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シリア内戦は2011年に始まり、以来多くの市民が戦禍に巻き込まれている。この記事ではシリア内戦の背景と現状、私たちにできる支援について詳しく解説する。またシリア難民が直面する課題や、個人や団体がどのように支援できるかを理解し、行動を起こすための情報を紹介する。
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シリア内戦は2011年の「アラブの春」を契機として始まり、独裁的なアサド政権と民主化を訴える反政府勢力との間でいまも繰り広げられる内戦だ。この戦争はその後、地域の宗派間の対立や国際的な介入が加わり、戦闘は複雑化。ロシアやイランが政府を支援し、アメリカやトルコが反政府勢力を支援している。
この紛争での死者は全土で約40万人以上、約690万人以上の国内避難民が発生した。周辺諸国等に約550万人以上の難民(※1)が流出したとされ、21世紀最悪の人道危機といわれる状況はいまもなお続いている。
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シリア内戦の背景は複雑だ。シリアは、長年にわたり政治的な不安定さを経験してきた。1946年にフランスから独立し、「シリア・アラブ共和国」として独立国家となる。その後クーデターや政変を経て、1970年にバアス党のハーフェズ・アル=アサドが政権を握る。その後息子のバッシャール・アル=アサドが継承し、強権的な統治を続けた。
2011年、チュニジアから始まった民主化運動「アラブの春」の波がシリアにも押し寄せ、民主化を求めるデモが勃発したが、アサド政権はこれを強硬手段で鎮圧。これにより反政府勢力の中からも武器を持つものが現れ、内戦が勃発した。宗派間の対立や経済的困窮、政治的抑圧が内戦の背景にある。
シリア内戦は、地域ごとに異なる勢力が支配する非常に複雑な戦況となっている。一時は劣勢に立たされたアサド政権だが、2015年からロシアとイランの支援を受け、現在は首都ダマスカスやアレッポを含む主要都市を支配している。
一方、シリア北東部は主にクルド人主体のシリア民主軍(SDF)が支配しており、アメリカの支援を受けている。また北西部のイドリブ県は反政府勢力やイスラム過激派組織が支配しており、ここはトルコの影響が強い地域だ。これらの地域間の勢力争いが続いており、停戦と戦闘が断続的に繰り返されている。
シリア内戦は、今世紀最悪といわれる深刻な人道的危機を引き起こしている。シリア国内では内戦により数百万人が家を追われ、その人たちが暮らす避難民キャンプでは、医療、食料、水などの基本的な生活必需品が不足しており、厳しい避難生活を強いられている。
また戦闘により多くのインフラが破壊され、病院や学校などの公共施設も機能不全に陥っている。そしてなにより、戦闘地域に住む市民は戦闘の被害を直接受け、命の危険にさらされながら日々の生活をおくっている。
シリア内戦には複数の国が介入しており、政府軍と反勢力軍の戦いだけではない複雑な勢力図となっている。ロシアはシリア政府を強力に支援しており、空爆や地上部隊の派遣を行っている。イランもシリア政府を支援し、イスラム教シーア派組織「ヒズボラ」などの武装勢力を通じて軍事的支援を提供。
一方、アメリカはクルド人勢力を支援し、過激派組織IS(=イスラミックステート)との戦いを続けている。トルコはシリア北部に軍を派遣し、クルド人勢力や過激派組織と対峙している。これらの国々の介入により、シリア内戦は単なる内戦を超えて、宗教的、政治的思惑が複雑に絡み合った国際的な紛争の様相を呈しており、解決が一層困難な状況となっている。
さまざまな思惑が絡み合って、10年以上にわたり解決策が見出せていないシリア内戦。今後については、複数のシナリオが考えられる。
短期的には、戦闘が続き地域ごとの支配勢力の変動が予想される。中長期的には、国際社会による和平交渉が進展し、停戦合意の機運が高まる可能性もあるが、トルコとクルド人の対立やウクライナ戦争による米露関係の悪化といった紛争解決に悪影響を与える新たな要因も生まれている。そういった宗派間の対立や政治的な問題が解決されない限り、最終的な解決は難しいだろう。
シリア内戦によって多くの市民が戦禍から逃れるために難民となり、国内外で避難生活を送っている。シリア難民の数は約690万人にのぼり、その多くがトルコ、レバノン、ヨルダン、イラクなどの近隣諸国に避難している。難民キャンプでの生活は過酷を極め、基本的な生活必需品、食料といった物資が大きく不足している。
また医療、教育の体勢も整っておらず、5歳未満の子どものうち65万人以上が慢性的な栄養不良状態にあり、約240万人の子どもが教育を受けられていないという深刻な状況がある。(※2)
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)や国際赤十字などの国際機関やNGO、難民を助ける会(AAR Japan)などのさまざまな団体や人々が、1人でも多くの難民を救おうと避難民キャンプや都市部で食料、水、医療、避難所などを提供する活動を行っている。
シリア難民に対するもっとも重要な支援は緊急人道支援で、劣悪な衛生環境、飢餓による栄養不足などで多くの命が失われている。WFP(世界食糧計画)も定期的に食糧配給を行い、避難する子どもたちの栄養状態の改善に努めているが、まだまだ足りていないのが現状である。
医療支援は、難民の命、健康を守るために欠かせない要素である。しかし戦闘により病院も多く破壊され、十分な医療体制を確保するのが難しい状況下で、シリア難民キャンプ地では感染症や慢性疾患、戦争による負傷者が多く存在している。
国境なき医師団(MSF)やUNICEF(ユニセフ)などが医療施設を設置し、自らの命の危険を感じながらも医師たちが診療や予防接種、緊急手術などを提供し、1人でも多くの命を救おうと活動を行っている。
もっとも必要な支援として「教育環境」と答えるシリアの人々も少なくない。以前は世界でも高い教育水準を誇る国だったが、内戦が子どもたちから「教育を受ける」というごく当たり前の環境を奪い、いまなお3人に1人は学校に行くことができていない。
ユネスコ(UNESCO)やセーブ・ザ・チルドレン(Save the Children)、Piece of Syriaなどが、シリア難民の子どもたちが基礎教育を受ける機会を得て将来の希望を持つことができるよう、教育を提供するための学校や学習プログラムを運営している。
シリア難民が自立し新たな生活を再建するためには、職業訓練や経済的支援が必要である。国際労働機関(ILO)や各種NGOが、難民に対して職業訓練プログラムを提供し、彼らが新しいスキルを習得し、収入を得る手段を確立する手助けをしている。また小規模なビジネスを始めるための資金援助や、マイクロファイナンスも積極的に行われている。
難民の権利を守り、安全を確保するための法的支援も不可欠だ。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、難民の登録を行い、彼らが合法的に滞在できるように支援している。また難民が迫害や人権侵害から保護されるよう、法的助言や手続きのサポートも提供。これにより、難民が安全に普通の生活をして権利を享受できるようにしている。
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シリア内戦で毎日を生きるのも困難な人々に対して、国連やUNHCRなどの支援団体だけでなく、私たち個人にもできることはある。一人ひとりの小さな力が集まって大きな力となり、それが紛争のない平和な世界を実現することへの支えとなる。
信頼できる国際機関やNGOに対しての寄付は、シリア内戦や難民支援のために非常に有効な方法で、それほど手間が掛からず支援に参加できる。UNHCR、国境なき医師団(MSF)、セーブ・ザ・チルドレン(Save the Children)などの活動は、集まった寄付金を使って食料、医療、教育、シェルターなどの支援を提供している。寄付はこういった現地での支援活動を直接支えており、命を救う大きな力となっている。
シリア難民支援に関わるボランティア活動に参加することにも、大きな意味がある。難民支援団体での事務作業やイベントの企画、募金活動に参加するなどの活動がその例だ。また語学力や専門知識を活かして、現地の難民キャンプや受け入れ施設での支援活動に参加することも可能だ。ボランティア活動を通じて直接支援を提供し、より身近に難民問題を感じられるだろう。
シリア内戦や難民問題についての情報を発信し、より多くの人々に関心を持ってもらうことも重要だ。ブログやSNSを通じて、シリアの現状や難民支援の必要性を伝えることができる。広く知識を共有することで、より多くの人々が支援活動に参加するきっかけをつくれるだろう。
自国で難民を受け入れるプログラムに参加することができる。日本では難民支援協会(JAR)などの団体が難民の受け入れをサポートしており(※3)、難民の生活支援や言語教育を行っている。また地域社会で難民を受け入れ、ともに生活するためのサポート活動なども行っている。
政府や議員に対して、シリア内戦の平和的解決を求める声を届けること、難民支援政策の強化を訴えるなど、政治的アクションを通じてシリア内戦の解決や難民支援を推進することもできる。また署名活動やデモに参加し、広く世論を喚起することで大きな波を起こし、政策レベルでの支援の実現が可能となる。
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シリア内戦は2011年に始まった「アラブの春」に端を発し、宗派間の対立や国際的な介入により複雑な戦況を呈し、いまなお続いている。今世紀最悪の人道危機といわれ、戦火のなかで基本的な生活や安全が脅かされ、多くの子どもたちも犠牲となっている。
国際機関やNGOが開戦以来、支援活動を展開しているが、その需要はますます高まるばかりだ。彼らの未来を支えるため、行動を起こすことが重要だ。一人ひとりの努力が集まることで、シリア内戦の解決に向けた道が開かれるだろう。
※1 外務省|シリア・アラブ共和国(Syrian Arab Republic)基礎データ
※2 シリア危機13年、750万人の子ども支援必要|日本ユニセフ
※3 難民支援協会|JAR
参考
・泥沼のシリア内戦は終わるのか? 命を奪った責任はどこに|NHK国際ニュースナビ
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