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ジェンダー映画とは性別にまつわる問題やアイデンティティをテーマ扱った作品のこと。国内外に多くの作品があり、注目を集めている映画ジャンルだ。この記事では、ジェンダー映画が扱うテーマとは何か、つくられる背景、海外と日本のおすすめのジェンダー映画作品を紹介する。
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ジェンダー映画とは、性別にまつわる問題やアイデンティティをテーマに扱った、映画のひとつのジャンルだ。その目的には、性差別や性的マイノリティへの偏見などの問題を提起すること、そして多様性への理解と受容を促すことが挙げられる。
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ジェンダー映画作品では、LGBTQ+やトランスジェンダーをはじめとする性的マイノリティが抱える問題や生きづらさ、周囲の人々の困惑や受容、家族の葛藤と理解、友人や恋人の支えなどをテーマに扱うものが多い。また社会的に立場が弱い女性への性差別や性被害の問題を取り上げたもの、性別によるステレオタイプを打破する作品なども含まれる。
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海外や日本国内で、LGBTQ+などの性的マイノリティやジェンダーの多様性を扱う映画がつくられる社会的背景は何か。
SDGs(持続可能な開発目標)に目標5「ジェンダー平等を実現しよう」が掲げられていることもあり、社会全体でジェンダー問題に関する意識が高まっている。平等や多様性を尊重する動きが進んでいることが、ジェンダー映画が生まれる背景にある。映画を通じ、そういった問題をより多くの人に提示し、考えるきっかけを提供している。
映画界でジェンダー映画の大きな変化に、第90回のアカデミー賞が挙げられる。この回のアカデミー賞外国語映画賞には、チリ映画の『ナチュラルウーマン』が輝いた。主人公を演じたダニエラ・ヴェガ自身もトランスジェンダーであり、トランスジェンダーのアクターが演じたトランスジェンダー作品がオスカーに輝いたのは史上初であった。また、2人の青年の恋を描いた『君の名前で僕を呼んで』が脚色賞を受賞している。
このようなLGBTQ+やマイノリティを扱う作品にスポットが当たるようになったことは、人種や性別における多様性の受容が映画界にも浸透していることをうかがわせる。なお、米アカデミー賞(オスカー)は、 作品賞にノミネートされるための条件として、2025年から多様性の項目を設置する。女性や性的マイノリティー、人種マイノリティーなどを積極的に起用することなどが条件だ。(※1)
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ジェンダーをテーマにした海外のおすすめ映画作品を5つ紹介する。
世界で初めて性別適合手術を受けたリリー・エルベの物語だ。舞台は1926年のデンマーク、風景画家のアイナーは、肖像画家の妻・ゲルダに女性モデルの代役を頼まれる。これをきっかけに、アイナーは自身の内側に存在する女性を意識しはじめ、「リリー」という名の女性として過ごす時間が増えていく。ゲルダはその様子に戸惑うものの、しだいに理解を深めていく。
同性愛者であることを公表したうえで、アメリカ史上初めて公職に就いた政治家、ハーヴィー・ミルクの半生を描いた作品。1970年代のサンフランシスコで、ハーヴィー・ミルクは20歳年下の青年スコット・スミスと恋に落ち、カメラ店をはじめる。陽気な人柄のミルクはゲイやヒッピーたちに慕われ、いつしか店は同性愛者の社交場となる。しだいにミルクは社会的弱者の問題改善に取り組み、政治に目覚めた彼は市制執行委員会の選挙に立候補する。
2016年にアメリカで実際に起きた、女性キャスターへのセクハラ騒動を正面から描いた作品。テレビ局FOXニュースのベテラン女性キャスター、グレッチェン・カールソンは、人気番組の担当を降ろされた。それをきっかけに、長年セクハラを繰り返してきたCEOのロジャー・エイルズを提訴する。華やかなテレビ業界の裏にある闇を暴き、3人の女性キャスターが権力を持つ巨大な敵に立ち向かう物語だ。
幼少期のトランス・アイデンティティを写したドキュメンタリー作品。男性の身体に生まれたサシャは、2歳ころから自身の性を女性と訴えてきた。しかし、周りからは女性であることを認められず、教師はサシャのことを「彼」と呼び、バレエ教室では男性の役を与えられ、男子からも女子からも疎外されてしまう。サシャの母・カリーヌは小児精神科医との出会いにより、他の同じ年代の子どもと同様にサシャが送るべき幸せな子ども時代を過ごせるよう、学校や周囲に働きかける。サシャの幸せを守るために奔走する母親と家族のゆずれない戦いを描いた映画。
性的マイノリティたちと町の人たちとの交流、友情を描いた作品。1984年の不況に揺れるイギリスで、サッチャー首相は炭坑閉鎖案を発表し、その案へのストライキが続いていた。このニュースを知ったマークは仲間たちとLGSM(炭坑夫支援レズビアン&ゲイ会)を結成し、炭鉱労働者とその家族を支援するための募金活動をはじめる。集めた寄付金を送るため全国炭坑組合に連絡するも、レズビアンやゲイという理由で寄付の申し出を無視される。唯一受け入れてくれた炭坑町の人たちとLGSMの仲間は、活動を通して深い友情で結ばれる。
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日本にもジェンダーをテーマにした作品がある。ここでは5つの作品を紹介しよう。
トランスジェンダーとして生きる主人公と親の愛情を知らない少女の親子的な愛を描いた作品。トランスジェンダーの凪沙は、親戚の娘である一果を養育費目当てで預かる。社会の片隅に追いやられてきた凪沙、実の親の育児放棄によって孤独の中で生きてきた一果。孤独だった二人は、やがてお互いを唯一無二の存在と認識する。凪沙は「母になりたい」「一果のために生きたい」という思いが芽生える。
MtF、LGBTQ+の家族の形を描いた作品。小学5年生の少女・トモは、母親のヒロミと二人で暮らしていた。ある日ヒロミが家を出てしまい、ひとりぼっちになったトモは叔父のマキオの家へ向かう。マキオは、元男性である恋人・リンコと暮らしていた。そんなリンコに戸惑うトモだったが、共同生活をしていくうちに、リンコのやさしさと深い愛情にふれて信頼を寄せていく。
「his」は、男性同士のカップルの親権獲得や、周囲の人からの理解を求めて奮闘する姿を描いた物語。ゲイである迅は社会からしいたげられ、田舎で孤独な生活を送っていた。ある日、元恋人の渚が6歳の娘・空を連れて現れ、いつしか三人での共同生活がはじまる。そんななか、渚は妻と娘の親権を争っていることを迅に打ち明ける。
「ハッシュ」は、ゲイカップルと子どもがほしい独身女性が、新しい家族の形を考えるヒューマン・ドラマ。ペットショップで働く直也と土木研究所で働く勝裕のゲイカップルは、ある日そば屋で出会った朝子から「結婚も、お付き合いもいらない、ただ子どもがほしい」と言われる。初めは激怒していた直也も彼女の真剣な態度にしだいに理解を示し、やがて3人は子どもを持つことに前向きに取り組んでいく。勝裕の実家からの猛反対にあいつつも、従来の家族のあり方の儚さを目の当たりにした3人は、新しい家族の可能性を探って新たな一歩を踏み出していく。
「カランコエの花」は、LGBTが抱える問題を当事者の視点からではなく、周囲の人たちの視点から描いているのが特徴の映画だ。ある日、高校2年生のとあるクラスで「LGBTについて」の授業が行われる。しかしこの授業はほかのクラスでは行われておらず、生徒たちは疑念を抱く。「うちのクラスにLGBTの人がいるのではないか?」と考え始めた生徒たちの日常に波紋が広がり、思春期ならではの心の葛藤がある行動を起こしていく。
ジェンダー平等を実現するための映画界の取り組みのひとつに、ジェンダーにまつわるテーマを扱った映画作品を上映する映画祭がある。例をいくつか挙げてみよう。
「渋谷ジェンダー映画祭」は、ジェンダーをテーマにした映画作品が上映され、上映後には対話の場が設けられているのが特徴だ。この対話によって、ジェンダーに関する問題を、他人事から自分事として考えていく映画祭となっている。(※2)
「レインボー・リール東京~東京国際レズビアン&ゲイ映画祭~」は、セクシュアル・マイノリティをテーマとする作品を上映する映画祭だ。この映画祭の趣旨は、さまざまなセクシュアル・マイノリティについての作品上映を通じて、より多様で自由な社会を創出する場となることを目指すこと、劇場公開される機会が少ないセクシュアル・マイノリティをテーマとする国内外の作品を紹介し、映像文化創造に貢献することとしている。(※3)
「青森インターナショナルLGBTフィルムフェスティバル」は、多様な性を考える映画祭。LGBT映画を通して、人権を考え、あらゆる人々が人権を享受できる社会を目指すことをミッションとして開催されている。(※4)
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ジェンダー映画には、ドキュメンタリーやラブストーリー、伝記などのさまざまな種類がある。映画を通じて、LGBTQやトランスジェンダーのリアルに触れたり、取り巻く社会や性の多様性について考えたりする機会にしてみては。
※1 米アカデミー賞、作品賞に「多様性」の条件設置へ|BBC NEWS JAPAN
※2 渋谷ジェンダー映画祭
※3 レインボー・リール東京とは|レインボー・リール東京
※4 ミッション|青森インターナショナルLGBTフィルムフェスティバル
参考
・映画『スキャンダル』公式サイト |GAGA
・リトル・ガール|SENLIS FILMS
・映画「パレードへようこそ」オフィシャルウェブサイト|セテラ・インターナショナル
・映画『ミッドナイトスワン』公式サイト
・彼らが本気で編むときは、 | WOWOW
・映画『his』公式サイト
・ハッシュ! : 作品情報|映画.com
・映画『カランコエの花』公式サイト
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