日本に根強く残るジェンダー問題とは 解消に向けた取り組み事例も紹介

男女のマーク

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日本にはジェンダー問題が根強く残る。世界各国の男女格差を数値で表した「ジェンダーギャップ指数」では、日本のランキングは125位で、先進国のなかで最下位だ。とくに政治家や企業の管理職に就く女性はまだまだ少ない。日本のジェンダーギャップの現状や解消に向けた取り組みを紹介する。

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2024.01.23

ジェンダーギャップ(ジェンダー不平等)とは

楽しく笑う女性グループ

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ジェンダーギャップ(ジェンダー不平等)とは、男女の性差により生まれる格差のことだ。昨今、ジェンダーギャップを解消しようと注目が集まっている。それは、ジェンダーギャップにより、個人と社会のどちらにも悪影響を及ぼしているからだ。

例えば、女性が昇進しづらい企業では、優秀な女性社員が管理職に就くことが難しく、個人の活躍の機会が奪われると同時に、企業にとっても優秀な社員を失う大きな機会損失になる。

そこで、国内外でジェンダーギャップを是正するための動きが目立っている。2015年に国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)では、目標5に「ジェンダー平等を実現しよう」がある。ジェンダー問題は日本のみならず、世界各国で取り組まなければならない問題といえるのだ。

日本におけるジェンダーギャップ

日本のジェンダーギャップ問題は長年続いてきた。世界各国の男女格差を数値で表した「ジェンダーギャップ指数」で、2023年の日本の順位は125位で過去最低となり(※1)、主要7か国(G7)でも日本は最下位だ。

ジェンダーギャップ指数は教育・経済・保健・政治の4分野で構成され、分野ごとの日本の順位は次の通り。

教育分野…47位
経済分野…123位
保健分野…59位
政治分野…138位

とくに政治分野と経済分野が足を引っ張っている。政治では女性の首相が誕生していないことや、衆議院における女性議員の比率が9.7%と1割にも満たないことが原因だ(※2)。

また経済では、企業での管理職に占める女性の割合は、平均9.4%(※3)と低い水準にある。OECD(経済協力開発機構)のデータによると、男女の賃金格差は21.3%あり、世界平均のおよそ2倍の水準だ(※4)。日本のジェンダーギャップの現状はまだまだ厳しい状況だ。

2023年ジェンダーギャップ指数全ランキング 日本は過去最低の125位

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日本のジェンダーギャップの事例

台所で調理するカップル

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ジェンダー問題により、さまざまな弊害が生まれている。日本のジェンダー問題の事例を紹介しよう。

教育格差

ジェンダー問題は、まず教育への影響があげられる。日本の大学進学率は男子が56.6%であるのに対して、女子は50.7%(※5)と男子よりも低い。また進路選択では、女子は理系よりも文系を選ぶ傾向がある。「女性は大学まで行かなくてもいい」「女子は理系が苦手だ」という思い込みが根強く残っている可能性がある。

また2021年の東京都立高校の入試で「男女別定員制」の影響で約800人が不合格になり、そのうちの約9割が女子だった。本来であれば合格点に到達しているのに、女子という理由で不合格になった生徒が数多くいたということだ。女子にとって不利な仕組みに、生徒もその両親も憤りを示している。

雇用格差

男女の雇用格差も顕著だ。就活の際に職種が総合職と一般職にわかれている場合、総合職に男性が集まる傾向がある。世間では「総合職は男性で、一般職は女性の仕事」という考えが残る。さらに、企業が「女性は結婚や出産で退職する可能性がある」と考えている場合、出世する見込みのある総合職には女性よりも男性を多く採用するケースもあるだろう。

また、非正規雇用の人口は女性の方が多い。非正規雇用の労働者は雇い止めのリスクがあり、実際にコロナ禍では多くの非正規雇用の女性が職を失った。女性の貧困にもつながっている。

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職場でのハラスメント

ジェンダーギャップがハラスメントに発展しているケースがある。厚生労働省によると、労働局雇用環境均等部に寄せられたセクハラの相談件数は年間7,000件を超えている(※6)。

例えば、「女性は補助的な業務をすべき」という価値観からお茶汲みや掃除は女性社員だけに割り振ったり、「男性は仕事を優先すべき」という価値観から男性社員のみ休暇が取りづらかったりする状況はハラスメントにあたる可能性がある。企業は社内に相談窓口を設置したり、ハラスメントに関する研修を実施したりなど、対応が求められている。

家事・育児の役割分担への悪影響

日本では「家事・育児は女性がすべきだ」という価値観がまだまだ根強い。

内閣府によると6歳未満の子どもがいる夫婦では、夫が家事や育児に費やす時間が1日当たり約1時間23分に対して、妻は約7時間34分だ。夫が家事・育児に費やす時間は妻の約5分の1にとどまっている。海外を見ると、男性の家事・育児の時間はアメリカが約3時間、フランスは約2時間30分、スウェーデンは約3時間20分。日本の男性が家事・育児に費やす時間が短いのがわかる(※7)。

日本では「ワンオペ育児」が流行語になり、過剰な家事育児の負担が女性の社会進出を遅らせている原因になっている。

暴力や虐待による被害

日本の女性の約4人に1人は配偶者からの暴力の被害経験があり、14人に1人は無理やり性交渉などをされた経験がある(※8)。また、つきまといの被害も女性の方が多いと言われている。ジェンダーギャップや個人の偏った考え方が、被害を生んでいると考えられる。

ジェンダーギャップ解消策は? 是正に向けた取り組み

ジェンダーギャップが大きい日本だが、この問題を解消する動きも出てきている。政府・行政・企業が行っている取り組みを紹介しよう。

〈政府〉2030年までに指導的地位に就く女性の割合を30%に

会議場

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日本政府は、「2030年までに社会のあらゆる分野で指導的地位に女性が占める割合を30%にする」と掲げている。ジェンダーギャップ指数で先進国の水準を下回っている、政治分野と経済分野で下記の目標の実現を目指している(※9)。

〈政治分野〉
・衆議院議員の候補者に占める女性の割合を現状17.8%(2017年)から2025年までに35%とする
・参議院議員の候補者に占める女性の割合を現状28.1%(2019年)から2025年までに35%とする

〈経済分野(民間企業)〉
・係長相当職に占める女性の割合を現状18.9%(2019年)から2025年までに30%にする
・課長相当職に占める女性の割合を現状11.4%(2019年)から2025年までに18%にする
・部長相当職に占める女性の割合を現状6.9%(2019年)から2025年までに12%とする

〈行政〉埼玉県 働く女性応援メンター制度

埼玉県では女性のキャリアサポートの一貫として、「埼玉県働く女性応援メンター制度」を設けている。働く女性が自身の会社に「相談できる先輩女性がいない」「自分と同じ立場の女性がいない」など、悩んでいる際に活用できる制度だ。ふだんはなかなか相談できない他社で働くメンターからアドバイスを受けることができる。

〈企業〉アクセンチュア株式会社 取締役会の50%が女性

アクセンチュアは、どんなバックグラウンドでも活躍できる職場を目指して、取り組みを行ってきた。フレックスタイム制やリモートワーク、短日・短時間勤務制度、メンター制度などを導入し、取締役会の50%が女性で構成され、昇進者における女性の割合は47%を達成している(※10)。

日本のジェンダー問題を解消するには

日本のジェンダー問題は根深く、政府や行政、企業、個人で是正に向けて取り組んでいく必要がある。企業では雇用条件や待遇などを見直し、就労継続や昇進などで女性に不利にならないようにする必要がある。またセクハラへの対策として、研修を設けたり、相談窓口を設けたりするのも効果的だ。

個人でできることとして、家庭で家事や育児の役割分担についてパートナーと話し合ったり、ジェンダー問題に取り組む団体に寄付したりすることが挙げられる。個人の意識や行動の変化が、社会全体のジェンダーギャップ是正につながるはずだ。

※掲載している情報は、2024年1月23日時点のものです。

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