アメリカの発電割合は? 再エネ発電率向上の理由や今後の展望を解説

アメリカの国旗

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アメリカの発電割合において、2022年に再生可能エネルギー発電量が石炭発電を抜いたことで注目を集めている。この記事ではアメリカの発電割合について解説し、注目される再生可能エネルギーの取り組みも紹介する。

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2024.08.23

アメリカの発電割合の現状

NY市街

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近年、アメリカの再生可能エネルギーの発電割合が世界から注目を集めている。ここではアメリカにおける発電割合の現状とその特徴について解説する。

主要な発電方法

アメリカの主要な発電方法は、石炭・ガス・太陽光・風力・原子力となっている。これまでは石炭がもっとも主要なエネルギー源であったが、2010年以降急速な減少傾向にある。現に、2023年は石炭よりもガスの使用率が上回っている。(※1)

発電方法の比率

アメリカの発電方法の比率は2022年時点で、天然ガス発電の39%が最多。次いで再生可能エネルギー発電が約20%だ。その内訳は風力と太陽光を合わせて14%、水力発電が6%、バイオマスや地熱発電が1%未満となっている。次いで3位が石炭で20%、4位が原子力で19%。石炭と原子力は減少傾向にある。(※2)

再生可能エネルギーは2割

2022〜2023年の再生可能エネルギーの割合は2割であった。再生可能エネルギー発電量で増加した約3分の2は、新たに設置した太陽光発電であり、残りは新設した風力発電となっている。

エネルギー自給率は103.5%

2021年のアメリカの一次エネルギー自給率は103.5%となっている。そのうち石油と天然ガスが大きな割合を占めている。70%未満であった2007年から上昇を続けており、今後も自給率は高い水準が続くと予想される。現状、国内でエネルギー生産量のほとんどをまかなえている状態だ。(※3・※4)

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各エネルギー源の詳細

原子力発電

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ここではアメリカの主要な発電方法について、それぞれの状況や特徴を解説する。

石炭|2割

かつては主要なエネルギー源だった石炭を用いた火力発電だが、現在は全体の2割にまで減少した。(※5)理由は運転コストの高い石炭を用いた火力発電が、ガスや再生可能エネルギーとの価格競争に負けたからである。

さらに、バイデン政権が火力発電の温暖化ガス排出量を2032年から90%削減するための規制を導入すると発表したため、今後もますます火力発電の稼働は減少していくと予想される。(※1)

天然ガス|4割

2023年の天然ガス使用割合は、全体の約4割となっている。(※5)2000年代からアメリカにおいて天然ガスの使用量が増加した背景に「シェールガス革命」がある。

アメリカで2000年代後半に「頁岩(けつがん)=シェール」の層に残留している石油や天然ガスを掘削できる新しい技術が開発された。経済的に見合った価格で掘削できるシェールガスの生産が本格化したことにより、国内価格が低下し生産量は急激に増加した。(※6)このできごとを「シェールガス革命」という。

原子力|2割弱

2022年の原子力の使用割合は全体の2割弱だ。(※5)原子力発電は安定した供給源として重要な役割を果たしているものの、コストや安全性の面で課題が残る。

再生可能エネルギー|2割強

再生可能エネルギーの割合は、水力を含め2022年で2割強となっている。(※5)主要なものは、風力・太陽光・水力・バイオマス・太陽光などである。

再生可能エネルギーの発電量割合は年々上昇傾向にあり、2021年には初めて原子力発電の発電量を上回った。さらに2022年には石炭発電の発電量も上回っており、今後もますます発電量の割合は上がると予想される。(※2)

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アメリカの発電割合の変遷

風力発電

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ここでは、アメリカにおける発電方法の割合の変遷について解説する。

石炭と天然ガスの時代

アメリカは、長きにわたり電力源の多くを石炭に依存していた。これまでの石炭発電は、1950年代から50年ほどは全体の50%を占めていた。しかし2000年ごろからシェール革命により化石燃料(原油と天然ガス)の生産量が大きく増加、シェアが拡大したことにより、徐々に減少し始めたのである。やがて2016年には天然ガスと並ぶ31%まで減少した。(※7)

原子力の安定維持

アメリカは長期にわたり、原子力発電の供給を安定維持し続けている。その理由として、火力発電はCO2排出への懸念、再生可能エネルギーは安定供給が難しいなどが挙げられる。したがって、原子力などの安定したエネルギー源の補完が不可欠になっている。また、日本とは異なり地震が少ないアメリカは、事故の危険性よりも採算性を優先したといえる。

再生可能エネルギーの成長

2022年の再生可能エネルギー(風力・太陽光・水力・バイオマス・太陽光など)が、原子力発電と石炭火力発電の発電量を上回った。今後も再生可能エネルギーの成長が続くと予想され、太陽光発電と風力発電の全体シェアは2050年には41~59%まで伸びると試算されている。(※2)

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アメリカにおける再生可能エネルギーの役割と対策

水力発電

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ここでは、アメリカにおける再生可能エネルギーの役割と対策について解説する。

再生可能エネルギーの増加理由・背景

再生可能エネルギーの増加理由の一つに、バイデン大統領が2030年までに温室効果ガスの排出量を2005年比で50~52%削減、2050年までに実質ゼロにする目標を掲げたことが挙げられる。(※8)さらに、2035年までに電力を100%カーボンフリーで供給する意欲的な目標を掲げている。

また、アメリカでは州ごとに目標や規定を定め、独自の取り組みを行っている点にも注目だ。

主要な再生可能エネルギー対策

バイデン政権の気候変動対策

バイデン政権の気候変動対策では、再エネ利用拡大を促進する送電網整備やクリーンエネルギーに関する次世代技術の研究開発に650億ドル、電気自動車(EV)用の充電ポートネットワーク拡充に75億ドル、ゼロエミッションバスやクリーンバスの導入に50億ドルなどの予算が割り当てられた。

また、2022年8月に成立したインフレ削減法(IRA)でも、気候変動対策に3,690億ドルを支出することが盛り込まれ、バッテリーや重要鉱物の加工、風力タービン、太陽光モジュール(パネル)などの生産税額控除に300億ドル、EVや風力タービン、太陽光パネルなどクリーンエネルギー関連施設建設のための投資税額控除に100億ドルなどの予算措置がなされている。(※8)

州の取り組み

電力小売業者に対し一定割合の再生可能エネルギー電気の販売を義務付ける(RPS)について、連邦レベルでは議会で成立しなかった。一方、アメリカの50州のうち29州でRPS制度が導入されているという実態がある。(※9)

RPSの設定目標は州ごとに異なるが、おおむね10%から25%だ。2015 年以降、複数の州でRPSの設定目標を引き上げる動きが出ている。具体的には、ニューヨーク州とカリフォルニア州は2030年までに50%、オレゴン州は大規模発電所に対して2040 年までに50%、バーモント州は2032 年までに75%、ハワイ州は2045年までに100%達成を目標としている。(※10)

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アメリカの発電割合の予測と展望

アメリカ市街

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ここでは、アメリカの発電割合における今後の予測と展望について解説する。

自然エネルギーの動向

2022年の電力供給量に占める自然エネルギーの比率は22.4%であった。自然エネルギーの動向を見ると、2010年の10.3%と比較して約2倍以上増加しているのが確認できる。また2035年までに電力の脱炭素を目指していることから、今後は自然エネルギーや蓄電池を最優先して拡大していく方針だ。(※11)

原子力発電の動向

2022年の電力供給量に占める原子力発電の比率は19%であった。原子力発電の発電量は毎年ほぼ横ばいで推移しており、今後も同様の流れが予測される。

石炭火力発電とガス火力発電の動向

天然ガス火力発電の割合は2022年は39%、2023年は38%、2024年は37%と少しずつ減少している。石炭火力発電の割合も2022年は20%、2023年は18%、2024年は17%と減少し続けており、今後はさらに再生可能エネルギーに発電方法をシフトしていくと予想される。

再生可能エネルギーへのシフト予測

アメリカでは再生可能エネルギーを重視する流れが強まっている。現に、過去十数年で再生可能エネルギーは飛躍的に成長した。国全体の発電電力量に占める自然エネルギーの比率は2035年に81.1%に高まる見込みだ。太陽光と風力だけで全体の74.3%に達するという。(※11)

2035年までに電力の脱炭素を目指す

バイデン大統領の気候変動政策への取り組みとして、温室効果ガスの規制強化が挙げられる。目標として、2035年までに電力の脱炭素を目指している。また温室効果ガス排出量を2050年までに実質ゼロにすることを目標に、オバマ大統領の政権時代の環境政策を加速させる予定だ。

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アメリカの発電割合は脱炭素へ向けて変化

複数の風力発電機

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アメリカでは2035年までに電力の脱炭素を目指し、そのための対策として各州ではそれぞれの風土に合った再生可能エネルギーを活用した政策を実施している。現に、アメリカの火力発電の割合は年々減少傾向にあり、政策の効果が目に見えて確認できる。

※掲載している情報は、2024年8月23日時点のものです。

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