セクシュアルマイノリティ(性的少数者)を代表する「LGBTQ+」。そのなかの「T」のひとつとされる「MtF(male to female)」とはなにか。この記事ではMtFについての正しい知識と、MtFかもしれないと感じたときにすることやサポートの方法を解説する。
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「MtF」とは「男性から女性へ(male to female)」の略語。出生時は男性の体であったが、女性として生きることを望む、また女性の体への移行を望む人を意味する。
セクシュアルマイノリティ(性的少数者)を代表する「LGBTQ+」の「T」にあたる、トランスジェンダーのグループに該当するアイデンティティのひとつである。トランスジェンダーとは、生まれた時に割り当てられた性と、性自認が異なる人の総称。「MtF」は現在では「トランスジェンダー女性」と表現することも多い。「MtF」には、外科的手術による性の移行を望む人もいれば、そうでない人もいる。
「LGBTQ+」とは、セクシュアルマイノリティ(性的少数者)の総称のひとつである。それぞれの文字はLesbian(レズビアン、女性同性愛者)、Gay(ゲイ、男性同性愛者)、Bisexual(バイセクシュアル、両性愛者)、Transgender(トランスジェンダー、性自認が出生時に割り当てられた性別とは異なる人)、QueerやQuestioning(クイアやクエスチョニング、どのセクシュアリティにも当てはまらない人)、「+」(プラスアルファ、LGBTQ以外のセクシュアリティ)を表している。
「FtM」とは「女性から男性へ(Female to Male)」の略語だ。出生時は女性の体であったものの、男性として生きることを望む、また男性の体へ移行を望む人を意味する。MtF同様、LGBTQ+の「T」にあたる、トランスジェンダーのグループに属するアイデンティティのひとつである。
自身や身内が「MtFかもしれない」と感じたときにしておくべきことを説明する。
「MtFかもしれない」と感じたときは、まずは情報収集からはじめよう。同じような悩みを抱えている人がどのように過ごし、人生と向き合っているか、外科的手術はどのような方法があるのかなど、情報を集めて正しい知識を得るようにしたい。
性のあり方には、おもに4つの要素の組み合わせによって成り立つという考え方がある(※1)。
4つの要素は、次のとおりだ。
・出生時の性(身体的性)
戸籍上の性、生まれながらに決められている性、性腺、染色体、性ホルモン、内陰、外陰などで決められる生物学的な性のこと。
・心の性(性自認)
「私は女である」「私は男である」など、自分がどの性別であるか、またはどの性別ではないのかの認識。性自認は、自分の意思や医学的治療によって変えることはできない。
・好きになる性(性的指向)
自分がどのような性に恋愛感情や性的感情を抱くのかの認識。同性のみに向いている人、同性にも異性にも向いている人、異性のみに向いている人、恋愛感情や性的関心・興味が生じない人など多様。
・性表現(どのように自分の性を表現しているか)
自分がどのような性を表現したいのか、または表現しているのか。女性らしいファッションや言葉遣い、言動などをする場合は、性表現は女性となる。
自分がこれらの要素でなにに当てはまるのかを考えることで、ある程度自己分析できるだろう。
MtFに関連する専門家として、セクシュアルマイノリティに関する相談ができる団体、トランスジェンダー外来などのクリニック、弁護士などがいる。そういった専門家に話を聞いてもらうのも一案だ。
カミングアウトとは、自身の性自認や性的指向を他人に打ち明けることである。カミングアウトは自身の生活に大きく影響することから、するかしないかの判断と、する場合には"誰にするのか"が重要なポイントになる。
カミングアウトしたい相手がいる場合、口頭で言うのが辛いときは手紙を書き、セクシュアルマイノリティについての本を添えるのもよいだろう。
性別移行とは、自認するジェンダーに合わせて外見や身体を移行させること。自身の抱く違和感を解消するために移行を選択する人、または選択しない人がおり、その判断は人それぞれだ。
性別の移行には、ホルモン療法や性別適合手術等による身体的な性別移行と、他者や社会との折り合い、相互承認によってもたらされる社会的性別移行の2つがある(※2)
いきなり身体的な性別移行を行うのではなく、まずは服装や髪型などの見た目、呼び名や話し方(性表現)を変えるといった社会的性別移行を行い、ホルモン療法を受けながら自身が望む性での生活を体験するケースが多い。それらを経たのちに性別適合手術を受けて戸籍性の変更を申請するため、数年の移行期間がある。
性別移行期は見た目が変わっていくため、周囲の反応や扱いに対して不安を抱く人も少なくない。性別移行をするかしないかは人それぞれであり、どこまで行うかもその人の判断だ。必ず行う必要があるわけではないことは理解しておこう。
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MtFの当事者が生きやすい社会をつくるために、個人でできることを紹介する。
セクシュアルマイノリティについての正しい知識を身につけていないと、だれかを傷つけてしまうことになりかねない。正しい知識を身につけ、多様な性を理解することに努めよう。
正しい知識を身につけるためには、セクシュアルマイノリティに関連する本、MtFの当事者が書いているブログなどを読んだり、セクシュアルマイノリティをテーマにしたテレビ番組や映画などを視聴するとよいだろう。
性自認や性的指向を表現する言葉のなかには、当事者が不快に思ったり、否定的にとらえてしまったりする言葉がある。たとえば、普通の人、ホモ、オカマ、オネエ、レズ、オナベ、ニューハーフ、性転換などだ(※3)。
こういった言葉の意味を理解して使用を避け、肯定的な言葉を使用するようにしよう。正しい言葉には、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーなどがある。
カミングアウトを受けた場合には肯定的に受け止め、「話してくれてありがとう」と感謝の気持ちを伝えよう。またオープンな対話やコミュニケーションを心がけ、なにかサポートできることはないかを聞き、当事者に寄り添う対応をするとよいだろう。
アウティングとは、他人の性自認や性的嗜好を本人の許可なく他の人に話すことだ。話すだけでなく、SNSなどを使い文字で情報を流すこともアウティングとなる。本人はよかれと思ってしたとしても、当事者は自分の知らないところで個人的な情報を流されて傷つく。最悪の場合、精神的に追い込まれてしまうこともある。
アウティングしないためにも、カミングアウトの際に「だれにカミングアウトしているのか」「だれに伝えてもよいのか」を本人に確認するようにしよう。
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性の多様性を表す言葉は、LGBTQ+、MtF、FtM以外にもある。ここではXジェンダーやクエスチョニング、ノンバイナリーの3つを解説する。
Xジェンダーとは、性自認について「男性でも女性でもない」と感じている人を指す言葉だ。この言葉は日本で生まれたもので、英語で近い意味の言葉に「Gender queer(ジェンダークィア)」「Third gender(第3の性)」「Non-binary gender(ノンバイナリージェンダー)」がある。
クエスチョニングとは、英語で「Questioning」と表記する。性自認と性的指向について定まっていない人や、あえて決めていない人のことを意味する。
ノンバイナリー(nonbinary)とは、自分の性自認が男性か女性かという枠組みに当てはめようとしない、または当てはめたくないという考え方を指す言葉だ。「第3の性」「クィア」「Xジェンダー」ともいう。
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出生時は男性の体だったが、女性として生きることを望む「MtF」。現在では、「トランスジェンダー女性」と表現されることも多い。セクシュアリティは多様であり、それぞれを表現する言葉は多様にある。
もちろん、言葉として覚えておくことは知識を得るうえで大切だが、何より大事なのは、多様なセクシュアリティがあるということ、そしてどれであっても、誰もが自分らしく生きる権利があるということを理解しておくことだ。
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