日本の難民申請の現状 認定制度と手続き・私たちにできること

歩く人々

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日本は難民申請を行うのが難しいといわれることがある。国際社会において、他国と比較し日本は難民に対しての対応が遅れているのは事実だ。この記事では、日本の難民受け入れに関する実情と、難民の申請が難しい現状について解説し、私たち一人ひとりにできることを提案する。

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2024.02.29
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難民とは

ニュースやSNSで「日本の難民申請は厳しいのが現状」という言葉を聞いたり見たりすることがある。島国である日本は歴史的に見て鎖国していた期間が長く、難民を受け入れたことは多くない。

そもそも、その立地から国境を隔てて難民が大量に流入することがないため、難民という言葉がいまひとつピンとこないという人も多いのではないだろうか?

「難民」とは、自国において人種、宗教、国籍、政治的意見、または特定の社会集団に属することを理由に、迫害を受けるおそれがあるために他国に逃れ、国際的保護を必要とする人々を指す。この定義は、1950年のUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)規程、1951年の難民条約、および1967年の難民議定書で規定されている。(※1)

この定義では、自国内の平時と戦時の区別はされておらず、国際的または国内的な武力紛争や戦争から逃れてきた人々も含まれている。

また、国内避難民として、自国内で家を追われ、国内で避難生活を送る国内避難民も存在する。国内避難民として、国内で十分な措置が得られない場合、越境して難民となる可能性もある。

難民の支援は、一国では解決できないグローバルな課題であり、国連やNGO、NPOの間では、「負担、責任の分担」を理念とし、国際社会としてどのような対応ができるか解決策を模索している。

難民受け入れ体制の現状

夕焼けと飛行機

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日本の難民認定数は世界でも類を見ないほど極めて少ないものである。

2022年には、3,772人が難民申請を行い、そのうちのわずか202人しか認定されなかった(※2)。一方で、審査請求を含めると10,143人が不認定とされなかった。(※3)

認定数は過去最多となったものの、審査数に対して極めて少ない認定数であるといえ、たびたびパッシングの対象となっている。もちろん、各国で事情は異なるが、日本の認定数が極端に少ないことは事実である。

例をあげると、シリア難民の2020年の認定率は、ドイツが78%、アメリカが62%、オーストラリアが89%であるのに対し、日本では2011年から2020年の間に117人が申請し、そのうちの22人だけと、決定数に対して22%しか認定されていない(※4)。

日本で難民が少ない理由は?

世界各国とこれだけの大きな差がある背景には、「認定基準の厳しさ」と「手続きの複雑さ」の2点に問題があるとされている。

まず、誰を「難民」と認定するかに関する基準が日本では厳格であり、他の国と比べても非常に厳しいとされるのである。そのため、難民認定が困難になり、認定数が少なくなるのである。また、難民申請の手続きが複雑であり、難民申請者に対するサポート体制や情報提供が不十分であるとの指摘がある。

このような制度面の課題が解決されない限り、日本の難民受け入れ態勢の改善は難しいといわれている。

難民申請の手続きをわかりやすく紹介

図書館

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手続き

日本で難民申請する場合、まず法務省出入国在留管理庁に申請する。その後、入国審査官による審査が行われ、条約難民として認定されるかどうかが決定される。不認定の場合でも、不服申し立て(審査請求)を法務大臣に行うことができ、その審理は法務大臣より指名された難民審査参与員によって行われる。ここで不認定となれば、見直しを裁判所に求めることもできる。

難民認定を受けると

条約難民として認定されると、在留資格が与えられ、法令の範囲内で権利と公共サービスの利用が認められる。

申請期間中は

一部の難民申請者は、政府の判断を待つ間、生活や住居費などの支援を受けることが可能だ。だが課題も多い。

例えば、医療費も支援されるが、一度自費でまかない、後日、支援機関から払い戻しを待つ必要がある。教育に関しては、日本語学習プログラムや職業支援は難民認定された人のみを対象としており、難民申請中の行動は大きく制限される。そのため、難民申請者は基本的には就労できず、政府の支援も受けられないため、市民団体の支援が必要になるケースも多い。

申請にかかる期間

また、難民申請手続きは早くて数カ月かかる。不服審査や裁判所での審査を含めると何年もかかることもある。さらに、在留資格がない場合、収容される可能性もあり、日本において難民の受け入れの難しさの要因となっている。これらの課題をクリアして、ようやく難民として日本での生活がスタートする。

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日本の難民認定制度

書類に記入する手

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日本の難民認定制度は、1951年に採択された「難民の地位に関する条約」と1967年に採択された「難民の地位に関する議定書」をもとにつくられている。一般的に、これらの条約と議定書をまとめて「難民条約」と呼ぶ。

日本は1981年にこの難民条約に加入し、条約の発効に伴い、外国人が難民条約で定義される難民に該当するかどうかを審査する「難民認定制度」が整備された。国内法としては、「出入国管理及び難民認定法」の第七章の二に、難民認定についての規定が示されている。

難民認定を受けるには、最寄りの地方出入国在留管理局で、原則本人による申請が必要である。「難民認定申請書」に、自分が難民であることを証明する資料、もしくは自分が難民であることを主張する陳述書などを添付して提出する。提出された資料だけで判断が難しい場合には、難民調査官が調査を担当する。

難民と認定された場合

日本政府によって難民に認定されると、難民と認定された人々は特定の条件を満たす場合に、在留資格「定住者」が付与される。

日本での安定した生活を送るために、「アジア福祉教育財団難民事業本部(RHQ)」が政府の委託を受け、日本語教育や仕事の斡旋など生活をサポートするプログラムを提供している。

さらに、認定された難民は、原則として国民健康保険への加入資格があり、条件を満たす場合には国民年金や児童扶養手当などの受給資格も得られ、日本国民と同じような待遇を受けることができ、必要に応じて市や区の役所を通じて福祉支援を受けることも可能である。

認定されなかった場合

難民申請が不認定となった場合、申請者は法務大臣に対し審査請求を行うことができる。この際、不認定の通知を受け取ってから7日以内に申請しなければならない。

また、不認定の決定に対しては、裁判所でさらなる審査が可能である。この場合、通常は不認定の結果から6ヶ月以内に裁判所に訴えを提起しなければならない。

私たちができること

掌のお金

Photo by Christian Dubovan on Unsplasy

以上のように、日本の難民申請は複雑な手続きが必要であり、また審査も厳格で、日本における難民の立場は厳しいものといわざるを得ない。では、私たち一人ひとりは難民に対してどのような支援を行えるだろう?実践しやすいものを紹介していこう。

寄付

モノや支援金の寄付難民に対する支援活動を行っているNPO・NGOを通して支援金の寄付が可能だ。支援金は、支援先団体が長期的に活動を行うために使用され間接的に難民を助けることにつながる。また、寄付金以外にも、古着や本などのモノを寄付することもできる。ただし、モノの寄付は受け入れ団体によって制限があるので、寄付可能なアイテムについて事前に確認する必要がある。

ボランティア

ボランティアへの参加難民のためのボランティア活動に参加することも重要だ。ボランティア活動の内容はさまざまだが、例えば難民支援協会ではプロボノ活動のボランティアを実施している。自身の専門知識やスキルを活かした活動に参加することで、難民の支援に貢献することができる。

難民に関する理解を深める

日本では難民に対する理解はまだまだ十分とは言えない。そのため、難民問題についての理解を深め、学んだ情報を周囲の人々に伝えることが貢献になる。シンポジウムやイベントに訪問して知見を深め、SNSやブログを通じて情報を発信することはもちろん、NPOやNGOの活動情報を拡散するだけでも、難民支援になっている。

日本の難民支援に関する動向は大きな意味を持つ

講演を視聴する人々

Photo by RU Recovery Ministries on Unsplasy

日本の難民申請や難民に関する理解は、他国と比較して遅れているのが現状である。ただ、日本も難民支援に徐々に注力している。

例えば、日本では、2010年度からアジア地域で初めて「第三国定住プログラム」が実施されている。第三国定住とは、難民が自国への帰還や、現在庇護を受けている国での定住が困難な場合に、第三国に再定住することを指す。

このプログラムは難民にとって唯一の安全で実行可能な解決策となるケースがあり、難民の状況が長期化する際には「恒久的解決策」の一つとして考えられ、アジア地域における難民政策の前例として注目されている。

これからの日本の難民支援に関する動向は、国際的にも大きな意味を持っているといえるだろう。

※掲載している情報は、2024年2月29日時点のものです。

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