は深刻化する一方となっている。(※8)

過激派組織の活動拠点化

かねてよりイエメンでは、内戦の長期化によるイスラム過激派組織によるテロや、過激派組織の活動拠点化が問題視されていた。そんななかアメリカのバイデン大統領は、2024年1月に紅海で商船への攻撃を繰り返しているフーシ派の複数の活動拠点を、イギリスとともに攻撃したと発表した。

その結果、フーシ派は活動拠点を変えざるを得ない状態となった。また2024年10月にも、米軍がイエメンのフーシ派の活動拠点を15箇所攻撃したと発表している。(※9)(※10)

周辺国を巻き込んだ国際紛争への発展

イエメン内戦が拡大したのは、周辺国を巻き込んだ代理戦争であることも原因のひとつだ。ハディ政権にはサウジアラビアとUAEがつき、フーシ派にはイランがついている。バックにつく国どうしも対立関係であることから、周辺国を巻き込んだ国際紛争へと発展していったのだ。

当初は「ハディ政権」と「フーシ派」の争いだった紛争が、いつのまにか「サウジアラビア(スンニ派)」と「イラン(シーア派)」の宗派対立による代理戦争へと発展し、争いは拡大する一方だ。

さらにハディ政権についたサウジアラビアとUAEの軍事支援をアメリカが行っていることから、アメリカのフーシ派に対する目論見も見え隠れする状態だ。(※4)

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イエメン内戦と難民の現状

子どもたち

Photo by salah-darwish

ここではイエメン内戦と難民の現状について解説する。

食糧難と貧困

イエメンでは内戦による紛争や経済危機によって、食糧難と貧困が大きな問題となっている。現在も食糧支援を必要としている人数は、2022年3月時点で1900万人に上る。なかでも220万人の子どもが急性栄養不良に陥っており、状況は深刻だ。(※11)

大規模な洪水の被害

イエメンでは2024年8月に起きた洪水による影響で、多くの死者や負傷者がでた。大規模な洪水の被害により、フーシ派はイエメン西部フダイダ県にて死者84人、負傷者25人を出した。大規模な洪水で多くの建物が浸水し道路は寸断。インフラや農地などに甚大な被害をもたらしたが、避難キャンプに住む人々がもっとも深刻な被害を受けたとされている。(※12)

下痢とコレラ感染

イエメンでは2019年3月時点で、重度のコレラと急性水様性下痢症のおそれのある症例が10万9,000件近く報告されている。また症例の約3人に1人は5歳未満の子どもであり、状況は深刻だ。2019年3月時点で関連した死亡例は190件にまで上っており、コレラや急性水様性下痢症は内戦や豪雨による影響が大きいとされている。(※13)

保健・医療・インフラの崩壊

イエメンには450万人以上の国内避難民と、2,000万人以上のヘルスケアを必要とする人々が暮らしている。しかし長年の紛争で、保健インフラの崩壊と保健システムの混乱が続く状態だ。避難民コミュニティにとって保健サービスへのアクセスは負担が大きく、最寄りの保健センターは避難所からも遠いため、子どもが病気になっても医療治療の選択肢はないのが現状だ。(※14)

教育機会の喪失

イエメンでは紛争による教育崩壊により、2021年時点で約600万人が教育の機会を失ったとされている。紛争が開始された2015年ごろと比べ、学校に通えない子どもたちの数は2倍に増えている。紛争による貧困が原因で、就学年齢の約200万人の子どもが現在も学校に通えていない状態だ。(※15)

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イエメン内戦への国際的な支援

スープを注ぐ人

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ここでは、イエメン内戦に対して行われている国際的な支援活動について解説する。

世界食糧計画(WFP)

問題視されているのが、内戦の長期化による食糧難だ。こうしたなかで、イエメン内戦への国際的な支援として国連は仲介へと乗り出した。一部地域で停戦合意を成立させ、「WFP=世界食糧計画」などによる食糧支援を実施している。(※4)

社会復帰(DRR)プロジェクト

NPO法人「アクセプト・インターナショナル」では、2021年4月から南西部タイズ県を拠点とした脱過激化・社会との接点構築・社会復帰(DRR)プロジェクトを実施している。

このプロジェクトでは、若者や子どもを含むフーシ派からの帰還兵や投降兵に対して包括的な支援を展開し、対象となる若者や子どもの能力向上を目指して地域社会の経済回復や地域の安定化を促す活動を行っている。(※16)

各分野に人道支援

「日本ユニセフ協会」ではイエメンの人道的危機に対応するため、栄養・水と衛生・教育・保護サービスなどの各分野に人道支援を続けている。イエメンでは2024年3月時点で1,000万人の子どもが緊急の人道支援を必要としており、ユニセフでは人道危機緊急募金の支援を募っている。(※17)

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イエメン内戦をわかりやすくまとめると

紫の服を着た女の子

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イエメン内戦の発端は、イエメン共和国に統一後、民主化の過程での政権の独裁化とそれへの反発、中東で起きた民主化運動「アラブの春」がきっかけとなった。その結果、いま現在も多くの国民が貧困と食糧不足に苦しんでいる。

一方で、日本は食品ロスが多いことで知られている。私たちにできることは寄付や支援に限らず、食べ物を粗末にしないことも重要ではないだろうか。この機会に、自分には何ができるのか、あらためて考えてみたい。

※掲載している情報は、2024年10月31日時点のものです。

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