【2024年】世界で起きている紛争問題 起きている国や原因、対策をわかりやすく解説

戦場を歩く兵士

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世界のさまざまな国や地域で、いまなお紛争が起きている。紛争は暴力や殺傷以外にも、難民の発生や食糧不足、貧困などの多くの問題を引き起こし、人々の生活を奪ってしまう。本記事では、紛争の意味や原因、起きている国・地域について解説する。私たちができる支援についても紹介する。

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2024.02.19
SOCIETY
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紛争とは

紛争でボロボロになった建物の内部

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紛争とは、争いや対立のことを指す言葉。機関や組織によって捉え方は異なるが、JICAでは「少なくとも2つ以上の主体が、希少な資源(富や権力など)を同時に獲得しようとして相争う社会状況」という定義が採用されている(※1)。紛争の主体は必ずしも国家ではなく、近年は国内の集団間で発生することのほうが多い傾向にある。また、捉え方にもよるが、必ずしも暴力を伴うとは限らない。

戦死者の数は、1946年以来減少し続けている。しかし、紛争は増加傾向。民兵や犯罪組織などの非国家主体の間で起きることが増えてきており、紛争の細分化も進んでいる(※2)。

紛争と似た言葉に「戦争」と「内戦」があるが、戦争は国家間の武力を用いた争いを指すことが多い。内戦は、国内での争いを意味する。つまり、戦争も内戦も紛争に含まれることになる。

紛争が発生する原因

国境に設置されたフェンス

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紛争は、さまざまなことが絡み合った複雑な事情から生じることが多い。以下では、原因となりやすい5つのポイントについて紹介する。

宗教の違い

宗教や宗派の違いによって、紛争に発展するケースは多い。世界にはさまざまな宗教が存在しており、考え方の違いから争いが勃発してしまうのだ。価値観だけでなく、政治的思想や差別の問題が絡むこともあり、複雑化しやすい。中東の紛争では、イスラム教のスンニ派とシーア派の対立が目立つ傾向にある。

民族や文化の違い

民族が異なる人々の間で起きる紛争のことを「民族紛争」という。民族によって、宗教や歴史、価値観などが異なり、その違いによって紛争が勃発することもある。中国におけるウイグル族の弾圧が問題視されているが、同一国のなかに複数の民族が存在するケースは、争いに発展しやすい傾向にある。

政権への不満

独裁政権が続くと国民の不満が溜まりやすく、紛争へと発展しやすい。2011年から続いているシリア内戦の背景には、40年以上にわたってアサド政権の独裁状態が続いていたことがある。国家機構の私物化や不在、不安定は情勢の混乱を招く。国民による反対運動や軍事クーデターにより、内戦や紛争へと発展してしまうのだ。

領土・資源の奪い合い

国境が不明確だったり、各国で主張が異なったりすると、「国境紛争」や「鉱物紛争」につながりやすい。植民地とされてきたアフリカは、国境が曖昧であることが多い。レアメタルやダイヤモンド、石油資源などが豊富なこともあり、領土や資源の主張で紛争が繰り返されてきた。また、気候変動による影響で、水や作物をめぐる紛争も起きている。

紛争が続いている世界の国や地域

戦闘機が飛んでいる様子

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スウェーデンのウプサラ大学が運営する「ウプサラ紛争データプログラム(UCDP)」によると、2021年の国家が関与する武力紛争の数は54件。これ以外にも、国家が関わらない紛争や暴力が多数報告されている(※3)。以下では、紛争が続いている国や地域の代表例を6件紹介する。

アフガニスタン|アフガニスタン紛争

南アジアと中央アジアの間に位置するアフガニスタンでは、1979年以来、混乱状態が続いている。多民族国家であり、さまざまな権力が渦巻くなかで、1979年に旧ソ連が軍事介入をしたことがはじまりだ。抵抗勢力へのアメリカの援助もあり、米ソの代理戦争の形で長期化。1989年に旧ソ連軍が撤退した後も、国内での勢力争いが続いた。

1996年にはタリバン勢力が台頭し、抑圧的な統治がはじまった。アフガニスタンは、国際テロ組織アルカイダの拠点となり、2001年9月には「アメリカ同時多発テロ」が発生。アメリカは、タリバン政権に対して首謀者のオサマ・ビン・ラディンの引き渡しを求めたが拒否されたことで、同年10月にアフガニスタン空爆を開始。2021年8月に米軍が撤退し、アメリカ史上最長の約20年におよぶ戦争が終結した。その後タリバンが復権し、アメリカとの戦争こそ終わったものの、現在も不安定な状況が続いている(※4)。

トルコ・イラク・シリアなどのクルド人居住地域|クルド・トルコ紛争

主にトルコ国内で、トルコ政府とクルド人の対立が続いている。クルド人が「国を持たない最大の民族」といわれ、属する国を失ってしまっていることが背景にある。対立の歴史は古く、第一次大戦後の1920年代までさかのぼるとされている。1984年には、1978年に発足した「クルド労働者党(PKK)」がトルコ政府に対する武装闘争を開始した。PKKがトルコ国内各地で事件を起こすなか、2004年にはトルコ軍が攻勢。紛争が激化することとなった。2018年以降、トルコ軍がクルド人武装組織に対する攻撃としてシリアやイラクで空爆を行っている。トルコ政府とクルド人との紛争は、停戦を挟みながらも長期化している。

シリア|シリア内戦

中東・西アジアに位置するシリアでは、2011年から内戦が続いている。世界でもっとも多くの避難民を出しており、「今世紀最悪の人道危機」といわれている。

シリア内戦の背景は、アサド政権による独裁状態が40年にわたって続いていたことにある。2011年3月に抗議運動「アラブの春」が起きたことで、民主化運動が活発化。スンニ派による反政府運動が広がり、しだいに武力化し内戦へと発展した。近隣国や、ロシア・アメリカなどの大国が介入したことで複雑化し、終結が難しくなっている。2018年にはアメリカ軍が撤退したが、内戦は現在も続いており、混乱状態が続いている。

イエメン|イエメン内戦

中東のイエメンでは、2015年から現在に至るまで紛争が続いている。2011年の「アラブの春」を受けて反政府デモが活性化し、混乱状態に入った。2014年9月には、反政府勢力のフーシ派が首都サヌアを占拠。政府からの要請により、アラブ連合軍がイエメンへの軍事介入を開始したことで内戦へと発展した。政権側をサウジアラビアが支援し、反政府勢力のフーシ派をイランが支援する代理戦争の構図となり、長期化しているのが現状だ。

2022年4月には、国連の仲介により停戦合意に至ったが、交渉が難航し10月には停戦期限が終了。現在も停戦交渉が続けられている。

ミャンマー|ミャンマー内戦

東南アジアに位置するミャンマーでは、1948年にイギリスから独立して以来、内戦が続いている。政府や少数民族武装勢力、軍政に抵抗する組織など、さまざまな武装集団が各地で戦闘を繰り広げている状況だ。2015年10月には、複数の武装組織間で全国規模停戦協定への署名を実現したが、2021年2月に起きた国軍のクーデターにより軍部が政権を掌握。軍部は、クーデターに反発する抗議運動を武力で弾圧し、再び混乱状態となっている。

ウクライナ|ロシア・ウクライナ戦争

2022年2月24日、ロシアがウクライナへの軍事侵攻を開始した。ウクライナは、ロシアとヨーロッパの境界に位置し、言語や文化が近いことから「兄弟国」とされてきた。ロシアは、侵攻の理由を欧米の脅威に対抗するための正当防衛と主張しているが、真意は定かでない。ウクライナは旧ソ連から独立した歴史があるが、現ゼレンスキー政権は親欧米。NATOへの加盟を目指していることや歴史観の違いが侵攻理由だとする見方もある。

ロシア軍は各地で攻撃を続けており、多くの民間人死傷者が出ている状況だ。稼働中のザポリージャ原子力発電所が攻撃される事態もあった。ロシアは国際社会からの反発を受け経済制裁を受けているが、両者の争いは長期化する可能性が高いとされている。

紛争問題解決に向けた取り組み

国連の事務所の外観

Photo by Mathias Reding on Unsplash

国連憲章の前文では、すべての人民が持つ理想と共通の目的として、戦争の惨害から将来の世代を救うことなどが表明されている(※5)。現在、国連をはじめとするさまざまな機関が、紛争問題を根本から解決するために動いている。以下では代表的な取り組みを3つ紹介する。

国連による予防外交・軍縮

2度の世界大戦を経て1945年に設立された国際連合。設立の目的のひとつに「国際の平和と安全の維持」がある。国連は、ミッションの中心に紛争の防止を置き、争いが紛争へと発展する前に解決を図る「予防外交」に努めている。地域機関と連携し、仲介や調停、交渉などのアプローチにより、対立を予防する方針だ(※6)。

また、国連は設立以来、兵器の削減に重きをおいている。グレーテス国連事務総長は、2018年にジュネーブ大学で講演をした際に「軍縮アジェンダ」を発表。3つの優先課題として、「人類を守るための軍縮」「人命を救うための軍縮」「未来世代のための軍縮」を訴えた(※7)。

平和構築委員会(PBC)によるアプローチ

平和構築委員会(PBC)は、2005年12月に国連総会と安保理により共同設立された。持続可能な平和を達成するために、紛争の解決から復興に至るまでの一貫したアプローチに基づき、紛争後の平和構築のための統合戦略を提案することを目的としている。

日本は、設立当初からPBCに参加。2007年6月から2009年1月までは、議長を務めた。安定した社会運営の支援を国際社会の喫緊の課題として捉え、今後もPBCの活動に貢献する方針だ(※8)。

JICAの「平和構築」戦略

国際協力機構(JICA)は、誰ひとり取り残さない平和な社会を実現するためとして、紛争を発生・再発させない社会づくりに取り組んでいる。紛争リスクの低減のために、住民から信頼される政府をつくるための制度構築や、強靭な社会を形成するためのコミュニティの強化などを組み合わせたアプローチを取っている。具体的には、インフラ整備を含めた行政サービスの改善や法整備支援、雇用の創出など。とくに紛争リスクが高い地域では、国際機関とも連携し、対話を通じて政府と住民間の信頼醸成の促進を行う(※9)。

紛争地域の人々に向けて私たちができること

ウクライナ侵攻の抗議運動の様子

Photo by Ahmed Zalabany on Unsplash

紛争の解決のために何かしたいと思っても、私たちが紛争地域に赴くのは危険であり、現実的とはいえない。直接的な支援をすることは難しいかもしれないが、個人でできることもある。以下では3つの方法を紹介する。

支援活動を行っている団体への寄付

まずは、紛争地域への支援を行っている組織や団体へ寄付することだ。寄付を通して組織の活動をサポートすることが、紛争支援につながる。

例えばユニセフの「緊急・復興募金」では、紛争で被災した子どもたちを助けることができる。ウクライナやシリアなど、使徒を選んで支援が可能。毎月定額を募金する「マンスリーサポート・プログラム」も用意されている。ほかにも、日本赤十字社や国際協力NGOワールド・ビジョン・ジャパンなど、さまざまな団体に寄付ができる。少額から行えるので、確認してみよう。

ボランティア活動への参加

紛争を支援する団体でのボランティア活動に参加するのもひとつの方法だろう。子どもの支援を専門とする国際NGOセーブ・ザ・チルドレンや、国境なき医師団などでは、ボランティア登録ができる。イベントや業務サポート、広報など、業務内容はさまざまだ。自分のスキルを活かして、間接的に紛争地域の人々を支援できる。

紛争について知ること

紛争の現状を知ることも、私たちにできることのひとつといえる。日本から離れた世界で起きている紛争は縁遠いことのように思えるかもしれないが、同じ地球で生きる者として、まずは知ることからはじめてみてはどうだろうか。無関心であることは、黙認しているようなもの。紛争の現実から目を背けず、平和への意識を高めたい。情報は、ニュースや書籍からも集めることができる。

世界で続く紛争は決して他人事ではない

SDGsの目標16に「平和と公正をすべての人に」がある。日本で暮らしていると、平和ではない日常を想像するのが難しいかもしれない。しかし、世界各国で紛争が続き、新たに発生している現実がある。そして、多くの人々が犠牲になり、生活を脅かされている。紛争のない平和な世界を実現するために、まずは現実と向き合おう。そして、紛争問題解決のために、自分にできる行動を起こしていきたいものだ。

※掲載している情報は、2024年2月19日時点のものです。

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