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アフガニスタン難民は、年々増加の一途をたどっている。本記事では、アフガニスタン難民の現状を紹介しながら、多くの難民が発生した原因やいま抱えている問題について解説。さらに、受け入れ国や日本の受け入れ状況、支援についても言及する。
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アフガニスタンは、世界のなかでも多くの難民を生み出している国のひとつだ。
1979年のソ連による軍事侵攻以降、紛争や人権侵害、地震などの自然災害によって、現在に至るまでアフガニスタン難民は増え続けている。
アフガニスタン難民の9割を受け入れている、イランやパキスタンでは、干ばつによる食料不足や、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによる社会経済状況の悪化から、両国の受け入れ策は危機に瀕している。
さらに、2023年にパキスタンが不法滞在のアフガン人数千人の強制送還を開始したことから、パキスタンに逃れる人々はさらなる危機に直面。アフガニスタン難民問題はさらに深刻化している(※1)。
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なぜアフガニスタンは、世界のなかでも多くの難民を生み出している国となったのだろうか。アフガニスタン難民が増加した原因を解説しよう。
アフガニスタン難民が増加したのは、1979年のソ連軍侵攻を皮切りに、絶え間なく紛争が起こっていることが原因のひとつだ。
1989年にソ連がアフガニスタンを撤退したあとも、1992年には社会主義政権が崩壊し、アフガニスタンが内戦状態となった。さらに、1994年にはイスラム原理主義勢力タリバン(ターリバーン)が首都を占領。
そして、2001年9月11日にはアメリカで同時多発テロが発生し、アメリカ軍がアフガニスタンに侵攻。これによってタリバン政権が崩壊し、カルザイ政権が成立した。2021年にアメリカ軍がアフガニスタンから撤退し、その影響でガニ大統領の政権が崩壊。これによって、タリバンが政権に復帰した(※2)。
このように絶え間なく紛争が起き、その混乱によって、度々多くの難民や国内避難民が発生している。
UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)によると、アフガニスタン難民または難民に準ずる人々の数は、2023年11月末時点で約530万人に達してるという。
2021年の調査では、登録難民数は約271万人。しかし2022年には約566万人に急増しており、これは2022年6月に発生した大規模な地震が要因のひとつと考えられている。さらに、2023年11月にも地震が発生。1480人を越える多くの人が犠牲になったほか、3万棟以上の家屋が倒壊もしくは壊滅的な被害を受けた(※3)。
これらの度重なる地震も、アフガニスタン難民が増加した原因のひとつだ。
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UNHCRのデータによると、アフガニスタン難民の数は、2017年には約262万人、2018年には約268万人、2019年には約273万人、2020年には約259万人、2021年には約271万人、2022年には約566万人と、多少の増減はありながらも増え続けている(※4)。
2022年には地震などの影響で大幅に増加し、シリア、ウクライナに次いで、世界で3番目に難民が多い国となった(※5)。
アフガニスタンからの難民をもっとも多く受け入れているのは、イランである。2023年11月時点で、アフガニスタン難民または難民に準ずる人々が約343万人イランで暮らしている。
次にアフガニスタン難民を受け入れているのが、パキスタンだ。パキスタンでは、約185万人のアフガニスタン難民または難民に準ずる人々が暮らしている。イランとパキスタンだけで、9割以上のアフガニスタン難民を受け入れているのだ。
そのほか、ウズベキスタン、タジキスタンも多くのアフガニスタン難民を受け入れを行っている(※6)。
他国へ逃れられたからといって、何不自由なく暮らしているわけではない。
アフガニスタン難民の9割を受け入れているイランやパキスタンでは、難民の流入により資源やインフラがひっ迫している。さらに干ばつによる食料不足や、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによる社会経済状況の悪化から、受け入れ策は危機的状況にある(※8)。
また、アフガニスタン国内にいる国内避難民も、食糧不足や女性や子どもへの暴力などの問題が深刻化している。さらに、ソ連侵攻の時代から使用されていた対人地雷が埋まったままであるため、いつ踏んでしまうかわからないという危険と隣り合わせの生活を送っているのだ。
2021年8月にアメリカ軍が撤退しイスラム主義勢力タリバンが復権するなど、混乱が続いていることを受け、日本への渡航を希望するアフガニスタン人について、日本政府は就労が認められる「特定活動」での在留資格を付与している(※6)。
2021年には9人、2022年には147人の難民として認定されているが、日本語習得や生活支援といった受け入れ後のサポートが十分とは言い難く、生活困窮に陥っている人々も出ているという(※7)。
アフガニスタン難民問題解決に向けて、世界中でさまざまな支援が行われている。その一部を紹介しよう。
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UNHCRでは、アフガニスタンにおいて主に、緊急用テントや毛布、衛生キットなど援助物資の配布といった「緊急支援」や、家の修復費の支給と研修を実施して難民自身が主体的に修復できるようにサポートする「シェルター支援」、社会復帰と自立を促す職業訓練プログラムを提供する「自立生計支援」、学校の修復・建設、学用品の提供、女子教育の推進をサポートする「教育支援」などの援助活動を行っている(※8)。
そのほか、インドシナ難民の支援を目的として日本で発足した難民支援団体「AAR JAPAN」では、人道危機に直面している人々へ、食料や生活必需品を配付。女性が世帯主の世帯、障がい者がいる世帯など、とくにぜい弱な立場に置かれた人々へ支援を届けている。さらに、イギリスの地雷除去NGO(The HALO TRUST)と協力して、地雷・不発弾の除去活動に取り組んでいる(※9)。
2001年以降、日本政府は「アフガニスタンを自立させ、再びテロの温床としない」ことを目的に、アフガニスタンに対して支援を実施している(※10)。
2024年には、イランに避難してきたアフガニスタン難民と、受け入れコミュニティの教育と医療サービスへのアクセス改善のため、UNHCRに4億9,200万円(約330万米ドル)の無償資金協力を決定。この日本政府の支援は、アフガニスタン難民2万1,700人分の医療保険費にも充てられ、二次・三次医療へのアクセス改善への貢献も果たすという(※11)。
アフガニスタン国内にいる国内避難民や、周辺国に避難した難民は、干ばつの長期化による深刻な食糧不足や、衛生状態の悪化による感染症、子どもや女性が教育を受けられないなど、多くの問題を抱えている。
こうした状況を改善するには資金が必要であり、難民支援を行っている団体に寄付を行うことで、状況をよくすることができる。
ニュースで見聞きする機会はあっても、遠く離れていることから、アフガニスタンを身近に感じている人はあまり多くないかもしれない。
しかしどんなに離れていても、寄付をして支援することはできる。SDGsの理念「誰一人取り残さない」に則り、まずは他人事と思わずにできる範囲で行動する。そうすることで、一人でも多くの人の力になれるはずだ。
※1 アフガニスタン|国連UNHCR協会
※2 40年来続くアフガニスタンの悲劇――戦禍に生きる人々|AAR Japan[難民を助ける会]:日本生まれの国際NGO
※3 アフガニスタン大地震から1か月。被災した人々は復興に向けて奮闘しています|国連UNHCR協会
※4 Refugee Data Finder|UNHCR
※5 難民の出身国 | 外務省
※6 アフガニスタン難民の現状は?問題からわかる必要とされる支援|国際NGOプラン・インターナショナル 寄付・募金で世界の子どもや女の子を支援
※7 令和4年における難民認定者数等について(8ページ目)|法務省
※8 アフガニスタン | 国連UNHCR協会
※9 アフガニスタン|AAR Japan[難民を助ける会]:日本生まれの国際NGO
※10 日本のアフガニスタンへの支援 自立したアフガニスタンに向けて(2ページ目)|外務省
※11 日本政府による無償資金協力:「アフガン難民及びホストコミュニティのための質の高い教育及び保健医療サービスへのアクセス改善計画(UNHCR連携)」|UNHCR Japan
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