世界の発電方法の現状は? 種類別の割合や国ごとの特徴を解説

火力発電のイメージ

Photo by Etienne Girardet

本記事では、世界の発電方法の現状について解説していく。火力発電、水力発電といった種類ごとの割合や、主要国の特徴を紹介。さらに、地球にやさしいとされる再生可能エネルギーの導入動向や、世界の電力事情を取り巻く課題についても言及していく。

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2024.09.25
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世界全体の発電方法

電気がついた電球のイメージ

Photo by Anthony Indraus on Unsplash

近年、二酸化炭素排出量の問題や、ロシアによるウクライナ侵略の影響によって巻き起こった国際エネルギー市場の混乱などによって、あらためて発電方法に注目が集まっている。

まずは、国際エネルギー機関(IEA)が発行する統計レポート「Key World Energy Statistics 2021」のデータを参考に、世界の主要な発電方法の基本的な特徴とその割合について紹介しよう(※1)。

世界全体の電源構成は

火力発電(63.1%)

火力発電のイメージ

Photo by Frédéric Paulussen on Unsplash

火力発電が、2019年の世界の電力発電量に占める割合は63.1%。内訳は、石炭が36.7%、石油が2.8%、天然ガスが23.6%となっており、大量の二酸化炭素排出が問題視されていながらも、まだまだ火力発電に依存していることがわかる。

1973年のデータによると、世界の電力発電量における火力発電の割合は75.2%。減ってはいるものの、地球温暖化問題の深刻さから考えると十分とはいえないだろう。

原子力発電(10.4%)

世界の電源構成における原子力発電は、10.4%。1973年の3.3%と比べて約7%増加している。

原子力発電の依存度が高い国は、アメリカ、フランス、中国、ロシアなど。日本も世界で10番目に原子力発電に依存している国だ。

原子力発電の1キロワットアワー当たりに発生する二酸化炭素の量はほかの電源と比べて低いものの、高レベル放射性物質が生成されるため、放射性物質の漏洩による環境破壊や生態系への影響が懸念されている。

水力発電(15.7%)

水力発電のイメージ

Photo by Collab Media on Unsplash

水力発電が、2019年の世界の電力発電量に占める割合は15.7%。二酸化炭素などの温室効果ガスを排出しないことや、比較的コストが安いなどのメリットがある。

中国では、水力発電が890万kW新規に導入され、累積で3億kWを超えるそうだ。

そのほか再生可能エネルギー(10.8%)

風力発電のイメージ

Photo by Zbynek Burival on Unsplash

そのほか、地熱、太陽光、風力、潮力/波力/海洋、バイオ燃料、廃棄物、熱など再生可能エネルギーが占める割合は、10.8%。

資源が枯渇せず繰り返し使えて、発電時や熱利用時に地球温暖化の原因となる二酸化炭素をほとんど排出しない再生可能エネルギーは世界中で注目されており、発電設備の導入ペースは年々増加しているという(※2)。

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世界全体の化石燃料への依存度は

石油、石炭、天然ガスの化石燃料が世界の電力発電量に占める割合は、先述のとおり全体の半分以上を占めている。

世界の電力消費量は年々増加しており、世界的なエネルギー業界団体が2023年に公表した年次調査報告書によると、世界のエネルギー消費に占める化石燃料の割合は82%。環境問題が危機的な状況にありながらも、依存度がまだまだ高いことがわかる(※3)。

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主要国の発電方法と傾向

ここからは、主要国の発電方法と傾向について説明していく。

アメリカ

アメリカの主要な発電方法は、天然ガス・石炭・原子力・太陽光・風力。2021年のデータによると、天然ガスが37.5%、石炭が22.8%、原子力が18.6%、太陽光・風力が12.4%である。

これまでは石炭がもっとも主要なエネルギー源であったが、2010年以降急速な減少傾向にあり、近年は石炭よりもガスの使用率が上回っている(※4)。

2000年代からアメリカにおいて天然ガスの使用量が増加した背景には、「シェールガス革命」がある。2000年代後半に米国で、地下約2,000メートルのシェール層に閉じ込められた天然ガス「シェールガス」を掘削できる新しい技術が開発された。経済的に見合った価格で掘削できるシェールガスの生産が本格化したことにより、国内価格が低下し生産量は急激に増加。これを「シェールガス革命」という(※5)。

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中国

中国の主な発電方法は、石炭。全体の63.3%を占めており、次いで水力が15.2%、太陽光・風量が11.5%、原子力4.8%、天然ガス3.1%となっている(※4)。

中国では、近年の急速な経済成長に伴いエネルギー需要が急増している。これは、石炭火力発電の急増と石炭依存度の高い産業が経済成長をけん引したことが背景にある。それに伴い、温室効果ガス排出量も急増し、現在世界最大の排出国となっている(※6)。

中国の国家発展改革委員会と国家エネルギー局は、2022年に、2025年までのエネルギー政策の方針を発表。単位GDP当たりの二酸化炭素排出量を5年で18%削減することや、2025年までに非化石燃料エネルギーの比率をエネルギー消費量ベースで20%前後、発電量で39%前後とすること、末端のエネルギー使用量に占める電力使用比率を30%前後とすることなどを公示した(※7)。

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ロシア

ロシアは、天然ガスの埋蔵量が世界2位、石炭が3位、また石油では6位を占める世界有数の化石燃料資源国である。これらの化石燃料は、ロシアにとって貴重な輸出品で、外貨収入源となっている。

発電の割合は、天然ガス44.4%、原子力19.3%、水力18.5%、石炭16.1%、太陽光・風力0.4%となっており、再生可能エネルギーによる発電の規模は小さい。これは、国内に膨大な資源を抱え、安価な化石燃料にアクセスできる環境にあったゆえに、再エネ開発に対する積極的な取り組みが遅れていたと考えられる(※8)。

インド

インドでは、国内の石炭埋蔵量に大きく依存しており、石炭による発電が中心で全体の71.5%を占めている。次いで水力が9.9%、太陽光・風力が9.3%、天然ガスが3.8%(※4)。

石炭は同じ化石燃料に分類されている石油や天然ガスよりも二酸化炭素排出量が多いこともあり、インドは中国、アメリカに次いで世界で3番目に二酸化炭素排出量が多い国となっている(※9)。

日本

日本の主な発電方法は、天然ガス、石炭、太陽光・風力、水力、原子力、石油である。割合は、天然ガス34.6%、石炭31.0%、太陽光・風力10.9%、水力7.6%、原子力6.8%、石油3.7%となっている(※4)。

エネルギー資源が比較的乏しいため、エネルギー需要を満たすために輸入に大きく依存している日本であるが、地球にやさしい上にエネルギー自給率アップにつながるとして、政府は2030年度には再生可能エネルギー比率36〜38%程度を達成することを目指している。

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フランス

フランスは、原子力が国内の発電割合において68.9%を占めている。2019年のデータによると、世界の原子力発電量の14.3%をフランスが占めており、原子力発電への依存度の高さがうかがえるだろう。

これには、フランスが石油、天然ガスなどの化石燃料に恵まれず、主要な国内電源は石炭、水力のみであったことが背景にある。輸入石油への依存を軽減させるため、「国内資源の開発」、「省エネルギーの促進」、「供給源の多角化」の三つを柱とするエネルギー政策を実施し、現在では、発電電力量に占める原子力の割合が約7割を占めているのだ(※10)。

世界における再生可能エネルギー導入の動向

太陽光発電のイメージ

Photo by Markus Spiske on Unsplash

環境への負荷が少ないとして世界中で積極的に導入されている、再生可能エネルギー。ここからは、再生可能エネルギーの導入率や傾向を紹介しよう。

再生可能エネルギー発電設備の容量は増加傾向

再生可能エネルギーの導入状況について、国際機関の分析によれば、世界の再生可能エネルギー発電設備の容量は、2015年に約2,000GW程度まで増加。もっとも容量の大きい電源となったそうだ。

その後も、引き続き再生可能エネルギー発電設備の容量は年々増加。2020年には、約3,000GW程度に達している(※2)。

再生可能エネルギーの発電電力量は全体の29.3%

2023年度に発電された、全29,925TWhに対する各エネルギーにおける発電電力量において、再生可能エネルギーが占める割合は30.0%。

一方、化石燃料は全体の約60%を占めており、世界的に再生可能エネルギー導入が進んでいるとはいえ、まだまだ十分とはいえない状況であることがわかる(※11)。

電力消費量に占める自然エネルギーの割合が高いデンマークとブラジル

世界でもっとも再生可能エネルギー発電導入容量が大きいのは、中国である(※12)。

また、電源構成の割合において自然エネルギーが一番高いのは、91%を記録したデンマーク、次いで90%のブラジルだ。

ブラジルは、電力消費量に占める自然エネルギーの割合において、環境問題の取り組みが進んでいるスウェーデンを上回っている(※11)。

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世界の電力事情を取り巻く課題

世界の電力事情を取り巻く課題についても、見ていこう。

地球温暖化問題への対応

地球温暖化による山火事のイメージ

Photo by Matt Palmer on Unsplash

世界の電力事情の話をする上で避けては通れないのが、火力発電を主とする二酸化炭素排出量の問題である。

二酸化炭素を排出しないため、再生可能エネルギーの導入を拡大することで、地球温暖化の防止につながるとして、世界中で導入が加速。国際エネルギー機関(IEA)が刊行した「世界エネルギー見通し(WEO:World Energy Outlook) 2023」によると、世界の電源構成に占める再生可能エネルギーの割合は、現在の約30%から、2030年には50%近くに高まると予測されている。

しかし、それでもまだパリ協定で目標としている温度上昇を1.5℃以内に抑えるという目標には届かない。さらなる再生可能エネルギー導入の加速や、強力な対策を講じる必要があるのだ(※13)。

エネルギー安全保障

2022年、ロシアによるウクライナ侵略の影響で、国際エネルギー市場の混乱が起きたのは記憶に新しいだろう。

世界有数の化石燃料資源国であるロシアは、これまで多くの石油や天然ガス、石炭を国外に輸出してきた。しかし、ウクライナ侵略以降、国際エネルギー市場における需給のバランスが大幅に崩れ、世界的にエネルギー価格が高騰する状況へとつながったのだ。

こうした国際情勢の構造的な変化は、日本を始めとするエネルギーを輸入に頼っている国にとって、エネルギー安全保障を大きく揺るがすものであり、対策が必要とされている。

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再生可能エネルギーの導入加速は急務

発電方法は、その国の地理や保有する化石燃料などによるところが大きく、すぐに変えることはむずかしいかもしれない。しかし、地球温暖化問題は危機的状況にあり、解決のためには“少しずつ”ではなくドラスティックな変化が求められている。

近年、再生可能エネルギーの発電量は世界的に増加傾向にあるが、解決にはさらなる再エネ導入の加速や、化石燃料の使用割合削減が急務である。

※掲載している情報は、2024年9月25日時点のものです。

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