ユニセフとSDGsの関係は? 関連する取り組みや私たちにできることも解説

笑顔で教育を受けるインドネシアの子どもたち

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子どもの命と権利を守るために、世界各国で活動を行う「ユニセフ」。活動内容は多岐にわたりSDGsとの関係が深いが、具体的にどのような取り組みが行われているのだろうか。本記事では、ユニセフとSDGsの関係性や具体的な活動内容、私たちができる関わり方をわかりやすく解説する。

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2024.05.17
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ユニセフとは? SDGsに取り組む理由

手をつないで自然のなかを歩く2人の女の子

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ユニセフ(UNICEF)の正式名称は、国連児童基金(United Nations Children's Fund)。すべての子どもたちの命と権利を守るために、世界約190の国と地域で活動を行う国連機関だ。

グローバルサイトには、SDGsに関連するページ「UNICEF and Sustainable Development Goals」が設けられており、SDGsとの関わりが深い。以下では、ユニセフやSDGsについてあらためて解説する。そのうえで、なぜ、ユニセフがSDGsに取り組んでいるのかを見ていこう。

ユニセフの使命と目的

ユニセフが設立されたのは、第二次世界大戦後の1946年12月11日。家族や家を失った子どもたちを支援するために、「国際連合国際児童緊急基金(The United Nations International Children’s Emergency Fund)」として設立された。

1953年には、現在の「国際連合児童基金」に名称変更され、支援の範囲が世界中の子どもたちへと広がった。(※1)

ユニセフの主な使命は、国際条約である「児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)」が定めている子どもの基本的人権の実現だ。もっとも不利な立場にある子どもたちを最優先とし、すべての子どもたちに関わる活動を行っている。(※2)

SDGsとは

SDGsとは、「Sustainable Development Goals」の略称であり、「持続可能な開発目標」と訳される。2015年9月の国連サミットにおいて、加盟国の全会一致で採択された国際目標だ。

SDGsには、地球上のさまざまな課題を解決するための具体的な目標が定められており、持続可能な社会を実現するために欠かせない17のゴール、169のターゲットから構成されている。達成年限は、2030年。前文では、「誰一人取り残さない」ことが誓われている。

SDGsはいわば、地球上で生きる私たちが、幸せに生きていくためにはどうしたらいいのか?を示す、アクションの指針ともいえる。

ユニセフがSDGsに取り組む理由

SDGsの採択に向けて、ユニセフは、各国や関係団体との協議を重ねてきた背景がある。結果として、SDGsには、子どもに関する多くの課題や目標が取り入れられることとなった。(※3)具体的には、不平等や格差をなくすための目標や、暴力から守るための目標などだ。豊かな自然を次世代に残すことも、子どもたちの将来と大きく関わっているといえる。

また、SDGsでは、子どもたちは「守られるべき“脆弱な人々”」であるとともに、「重要な文化の担い手」として位置付けられているが、ユニセフがSDGsに取り組む理由はここにもある。(※4)子どもの権利を守ることはもちろんだが、子どもたちがSDGsの達成に主体的に関われるようになることが、持続可能な社会の実現において欠かせないと考えているのだ。

ユニセフの活動分野と関連するSDGs目標

貧しいコミュニティで暮らす小さな女の子

Photo by Vikram Aditya on Unsplash

ユニセフの活動分野は多岐にわたっており、すべての分野においてSDGsと関わっている。以下では、ユニセフの主な活動分野と関連するSDGsの目標を紹介する。

保健

世界で5歳になる前に亡くなる子どもの数は年間490万人にのぼり、27人に1人の割り合いだ。先天的な理由に加え、予防または治療可能な肺炎、下痢、マラリアなどの感染症が挙げられる(※5)。

SDGsの目標3に「すべての人に健康と福祉を」があるが、なかでもターゲット3.2では、5歳児未満児の予防可能な死亡を根絶することが掲げられている。ユニセフは、予防接種の普及や衛生的な環境づくり、栄養改善をはじめとし、乳幼児が健やかに過ごすための総合的な活動を行っている。(※6)

HIV/エイズ

ユニセフでは、HIVに感染せずに誕生し、感染しないまま20歳を迎える世代を「エイズのない世代」と定義し、実現のための啓発活動に取り組んでいる。エイズ関連死の年間死亡者数は、2004年には200万人だったが、2022年時点では63万人にまで減少。世界的な取り組みの成果が見られている。(※7)

SDGsのターゲットの3.3には、エイズや結核などの伝染病の根絶が掲げられており、ユニセフの活動は、ここに大きく関わっているといえる。

水と衛生

世界では、2022年時点で22億人が管理された飲み水を使用できていない現状がある。34億人がトイレを使用できず、20億人が手洗い設備が自宅にない環境での生活を余儀なくされている。不衛生な環境は、感染症や命を落とすリスクをはらんでいる。生きていくためには、安全に管理された水が必要なのだ。(※8)

SDGsの目標6には、「安全な水とトイレを世界中に」があり、ターゲット6.1には安全で安価な飲料水へのアクセス達成、6.2には衛生施設へのアクセス達成が掲げられている。これは、ユニセフが行っている給水設備やトイレの設置、衛生週間の普及などに通じている。

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栄養

世界には必要な栄養を摂取できていない子どもが多く、感染症や命のリスクと隣り合わせの状況だ。ユニセフでは、栄養分野への投資を開発優先事項ととらえ、栄養価が高い食事を手頃に入手できる環境づくりを行っている。発育阻害の状態に陥っている5歳未満児の人口は2022年時点で1億4,800万人。1990年時点の2億5,500万人と比べると大きく減少しているが、世界の5歳未満児人口の22.3%を占めており、依然として高い割合だ。

また、予防に限らず、長期的なケアも重要と考えられている。栄養不良の子どもたちを早期に特定し、治療やケアを提供するほか、定期的な発育チェックも実施している。(※9)

この活動は、SDGsの目標2「飢餓をゼロに」と関係が深い。ターゲット2.1には、飢餓の撲滅や、幼児を含む脆弱な立場にある人が食料を十分に得られるようになることが掲げられている。さらに、2.2には、発育阻害や消耗性疾患の問題の解消や、あらゆる栄養不良の解消が記されている。

教育

ユニセフは、子どもの教育を受ける権利を守る活動にも注力している。なかでもとくに重点を置いているのは、ジェンダーの区別なく、すべての子どもに質の高い教育を提供することと、差別や不公平の撤廃だ。

2000年時点で、小学校に通っていない子どもは1億人。そのうち約3分の2が女の子だった。ユニセフの活動の成果もあり、現在は当時に比べると学校に通える子どもは増えてきている。しかし、すべての子どもが質の高い教育を受けているとはいえないのが現状だ。(※10)

SDGsの目標4は、「質の高い教育をみんなに」。これはまさに、ユニセフが目指しているものといえる。ターゲット4.1や4.3では男女の区別なく、すべての子どもが教育にアクセスできること、4.5では教育の平等性が掲げられている。

子どもの保護

世界では、推定3億人の子どもが暴力や搾取を受けている。虐待だけでなく、児童労働や女性器切除、児童婚など、習慣的なものも多く含まれているのが現状だ。子どもたちが訴えることができず、実態が表に出てこないことも多々ある。

SDGsの目標8「働きがいも経済成長も」では、強制労働や人身売買、児童労働の撲滅が掲げられている。また、目標16「平和と公正をすべての人に」では、あらゆる暴力をなくすことがゴールになっている。ユニセフでは、各機関と連携し、早期発見やケアに関する取り組みを行っている。(※11)

インクルージョン

インクルージョンとは、誰もが受け入れられる社会のこと。すべての子どもが同等の権利を持っているはずだが、性別や言語、障がいの有無や社会的地位など、さまざまな要因によって権利を奪われている子どもたちがいる。

ユニセフでは、インクルージョンを実現するために、さまざまな団体や市民社会と連携して、差別や偏見をなくすための取り組みを進めている。(※12)SDGsの目標10「人や国の不平等をなくそう」や目標16「平和と公正をすべての人に」と大きくつながっている。

ジェンダーの平等

SDGsの目標5に「ジェンダー平等を実現しよう」があるが、ユニセフでは、ジェンダー平等を推進するべく、女性や女の子がコミュニティに参加できるような支援を行っている。

ジェンダーの不平等はさまざまな分野で起きているが、とくに教育の分野で顕著に表れている。世界には、法整備や安全性、社会・文化的習慣などを理由に、学校に通っていない女の子が多数いる。状況は徐々に改善されつつあるというが、まだまだ平等とはほど遠い。(※13)

緊急支援・人道支援

子どもたちは、緊急事態の際に犠牲になりがちだ。ユニセフの当初の設立目的は、第二次世界大戦で家族や家を失った子どもたちを守ることだったが、危機に晒されている子どもたちを保護する姿勢はいま尚変わらない。

ユニセフは、紛争や感染症の蔓延、自然災害などの厳しい状況下でも、必要な活動を続けている。2022年の人道支援では、はしかの予防接種や飲料水、基礎教育の提供など、適切な地域にさまざまな支援を届けた。(※14)この取り組みは複数のSDGsの目標と関わりが深いが、とくに目標16「平和と公正をすべての人に」と大きく関わっている。

ユニセフによるSDGsへの働きかけ

SDGs目標4のアイコンを持つ手

Photo by Prado on Unsplash

ユニセフは、各項目を通してだけでなく、SDGs全体へのアプローチも積極的に行っている。以下で具体的に見ていこう。

SDGsに“子どもの課題”を盛り込む活動

前述の通り、ユニセフはSDGs採択にあたって、SDGsのなかに子どもたちの課題を盛り込むように働きかけてきた。2030年の世界を担うのは子どもたちであって、よりよい社会を実現するためには子どもたちの主体性が欠かせないからだ。

2015年にSDGsが採択された現在は、達成に向けて取り組むフェーズ。ユニセフは各国が取り組みを進めるなかで、きちんと子どもの課題が重視されるように、呼びかけを続けている。

「SDGs CLUB」でSDGs教育を支援

日本ユニセフ協会は、2020年7月に、親子で学べるSDGsサイト「SDGs CLUB」を開設した。SDGsの目的や歴史、目標などについて丁寧に解説されていて、わかりやすい。169のターゲットをかみくだいた「子ども訳」や多彩なビジュアル資料など、主体的に学べる工夫も満載だ。「SDGs CLUB」は子どもたちが自分で考えるきっかけを提供しており、SDGs教育の推進に役立っている。

ユニセフの活動を支援するためにできること

お金とメッセージを両手に抱える様子

Photo by Katt Yukawa on Unsplash

子どもたちに関わるさまざまな活動を行うユニセフ。SDGsの達成に貢献する活動を支援することは、持続可能な社会の実現に向けた大事なアクションだ。ユニセフを支援する方法はいくつか存在し、なかには、いますぐできるアクションも。以下でひとつずつ紹介する。

ユニセフ募金への協力

ユニセフの活動は、各国の拠出金や、団体や個人の寄付金によって成り立っている。活動全般を支える「ユニセフ募金」や、特定の分野を指定できる「分野・地域指定募金」などが設けられており、公式サイトから協力可能。毎月定額で支援できる「マンスリーサポート・プログラム」もあるので、ぜひチェックしてみよう。

また、11〜12月には、ボランティアが募金を呼びかける「ハンド・イン・ハンド」キャンペーンが実施されている。

「ラブ ウォーク」への参加

参加費がユニセフ募金となる「ユニセフ・ラブウォーク」に参加するのも、アクションのひとつ。ラブウォークは誰もが主催できるイベントで、内容はウォーキングに限らず、水泳やゴルフなど、どんな運動でも構わない。思い思いにいい汗をかいて、支援につなげるのが目的だ。毎年4月には、東京で中央大会が開催される。(※15)

チャリティバザーの開催

各地域でチャリティバザーが開催されている。主催は、ボランティアグループなど。日本ユニセフ協会の協定地域組織が地域の恒例イベントとして開催するケースもあり、収益はユニセフ募金となる。開催したい場合は、問い合わせが必要。ボランティアとしての参加や、物資の納品でも貢献できる。

チャリティコンサートに足を運ぶ

全国で開催されているユニセフのチャリティコンサートに足を運ぶのもよいだろう。チケットの売上の一部が寄付に充てられたり、会場に募金箱が設置されたりなど、ユニセフとの関わり方はそれぞれだ。チャリティコンサートのジャンルはさまざま。興味があるものがあれば、積極的に参加してみよう。

ボランティア活動への参加

ユニセフの活動は、ボランティアによって支えられている。日本ユニセフ協会では、事務作業や入力作業、展示ガイドなどに関わるボランティア登録を受け付けている。専用ページから、登録用紙をダウンロードし、郵送することで登録ができる。

SDGs達成のために ユニセフの支援もアクションのひとつ

ユニセフの活動を細かく見てみると、すべての取り組みがSDGsと深くつながっていることがわかる。ユニセフの活動は多岐にわたり、なかには、日本で暮らしていると想像し難いテーマもあるだろう。

しかし、支援を必要としている子どもたちが、まだまだ多数存在するのが現状。ユニセフの支援に限らず、私たちにできることは何なのか。この機会にあらためて考えてみよう。

※掲載している情報は、2024年5月17日時点のものです。

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